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ジャンル:ダットサイト

ホロサンのコンパクトで非常に高い透明度を持つドットサイトを紹介。同低価格帯のボルテックス社Crossfire Reddotと、このジャンルのベンチマーク的存在であるAimpoint T-1とも比較していきたい。

執筆時期:2019年4月

※本製品を提供してくださったつぼみアームズ様に感謝致します。また、本製品は「TSUBOMI Arms.com(つぼみアームズ)」にて購入可能です。

本製品 ホロサン HS403Bの商品ページ : http://tsubomi-arms.net/shopdetail/000000000013/

つぼみアームズ : http://tsubomi-arms.net/

※Vortex Crossfire Reddotを提供してくれたT氏に感謝いたします。

2019/12/07:※1 Vortex Crossfireアップグレード版(CF-RD2)に関して追記。

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) HOLOSUN(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
サイズ(全長×全幅×全高) 約6.2×3.0×3.6cm
重量(Loマウント+電池込) 約112グラム
カラー ブラック、FDE(本製品)
ボディ素材 6061アルミ合金
レンズ径 20mm
倍率 1倍
レティクルパターン 赤色ダット 2MOA
イルミネーター 赤色LED 12段階調光(内2段階は暗視装置用)
使用電池(電池寿命) CR2032リチウム電池(50000時間)
防水性能 IP67
動作保証温度 -30℃~60℃
耐振動性能 1000G
価格(国内価格) 199ドル(21700円)

シンプルで見やすいマイクロダットサイト


価格を抑えた高性能なダットサイトを入手したい場合、SIG SAUER社やVORTEX社と一緒に必ず名前が出てくるメーカーがホロサン社(HOLOSUN)だ。ホロサン社は米国カリフォルニア州に拠点を構え、2013年という比較的新しく生まれたメーカーながら、低価格で高性能なマイクロドットサイトやオープンダットサイトを作るメーカーとして、シューターからの人気が高いことで知られている。ホロサンは当初に比べると、全体的な価格は上昇傾向にあるが、その分性能や質も上がっている製品も多く、まだまだコストパフォーマンスの高いメーカーとしての地位は揺るがない。我が国においても、実銃向けの信頼性を持ちながら、概ね2万~3万円の間で購入できる製品が多いので、散弾銃所持者やエアーソフトガンユーザーの間でも愛用者が多い。


今回紹介する製品は、ホロサンのT1タイプのマイクロダットサイトの中で最もベーシックでシンプルなHS403Bを、同じ価格帯のライバル機種ボルテックス社 Crossfire Reddotと、マイクロダットサイト界の火付け役にしてベンチマーク的存在であるエイムポイント社 Micro T-1との比較を交えて行っていきたい。

HS403Bの国内価格は21700円、VORTEX Crossfireは23000円前後、Aimpoint T-1は安いところで6万円、大抵は10万円を超える価格だ。


まずはパッケージから。よくあるシンプルなカラー印刷された紙パッケージかと思いきや…


引っ張り出してみると中箱は樹脂製のケースでできており、2万円程度のダットサイトのパッケージとしては珍しい凝った作りとなっている。


次は付属品の紹介をしよう。まずは説明書だ。

ペラ紙一枚の説明書で、言語は英語のみ。簡単な説明書きで、イラストも付いているのわかりやすい。

また、つぼみアームズのサイトにて日本語説明書がモデル毎に公開されているので安心だ。

ただ、できればハイ・ローマウントの取り外しと取り付け方の説明はもう少しきちんと書いていて欲しい。この手の製品を扱ったことのある者であれば問題ないが、初心者には少し不親切だ。


その他の付属品一覧。

ハイマウントが接続された本体に、ローマウント、工具類、レンズクリーナーに電池、レンズカバー、予備のバッテリーケースが付属する。

工具が3種類も付属しているが、それぞれの内訳は上からバッテリーケース用ネジのドライバー、マウント用の六角レンチ、後述するバッテリーケースを引っ張り出すための工具である。


それではHS403B本体の詳細レビューに移ろう。

全体的な形状はよくあるAimpoint T-1タイプながらも、電池ケース兼光量変更ダイヤルが無く、非常にシンプルで無駄のない形状だ。本製品はブラックとFDE(Flat Dark Earth:フラットダークアース)の2種類の色が用意されている。今回紹介するのはFDE。

