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ジャンル:ライフルスコープ

Burris社のリーズナブルな価格で購入できる1~6倍率LPVO

執筆時期:2023年3月

検証人数:2人

実弾射撃評価:有り(Type 89)

※本製品を提供してくださったM氏に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) Burris(アメリカ合衆国・フィリピン共和国)
全長 261mm
重量 493グラム
チューブ径 30mm
対物レンズ径・接眼レンズ径 24mm・46mm
倍率 1~6倍
視野 (FOV) 106~18.5フィート / 100ヤード:32.3~5.6m / 100m
アイリリーフ 83mm~101mm
レティクル(FFP:第2焦点面) Ballistic 5X
イルミネーター 赤色LED:11段階
使用電池 CR2032リチウム電池
Close Quarters RT-6 Tactical Kitセット価格(購入価格) 659ドル(570ドル)
RT-6単体価格 444ドル

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 任意の位置に設置でき、操作しやすく邪魔になりにくいスローレバー付き
  400ドル代のLPVOとは思えない質の良い光学性能(特に1倍時)
改善を要する点 イルミネーションの明るさは日中だと少し物足りない
  イルミネーションが対物レンズ側からよく見える
  中距離戦闘ではサークルレティクルが少し邪魔に感じることも

 

BurrisかVortexか


スコープは遠距離のスナイパーが使用するものだという古色蒼然な考えを持っていた幕府陸軍所属のM氏だが、日米合同訓練の際、米兵のACOGやLPVOを見て触れることにより、考えを近代化改修することになった。そこで、GOODなLPVOは無いかと私に相談を持ち掛けたものの、昨今の物価上昇と円安ダブルパンチにより、想定よりもはるかに導入コストがかかることに意識が遠のく。
それからしばらく音沙汰がなく、てっきり諦めたものと思っていたら、あぶく銭が入ったため、気が変わらないうちに気に入ったものを買うぞと連絡を寄越してきた。ちなみにあぶく銭はイーロン・マスク氏(TSLA)からもらったみたいだ。


その気に入ったものとやらが、Burris社の「Close Quarters RT-6 Tactical Kit」だ。これは、Burris社のショートスコープ 「RT-6」と、オープンタイプのダットサイト 「FastFire 3」、上部20mmレール付きスコープマウント「AR-P.E.P.R.」がセットになったお得なキットである。FastFire 3とAR-P.E.P.R.についてはすでに当研究会でレビュー済みであり、残りは今回紹介するRT-6 1-6x24mmである。


RT-6は、BURRIS社が販売しているリーズナブルな価格の競技・CQB戦闘向け1~6倍率のLPVO(Low Power Variable Optics:主に低倍率から4~10倍前後への倍率変更が可能なスコープを指す)だ。比較的安価な価格帯にも関わらず、良い光学性能を持っていることもあり、VORTEX – STRIKE EAGLE 1-6×24のライバル機種として挙げられることも多い。当研究会としては、同じSTRIKE EAGLEでも8倍率版しかレビューしていないが、海外のガンショップにて見て触れて扱ったことはあるため、その際のメモと記憶を辿りながら比較レビューもしていきたい。

VORTEX STRIKE EAGLEのレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 Vortex – STRIKE EAGLE 1-8×24 (マイナーチェンジ版 AR-BDC3)


こちらがRT-6本体。

斜めに設置された各種ノブ類等のスコープ中心部は、かつてレビューした同社MTAC Riflescope 1-4x24mmと似ている箇所も散見される。マット寄りのサラッとした質感も同じ。

全長は261mmで、この手の1-6倍ショートスコープの中では平均的か少し短いサイズ。Vortex – Strike Eagle 1-6×24も266mmと似たようなサイズだ。

重量は493グラムであり、500グラム以上が普通である1-6倍スコープの中では軽量な部類だ。これより軽い奴はLeupold社(Mark 6Patrol VX-6HD)や、SWAROVSKI社(Z6i)等くらいだ。

ちなみにStrike Eagle 1-6×24は524グラム。


可愛らしいお山のメーカーロゴとシルバーのリングが目立つ接眼レンズ部。

シルバーのリングは少し光沢を抑えた加工はしているものの、個人的にはもう少し目立たないようにしてくれた方が戦闘用途にも用いるスコープとしては好みではある。

倍率変更ダイヤルの硬さは、平均的かほんの少し硬めになっている。ダイヤルには大きめな滑り止めの溝が設けられており、グローブをした状態でもつかみやすい。

また、この溝に付属のレバーを装着(ネジ留め)することができ、より素早く、より軽い力でダイヤル操作ができる。

このレバーは溝の好きな位置に設置できるため、よく使用する倍率や、自分の操作しやすい位置に調整が可能だ。また、この手のスローレバーによくある棒状ではなく、板状のレバーなので大変操作しやすい。ボルテックスを含めて他社もまねしてほしいくらいだ。

