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ジャンル:ダットサイト 

コンパクトダットサイトの決定版とも言えるAimpoint Micro T-1。数年の時を経て現れた後継機が、T-2(軍用)とH-2(民間版)である。果たしてT-1からどれほど進化したのか?それとも・・

検証人数:4人

実弾射撃評価:有り(Benelli – M2、Type89)

執筆時期:2016年

※1:2016/09/25 光学照準器3機種の見比べ動画をアップ

※2:2018/03/08 改良版のレビュー「リベンジ T-2 & H-2!」を追記。

※3:2024/04/06 全体的な加筆、及び修正を実施。

※改良版の提供をしてくださったO氏に感謝致します。

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SPECS | 性能諸元 (T-2)

メーカー名(メーカー国・製造国) Aimpoint(スウェーデン)
サイズ 68mm×79mm×41mm
重量 130グラム(ローマウント・レンズカバー込み。本体のみは94グラム)
倍率 1倍
イルミネーター LED 12段階(暗視装置用4、通常用8段階)
使用電池 (電池寿命) CR2032(光量「2」「8」で5年)
レティクルパターン 赤色ダット 2MOA
平均価格(購入価格) 2016年:800~900ドル(2016年海外通販にて760ドル)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 ロ非常に透明度の高いレンズ
  フリップアップ式のレンズキャップ
  省エネ性能を高レベルで両立させた、暗視装置から日中までメリハリのあるイルミネーション
  誤差の少ないパララックス
  他の追随を許さない高い信頼性や耐久性
改善を要する点 性能等加味しても他社製品と比較して少し価格が高い
  逆行下で対物レンズ縁の反射がT-1より目立つ

T-1の泣き所を改良した外観

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※このレビューは2016年に投稿されたものですが、2024年にところどこ加筆・修正されています。

前機種、T-1とH-1がアップグレードされ、T-2軍・法執行機関向け)とH-2民間向け)へと進化した。

まず、パット見でわかる変更点は、標準でのレンズカバー追加と外観が少しゴツくなったことだ。このことで重みが少し増したが、10数グラム程度だ。

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レンズカバーは、民間版のH-2前後とも透明なポリカーボネートが貼られているので、カバーをしたままでも使用することが可能だ。

一方、軍用のT-2は、反射防止のため前面のレンズカバーは黒だ。

全面が黒のカバーで塞がれていても、両目照準をすることで近距離の簡易的な照準は可能だ。

前世代のT1はロープロファイルな外観はいいのだが、バトラークリーク等のレンズカバーが付けられなかった。良い照準器なのだが、この点は改良要望も多かったと思う。

ちなみに、T-2やH-2の前面レンズカバーは、T-1やH-1にも付けれる。T1ユーザーはこれのみ入手してもよいだろう。カバーに付いている透明なポリカーボネートは薄いので、BB弾の至近距離での被弾はおそらく貫通はしてしまう。それでもレンズへの直撃に比べれば、破損の可能性はグッと低くなる。故にサバイバルゲームユーザーは民間版であるH-2の購入が良いかもしれない。(値段も安いし)

H-2のT-2との主な相違点は、ボディにプリントされているメーカーロゴが白いのと(T-2は黒塗り)、前述したレンズカバー、ダット光量調節から微光暗視装置用の光量が無くなり12段階全てが通常使用で調節できるようになっている3点である。

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上部のエレベーション(上下調節)ネジカバーは、前後が本体で覆われ、シールドされている。この改良点は実に良い。詳しくはT-1の記事の最後を見てもらいたいが、ここがむき出しであったT-1を岩にぶつけて、カバーの突起を吹き飛ばして破損させたことがあった。恐らく、他のユーザーも似たような苦い経験をした声が反映されたものであろう。突起はなくなり、ロープロファイルなネジカバーになった。右側のウインテージ(左右調節)ネジカバーはT1と同じもので突起あり。

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この突起でネジを回すことができるので工具を忘れても安心だ。カバー裏には反時計周りで上または右に調節できると表記されている点も同じだ。

1クリックの移動量はエレベーション及びウィンデージ共に100メートルの距離で13mmとなっている。

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ダットの光量調節ネジ兼電池ボックス。光量調節ネジはT-1のポコッポコッとした柔らかいテンションから、グギッグギッとした硬めのテンションへと変更された。こちらの方が不意の接触での切替を防げるが、頻繁に調節する場合は少し硬く感じる。ここらへんは好みの問題であろう。

