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ジャンル:ダットサイト

SIG SAUERの格安マイクロダットサイト

執筆時期:2022年1月

※本製品を提供してくださったY氏に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) SIG SAUER (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 7.99cm
重量 140グラム
倍率 1倍
対物レンズ径 20mm
レティクルパターン 赤(本製品) or 緑 2MOAドット
イルミネーター 赤色 12段階(内2段階は暗視装置用)
使用電池(電池寿命) CR1632 (20000時間)
防水性能 IPX7
価格(購入価格) 159.99ドル(2021年、99ドルで購入)

財布に優しいSIG SAUERのダットサイト


2022年、押し寄せる世界的なインフレ等にともなう物価の上昇に、賃金がなかなか上がらない日本人の悲鳴が年明けからずっと聞こえ続けている。

ガソリンスタンドに行く度に財布が軽くなり、うまい棒はとうとう銅貨1枚では買えなくなってしまった。こうなってくると、諸君らも来年度防衛予算を縮小せざるを得ないという人も多いのではなかろうか?

そんな我々のために、SIG SAUER社は格安ダットサイト「ROMEO MSR (SOR72001)」を出してくれた。米国での希望小売価格(MSRP)は159ドル、日本国内であっても、1万5000円前後の実売価格という中華レプリカ光学照準器プライスである。


当然だが、SIG SAUER社は極東に住む島国のサムライ達を思って格安ダットサイトを作ってくれたわけではない。並み居るライバルメーカー達の低価格帯商品群に大きな一撃を放つために出したのだろう。

例えば、今まで当研究会がレビューしてきた他社低価格帯ダットサイトである、HOLOSUN  – HS403B(199ドル)や、Vortex – Crossfire(219ドル)と比べても、価格面で頑張っていることが伺える。


ご存知、SIG SAUER社は光学・電子機器製品のほとんどにフォネティックコードを割り当て、ダットサイトはすべてROMEOという名字が当てられている。(ダットサイトは米国ではReddotとも呼ばれているので、「R」のフォネティックコードが割り当てられたのだろう。)

では、MSRとは何の略か?ここでいうMSRはModern Sporting Rifleの略で、大雑把に和訳するなら、今はやりのスポーツ向けライフルとでも言おうか。アメリカの軍用小銃でもあるAR-15系をベースに、様々なオプションが付けられ、軽量、モジュール構造となっている民間・射撃スポーツ向けのライフルを総じてそう呼んでいる。

この名称は2009年にNSSF(アメリカ射撃競技協会)が名付けて広まったとのこと。

SIG SAUER社は、低価格でコストパフォーマンスに富んだ製品群にこのMSRという名称を付けているようだ。


ダットサイトの形状は、Aimpoint Micro T-2を捏ねくり回しながら、他数社のコンパクトダットサイトをスパイス代わりに練り込んだようなデザインだ。


指でフリップアップしやすくなっている形状のレンズカバーは、対物・接眼側共に中央に透明な樹脂レンズがはめ込まれているおり、カバーを跳ね上げることなく素早く射撃に移行することが可能だ。

この樹脂レンズそのものは、そこまで厚みや強度があるわけでは無さそうなので、試してはいないがおそらくサバイバルゲーム等でのBB弾の直撃には耐えれないだろう。まぁ、内部の本丸ガラスレンズへのダメージの軽減にはなると思うが。

内部のレンズのサイズに対して、このカバー樹脂レンズは少し小さめなので、装着した状態での視野は10%ほど狭くなる。


このレンズカバーに固定機能は無く、対物側を上に跳ね上げると、光度調整ダイヤルが邪魔をして直角以上に寝かせられることができない。写真のように、ぐるっと下に回して寝かせておくほうが視界の邪魔にもなりにくい。

レンズカバーの作りはそこまで良くなく、個体差によってキャップが閉めにくい場合がある。この個体がまさにそれであり、指でググッと力を入れないと閉まらなかった。

持ち主いわく、これでもましになったほうで、開封時から中途半端にしか閉まっておらず、当初は絶望的に硬かったとのこと。


レンズは対物・接眼共にマルチコーティングが施されており、対物側は見る角度によって赤や緑系の色に変わり、接眼側は緑系の色合いをしている。

レンズ径は、他社T-1系と同じく20mmだが、接眼側が鏡筒部に覆われている面が多い関係上、実際には視野は少し狭く見える。


ダットの光量切替はダイヤル式で、前方上部にある。12段階の光量調整が可能で、内2段階は暗視装置用だ。(N1・N2と表記されている)

オフポジションにはダイヤルに何も印字がされておらず、N1の隣と10の隣の2箇所ある。それぞれのオフポジションの境目には見えない国境線があり、ダイヤルをそれ以上回すことができない。つまり、N1から10に回そうとすると、いちいちコチコチコチコチと回さないといけない。

さらに輪をかけて面倒さに拍車をかける要素として、このダイヤルが異様に硬いのだ。最初は個体差かと思ったが、どうやらこれが通常らしく、購入したショップいわく「誤動作や、手袋をした状態でダイヤルのクリック感をわかりやすくするためじゃないのか?知らんけど」という説明を受けた。

素手で回すと、ダイヤルのチェッカリングが指に食い込み、若干痛いほどである。まぁたしかにこれだと、藪こぎ等をしていて勝手に光量が変わっていることなんて無いかもしれないが、こんな硬い光量切替ダイヤルは初めてだ。頻繁にここをいじる人にはちょっとうざいかもしれない。

ダイヤル内に入れるROMEO MSRの電池は、コンパクトダットサイト毎度お馴染みのCR2032コイン電池…ではなく、一回り小さなCR1632を使用。そのためか、CR2032電池を使用する他製品より、若干少なめの20000時間。

まぁ、この連続点灯時間はどんなレベルの光量で行ったか、各社バラバラでありあまり当てにならない面もある。


ダットのウィンデージ(左右)とエレベーション(上下)調整はむき出しのダイヤル式で、やろうと思えば工具等無しで爪で回せないこともない。

回したクリック感は、たまに不鮮明になる。あれ?今回したはずだぞ??

