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ジャンル:ライフルスコープ・プリズムスコープ

かつてボルテックス社を一躍有名にしたタクティカル・ショートスコープの2世代目

実弾射撃評価:有り(AR-15系)

検証人数:1人

執筆時期:2019年1月

※1:2024年4月、短時間ではあるが本製品を使用して実弾射撃を行ったため、レビューの追記・修正を行いました。

※本製品を提供してくださったA・D氏に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) Vortex Optics(アメリカ合衆国・フィリピン共和国)
全長 27.5cm
重量 643グラム
対物レンズ径 24mm
倍率 1~6倍
視野 (FOV) 112.5~18.8フィート / 100ヤード:34.29~5.7m / 100m
アイリリーフ 9.6cm
レティクル(いずれもSFP:第2焦点面) VMR-2 MOA、VMR-2 MRAD(本製品)
イルミネーター 赤色LED:10段階
使用電池 CR2032リチウム電池
パララックスセッティング 100ヤード
本体コーティング ハードアルマイト(低グレアマット仕上げ)
価格 899.99ドル

Razor HD Gen II-Eの弟分

今回は、2019年にとある業務で利用した海外のガンショップ兼シューティングレンジでの談笑がてらに見せてもらったボルテックス社をかつて一躍有名にさせたショートスコープの2世代目のレビューを行いたい。

※その後、2024年には本製品で実弾射撃も行ったが、いずれも短時間での検証でしかないため、あくまで簡易的なレビューだと思っていただきたい。

7~8年ほど前、ボルテックス社のVIPER PST 1-4×24は、その高い品質と手頃な価格で、ボルテックス社の知名度を急上昇させた名スコープである。現在、VIPER PSTは6倍率に変更されて2世代目となっている。
→ちなみに、VIPER PST 1-4×24は若干の改良をされてRANGER 1-4×24と名前を変えて販売されている。

VIPER PST Gen 2シリーズは、他にも以前レビューした5-25×50 FFPや、3-15×44 FFP、2-10×32 FFP等の中~遠距離射撃向けの製品がある。

VIPERシリーズは、ボルテックス社のミドルクラスに該当する製品群で、エントリー向けスコープからワンランク・ステップアップをするには良い選択肢となるだろう。


外観は、Razor HD Gen2-Eの色を黒く塗っただけのようにも思えてくるほど瓜二つ。

だが、ボディーコーティングの手触りや、各動作箇所の感触等は倍以上の価格のRazor HD Gen2-Eよりもコストを落としているのがわかる。

RAZOR HD Gen2-Eと同じく1倍~6倍率だが、重量はこちらのほうが34グラムほど脂肪をつけた643グラムだ。1倍率~6倍率のスコープとしては重量級の部類に入る。

ちなみに、製造に関しては本機は日本製ではなくフィリピン製になっている。近年フィリピンはカメラレンズやスコープ等の光学機器類に関して良い品質を製造できる基準にあるので、何も問題ない。

倍率変更を行うパワーダイヤルの硬さは、少し硬い部類に入るだろう。疲労が溜まっている長期戦や、素早さを求めるのであればオプションのレバー(SV-5)を買うのが良い。


エレベーションダイヤル等のデザインもよく似ている。ロープロファイルだが、直径が大きくて回しやすいダイヤルであり、クリック感もわかりやすい。

イルミネーションダイヤルに関してはデザインこそよく似ているが、RAZOR HD Gen2-Eと違ってただ回すだけの普及品となっている。私はこちらのほうが操作しやすいので好きだ。こちらも各ポジション毎にOFFがあるし、ダイヤルのテンションもちょうどいい。


レティクルはVMR-2 MRADだ。もちろんMOA版も用意されている。シンプルながらも、左右下の十字線は中央部以外は少し太くなっているので、大まかな照準が合わせやすい。中央十字線の刻みは左右下共に1ミル毎に刻まれている。

レンズの透明度や解像度はRAZOR HD Gen2-Eと比べても、雲泥の差があるほど大きくは劣らないが、数段のレベルの違いは見て取れる。特に1倍時のレンズの縁はある程度太く見える。また、ゴーストやフレア等の余計な反射に関しては、こちらのほうが少し出やすい傾向にある。

同じ6倍スコープであるOTS 1-6×24と比較すると、こちらのほうが少し薄いかなと言った感じだ。

ただ、価格面から見た全体的な光学性能は前世代同様に良いレベルにまとまっているものだと思う。1倍時の動きに対する歪みや、6倍時の光量落ちも少ない。

イルミネーションに関してはその特性がRAZOR HD Gen2とまったく同じだ。最高光度は日中でも眩しいくらいに明るく、最低光度は暗闇ではもう少し落ち着いてほしい明るさだ。等倍時はその明るさと光学性能の高さを利用して、ダットサイトのように使用すること容易い。CQB目的や3Gun等のスピードが求められる競技等で好まれている理由がよくわかる。

アイリリーフ長は10cm弱で、アイリリーフ幅も少し短くなっているが、RAZOR HD Gen2-Eと比較すればの話であり、まだまだ余裕のある長さで使いやすい。

アイボックスはRazor HD Gen2といい勝負をしており、全倍率を通じて余裕のある広さだと言える。特に1倍率時は広く、素早くラフに覗いてもケられることが少ない。

短時間しかなかった実弾射撃で焦ってパカスカ撃っていたが、余裕のあるアイリリーフ、アイボックス、そしてごちゃごちゃしていない見やすいレティクル、明るいイルミネーションのおかげで、100メートル以内のCQBにおける複数のターゲットへの射撃も簡単に行うことができた。

ただやはり短時間とは言え、重いスコープを載せているんだという感覚は、素早く銃を右や左へと振り回していると筋疲労を通じて感じてくることは確かだ。

Conclusion | 総評

近年はコストパフォーマンスの良いスコープが多いため、初代のVIPER PSTのようなハイコストパフォーマンスモンスターのようなインパクトはない。だが、RAZOR HD Gen2-Eより1000ドル以上安い、900ドル以下の価格でこのレンズの透明度、明るいイルミネーション、その他品質を加味するとコストパフォーマンスの良いスコープであることに変わりはない。重量さえ気にならなければ、10万円以下で6倍率のスコープを買いたい場合の良い候補だと思うし、このスコープを購入して大きな後悔や失望をすることはないだろう。

実売価格が200~300ドル台の同社Strike Eagle 1-6×24や1-8×24と比べた場合は、当然各部のクオリティはこちらの方が数段上だ。ただ、Strike Eagleシリーズもお値段以上の性能のスコープであることには変わりない。光学性能は落ちてもいい、抜群に明るいイルミネーションもいらないといった場合は、Strike Eagleシリーズのほうが人によって良いお買い物になるかもしれない。

素晴らしいレンズ性能のRazor HD Gen2-E、コストパフォーマンスの高いStrike Eagleシリーズを見て触った後だと、Viper PST Gen2 1-6×24は、これだ!と言った大きなインパクトは少々薄れる。少し悪い言い方をすれば、性能と価格の板挟みの中で産まれたタクティカル向けショートスコープとも言えるかもしれない。これで重量さえ軽くなれば大きな説得力が出てくるが、それだとこの値段での販売は難しくなるだろう。良くも悪くもお値打ちスコープでありながらも、少し埋もれてしまっている感じは否めない。