ダットの光量変更はSIG SAUERのROMEO 4シリーズやROMEO 5のように上部の+-の絵が描かれた2つのラバー製スイッチで調整をする。 電源ONはどちらかのボタンを押せば点灯し、OFFは2ボタン同時押しだ。

本体の手触りはマット且つザラつきが少なめのコーティングが施されている。


そのシンプルな形状はこうして3者を比べてみるとより明らかだ。


特に電池ケース兼光量変更ダイヤルが無いHS403Bは全幅がウィンテージダイヤル部分の出っ張りを入れても3.5cm程で、エイムポイント T-1やボルテックス Crossfireと比べても6mmほど短い

この点は、レンズを覗いて照準した際に、右側の視界が遮られずよりハッキリとした周辺視界を得ることができる。レンズの小さなコンパクトなダットサイトだからこそ、この点は重要なポイントだ。


だが、これには小さな犠牲も伴っている。それは、電池を本体下部にトレイ式の格納になってしまい、主に2つの弊害が出ている。

一つは電池の交換に非常に小さなトルクスレンチ及びドライバー(T5)が必要な点だ。この小さな小さなネジは取れて紛失しにくいようになっているが、やはりホロサンとしてもある種の不安を拭えなかったのか、トレイ式電池ケースとOリングもセットになって予備が付属している。電池交換は省エネ設計なので頻繁にする必要は無いが、それでもこの作業はあまり屋外でやりたくはなく、頻度は大変少ないもののメンテナンス性も悪い。

ちなみにトレイ式電池ケースは樹脂製である。ネジを外しても少し引き出しにくく、付属している工具で引き出す方がよい。

この電池交換は前機種のHS403Aに比べると大変改善されている。HS403Aは電池交換の際にわざわざマウントまで取り外す必要性があった。

また、ダットサイト下部にバッテリーコンパートメントを設けている分、本体の高さが他の2機種と比べて若干上がっており、ローマウントにした場合は4mm程高めのセッティングになる


本製品にはローマウントとハイマウントの両方が付属している。

付属しているハイマウントを噛ませると、他の2機種と同じ1/3 Co-withnessサイズの高さとなる。(AR-15用のアイアンサイトがレンズ下部1/3の高さになるサイズ)

装着重量は130グラムと非常に軽量だ

ホロサンのT-1タイプのダットサイトは全てマウント用ネジをAimpoint T1やT2と同じくT10トルクスネジを使用しているので、付属品のみならず、各メーカのマウントを使用することができる。

付属のトルクスレンチに関しては、あまり工作精度が良くなく、T10ネジとの噛みあわせがあまり良くないネジが舐めてしまう原因になりかねないので、ホームセンター等で良質なサードパーティ製品を別途購入することを強くオススメする。

特に、本体とマウントを取り付けているネジにはネジロック剤が塗布されているので、最初の取り外しの際には少々力がいるので注意を。


他社のT1用マウントを取り付けてみた。写真のハイマウントはLarue社のLT660で、右端に転がっているのはVortex Crossfireの付属ハイマウント。

ただ、この点に関しても注意が必要で、HS403Bは本体の高さをハイマウントを低くすることで他と同じく1/3 Co-withnessサイズにしており、他社のマウントを使用すると必然的に4mm程高くなってしまう。そのため、ダットサイトを取り付けている場合はアイアンサイトが使えなくなる場合や、頬付けが違ってくる場合があるので注意が必要だ。


エレベーションノブ(ダットの上下調節)とウィンデージノブ(左右調節)はそれぞれのカバーを外すと出てくる。

カバーの内部の回す方向を示すガイドも含めてAimpoint T1と似ている。

ノブのクリック感は明瞭で1クリックがわかりやすい。1クリックの移動量は0.5MOAで、最大移動量は50MOA。


対物レンズ。T1と同じく20mmのレンズ径で、ルビーコートが施されている。レンズの厚みはT1やCrossfireと比べると少し厚みがあるように思える。

この手のマイクロダットサイト同様、対物レンズは傾斜している。これは、パララックスフリーのダットサイト特有のもので、光源の位置に合わせて対物レンズの位置を傾けている。そうすることで、対物レンズ内側に反射したダットの光軸が標的へのズレを軽減させているのだ。

この傾斜に関して不具合だと勘違いする人が少なからずいる。


レンズカバーはこれまたT1とそっくりのビキニタイプ。

本体にプリントされているロゴに関してはシルバーの塗料で描かれており、場合によって少々目立ってしまう。用途や業務・任務によってはあまり好ましくない場合もあるかもしれない。

