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ジャンル:スコープ

非常に高いパフォーマンスを持ったスコープ「VORTEX Razor HD Gen2 1-6x24」を軽量化した改良版。旧モデルとの比較を交えながら紹介していこう。

執筆時期:2019年7月

→本製品を提供してくださったN氏に感謝いたします。

→Razor HD Gen2 1-6x24 VMR-2 MOAを提供してくださったK氏に感謝いたします。

※旧バージョンであるGen2のレビューはコチラ

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) VORTEX OPTICS (アメリカ合衆国・日本)
全長 25.6cm
重量 609グラム
対物レンズ径 24mm
倍率 1倍~6倍
視野 (FOV) 115.2~20.5フィート / 100ヤード:35.1~6.2m / 91.4m
レティクル(何れもSFP:第二焦点面) VMR-2 MOA、VMR-2 MRAD、JM-1 BDC(本製品)
アイリリーフ  4インチ(10.16cm)
パララックス設定 100ヤード:91.4メートル
イルミネーター  赤色LED 1~11段階
使用電池 CR2032リチウム電池
価格(購入価格) 1999.99ドル(2018年、1779ドルで購入)

品質はそのままに、ダイエットに成功した名機


実売価格が1500ドルを切る価格ながら、ハイクオリティーなレンズ、ダットサイトのように使える非常に明るいイルミネーション、そしてメイドインジャパンという高い信頼性(若干死語に

なりつつあるが…)を持ったボルテックス社のフラッグシップモデルであるRazor HD Gen II 1-6×24。評価も高く、私の周りだけでも4人が所持している人気っぷりだ。ただ、このスコープの大きな泣き所として、フルサイズクラスのハンドガンほどの重量(714グラム)があるという欠点があった。おかげで、このスコープをライフルに装着して一日中暴れまわっていると、よほどのタフマンでもない限り燃費の悪化は避けられない。

メーカーとしてもこの辺を憂慮していたのか、軽量化モデルが発売された。それがこの「Razor HD Gen 2-E 1-6×24」だ。一時期は旧モデルのRazor HD Gen II 1-6×24と併売されていたが、現在ではこの機種一本で販売され、事実上の後継機となっている。1999.99ドルというメーカー希望小売価格も同じで、2019年7月現在、実売価格も1500ドル前後と旧モデルとほぼ同じ価格帯に落ち着いてきている。さて、軽量化されたのはいいが、他に改良された点、そして改悪点はあるのか?じっくりと見ていこう。

Gen2-EのEは「Enhanced:改良や強化された」の意。


さて、こちらが今回改良されたRazor HD Gen 2-E 1-6×24

パッとこれを見せられただけだと、旧モデルであるGen2と何が変わったのかわからない。


ということで旧モデルと比べてみよう。

まず塗装を見ると、Razor HD Gen2の特徴である赤みのある灰色が、Gen2-Eの場合は若干濃い目の味付けとなっている。

また、外見上の大きな違いとしてバッテリーコンパートメントの黒かったフタが、ボディと同色になっている。

バッテリーコンパートメント内部も、CR2032電池を保持するツメが強化され、内部でよりしっかりと保持されるように。


イルミネーションダイヤルそのものには特に大きな変更点はない。

ダイヤルには普段ロックがかかっており、引っ張り出すことでロックが解除される。11段階の光量切り替えが可能で、各段階毎にオフが設けられており利便性も良い。


ロープロファイルで質の良いエレベーション&ウインテージダイヤルも健在。クリック感もわかりやすくて良い。

ゼロリセット可能なこのダイヤルは、1回転で50MOA(約20ミル)の調整が可能。最大移動量も変わらず150MOAと、多い日も安心。


他社製品と比べて硬めで、サッと回すには力を入れないとだめだった倍率変更ダイヤルは、少し回しやすく改良されていた。軽量化と合わせてシューターの負担を減らす良いポイントだ。


