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ジャンル:ライフルスコープ

プライマリーアームズの高い光学性能と明るいイルミネーションを低価格で実装できたLPVO

執筆時期:2024年6月

検証人数:3人

実弾射撃評価:有り(Type 89 / 5.56x45mm弾、空砲弾)

※本製品の購入等に協力してくださいました、デザートカウボーイ様に感謝いたします。本製品はデザートカウボーイ様にて購入可能です。お財布に嬉しい特価販売だけでなく、海外製品で不安になる保証や修理の対応もしてくださります!

デザートカウボーイ様公式サイト

https://desertcw6.com/

SLx 1-6×24 Gen IV ACSS Nova販売ページ

https://desertcw6.com/products/detail.php?product_id=6180

https://desertcw6.com/products/detail.php?product_id=5109


SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) Primary Arms(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 264mm
重量 507グラム
チューブ径 30mm
対物レンズ径・接眼レンズ径 24mm
倍率 1~6倍
視野 (FOV) 120~20フィート / 100ヤード:36.5~6.1m / 100m
アイリリーフ 101mm
射出瞳径 10.6mm~3.8mm
レティクル(FFP:第2焦点面) Nova(本製品)、AURORA
イルミネーター 赤色LED:11段階
使用電池 CR2032リチウム電池
価格 339.99ドル

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 この価格帯では素晴らしい光学性能
  非常に明るく、対物側から見えにくいイルミネーション
  シンプルながら多機能なレティクル
改善を要する点 イルミネーションの最低輝度が明るすぎる
  スローレバーの形状
  6倍時のアイボックスとアイリリーフ範囲が狭い

化けた4世代目と新星という名のレティクル


コロナ禍以降、戦争だの気候変動だの円安だので物価上昇が止まらない。電気代は隣人からの盗電を疑いたくなるほど跳ね上がり、国によってHAL 9000の搭載を義務付けられた自動車はもはや300~500万円台が普通となった。キャベツは一時一玉500円以上の値札が付けられた地域もあり、連日の食料品値上がりインタビューにより、アキダイの社長は日本で最も有名なローカルスーパーの社長となってしまった。そして欧米からの舶来品は円安の影響が大きく加わり…何だか同じようなことを2年前、SIG Romeo MSRのレビュー記事冒頭でぼやいた覚えがあるが、残念ながら状況はその時よりも悪化している。だが、作り手側も様々な要因でコスト上昇と戦っている状況を鑑みれば、我々としてもいつまでも値下げしろと不平不満を垂れている場合ではないのかもしれない。上澄みは別として、皆YoutubeやTikTokの節約動画を見ながら毎日を創意工夫で戦い抜いているのだ。

そうは言っても限られた防衛予算内で安くてナイスなモノをチョイスするのは悪いことではない。さて、コスパが良くて一定の信頼性があり、国内で入手できる1-6倍率のLPVO(Low Power Variable Optics:主に低倍率から4~10倍前後への倍率変更が可能なスコープを指す)をなにか紹介してくれと言われた場合現状どうすればよいだろうか?価格は一昔前だと5万円以内としていたが、昨今の物価情勢を鑑みて8万円以下とさせていただく。


つい最近レビューした中だとBurris – RT-6は悪くない選択肢だ。ただ国内で入手しにくい。


日本製に目を向けると、販売終了となった名機「OTS CQBスコープ」の後継者とも言える「ライト光機 – 1-6×24」も相変わらず質の高いレンズと明るめのイルミネーションでオススメだ。


もっと明るい、まるでVortex Viper PSTRazor HDのようなイルミネーションが欲しい?従来ならこの価格帯での返答は、ねぇよそんなもん出直してこいとしか言えなかったが、ここに一つある。それがPrimary Arms – SLx 1-6×24 Gen IV ACSS Novaだ。本製品はプライマリーアームズの製品の中でもエントリークラスの1-6倍率LPVOに分類され、希望小売価格は339.99ドル、日本国内でも7万円前後ほどで入手できる。

→プライマリーアームズでは大まかに分類してSLx→GLx→Plxの順に製品をクラス分けしている。

この価格帯はVortex – Strike Eagle 1-6×24、Buriis – RT-6等の並み居るライバルメーカー達がこぞって出しているエントリークラスの1-6倍率LPVO達とのガチンコ勝負となる。
さて、今回紹介するPrimary Arms 1-6×24は4世代目である。4世代も排出しているにも関わらず、今まで当研究会でほぼ取り上げなかったのは、有り体に言ってしまえば重量以外は没個性的であり、かと言って価格もびっくりするほど安いわけでもなくわざわざレビューしようという気にならなかったのだ。現に今まで、2世代目と3世代目に触れたこともあったが、Strike Eagleやマウントまで付いているSig Sauer Tango MSR 1-6×24でも買ったほうがいいという程度の感想でしかない物だった。そんなPrimary Armsが、Slx 1-6×24の4世代目を出すに至り、開発会議室に詰まってた人間を全員クビにしたのではないかと思えるほど革命的に刷新された逸品を捻り出してきた。