 

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レンズカバーを取った状態でT-1と比べてみた。レンズカバーを取るとT-2はどうにも収まりが悪い格好に見えてしまう。マウントのハメコミ形状とネジはMicroシリーズは全て共通なので、T-1時代に各社から出ていたマウントを使用することが可能だ。(もちろん逆も然り)

 

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外箱がこちら。T-2は随分と簡素な箱になっている。付属品はお馴染みの調節器具と、電池(CR2032)、多言語取扱説明書、詳細説明書。電池が丸裸でコロンと入ってたのはご愛嬌。

コスト削減!?目障りな変更点と致命的な不具合

では、T-2・H-2はT-1・H-1よりも優れているのか?少なくとも私はそうは思わない。いや、私がただ単に悪い個体に巡り合ってしまっただけの話かもしれないが、ダットサイトとして使う以上、看過できない致命的な点がある。

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まずは、対物レンズの傾斜だ。パララックスフリーのダットサイトは、光源の位置に合わせて対物レンズの位置を傾けている。そうすることで、対物レンズ内側に反射したダットの光軸が標的へのズレを軽減させている。T-1やH-1はこの点をどうやっているのか技術的なことはあまりわからないが、コンパクトダットサイトの割には傾斜があまり無いのだ。(この点は本来、光源とレンズが近くなるコンパクトなダットサイトほど傾いている)

T-1のレンズ傾斜が85度くらいで、T-2は70度くらいに傾いている。これで、レンズのクリーニングが少ししにくいだけなら良いのだが、覗いた時にかなり目障りな結果になってしまっている。詳しくは後述する他機種との見比べ画像をご覧いただきたい。

対物レンズと言えば、T-1で高評価を出していた相手側からのダットの光の見えにくさは、引き続き他社より高いと感じる。対人戦において、夜間や陰に潜んでいる際にダットが灯っているのがきっかけでバレてしまいましたという事態を軽減できる。ダットサイトのメーカーでこの点まで気を配っている点は非常に良い。レンズの透明度を高めながらよくできている。

また、対物レンズ径は、T-1の20mmよりも少し小さくなった18mmとなっている。

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さて問題がこれだけならまだ良かったのだが、散弾銃でスラグ射撃を楽しんでいる友人が所持していたT-2が、射撃1発目にして点灯不良が起きてしまった。電池を新品に変え、接点復活剤を塗って試しても効果が無く、射撃する度にダットが消えてしまい、電池を入れ直してまた復活するという始末だ。国内の代理店での購入だったので、交換作業はすんなりとできたが、お高い海外への送料を要求されるハメになってしまった。ダットサイトとしては致命的である。Aimpointは信頼性の面で他の追随を許さないメーカーであり、その分値段も高めの設定であるが、これでは話にならない。どうも、この点はT-2・H-2に関しては少数ではあるが、海外のフォーラム等でも散見できる。

2024年現在であっても、競合他社と比較して信頼性や評価が非常に高いダットサイトであることに変わりはない。ただ、このような不具合等がゼロではないということは留意すべきだ。

コンパクトな視界を遮るレンズの縁

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↑ 写真クリックで拡大可 ↑ 距離50m

前述したレンズの傾斜による縁が写り込んでしまう様子が上の写真だ。右下に写り込んだ縁に光が反射してしまい、射手にとっては目障りだ。この現象は、私が目にした5個のT-2もしくはH-2で全て確認できたので、不具合ではなく仕様のようだ。

50メートル照準 | Micro T-1との比較

 

 



↑ 距離50mにてACU迷彩の上着を180cmの高さに吊るし照準

T-2、T-1とで比較した写真だ。撮影した日と状況が違うので、こちらはT-2のレンズ縁の反射が少しマシになっているが、やはり反射しているのは他の機種と見比べると明確だ。レンズの透明度、ダットの鮮明さはT-2が、競合他社と比較しても今だにレベルが高いだけに、実に残念な設計だ。

