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ジャンル:ダットサイト

プライマリーアームズの25mm対物レンズのダットサイト

執筆時期:2024年9月

検証人数:2人

実弾射撃評価:有り

→H&K – MP5 / 9x19mm弾

※本製品を提供してくださいましたH氏に感謝いたします。


SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) Primary arms (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 76.2mm
重量 184グラム(ハイマウント時、電池含まず)
本体材質 6061-T6アルミニウム
倍率 1倍
レティクルラインナップ ACSS CQB(本製品)、2MOAドット
イルミネーター 赤色LED 11段階調光(内2段階は暗視装置用)
使用電池(電池寿命) CR2032リチウム電池(中設定で12000時間、2MOAモデルは5万時間)
防水性能 IP67
価格 199.99ドル

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

良好な点 一定の信頼性や軽量、大きなレンズを搭載して求めやすい価格を実現
  CQBで使用しやすいACSS CQBレティクル
  多数の付属マウント群
改善を要する点 パララックスが大きい(G2モデルで改善
  ダイヤルやハウジング形状やサイズ
  レンズのムラのある色合いと目立つ反射(G2モデル一部で改善)
  暗視性能の悪さ

25mmレンズの格安ダットサイト


時代と共に大きさが変わっていく物は多い。スマートフォンや車は大きくなる一方だが、カントリーマァムやキットカットは美味しくなって新登場となる度にそのサイズか容量は小さくなる。その点はダットサイトも同様かもしれない。世にAimpoint T-1が出た時、こんな小さな照準器なんて狙いにくいったらありゃしない!子供用かい?(笑)と一部でバカにした人もいたが、今やこのサイズがスタンダードと言ってもいいくらいだ。


今回紹介するPrimary Arms – MD-25を見てみよう。世の中右を向いても左を向いてもT-1、T-2系の小人ダットサイトばかりの中、このオールドスクールな外観は大きく見えると同時にどことなく懐かしさがにじみ出てくる。

T1・T2系の小さなダットサイトばかりが新商品として世にリリースされる現代、大きめのレンズを求めている派にとってこのMD-25はたまらない製品となっている。Aimpoint PROTrijicon MROは同じようなサイズのレンズを搭載しているものの、値段はけして安くない。コスパの高い製品を作るのがうまいPrimary Armsがこの製品を出したのは、そんな隙間を狙ったのかもしれない。


このプライマリーアームズ社のMD-25、発売は2021年と数年前だが一部で話題となり気になっていた。今回このMD-25のレビューにありつけれたのは、某国での訓練で知り合ったとあるフィリピン人との出会いがきっかけである。

元軍人であり警護員として働いている彼は、自らの能力に慢心することなく、国内外の訓練等に参加して己を鍛え続けている意識の高い武人である。だがよりにもよって、ホテルに銃器や周辺機器で使用する工具一式を忘れてしまい、今回の訓練で使用するMP5に購入して間が無いMD-25を装着できず困っていた。そこで隣にいた私がMD-25の装着に必要なT-25トルクスレンチを貸したことで親交が深まり、簡易的ではあるがこうして商品レビューを行うことができたわけだ。


なんだか懐かしさを感じる外観だねぇ。タスコ社やブッシュネル社のダットサイトが全盛期だった頃、こんな短小水道管が銃のマウントベースに鎮座していたものだ。それらにプライマリーアームズっぽいゴツゴツ、カクッとしたスパイスを小さじ1杯加えてごらん?ほら、MD-25になった。

今回レビューしているMD-25は旧モデルの第1世代型であり、現在販売しているものは姿形はほぼ変わらない第2世代型の「MD-25 GenII(G2)」となっている。G2は当研究員が別で試してきたことがあるため、第1世代と第2世代との違いも後述しよう。

ちなみに第1世代と第2世代との外観上の唯一わかりやすい違いは、右側面上部のロゴマーク(PAと表記されている奴)が、旧ロゴか現行ロゴかの違いだけ。


全長は76.2mmと、コンパクトなエイムポイント T-1(62mm)と比較すると1.5cmほど大きい程度だが、ボディが太い関係でそれ以上の存在感はある。

MD-25の価格は米国での希望小売価格が199.99ドル(2MOAモデルは149ドル)であり、もう製造が終了した過去の遺物であるT1と比べても1/3以下の価格で購入できる格安ダットサイトである。

国内価格も3万~4万円台と手頃な価格で購入できる。


製品名にもある通り、MD-25は25mm径の最近では比較的大き目の対物レンズを搭載している。このレンズサイズはTrijicon – MROと同じであり、Aimpoint – PROより2mm大きい。