グレーとオレンジでクールにキメているパッケージに、付属品は本体とレティクルの説明書がそれぞれ1冊、調整用六角レンチ2種、レンズクロスにレンズキャップ。


カラー印刷されている長細い英語説明書。

レティクル説明書は問題ないが、本体説明書は必要最小限しか書かれておらず、ライフルスコープの初心者が購入した場合はもう少し説明が欲しいと思うかもしれない。


付属のレンズキャップはフリップアップ式だ。展開した状態での固定機能等はなく、安価な物といった印象である。


スコープ本体を見ていこう。

全長は26.4cmであり、平均的なサイズだ。

スコープ全体としての質感もこの価格帯としては平均的なものであり、Burris – RT-6Strike Eagleと変わらない。

ただ、手に触れる各種ダイヤル類の滑り止め加工が大きく大胆なデザインとなっているため、ゴツゴツと強靭な印象を与える外観デザインとなっている。


重量は507グラムで、低~中価格帯の1-6倍率LPVOの中では軽い部類だ。Burris RT-6はこれより少し軽い493グラムだが、Vortex Strike Eagle 1-6×24(524グラム)やSig Tango MSR 1-6×24(524グラム)、OTSやライト光機 1-6×24(520グラム)と比較すると大きく開きがあるわけではないものの、軽量に作られている。ただ、旧世代のGen3の479グラムという軽々しさと比較すると第4世代は少し太ったことは確かだ。

ちなみに、Vortex Viper PST Gen2 1-6×24は643グラムのヘビー級。


パワーダイヤルには突起部の高さが18mmほどとミニチュアの墓標のような小さなスローレバーが付いている。パワーダイヤルのテンションは少し硬め。

パワーダイヤルの3倍率表記部に付いているこのレバーは、6倍率時にちょうど左側になる。つまり倍率拡大に対してその他LPVOに多い時計回りではなく、これは反時計回りにダイヤルを動かすことになる。

倍率拡大に対して時計回りか反時計回りのどちらがいいかは好みが分かれるところだ。左手でパワーダイヤルを操作することが多い右利きの場合、倍率を素早く拡大するには時計回りの方がいいと言う人もいる反面、素早い対応が求められる近接戦時に、6倍率から1倍率、つまり倍率縮小時に時計回りとなってくれた方が良いという意見もある。ここは我が研究員でも本当に好みが分かれた。


さてこのスローレバーだが、少し鋭利な形状となっており、固めのパワーダイヤルと相まって手にあまり優しくない。

また、その尖り気味な形状から、小さなサイズの割には装備品等に少し引っかかりやすくもある。

小さなサイズで尖った形状で、手や指にとって気持ちの良い感覚ではないため、正直あまりこのダイヤル操作をしたいと思えない。

写真は反時計回りのパワーダイヤルに初めて触れることもあり、手こずっているクロコ。

スローレバーは取り外すことはできるが、ダイヤル内の他の場所に引っ越しさせることはできない。


同じカクカクとしたスローレバーなら、写真のBurris – RT-6のほうが操作しやすい。あちらは自分の好みの場所に移設できる自由もあるしね。

ちなみに、プライマリーアームズ純正の別売りオプション品でSlide Mount Magnification Flip Leverなるものもある。こちらは競技等での使用を想定した大型のものだが、長さを半分に分割できるという特徴もある。


ゴーヤのようにゴツゴツしたキャップ付きで、中身もゴツゴツしたウィンデージ・エレベーションダイヤル(レティクル上下左右調整)は、今流行りのロープロファイルな形状。

少し遊びはあるものの、上部エレベーションダイヤルはカチカチとクリック感がわかりやすい。ウィンデージダイヤルはエレベーションダイヤルと比較すると少しクリック感がぼやけていたが、これは個体差かもしれない。この価格帯のスコープのタレットとしては平均的なものだ。

1クリックの移動量は0.1ミル(100mで1cmの移動量)で、最大移動量は120MOA。


ダイヤルにはそれぞれ小さな穴が3つ開いており、ここに付属の六角レンチ(1.3mm)で中のネジを緩ませることで、ダイヤルを任意の位置に持ってくることでゼロストップが可能だ。

レティクルと弾着とを合わせるゼロイン後、回転させたダイヤルを、この手法でゼロ位置に持ってくることをゼロストップと言う。これにより、様々なシチュエーションでダイヤルを動かしても、瞬時にゼロイン位置にダイヤルを戻すことができる。


イルミネーションダイヤル兼電池入れ。電池はLPVOの主食CR2032リチウム電池。11段階の輝度調整が可能なイルミネーションダイヤルはコクン、コクンと大きめに動く。