ちなみに、本製品はスリープモードが備わっており、デフォルトでは8時間無動作の場合は自動的に電源が切れるようになっている。うっかりさんにも安心だ。また、モーションセンサーがあるので、振動を感知した場合は自動で電源がONとなる。

さらに面白いことに、このスリープモードに関しては0~12時間の間で1時間毎に調整が可能だ。電源がONの状態で+ボタンを3秒以上押すと、今設定されているスリープモードの時間に合わせてドットが点滅する。例えばデフォルトの8時間設定の場合は8回の点滅となる。その状態で+ボタンや-ボタンを押す毎に点滅し、任意の時間に合わせた際に再度+ボタンを3秒以上長押しを行い、設定した時間の回数点滅が行われたら設定完了だ。0にした場合はスリープモードは無効となる。

エイムポイント T1を超える透明度のレンズ

さて、ここからはHS403Bの光学性能を他2機種と比較しながら見てみようじゃないか。


※画像クリックで拡大可

まず驚くのはHS403Bのレンズの透明度だ。ご覧の通り、同価格帯のボルテックス Crossfireどころか、3.5倍以上の値段であるエイムポイント T-1を凌ぐ透明度であり、上位機種であるエイムポイント T-2に迫るものがある


※画像クリックで拡大可

3者共、レンズに気になる収差・歪み等は無い。

50m & 100mでの屋外照準


※画像クリックで拡大可

50メートルの距離で高さ180cmの位置に青のツナギを吊るして照準してみた。


※画像クリックで拡大可

中央部拡大画像

HS403Bのレンズの透明度と明るさは高く、目標をしっかりと確認しやすい。この点は、薄暗い環境下で非常に力を発揮してくれる。

写真ではAimpoint T-1とHS403Bの左上にレンズの反射で発生する赤いゴーストが出ているが、光源の位置を考慮して全体を見てみれば、Vortex Crossfireが圧倒的にゴーストが出やすい。あくまでこの中で一番ゴーストが出にくいのはAimpoint T-1だ。

HS403Bも今まで自分が取り扱ったことのあるダットサイトの中では若干ゴーストが出やすい機種ではある。

ゴーストはどの機種も左斜め上に出やすく、Aimpoint T-1とホロサン HS403Bは太陽や光源を背にした場合や、左斜め上に持っていった場合にギラつくゴーストが出やすい。

これに加え、Vortex Crossfireは太陽が真上や右上の位置にある際にもゴーストが出やすいので、アウトドアでの使用では射手にとって目障りな状況になる場合が多いかもしれない。


※画像クリックで拡大可

こちらは倍の距離である100m先に同ターゲットを設置しての照準。


※画像クリックで拡大可

中央部拡大画像

3者共、ドットの大きさは2MOAという小さなサイズなので、100mの距離であってもヘッドショットを行うことが可能だ。人間大のターゲットであれば200mの距離でも可能だろう。

先ほどから気になっている人がいるかもしれないが、Vortex Crossfireは他の2機種と比較するとドットの発光モジュールが他よりも出っ張っている。そのため、レンズ右下を遮りがちである。これは、ドットサイトの位置が目から離れるほど気になってくる。この手のダットサイトはレンズが小さめなので、このような形でレンズが遮られるのは好ましくない。

また、こうして3つ並べてみると、前述した通りHS403Bは、側面の出っ張りが少ないため、周辺視野が非常に優れている。これは接近戦や即応性が求められる高ストレス下の状況で役立つ。

HS403Bのドットの明るさは、12段階の光量を切り替えることが可能。最大光量はT-1には負けるものの、直射日光下でも余裕を持って使える明るさなので心配はいらない。

12段階の光量のうち2段階は暗視装置等を使用する際の設定となっているが、3者の中では最低光量が一番明るく、暗視装置での使用は少し明るく感じる。また、状況によっては暗闇に置ける目視での使用でも、もう一段階くらい暗くして欲しいと感じてしまう

同じ12段階の光量や11段階の光量切り替えを持つT-1やCrossfireと比べ、HS403Bは薄暗い環境や日中での使用の場合、より柔軟性のある光量切り替えができると感じる。

※1

この後、ボルテックス社のCrossfire Reddotは改良されたアップグレードバージョン(CF-RD2)に置き換わり、レンズの透明度等が向上し、透明度だけ見ればT-1を越え、本製品を超えるレベルに到達している。このレビューは以下のリンクから ↓ ↓