20mm径のT1と比較するとボディサイズの違いも相まってかなりの差に感じる。


以前レビューした同社等倍プリズムスコープであるSLx 1X同様、このMD-25も大量のマウント類が最初から付属している。レンズ中心部までの高さが3.58cmとなるハイマウント、2.43cmになるローマウントに加え、それぞれのマウントに3.1mmと58mmの高さを追加できるスペーサーが2枚付属し、6種類の高さ調節が可能となる。

今回レビューさせてもらったMD-25はハイマウントに58mmの高さを追加できるハイスペーサーを噛ませた状態である。(レンズ中心部までの高さは4.16cm)

ボディサイズはT1・T2系より大きいが、フットプリントは同じものを採用。なので付属マウント群が気に入らなくとも多種多様な物をチョイスできる。

銃とマウントを留めるネジはT25トルクスネジを使用する。一つ100~200ドル以上するサードパーティ製のマウントと比べるとクオリティの差は出るが、付属マウントでも実用十分な品質であり、別でマウント類を買わなくても様々な銃器やスタイルに合わせてマウント高を変えれる自由があるのは素晴らしい

公式では、電池を抜いた状態でのハイマウント装着時の重量は184グラムとある。電池を入れた状態だと207グラム、今回のようにハイスペーサーを噛ませた状態だと220グラムである。T1やT2系と比較すると重いが、この手のレンズを搭載した機種の中では軽い部類だ。


左側面の輝度調整ダイヤルの操作感についてはSig Sauer – Romeo MSRほどではないが硬めである。

11段階のイルミネーションの明るさが調整でき、内2段階(「NV1」及び「NV2」とダイヤル表記)は暗視装置用の設定。

具体的にどの段階の明るさかはわからないが、公式曰く中程度の明るさで2MOAモデルは5万時間と平均的だが、ACSSモデルは発光面積が多い関係で1万2000時間となっている。

第2世代型であるMD-25 G2には、第1世代型との最大の違いとしてイルミネーションに振動検知による自動電源オンオフ機能(AutoLive)が付与されている。

SLx 1X同様、ダイヤル表面にあるバッテリーコンパートメント蓋の溝は、マイナスドライバーやコインを差し込むには太く浅いため、溝を潰してしまう恐れがあるため注意してほしい。


上部と右側面にあるエレベーション&ウィンデージダイヤル(タレット)はネジ止め式のキャップがあるタイプ。各ダイヤルは前方部からの物との接触による破損防止のため、ダイヤル前面のボディが斜めに盛り上がっている。

各タレットのクリック感はカチカチという明瞭な音と共にフィードバックがわかりやすいが、たまに曖昧に感じることもある。

1クリックの移動量は0.5MOAと小さく細かな修正が可能。その分最大移動量は50MOAとあまり多くない。

レティクル │ ACSS CQB


MD-25には、より安価でシンプルな2MOAサイズドットの他に、今回紹介するPrimary armsご自慢の馬蹄型サークルレティクルを用いたACSS CQBレティクルモデルがある。多数あるACSSシリーズの中でも、ACSS CQBはCQB(Close Quarter Battle:接近戦)への強さも持ちながらも、中距離戦闘もこなせるよう設計されたレティクルである。

中央部分には逆V字型のセンターシェブロンが採用されている。中央を素早くターゲットに合わせやすく、ある程度の精密射撃も行えるので、この手の低倍率スコープに採用されているのを他社含めてまれに見かける。

シェブロンから下に3点連なるドットはそれぞれBDC機能(距離による弾丸の落下予測機能)を持っており、センターシェブロンをどの距離でゼロインするかよによって、5.56x45mm弾や7.62x51mm弾だけでなく、12番ゲージスラッグ弾や.22LR弾等10種類以上の弾種に対応している。それがどこまで正確かどうかは置いておくが。

例えば5.56x45mm NATO弾を用い、センターシェブロンの頂点を100ヤード(91.4m)の距離でゼロインした場合、シェブロン下部の山の頂点で200ヤード、シェブロン底面の平行線上で300ヤード、BDCドットの1番目で400、2番目で500、3番目で600ヤードとなっている。BDCドットはまだしも200ヤードと特に300ヤード点はちょっと無理がある…。

周辺部の馬蹄型サークルレティクルはCQBでの素早い照準に役立つと同時に、18.5~20インチ銃身のショットガンにおける.00バック散弾の25ヤード(22.8m)の拡散パターンと合致するサイズとなっている。

ちなみに、中央シェブロンも上端、下端にかけて400~600ヤード距離における風速5mph時の弾丸の風に流される予測点(ウインドホールド)に使えるらしい。これは先ほどの一部BDC機能以上に無理がある。そもそもどんな弾種を用いてのウインドホールドの事なのかすら説明書には詳しく表記していないし。