1クリックの移動量は1MOAで、最大100MOAの調整幅がある。


ROMEO MSRにはAbsolute Co-witnessサイズのハイマウントのみが同梱されており、ローマウント等は無い。付属ハイマウントの工作精度は可もなく不可もなくレベル。

Absolute Co-Witnessは一般的なAR-15系ライフル用のフロントサイトやリアサイトが、レンズの中央に位置する高さだ。

マウントのフットプリント規格は、Aimpoint T-1系と同じなので、写真のように星の数ほどある好きなT-1系ローマウントやハイマウントをチョイス可能。


ちょうどいいので手持ちのT1系(Aimpoint Micro T1HOLOSUN HS403B)と記念撮影。

ROMEO MSRは、他T1系と比べ、レンズカバーやダイヤル等の厚みを除いても、全長は長めだが全幅はスリムな形状をしている。そのため、マイクロダットサイトの中では一回り小さな印象を抱く。


ダイヤル系の印字以外は、メーカーロゴ等もブラックアウトしており、目立ちにくくひっそりと表記されている。


MSR(Modern Sporting Rifle )の名の通り、イマドキのライフルによく合う。

マウント込みで140グラムほどなので、軽々と振り回すことができる。


また、そのスリムな外観からも、ショットガンやサブマシンガンに搭載するのも良いだろう。

方眼紙照準テスト


※画像クリックで拡大可

今回はちょうどいいので、共に低価格帯T1系ダットサイトであるHOLOSUN HS403Bと共演させてみる。ROMEO MSRのレンズカバーは無しの状態だ。

ご覧の通り、レンズの透明度は全体的に見て透明度がかなり高い部類のHS403Bよりも上で、VORTEX Crossfire (CF-RD2)と同等レベルの極めて高いレベルだ。

両者とも同じ距離にダットサイトとカメラを置いて撮影したが、前述した通り、ROMEO MSRの方が実際の視野は少し狭い。

ROMEO MSRは、他バリエーションとしてグリーンダットのSOR72002、ボディカラーをFDEにしたSOR72011がある。

50メートル照準テスト


※画像クリックで拡大可

180cmの高さに吊るした青のツナギを、50メートルの距離に設置して照準。

レンズの透明度極めて高いレベルだ。と言ったが、写真のように屋外に持っていくと光源の位置や種類等によってHS403Bとあまり変わらない状態にも変わる。まぁどちらにしろ悪くはない。

ホロサン HS403Bは太陽や光源を背にした場合や、左斜め上に持っていった場合にギラつくゴーストが出やすい。これに関しては、ROMEO MSRもほぼ同じで、ギラッとしたゴーストの眩しさは、MSRの方が若干ましといった程度。

ダットの鮮明度に関しては、HOLOSUN HS403Bの方が良い。ROMEO MSRも滲みが特段気になるようなレベルではなく、標準的なレベルだ。

 


100メートル照準テスト


180cmの高さに吊るした青のツナギを、倍の100メートルの距離に設置して照準。

ダットのサイズは2MOAなので100メートル先のヘッドショットも可能だ。

ダットの明るさは、直射日光下から真っ暗闇まで問題なく柔軟に使えるレベルの調整が可能だ。

ちなみに、透明なレンズカバーをした状態で除いても、レンズのクリア度にはほぼ変わりがない。ただ光源に対する反射等は少し増える印象だ。

ダットを灯すLEDモジュールの出っ張り(レンズ右下)が、見る角度によっては気になってくる。他のT1系よりも視野が少し狭い分、このような出っ張りは余計目立ちやすくなる。ここはできれば改善してほしいが、この価格で言う文句ではないのかもしれない。

パララックス(視差)に関しては、100メートルの距離で上下左右ダットが見える限界位置から覗いて、それぞれ15~20cmほどズレる。この点はHOLOSUN HS403Bの方が良い成績だった。

Conclusion | 総評


国内での実売価格1万5000円、米国では安いところで100ドルを切るような値段で売られている。気になる点はいくつかあるが、そんな低価格でこのレンズの透明度、大きなネガの無い性能を考えると、ただ安かろう悪かろうではなく、非常にお値打ち価格の良いダットサイトではないだろうか。

このレビューを終えた後、持ち主がサバイバルゲーム中にこのMSRが急に点灯不能になってしまい、販売店を通じて修理に出したとのこと。その後は問題は無いみたいだが、販売店いわく、今まで200個近くのMSRを販売して、3~4個ほどの不良品があったと聞いたようだ。

一定の不良率は、価格からしてもあるのだろうが、基本的にどこのショップのレビューを見ても概ね高評価の格安ダットサイトという評価に変わりはないようだ。

このROMEO MSRが出るまでは、ROMEO5というダットサイトが同社で一番安い(MSRP 199.99ドル)T1系ダットサイトであった。光学系等の性能はこのROMEO5の方が良いとの話を聞くので、お財布と相談をしながら購入を考えても良いだろう。

ただ、ROMEO5は中華レプリカ品を本物と偽って販売しているケースも多く散見されるので注意していただきたい。