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ジャンル:ダットサイト、リフレックスサイト

ホロサンのオープンタイプダットサイト

執筆時期:2022年4月

※本製品を提供してくださったD・I氏に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) HOLOSUN (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 8.3cm
重量 257グラム(公式では140グラム。どゆこと?)
対物レンズサイズ 2.31×3.2cm
倍率 1倍
レティクルパターン 赤(本製品) or 緑 65MOA+2MOAサークルドット
イルミネーター 赤色 12段階(内2段階は暗視装置用)
使用電池(電池寿命) CR2032 (50000時間)
防水性能 IP67
動作保証温度 -30℃~60℃
価格(購入価格) 364.69ドル(2021年、39000円で購入)

買って損のないオープンダットサイト


拳銃やスコープの上にちょこんと載せる小さなものではなく、ロングガンに載せても違和感のないフルサイズのオープンダットサイトを買おうとなると何が候補に上がるだろうか?

C-MORE – RailwayTrijicon – Reflex 1×42Meprolight – M21あたりはどうだろうか?え、もっと新しく、レンズの透明度が高く多機能な奴がいいって?

となると他に信頼性の面もそこそこ良いってなると、 Sightmark – Ultra Shot M-Specか、今回紹介するHOLOSUN – HS510Cがいいんじゃないかな。


全長は8.3cm程と大きなレンズを載せているわりにはコンパクトなサイズである。

重量に関しては、公式では140グラム(4.94oz)と表記されているが、間違いだろう。ていうか、国内外の各ショップによって、230~264グラムと表記がバラバラでよくわからない。こちらで計量した限りだと257グラムだったが、ロット等によって違うのだろうか?

全ての操作は左側面にある+と-が印字されているシリコン製スイッチで操作する。


ギラリと赤いコーティングが目立つ対物レンズは、2.31×3.2cmと大きめのものが組み込まれている。

本体はアルミニウム、レンズフードはチタニウム製で作られており、軽量化と耐久性の両立を図っている。ホロサンは基本的に加工が難しく、製造コストが上がりがちなチタニウムを積極的に製品に使用している。


エレベーション&ウィンデージ(ダットの上下左右調整)ネジは、1クリック0.5MOAの調整が可能だが、最大調整幅に関しては公式サイトでは±50MOA、説明書では±40MOAと表記が違う。実際に回してみると、46MOAほどだった。クリック感は最後の辺り以外は、不明瞭感も無く調整しやすい部類。

レンズフード手前にはソーラーパネルが埋め込まれており、省エネ化に貢献している。6段階目の明るさで、電池との併用でドットレティクルで5万時間、サークルレティクルで2万時間以上の点灯が可能とのこと。また、明るさは絞られるが、電池が無くとも、太陽光のみで点灯が可能。

また、モーションセンサーが内蔵されており、10分間何も振動が無い場合は自動的に電源がオフとなる。少しでも振動があると即復帰する。こういう機能も省エネ化に貢献している。

マウントは20mmレール仕様のQDタイプで、工具無しで素早い脱着が可能となっている。レバー先端にあるリリースボタンを押しながら右に開くことで取外しができる。マウント幅の微調整は反対側の調整ネジの締め込み加減で調整が可能。


マウント高はAbsolute Co-witness(一般的なAR-15系ライフル用のフロントサイトやリアサイトが、レンズの中央に位置する高さ)となっており、別売りの510C SPACERを組み込めば、若干高めのLower 1/3 co-witnessの高さにも調整可能だ。


自動小銃や散弾銃等のロングガンにもってこいの光学照準器だ。視界が良好で軽いので機動性に富む。


ホロサンの大好物、サイドトレイ方式のバッテリーコンパートメント。頻繁に電池交換をすることは無いが、トレイの脱着にはT10トルクスレンチが必要。電池はCR2032を使用。

接点等の清掃もやりにくいので、私はこの方式はあまり好まない。だが余計な出っ張りを無くしやすい意味では良い。ご親切に予備まで付いてくる。


レンズに関しては、余計な歪みや変に拡大されて見えることもなく、優れた光学性能を持っていると言えるだろう。歪みが出やすい外縁周りも目立ったネガは無い。


レティクルは3パターンの変更が可能。まずはデフォルトの65MOAのサークルレティクルと2MOAのドットの組み合わせ。

ホロサイトとよく似たレティクルパターンであり、素早い照準が行いやすい。レティクル表示は非常に鮮明で、乱視等があっても比較的大きな障害にはなりにくい。

レティクルの明るさは12段階の調整が可能。下から2段階は暗視装置用となっている。最低光度は暗闇で辛うじて肉眼で視認できるかできないかといったレベル。最高光度に関しては直射日光下で使用するにも十分な明るさだが、快晴の雪原等で使用する場合は若干明るさが足りないと感じるだろう。