対物レンズ(写真左)は黄色、黄緑色系のコーティングが、接眼レンズ(写真右)は薄緑や水色系のコーティングが施されている。

接眼レンズ部の視度調整ダイヤルは、若干段付きのようなゴゴゴとした動きをする。

アイリリーフ&アイボックス


アイリリーフ(目の焦点が合う前後幅)は1倍時で6.9~11.6cm、6倍時で7.2~8.6cmとなっており、6倍時ではアイリリーフ範囲は少し狭めなので、1倍時で頬付けを遠くしていると6倍時にケラれやすくなる。

アイボックス(目の焦点が合う上下左右幅)に関しては、1倍率や3倍率時では平均的か少し狭めだが、最大倍率である6倍率時は明確に狭い。故に慌ててたり、ラフな姿勢で長距離を見てやろうという時にはケラれることが他のLPVOと比較して多かった。

1倍率から6倍率までアイボックスに余裕のあるBurris – RT-6とはここで差がついている。RT-6と比べると6倍率時でアイボックスが狭く感じるボルテックス Strike Eagle 1-6×24と比較してもSLxのほうが狭い。

レティクル | ACSS Nova


さて、この4代目SLx 1-6×24の支持を押し上げている大きな要因の一つが新たに追加された新レティクル「ACSS Nova」である。

まず見てわかるのが非常にシンプルな十字レティクルをベースとしたデザインであるということだ。十字線は中心部が非常に細く、外側が少しだけ太くなっている。これは接近戦や即座に照準を行いたい時に自然とレティクル中央にターゲットを持っていきやすくなるため非常に良く、精密射撃をする際も邪魔にならない

次はこのシンプルなレティクルに秘められた多機能性について説明しよう。まずは横線からだ。中心部左右の細い線にはところどころ小さな線で区切られている。これは移動しているターゲットへの射撃で使用するものだ。中心点から最初の外側の線(ていうかほぼ点)は、時速3マイル(4.8キロ)のてくてく歩行している速度で動いているターゲットへ、2番目は時速6マイル(9.7キロ)の早朝ジョギング野郎に、3番目は時速9マイル(14.5キロ)の会社に遅刻しそうで猛ダッシュをキメている奴への射撃に適している。この機能は中心点を100~300ヤード(91.4~274.3m)でゼロインした際に最も有効とされている。

さて横線より少しだけ情報量の多い下線だが、下に連れて幅が短くなっていく横線は1ミル毎に区切られており、最下層まで5ミルある。1ミル毎の間には0.5ミルの線(ていうか点)が表記されている。ちなみにこの線の幅は1MOAである。

簡素とは言えミル機能があることは良い。これにより測距やBDC(Bullet Drop Compensator:距離による弾丸の落下予測)等の計算ができる。

1ミル毎に区切られている線が下に行くに連れて幅が狭くなっているのにも当然意味がある。この横幅に合致した人間の肩幅がその人までの距離となる。中心点から一個下の横線と肩幅が合致すればその人までの距離は300ヤード(274.3m)、次の段が400ヤード(365.7m)と最大600ヤード(548.6m)まで計測が可能だ。

この横線の幅は肩幅が18インチ(45.7cm)という設定でデザインされている。

また、中心点を5.56x45mm弾で100mで、7.62x51mm弾で50mでゼロインをすると、そのままその対人ターゲットまでの距離に応じたBDCとして使用できる。

今回のレビューでは200メートル以下での固定目標射撃しか行っていないため、BDC機能や移動目標へのレティクル機能は試していないが、肩幅を利用した測距機能は概ね機能していた。

私はこのようなシンプルでCQB(Close Quarters Battle:接近戦)に強いながらも、ある程度の機能性も兼ねたレティクルは大好きだ。今までレビューした中だとVortex – Razor HDViper PSTのVMR-2やLeupold –  VXRのFiredot SPRがそれに該当する。


しかしACSS Novaの最大のセールスポイントはイルミネーションにある。

NOVAのイルミネーションは、Vortex – Razor HD Gen2-E、Viper PSTやLeupol – VXR Patrolのように中心点が光るだけのシンプルなものだ。

その明るさに関しては、今までこの価格帯になかった非常に明るいもので、サウロンの目の如くギラつかせることができるRazor HD Gen2-EやViper PST Gen2のそれとまったく同じである。詳しくは野外に持ち出して検証を行う後編をご覧いただこう。

ちなみにNovaは「新星」という意味。


さて、後編ではこのレティクルやイルミネーションのポテンシャルを存分に発揮してもらうべく、実弾射撃や様々な距離や状況に持ち出しての検証を行う。後編はこちら ↓ ↓

【レビュー】 Primary Arms – SLx 1-6×24 Gen IV ACSS Nova (後編)