このようなレバーを装着すると、ダイヤル操作がしやすくなる半面、装備等に干渉し、誤操作につながることが多い。任意の位置に設置できるこの構造は素晴らしい。


参考までにVortex Strike Eagle 1-8×24のスローレバー。


各種ノブ類がひしめくスコープ中心部。

上面と右側面はレティクルの上下左右を調整するエレベーション&ウィンデージダイヤルがカバーに覆われて設置されている。

左側面にはイルミネーションダイヤル兼バッテリーコンパートメントがある。このバッテリーコンパートメントのキャップはきつく締めすぎると、再び開閉する際に掴みどころが少ないため苦労することになるので注意してほしい。使用電池は毎度おなじみ常連のCR2032リチウム電池。

イルミネーションの光量調整は1~11段階の調整が可能で、各ポジション毎にイルミネーションオフポジションがあるのも嬉しい。

左右のイルミネーションダイヤルとウィンデージダイヤルは少し斜め上を剥くように取り付けられており、そこらのスコープのように平行に取り付けられているよりも操作性が良い。


カバーを外すとわかりやすく表記されたエレベーション&ウィンデージダイヤルが出てくる。ちょっと古風なダイヤルは操作しやすく、クコックコッとサイレントだが、確かなクリック感もある。

写真では写っていないが、ダイヤル上に円形の溝が一つあり、そこに細いものを差し込むと、ダイヤル全体ではなく文字盤だけが回り、任意の位置にゼロを動かすことができるゼロリセット機能がある。

ここらを含めたダイヤル周りの作りはVortex Strike Eagleシリーズよりも作りは良い。

ウィンデージとエレベーションの最大移動量は80MOA、1クリック0.5MOAとなっている。

Strike Eagle 1-6×24の最大移動量は140MOAとより多い。


24mm径の対物レンズは緑や薄水色の、46mm径の接眼レンズは赤紫や薄緑色のマルチコーティングが施されている。

アイリリーフ&アイボックス


公式のアイリリーフ(焦点の合う前後距離)は83mm~101mm(3.3~4.0インチ)だが、こちらが計測をした限りでは1倍率で55mm~100mm、6倍率で55mm~71mmであった。

1倍率のアイリリーフ幅が4cm以上あるのは、素早くラフな姿勢で照準することが多いCQB戦で大いに役立つ。また、アイボックス(焦点の合う上下左右の範囲)も比較的広い印象で、サッと構えてサッと射撃しやすい。

Strike EagleのアイボックスはRT6と比較すると少し狭く感じた。

Vortex Strike Eagle 1-6×24のアイリリーフを正確に計測したことはないが、この手の比較的安価な1~6倍 LPVOの中では、アイボックスを含めて可もなく不可もなくといった印象だった。

レティクル │ Ballistic 5X



中央にホースシュー(蹄鉄)サークルレティクル、下段にBDC機能、左右にミルスケールの組み合わせをレンズ中央に置いたレティクルは、「Ballistic 5X」という名称だ。

6倍率なのに5Xなのは、このレティクルが元々同社のRT-5 Prism SightT.M.P.R. 5のような5倍率プリズムスコープで使用されていたレティクルだからだろう。

下段のBDC(Bullet Drop Compensator:距離による弾丸の落下点表示)機能レティクルは、5.56mm弾(.223)を用いて100ヤード(91.4メートル)の距離にて、中央点でゼロインを取ると機能する。そして、下段BDCレティクルの頂点が200ヤード、以下300、400、500、600ヤードまでカバーしている。

「4」の数字は400ヤードでの狙点を表している。

もちろんだが、このスコープは倍率を変更してもレティクルが拡大や縮小をしないSFP(Second Focal Plane:第2焦点面)なので、最大倍率でないとその効果を発揮できない。

左右のミルスケールは片側それぞれ0.5ミル刻みで3.5ミルまで表記されている。

イルミネーション


イルミネーションに関しては、ホースシューサークルレティクルと中央のセンタードットが点灯する。

この中央部分のみ光らせる手法は、200メートル以下でのCQB戦闘で素早く射撃をしたい時に役立つ。人間は光ってる部位に目がいくため、レティクル全体を光らせた場合、どこで狙えばよいのか一瞬迷ったり、速射とはいえ狙いが悪くなってしまいがちだからだ。

100メートル照準


180cmの高さに吊るした青のツナギを、100メートルの距離に設置して照準。まずは1倍率から。

写真には写ってないが、場合によって接眼レンズ部にシューターの顔や目の映り込みが少し発生する場合がある。どの環境でも発生しやすいわけではないし、大きな支障をきたすほどの映り込みではない。

RT-6は特に1倍率時の歪み等が少なく、非常に素直な映像を出してくれると聞いていたがその通りだった。レンズの明るさも良好で、レティクルが中央部分に小さくまとまっていることもあり、余計なノイズが少なく視界が広く感じやすい。


