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ジャンル:ダットサイト

同社HS510Cの密閉版とも言えるダットサイト

検証人数:2人

実弾射撃評価:無し

執筆時期:2022年11月

※本製品を提供してくださったK氏に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) HOLOSUN (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
サイズ(全長×全幅×高さ) 9×4.2×7cm
重量 約230グラム
対物レンズサイズ 2.31×3.2cm
倍率 1倍
レティクルパターン 赤(本製品) or ゴールド 65MOA+2MOAサークルドット
イルミネーター 赤色 12段階(内2段階は暗視装置用)
使用電池(電池寿命) CR2032 (50000時間)
防水性能 IP67
動作保証温度 -30℃~60℃
価格(購入価格) 423.52ドル(2022年、340ドルで購入)

オープンから箱型へ


EoTech ホロサイト
が世に浸透してからというもの、今まで円筒形と相場が決まっていたダットサイトの形状に箱型が加わった。

厳密にホログラフィックサイトと言える構造のものは、EoTechを除いてVORTEX UH-1くらいしかないこともあり、その他の箱型ダットサイトについてはホロサイトのパチもんだの、クローンだのと言われることも多々ある。

今回紹介するHOLOSUN – HS512Cについても、ホログラフィックサイトではなく、通常の密閉型ダットサイトである。また、以前レビューした同社オープンタイプのダットサイトである、HS510Cの密閉バージョンではないか?と思えるほど似通っている点が多い。この点にも触れながらレビューをしていこう。


デザインに関しては、EoTech ホロサイトシリーズよりも先輩ですか?と言いたくなるような少しオールドスクールな外観をしている。

全長は9cmで、オープンダットサイト版とも言える同社HS510C(8.3cm)と比べると長くなってはいるが、その他ライバル機種であるLeupold LCO(9.14cm)、EoTech EXPS3(9.65cm)、Vortex UH-1 Gen2(9.9cm)、SIG SAUER ROMEO 8T(9.09cm)の中では一番短い。

高さは7cmで、6cm前半であるLCOとROMEO 8Tを除き、他も同じく7cm台である。

重量は230グラム…と公式はあるが、こちらで計測してみると246グラムであった。同社HS510Cの時も公式と実測で大きな違いが出たがいったいどういうことだろうか。

その他機種はLCO(259グラム)を除き、全て300グラムオーバーなので、軽い部類ではある。


本体上部には小さなソーラーパネル2つが設置されており、基本的にここから電力が供給され、ソーラー発電では点灯できない場合に電池から電力を吸い取るシステムとなっている。故に、適切な光さえあれば電池が無くともダットの点灯は可能であり、グレタ・トゥーンベリの逆鱗に触れることもない。

レティクルの上下左右を調整するダイヤル類は、接眼レンズ後部にエレベーションダイヤル、本体右側面後部にウィンデージダイヤルがむき出しタイプで設置されている。
このダイヤルに関しては小さなマイナスドライバー(付属工具あり)が必要で、基本的にコインや薬莢等でいじるのはちょっと難しい大きさだ。
それぞれ1クリックの移動量は0.5MOA、最大移動量は50MOAとなっている。

ダイヤルのクリック感は比較的わかりやすい。


バッテリーコンパートメントについては、ホロサンが大好きなトレイ式だが、今までのようにネジで留められているタイプとは違う。レバー前方部にある小さな爪を押しこみながら、レバーを持ち上げ、バッテリーコンパートメントを引き出すようにして取り出す。個体差によってこのレバー類が硬いものもあり、初見だと少しわかりにくい。
まぁ工具が必要で、屋外であまり分解したくないあの小さなネジ式のバッテリートレイよりはマシかもしれないが、もう少し簡単な構造でもよかったのではと思う。
電池はCR2032リチウム電池を使用。12段階中6段階目の明るさで、サークルレティクルが2万時間、ドットレティクルで5万時間の点灯が可能とのこと。
また、電圧が2.2V以下になった場合、レティクルがゆっくりと点滅して電池交換を促してくれる。
他にも、消し忘れ防止のスリープタイマーがあり、デフォルトだと10分間何も振動や操作が無い状態が続くと自動的に電源が切れる。本体を少しでも動かすと再び電源が入る。
このスリープタイマーは、設定変更が可能で、自動電源オフまで1時間、12時間、無効にも設定できる。