フリップアップキャップがあるためT-2は上方視界が一見邪魔に見えてしまっているが、そんなものは下に下げるように開くようにすればいいだけの話

パララックステスト │ 50メートル


T-1で問題視されていたパララックスの大きさについてはかなり改善され、ホロサイトほどでは無いが優秀だ。

あくまで50メートル程度ではあるが、我が研究会がこれ以降のダットサイトレビューでよく行っている100メートルでのパララックステストに当てはめてみると、5~10cm以下であろうと思われる。

※上の写真に関してはこちらがアップした動画からキャプチャーしたもの ↓ ↓

 

レンズの傾斜に関しては、Trijicon MROもT-2と同じくらいに傾いているが、接眼と対物レンズの大きさが違うこともあり、縁をウマく隠しているので気にならない。T-1のレンズ設計で、T-2のクリアなレンズを採用してくれていればパーフェクトだったのだが・・・

と、言う感じで今回満を持して迎えたT-2の評価は個人的にはあまり芳しくない方向で終わってしまった。T-2・H-2は、値段も日本円に換算して8-9万円と、T-1が発売された当初と同じくダットサイトとしては高額な部類だ。

その後T-1とH-1系は散弾銃用のS-1を除き販売を終了(2024年現在)。

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※2

リベンジ T-2 & H-2!


と、いう残念な結果に終わったレビューをして1年半が経過しようとしてた頃、旅行で渡米した友人が、銃砲店で見かけたT-2とH-2の欠点が改良されていることに気がついた。店員に聞いたところ、ちょと前から改良されていたとのこと。ということで、気になったのでH-2(4MOA版)を購入してもらい、改良版を再度レビューしたいと思う。


まず、レンズキャップを取ってわかったのは、レンズの傾斜で見えていたレンズの縁の部分が見えにくくなるようにインサートが噛まされていた。


言われないとわからない程度のほんのちょとした違いだが、これにより多少だが、対物レンズ側から見た反射も減っている

さて、問題は覗いて見ての改良がされているか否かだ。

50メートル照準 | Micro T-1との比較

 

 



前回と同じく距離50m地点でACU迷彩の上衣を照準してみた。

前回と同じく、太陽を背にした状態での照準だが、この時点でのレンズの縁の反射はかなり抑えられている。おかげで、T-1よりも透明度の高いレンズがより際立っている。現時点で、これより透明度の高いダットサイトは見たことがない

T-1でよく発生するレンズ左斜上の内部反射も改良版H-2ではほぼ起きておらず、ネガをよく分析して潰しているのが伺える。

100メートル照準 | Micro T-1との比較

 




さて、今度は逆光下で照準してみた。同じような写真を撮っても面白くないので、ターゲットのACU迷彩上衣までの距離は100mに引き伸ばす。

改良前のT-2 & H-2よりはだいぶマシだが、やはり逆光下となるとT-1と比べてレンズ縁の反射は目立つ

さて、H-2のダットの大きさは2MOAと4MOAの両方を選べるが、今回は4MOA版を購入してみた。T-2 & H-2になり、ダットの鮮明度もより高まっているので、4MOAであっても100mヘッドショットも可能だ。ダットも2MOAより大きめなので視認性が良く、~150m程度のCQBでの使用を想定するならば、4MOA版も良い。


今回改良が加えられたH-2を見ての総合的な所見だが、

逆光下と言ったコンディションでは、改良前と比べて抑えられているものの、レンズ縁の反射がやはり出てくるので、目障りに感じることはある。

とは言え、それ以外だとレンズの縁はほとんど視界に入らないように改良されており、反射することもかなり少なくなっている。これにより、商品力は1段階向上したと言える。


また、何回か5.56mm弾や12番ゲージスラッグ弾での射撃をしたが、この改良版の点灯不良を含めた不具合は無い。Aimpoint Micro T-2はアメリカ合衆国陸軍第75レンジャー連隊が、不具合が多く報告されたホロサイトからのリプレイスとして採用が決定した(2018年)。その他各国の法執行機関・軍事組織等で採用され始めている。この点を見ても、改良版となり信頼度及び実用性の高い製品へと高まったことが伺える。

2024年、様々なメーカーが多機能や性能を追い求めながら、求めやすい価格のダットサイトを多く出している昨今だが、このAimpoint T-2の評価の高さは今だ大きく揺らいではいない。

総合的に見て高い品質と性能のダットサイトであることは認めるが、競合他社と比べると900ドル台の価格設定(2024年現在)は少し高く感じる。