他にも、高さ5フィート10インチの成人男性(177.8cm)の高さのターゲットまでの距離を計測機能もあり、こちらはBDCドットの最下点からシェブロン底面までの範囲に収まれば600ヤード、シェブロン下段の頂点ならば500ヤード、シェブロン上段頂点…ではなくそのちょい上ならば400ヤードと距離を算出できるとある。これについてもだいぶ無理がある設定だ。

このACSS CQBレティクルをフルに活用したい場合、マグニファイヤー(拡大鏡)との併用が大前提と言ってもいいだろう。ただ、それらを用いたとしてもレティクルがしっかりとエッジングされている等倍プリズムスコープである同社SLx 1Xと違い、あくまで光として投影されているに過ぎないMD-25ではACSSレティクルの輪郭が視力検査の図の如くしっかりとは見えないため、遠距離での使用に困難を伴いやすく、参考程度にしておいたほうがいい。ACSS CQBレティクルはこんなにも多機能なんだぞ!とプライマリーアームズは言いたいのだろうが実用性に乏しい機能も多い。

当然ながら視度調整ができるSLx 1Xと違い、乱視等があるとレティクルの細部は見にくい。


まぁ自分にとって無理のある機能に関しては無視すればいいだけの話だし、BDC機能に関しても一部の弾種によっては使えるのではなかろうか。

ただ個人的には、写真の同社SLx 1XのよりシンプルなACSS CYCLOPS G2レティクルのほうが好みではある。

このレティクルは、中央部分は馬蹄型サークルレティクルとシェブロンのみに設定し、下段の小さな横線はターゲットの測距のみに使用できるようにしたもの。測距に関してはこちらの方式のほうがはるかに実用的だ。

10m照準

今回の照準写真に関しては、いつものように各距離毎での撮影は出先のためできず、撮影が許可された場所で10mと50mのCQB距離のみの撮影となったことをご了承願いたい。また、いつもの撮影機材ではないのと、ターゲットも横幅40cm弱のペーパーターゲットに変更している。


何はともあれ、10m先に貼り付けた横幅40cm弱のペーパーターゲットを照準してみた。

馬蹄型レティクルはこのようなCQB距離において素早く大まかな照準への水先案内人となり、中央山型のシェブロンとその下に続くBDCドットがまるで矢印のように見えるため、より正確な照準へと向けることができる。

また、このACSS CQBレティクルはレンズのどの位置に持っていっても歪んだりするようなことはない。

2MOAモデルに関しては、ダットの輝度を上げると滲んだり歪んだりしやすい傾向にあると一部で報告されている。

レンズの透明度に関しては、部位によってグラーデーションのある濃淡が大きく出ている。特にレンズ右側面に行くほどノッチフィルターによる青味が強い。

説明書の製品紹介欄では、青みを感じることのないレンズだと表記されている。眼科はこちらで予約しておくので速やかに受診していただこう。

レンズ全体が青いことは使用用途や環境によって一概に良い悪いとは言えないが、このように部位によって濃淡が大きく違うのはあまり良くない

特にこのレンズの青さは曇天時や日陰、薄暗い室内で使用する場合はより強く感じ、薄めのサングラスをしているように少し暗く見える。これらの環境下での使用が多い人は留意しておくべきだ。

接近戦のみならず、中距離射撃も視野に入れた照準器であるため、この点は改良してもらいたい。

G2モデル 2MOA版の一部でこの色味ムラが改善されているとの報告があった。もしかしたらステルスでマイナーチェンジがされているのかもしれない。


また、この右側面の青のグラデーションだが、この部位が明るい場所から暗い場所を覗いた時や、逆光時及び右斜上からの光源が差し込んだ際に赤く染まりやすく見にくいと感じることが多い。

この反射はレンズを左寄りから覗いた際により顕著に出やすい。

50m照準



次は距離を50mに伸ばして照準。本訓練に私が持参したAimpoint T-1とも比べてみた。

先ほどよりも日光が差してきたため、一部レンズの青みは減少している。

視野に関しては、MD-25のほうがレンズが大きいため少し広いのが見て取れるものの、ボディハウジング等がそれを相殺するかの如く大きいこともあり、T-1と比較すると邪魔に感じる。せめて左側面のロータリースイッチはもう少し薄くしてほしい。

レンズの歪みはほとんどなく、この点に置いてはAimpoint PROと比較してもいいくらいに優れている。

パララックス(視差)に関しては、いつもの100mではなくこの50m距離にて行ったが、この距離であっても上下で7cm、左右では9cmほどとけっこう大きく動く。レンズの大きさに囚われず、レティクルを中央に捉えての射撃を心がけたほうがいいだろう。