ドットサイト点灯に関する操作は、左側面にある+と-ボタンの二つで行う。点灯はどちらかのボタン、消灯は両方のボタンを押す。そして両方のボタンを3秒間長押しすることで、レティクルの変更が可能となる。ホロサンお馴染みの操作方法だ。
また、510C同様に光量を周囲の環境に合わせて自動調整するオートモードと、手動で調整できるマニュアルモードがある。
それぞれのモード切替には+ボタンを3秒間長押しすることで切り替えが可能。

ここで紹介している操作方法に関しては、ロットによって違うようだ。あくまで付属の説明書を見て操作してほしい。

オートモードの判断となる光センサーは上部ソーラーパネル内に内蔵されている。そのため、暗い所から明るい所を狙ったり、明るい所から暗い所を狙うと適切な光量にはならない。また、この手の自動光量調整システム同様に、デフォだとちょっと明るいなと思える光量に調整される。
だが、ここからが少し違う。HS512Cは、オートモードの光量に不満がある場合、微細な調整量ではあるものの、+や-ボタンの操作により、3段階の光量調整ができる。さらに、この微調整に関しては電源を切った後でも記憶される。メーカー問わず、光量調整に不満が出てくる自動調光モードだが、HS512Cに関してはようやくそこから脱却しつつあるシステムを搭載してくれた印象だ。
マニュアルモードにすれば、12段階の光量調整が自由に可能となる。最後に設定した明るさは、電源を切っても記憶される。


マウントネジは、Aimpoint T1をはじめとする、各社ダットサイトの多くが採用しているT10トルクスネジ。

基本的にマウントの脱着は不可能であり、ピカティニー及びウィーバー両タイプの20mmレールに対応している。マウントの質は可もなく不可もなくといったレベル。


レティクルはHS510Cと同じく、3パターンの変更が可能。まずはデフォルトの65MOAのサークルレティクルと2MOAのドットの組み合わせ。

ホロサイトとよく似たレティクルパターンであり、素早い照準が行いやすい。レティクル表示はHS510Cと比べて若干滲んでぼやけて見えるが、問題点と思えるほどではない。

カメラのフォーカスも若干外してしまったので余計滲んで見えているのは申し訳ない。


2MOAのドットのみのシンプルなパターンと、逆に65MOAのサークルレティクルのみを表示することも可能だ。選べる自由は素晴らしい。

対物レンズ側からレティクルが点灯している際の視認性は、HS510Cより少し抑えられているものの、相手に気づかせたく無い場合は2MOAドットのみのほうがいいだろう。


レンズ上面や下面はほんの少しだけ拡大傾向に映るものの、この価格帯とは思えない優秀な光学性能を持っていると言える。

大きなレンズだが、全体にわたって大きな隙がなく、視認性も高い。

対物レンズ径は2.31×3.2cmとこれもHS510Cと同じサイズ。

50メートル照準


180cmの高さに吊るした青のツナギを、50メートルの距離に設置して照準。

65MOAのサークルレティクルはCQB戦に置いて実に視認しやすく、素早い照準が可能だ。50メートルは一般的な成人男性よりも二周りほど大きいが、25メートルだとピッタリと狙える。故に、サバイバルゲームでの使用にも適しているだろう。