レンズのコーティングは接眼レンズが薄い青・紫・緑系で、対物レンズが薄い緑と青系だ。

Gen2-Eも、レンズ含めて製造は引き続き日本製。


やはり体感できる一番の違いはその重量だ。旧モデルから100グラム以上ダイエットし、609グラムとなっている。

減量したとはいえ、1-6倍ショートスコープ界の中で600グラム台はまだまだ重量級だ。しかし、かつて旧モデルを利用していた身からすると、ライフル上部の100グラム減量は大きな違いを体感できる。少し振り回しただけでも、体や腕ににかかる負担の違いを感じ取れる。

※写真クリックで拡大可


さて、気になるのは軽量化によってあの高い光学性能が犠牲になっていないかどうかだ。

いつもどおり、100メートル先に設置した青いシャツに照準。まずは1倍から。(Gen2-Eの写真が若干カラーが濃いのは私の写真技量の問題である。申し訳ない。)

3種類選べるレティクルは、HD-Gen2-EがJM-1 BDC、Gen-2がVMR-2 MOA仕様。

正直なところ、私の目には何も変わってないように見える。両者とも非常に鮮明なレンズで、ボディ接眼部の縁が薄く、レティクルが空中に浮かんでいるようだ。周囲・中心部共に大きな歪みや違和感は非常に少ない。まるで、自分の視力が良くなったような錯覚を与えてくれる素晴らしいレンズだ。

肉眼と比べるとレンズに写った対象物は若干暖色寄りの色温度になる。

※写真クリックで拡大可


6倍時。視界に入ってくるボディの縁は厚くなるものの、目につくほどの光量落ちや、歪み、ゴーストやフレア等は一切ない。遠くの目標でもしっかりと狙うことができ、シンプルなレティクルと合わせて索敵にも役立つ。

レティクルは全種類ともSFP(Second Focal Plane:第二焦点面・・・倍率を変更してもレティクルのサイズが変わらないもの)であり、こちらも変更なし。


スコープ界屈指の明るさを誇るイルミネーションも健在。直射日光下の砂漠や雪原であってもバッチリ使うことが可能なレベルで、高い光学性能とのあわせ技で、CQB戦闘下におけるダットサイト的な使い方も余裕だ。

ただ、最低光量がちょっと明るすぎる点もバッチリ受け継いでいる。この点まで改良してくれたらパーフェクトに近かったのだが。


アイリリーフに関しては、旧モデルのGen2が1倍時「12~14cm」、6倍時「10~11cm」だったものが、Gen2-Eになって1倍時「9~12.4cm」、6倍時「8.4~10.3cm」と少々変更されたように感じる。全体的に長めだったアイリリーフ長を抑えアイリリーフ範囲を逆に長く取っているようだ

アイリリーフ長を抑えたことでトップレールの長さに左右されずにスコープをマウントしやすくなり、アイリリーフ範囲を広げることでより大雑把な姿勢や咄嗟の状況でも照準しやすくなる利点がある。3Gun等の競技やCQB戦闘により強くなったスコープと言えるだろう。

アイボックス(焦点の合う上下左右のエリア)に関しては旧モデルから特に変わっておらず、広めだ。

Conclusion | 総評


高性能なスコープの重量の多くの部分はレンズが占めるものだ。一口に軽量化したいと言ってレンズ部分を軽くすると、光学性能が落ちてしまうことが多い。

Gen2-E制作するに至り、高性能な光学性能維持と、2000ドル以下の小売価格という前提の元で、軽量化を行うのは簡単なことではなかったはずだ。そんな中、まだ重い部類とは言え100グラム近くも減量化に成功したのはスゴイことだと思う。

また、それだけでなくパワーダイヤルの回しやすさ、アイリリーフ範囲の拡張等、旧モデルの細かな欠点も見事に汲み取って改良している。

1000ドル以上のショートスコープを購入したいと思っている人に留まらず、2000ドル以上の予算まで許容できるシューターにとっても、このスコープはより一層ベストバイな製品へと昇華したと言っていい。

素早く、シンプルなものが求められる至近距離から、やろうと思えば600メートル前後までの射撃を器用にこなすことができ、高い信頼性と品質を備えた素晴らしいスコープだ。