【レビュー】 Vortex Crossfire Red Dot (改良版 CF-RD2)

パララックステスト


近年発売されている多くのダットサイトはパララックスフリーを謳ってはいるが、半数以上が大嘘であったり適当なことを言ってるだけの製品も多い。さて、その点HS403Bはどうか?上下左右にズレた状態からレンズを覗いて見て100m先のターゲット中央に合わせたドットがどれくらいズレるか実験をしてみた。

HS403Bは100m先であっても、ご覧の通り大きくターゲットから外れることはなく、マンターゲットであればある程度アバウトな照準をしても命中させることが可能だ

Conclusion | 総評


HS403Bは軽量コンパクトなだけでなく、他社のT1タイプのマイクロダットサイトと比べ、出っ張りが少なくスッキリとした視界を確保しやすい。そのため、ARだけでなく、接近戦におけるサブマシンガンでの使用にも大変適した製品だろう。


その特性を考えれば、散弾銃に載せて左右に飛び交うクレーを撃つ際でも視界を確保しやすく大変撃ちやすかった。レンズの透明度も高いので、高速で飛翔するクレーの視認性も高い。ただ、ローマウントが他社に比べて4mmほど高めになってしまうのは少し残念な点だ。

言うまでもなく実銃対応であり、散弾銃もクレー用の弾薬のみならず、12番ゲージスラッグ弾での射撃においてもゼロインしたドットがズレたり、故障するようなことにはならなかった。


製品全体として見れば、バッテリーケースの構造や、マウント用工具の精度不足、銀に光る目立つロゴ等、若干のツメの甘さや改良点はあるものの、2万円程度で購入できる実銃向けダットサイトとして考えると、大変高いコストパフォーマンスを持った製品であることに間違いはない。

これより安い値段での実銃対応のドットサイトで、実用に耐えうる製品を考えると、SIG SAUER社のROMEO 5やBushnell社の製品が候補として挙がるが、当然ながら質は落ちる。そう考えるとHS403Bはベストバイなドットサイトではないだろうか?

※本製品は「TSUBOMI Arms.com(つぼみアームズ)」にて購入可能です。

本製品 ホロサン HS403Bの商品ページ : http://tsubomi-arms.net/shopdetail/000000000013/

つぼみアームズ ストアサイト : http://tsubomi-arms.net/

さて、ホロサンの製品はT1・T2タイプのダットサイトのラインナップを多く抱えており、その違いは素人目ではとてもじゃないがパット見でわかるものではない。私も、今回この製品をレビュー・調査する上で少し混乱しかけたので、ここに2019年現時点でのラインナップを少しまとめてみた。

●HS403B:HS403Aの改良型で最もベーシックなモデル。本体格納式のバッテリーケース。今回レビューした製品だ。

http://tsubomi-arms.net/shop/shopdetail.html?brandcode=000000000013&search=hs403b&sort=

HS403C:HS403Bにソーラーパネルと自動調光モードを追加したバージョン。

http://tsubomi-arms.net/shop/shopdetail.html?brandcode=000000000015&search=hs403c&sort=

HS403GL:Aimpoint T-1同様のサイドバッテリーコンパートメントを搭載したバージョン。

http://tsubomi-arms.net/shop/shopdetail.html?brandcode=000000000014&search=hs403gl&sort=

HS403R:Aimpoint T2タイプの形状で、サイドバッテリーコンパートメント兼光量切り替えダイヤル付。

http://tsubomi-arms.net/shop/shopdetail.html?brandcode=000000000201&search=hs403r&sort=

●HS403 Elite:ドットがグリーン色で、ソーラーパネル付。

●HS515 Elite:ハウジングがアルミからチタンに変わったバージョン。

HS503シリーズ:T1やT2タイプの形状に加え、SIG SAUER ROMEO 4Mのように65MOA+2MOAのサークルレティクルへの切り替えも可能。

http://tsubomi-arms.net/shop/shopdetail.html?brandcode=000000000018&search=hs503&sort=

HS515CM:QDマウントやフリップアップカバーやキルフラッシュまで付属させた全部載せ欲張りセット。

http://tsubomi-arms.net/shop/shopdetail.html?brandcode=000000000023&search=hs515&sort=

他にもHE530シリーズ等あるが、キリが無いのでここらへんで。