EoTechホロサイトや、Vortex UH-1シリーズと同じレベルの広大なレンズ視野が広がってるため、このレティクルとの相性は良い。

レティクルの明るさは12段階の調整が可能。下から2段階は暗視装置用となっている。ここでは10段階目の明るさに設定している。

HS510Cと同じく、65MOAのサークルレティクルと2MOAのドットの明るさは同一ではなく、2MOAドットの方が明るく灯る。サークルレティクルを周囲の明るさに合わせた場合、状況によっては中央の2MOAドットが明るすぎることもあるため、精密射撃時は光量を下げるか、2MOAドットのみにすべきだ。これは暗い環境化だとより一層感じる。

レンズの透明度に関してはHS510Cよりも高い。Vortex – AMG UH-1 GEN2とあまり変わらないレベルだ。


2MOAドットのみ点灯。

65MOAのサークルレティクルが鬱陶しく感じる人や、精密射撃を行いたい場合はこれが良いだろう。


65MOAのサークルレティクルのみ点灯。

エアーソフトガンを用いたサバイバルゲームで、散弾銃や機関銃等の精密射撃を必要としない状況下で使用すると、大まかに狙いやすくて面白いかもしれない。現に、実銃散弾銃でこのような使い方をしているシューターもいるようだ。

精密には狙いにくく、弾丸があらぬ方向に飛んでいくことも起きやすいので、使用の際は細心の注意と練習を積んだほうがいいだろう。

100メートル照準


今度は距離を100メートルに伸ばしてみた。

中央ドットは2MOAのサイズなので、100メートルの距離が開いてもヘッドショットは余裕を持って行える。

先程の50メートル照準よりは雲が薄くなったものの、この日は曇りの日であった。この状態での光量レベルは12段階中11。

最高光度は日中でも問題なく使えるが、激しい逆光時や晴れた雪原、砂漠等では少し光量不足を感じることがあるだろう。できるならもう1~2段階明るさが欲しい。

暗視装置対応の最低光量は、暗闇であっても良いレベルに暗く灯ってくれる。さらにもう一段階暗くなれば完璧だ。


100メートルで計測したパララックス(視差)については、上下左右共に10cm以下5cm以上となった。HS510Cとほぼ同じ数値であり、レンズの大きさの割に悪くない。

ガンハンドリング等


上の画像は89式小銃なので合っていないが、マウント下部からレンズ中央までの高さはほぼAbsolute Co-Witnessサイズとなっており、標準的なAR-15のアイアンサイトと同じ高さだ。(約3.6cm)

→少し高めのLower 1/3 Co-Witness(1.57インチ = 約3.98cm)が好きな人はVortex UH-1シリーズが良いだろう。


重くて少し背の高いVortex UH-1等と比べると、やはり遠心力による負担の違いは実感できる。コンパクトなAimpoint T1系ダットサイトと比べてはいけないが、射手への負担は少ない。

コンパクトなT1系ダットサイトと比べると重いと思うかもしれないが、外観の割には軽く感じる。

Conclusion | 総評


HS512Cには、ゴールドレティクル(実際はイエローと言うべき)仕様になったHE512C-GDがあり、他にもハウジング部にチタニウムを使用した上位モデルであるHE512T-RD、そのグリーンレティクル仕様のHE-512TGR、がラインナップとして存在する。通常仕様とチタニウム仕様とのその他違いは、防水性能がIP67からIPX8へと変更された程度であり、軽量なチタニウムを使用している割に重量は同じ。

上位チタニウム仕様との価格差は164.7~200ドル。

500ドル以下で購入できる大きなレンズを搭載したダットサイトを見渡してみると、これを越えるコストパフォーマンスの高い製品はあまり無いだろう。各種レビューを見ても大きなネガは無い。ホログラフィックサイトではないもののお値打ち価格だ。世界的な物価高や円安で苦しむ我が国でも5万円台で購入できるのだから。

広いレンズ視野を持つダットサイトが欲しいが、オープンタイプのダットサイトでは耐久性に不安がある、、、という人にもおすすめだ。

野暮ったいデザインが気に食わず、もう少しサイズは小さくても良いという場合は同社のAEMSもいいだろう。