このパララックスについては、G2モデルで大幅な改善がされているようで、100mで5cmほどとかなり小さくなったようだ。

イルミネーションの明るさについて


イルミネーションの最高輝度については、晴天時の日中でも十分使用できるほどの明るさである。砂漠や雪原地帯では人によってもう1段階明るくなってほしいと感じるかもしれないが。

最低輝度に関しては、暗闇で辛うじて肉眼で視認できるくらいの暗さであり、メリハリのついた輝度調整が可能だ。

ただし、暗視装置との併用能力はあまり良くない。光透過率もそこまで良いとは言えないため、ある程度の月明かり等が無いと見えにくい。また、レティクルがくっきりと映らずぼやけて見えるため、暗視装置を用いての照準器としては正直使いづらい。

この点は同価格帯ダットサイトだとホロサン製品のほうがいいし、等倍プリズムスコープである同社SLx 1Xのほうが暗視装置との相性は良かった。

写真を見ていただけるとわかるが、サークルレティクル等の発光面積が多い他社・同社ダットサイトやプリズムスコープ同様、対物レンズ側からのLED素子の発光は見えやすい。

別売りではあるが、ARD(反射防止用のキルフラッシュ)もオプションであるため、それらを取り付けると多少緩和されるだろう。

他社製品との比較


大きめなレンズを搭載した他社ダットサイトと比較した場合だが、Trijicon – MROはMD-25よりも全長が短い上に接眼レンズを小さくして先細るような形状をしているため、レンズや視野の広さをより感じやすい。

ただ、高価な割に致命的なネガも多いためやめたほうがいい。シンプルなドット表示のみで良く、お金を出せるならAimpoint Proのほうがいいし、宗教上の理由でどうしてもMROシリーズが欲しいならもっとお金を積んで上位モデルであるMRO HDを買うべきだ。そのMRO HDもお金を積み上げるほどの良さがあるのかと言われれば微妙だが。


個人的にはサークルレティクルを備え、レンズも大きく見やすい点ではHOLOSUNのHS512Cを勧めたい。ローマウントにはできないものの、大きなネガも無くMD-25に少しお金を追加すれば買えるジェネリックホロサイトとも言える良い製品だと思う。重量も230グラムと軽量だ。

HOLOSUNと言えばよりコンパクトなAEMSという製品もあるが、こちらは価格が若干高くなる上にレンズの質があまり良くなく、コスパの良いHS512Cと比較すると見劣りしてしまう。

また、より大きな30mmのレンズを持ったSig sauer – Romeo 7もコスパの良いダットサイトと聞く。ただしこちらは当研究会で触れたことがある者はいないため多くは語れない。

ガンハンドリング、使用感等


今回は訓練で使用した9mmサブマシンガンであるMP5を用いてMD-25を使用してみた。

小さなT1・T2系ダットサイトに慣れていると本製品は大きく感じるものの、重量は200グラム前半のためホロサイト等が付いているような重量増はあまり感じず軽快に銃を振り回すことができる。

ACSS CQBレティクルはその名の通り近距離戦闘では使いやすく良好だ。ただ先程も言った通り、普段T1系ダットサイトを使用していると分厚いハウジングが邪魔に感じることも確かだ。

開けて明るい砂地の射撃場ではレンズの色合いや反射はあまり目立たないが、屋内や日陰の多い射撃場だと途端にそれらが目立ってくるし、場合によって照準の妨げにもなる。

Conclusion | 総評


コスパの良い製品を多くつくるプライマリーアームズ。このMD-25も国内では3~4万円台、米国では199ドルと安い価格で提供している。

ただし、光学設計面での欠点も多く目立つ。マイナーチェンジモデルであるMD-25 G2もパララックスは改善されたものの、レンズの反射や色合いはそのままであり、この点においては価格相応である。

G2モデル 2MOA版の一部でこの色味ムラが改善されているとの報告があった。もしかしたらステルスでマイナーチェンジがされているのかもしれない。

レンズの偏った色ムラや反射の関係上、室内戦や日陰の多い森林内での使用が多い場合は正直他の製品を選んだほうがいい。薄暗い場所や夜間は索敵能力や照準能力の低下を招きやすい。

世はT1やT2系のダットサイトが多く、それよりも大きなレンズを搭載したダットサイトやホロサイトとなると昨今の物価高の影響もあり多くのお金を支払わないといけない。このクラスのダットサイトは、なかなかコストに対して品質や信頼性の両立が難しいカテゴリーであると今回実感した。