暗視装置用の最低光量に関しては、暗視装置と併用して使用するにはやはり少し明るすぎるようだ。

上記はマニュアルモードと呼ばれているが、周囲の明るさに合わせてレティクルの明るさを変えてくれる「オートモード」にも変更可能だ。

オートモードはソーラーパネルに入ってくる光量によってレティクル光量が変わる。故に暗いとこから明るいとこを狙ったり、明るいとこから暗いとこを狙うと光量が暗すぎたり明るすぎたりする。

この手の自動光量切替機能は、特に暗闇では明るすぎる傾向にあるが、HS510Cに関しては概ね良好だ。欲を言うならもう一段階ほど下げてほしいが。


変更可能なレティクルパターンの話に戻ろう。

65MOAのサークルレティクルを排し、2MOAのドットのみのシンプルなパターン。ここまでは、SIG SAUER – ROMEO 4M等他社製品にも見られるが、ホロサンの面白いところは65MOAのサークルレティクルのみを表示することも可能な点だ。

こんなレティクル何に使うのだろうか?っていうことに関しては後述する。


サークルレティクルを表示している時は、周囲の状況に合わせた常識的な明るさであっても、対物側からよく見える。暗所等での対人戦闘が想定される場合は、2MOAドットのみにした方が視認されにくいだろう。



Aimpoint – Micro T-1との比較も交えて屋外に出してみよう。180cmの高さに吊るした青のツナギを、50メートルの距離に設置して照準。

レンズの透明度はここ最近のダットサイトと比べると驚くほど透明度が高いわけではなく、T-1とほとんど同じくらい。

市場に溢れるT-1系コンパクトダットサイトばかり見ていると、やはりオープンで大きなレンズのHS510Cの視界の広さと開放感は新鮮な気持ちになる。視認性の良いレティクル、余計な出っ張りのないボディ形状もあり、ストレスが少ない射撃ができる。

逆光状態での照準に関しても、照準不能となるような反射等は少なく、見やすい部類だ。順光時に若干レンズフード下部の反射がレンズに映るが、問題視するほどではない。


さて、65MOAのサークルレティクルのみのレティクルパターンだが、50mの距離だとこのように成人男性の幅よりも少し大きく収まる。30~25m程の距離だとより良い。

エアーソフトガンを用いたサバイバルゲームで、散弾銃や機関銃等の精密射撃を必要としない状況下で使用すると、大まかに狙いやすくて面白いかもしれない。現に、実銃散弾銃でこのような使い方をしているシューターもいるようだ。

精密には狙いにくく、弾丸があらぬ方向に飛んでいくことも起きやすいので、使用の際は細心の注意と練習を積んだほうがいいだろう。



距離を100メートルに伸ばしてみよう。

近場であろうと遠方であろうと、周囲の様子が広く手に取れるのはやはり大きなアドバンテージだ。

パララックス(視差)に関しては、100メートルの距離でレティクルでギリギリ照準できる上下左右極端な位置から覗いて10cm程度。レンズの大きさを考えればもっと大きなズレが出ると思っていたのもあり、意外と優秀だ。

65MOAのサークルレティクルと2MOAのドットの明るさは同一ではなく、2MOAドットの方が明るく灯る。サークルレティクルを周囲の明るさに合わせた場合、状況によっては中央の2MOAドットが明るすぎることもあるため、精密射撃時は光量を下げるか、2MOAドットのみにすべきだ。

Conclusion | 総評


全体的な耐久性に関しては、ほぼ同価格帯のSightmark – Ultra Shot M-Specの方が良いようだが、HS510Cも各方面での評判を見る限りではオープンダットサイトとしては高い耐久性や信頼性が担保されているようだ。

耐久性に関してはどのメーカーも密閉型ダットサイトには負けるし、発光部位に水やゴミ等が付着すると使い物にならなくなるのは同じだ。だが、ストレスの少ない広大な視野は密閉型には無い魅力であり、HS510Cのような大きめのレンズだとよりそれを実感できる。

国内ではだいたい4万円前後で入手可能であり、オープンダットサイトが好き、広い視野を得れるダットサイトが欲しいとなれば購入して後悔することはほとんど無いだろう。レティクルの変更機能も含めてシューターのことを考えたよくできた機種だ。