参考までにVortex Strike Eagle 1-8×24の「AR-BDC3」レティクル。視野の広さは違うが、1-6×24も同じレティクルを採用している。

比較すると、Vortex Strike Eagle 1-6×24のほうが視野は35.5~5.8m / 100mとRT-6(32.3~5.6m / 100m)より広いのだが、レティクルのシンプルさでRT-6のほうが広く感じ取れる。


こちらは6倍率。

小さく、線が細めなので左右のミルスケールレティクルは少し見えにくくなるが、CQB用のLPVOと考えれば、サッと狙ってササッと弾丸を叩き込む際は必要のないレティクル。さほど支障は出ないだろう。

曇り空から青空が少し覗いていたような天候であったので、少し暗く写ってしまったが、6倍率に上げて大きく明るさが損なわれることはなく、平均的と言った感じ。ただ、Vortex Strike Eagle 1-6×24だけでなく、1-8×24と比べても最大倍率時はStrike Eagleシリーズよりは少し暗く見える。

ゴーストやフレアの発生に関しては、Strike EagleよりもRT-6のほうが優秀だ。晴天時や夕暮れ時にも試したが、余計なフレアやゴーストは低価格帯のLPVOの中では少なく、優秀な部類。

ホースシュー型センターサークルは、50メートルで人間の胴体を少し上回り、100メートルで頭部のサイズになる大きさなので、対人戦や人型標的を狙う際の利便性がよい。

イルミネーションON


1倍率

6倍率


イルミネーションを最大光量で点灯。

なんだかStrike Eagleと比べても暗く点灯しているように見えるが、実際はもう少し明るく、Strike Eagleと比較しても1段階ほど明るい。ただ、晴天時だとあと2~3段階ほど明るく灯ってほしいと感じるのも確かだ。

直射日光下以外では、1倍率時にダットサイトのように使用することもできないことはない。森林内や室内戦闘だと、両者共にこの明るさのイルミネーションでも十分使用できる。

最低光量に関してはStrike Eagleと同様、あと1~2段階ほど暗くなって欲しい。


中心点のみを光らせるイルミネーションの宿命とも言っていいかもしれないが、対物レンズ側から見た場合のレティクルの明かりは見えやすい。写真は11段階中、9段階の明るさで点灯している。

ガンハンドリング、使用感等


等倍時は明るく歪みのないレンズ、ノイズの少ないレティクルのおかげで、野外でのパトロールや競技等では使いやすい視界を得られるLPVOだ。

CQB等の接近戦では、私個人としてはStrike EagleのAR-BDC3レティクルのようにスコープ外縁から伸びるクロスヘアがあったほうが素早く狙いやすいと感じるが、これは好みが分かれるだろう。持ち主のM氏は、ノイズが少ないながらBDC機能は欲しかったようなので、RT-6の「Ballistic 5X」レティクルはこの商品を選ぶ際のポイントだったようだ。

他にもM氏は5.56mm弾を用いた300メートルでの射撃、200m~10mへと射撃をしながら近づいていくシュートオンムーブを行った。300メートル射撃は暗い屋内射場、シュートオンムーブは屋外での射場だったようだが、特にシュートオンムーブのような接近戦で素早い射撃が求められるシーンでは有効なレティクル形状であった。Strike Eagleと比較して小さめなサークルレティクルのおかげで、大まかな狙いがつけやすく、100メートル以内の場合はほぼサークルレティクルのみで狙って当てていたようだ。

ただ、小さめのサークルレティクルだが、300メートル以上の距離では少し人型標的とかぶって邪魔に感じたとのこと。


ガンハンドリングについても、1-6倍率のLPVOの中では軽い部類のRT-6は振り回しやすく、長時間の携行でも負担は少ない。

元々、50メートル以下では「Close Quarters RT-6 Tactical Kit」に含まれるFast Fire 3の使用を考えていたM氏だったが、CQB戦におけるRT-6の1倍率の性能が想像よりよかったようで、現在Fast Fire 3は単体で使用しているようだ。

少し重量はあるが、上部20mmレールの付いたAR-P.E.P.R.マウントと軽量なFast Fire 3との組み合わせは実に使いやすい。やはり接近戦ではダットサイトを使用したいという人にとっては、このお得なキットの購入はアリかもしれない。

Conclusion | 総評


RT-6単体の希望小売価格444ドル、実売価格300ドル前半の価格は、実売価格350~370ドルなStrike Eagleより少し安くお買い得だ。

今回検証した限りでは、軽量さや1倍率時の明るく歪みの少ないレンズ性能、ノイズが少ないレティクル、柔軟性のある倍率切り替えレバーを求めるならRT-6が、6倍率時の明るさや近~遠距離でもまんべんなく使いやすく、多機能性を求めるレティクルが欲しい場合はStrike Eagleが良いかもしれない。

何にせよ、500ドル以下のLPVOを選ぶ際には、両者は多くの人にとっての有力候補にしてもよいだろう。どちらも永久保証付きというのも製品に対する自信の表れだ。