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【レビュー】 VORTEX – RAZOR HD GEN Ⅲ 1-10×24 FFPの前編は ↓ ↓

【レビュー】 VORTEX – RAZOR HD GEN Ⅲ 1-10×24 FFP (前編)

100メートル照準

さて、後編は外へ持ち出してみよう。

まずはいつも通り1.8メートルの高さのターゲットを100メートル先に設置。イルミネーションは点灯。


先程、相変わらずRAZOR HDシリーズのLPVOはイルミネーションが最低光量でも明るいと言ったが、まさにこれだ。曇り空とは言え、最低光量でかなり視認できる。

だが、等倍状態でイルミネーションをオフにすると、レティクル中央部の線が細いので、照準がしにくくなる。ちなみに中央サークルレティクルは、100mの距離だと人間の頭くらいのサイズになる。

ボルテックス社最高クラスの称号である「RAZOR HD」の名に恥じることなく、とても鮮明なレンズで、等倍(1倍)ではボディ接眼部の縁が薄いのが見て取れるだろう。レンズと風景の一体感もとても良好。並のLPVOはもちろんのこと、同社VIPER PST Gen2 1-6×24と比べても十分勝っていると言えるレンズの質だ。

ただ、Gen2-E 1-6×24と比べた場合の話は別だ。等倍時のレンズ越しに見る視界の違和感や歪み、無意識に、そして瞬時にターゲットを照準できる感覚はGen2-E 1-6×24のほうが確実に良いと言える。この意見は今回検証をした6人全員満場一致であった。

特にGen3はGen2-Eと比べて、スコープを覗いた状態で顔や銃を動かした際に、レンズ中央付近が少し魚眼レンズのように歪んで見える。


イルミネーション光量を、CQB戦でダットサイトのように使用できるように上げてみた。この環境下では11段階中6段階目だ。

レンズ性能の高さと相まって、今作も低倍率時にダットサイトのように瞬時にターゲットへの射撃が可能だ。

この環境下でこれ以上イルミネーションを明るくすると、鏡筒内で乱反射を起こしたり、ターゲットがイルミネーションの明るさで隠れてしまうのでやめておいた。


次は倍率を6倍に上げ、イルミネーションは4段階目に下げてみた。

等倍時に顔や銃を動かした際に魚眼レンズのように少し歪んで見えると言ったが、その歪みは6倍時に最も大きくなるように思え、中央付近からより外側にも広がっているように感じた。(写真だとわからず申し訳ないが)ただ、どちらにしろストレスが大きく溜まるレベルではない。あくまでGen2-E 1-6×24と比べての話だ。

ちなみにGen3 1-6×24のパララックスの設定は、Gen2-Eより50ヤード伸びて150ヤード(137.1メートル)で固定されている。


最大倍率の10倍。

Gen2-E 1-6×24と比べて一番の強みはやはりこの10倍まで倍率を拡大できる点にあるだろう。銃や弾種によっては、このスコープだけで近接戦闘から、600~800メートルくらいの長距離射撃も視野に入れることができる。

ただ、もちろん弊害も出てくる。ご覧のように10倍時はレンズの明るさがまぁまぁ暗くなるし、レンズ下部に出ているようなフレアも出てきやすい。まぁ現時点では、1~6倍率より上の可変倍率ショートスコープ(1-8xや1-10xなど)は、どのメーカーでも概ねこういう限界は大なり小なり見えてくる。現在の技術力では、日本やドイツの素晴らしいレンズ生産技術を持ってしても無理が出てくるようだ。

200メートル照準

さて、今回はせっかく10倍の高倍率機種なので、200メートルの距離でも照準してみた。ターゲットは同じく1.8メートルの高さで、イルミネーションはオフだ。


実際は写真よりもう少し見えやすいが、イルミネーションを点灯しない場合、このように木陰にいるようなターゲットに対してはレティクル中央が細いため、照準線が見えにくくなる。

かと言ってレティクルを太くした場合は、ターゲットがレティクルに隠されてしまうことに。近距離から遠距離まで対応したレティクルのデザインの難しさがわかる。

そういう意味でも、このスコープは基本的にはイルミネーションを点灯させた使用をある程度前提にしている気がする。低倍率時は特にそう感じる。

EoTech Vudu 1-10×28のレティクルも、イルミネーション使用を前提にしているものだが、レティクル中央付近はイルミネーションをオフにしても見えやすいようだ。ただ、イルミネーションを灯した際、スピードリングと呼ばれている、瞬時の照準を補助してくれる大きなサークルレティクルが場合によって邪魔に感じることもある。


3倍率


6倍率

レティクル中央付近が肉眼でもはっきりと見えてくるのは5倍から上だろう。これくらい倍率を上げると、ミルを用いた計算等もやりやすくなる。


8倍率。この日は雲が太陽を隠したり、出したりを繰り返してるのでレンズの明るさがコロコロ変わり、申し訳ない。

8倍率までくると、中央のサークルレティクルが見えやすくなった。


10倍率

この時はターゲット付近に日が当たっているので、倍率を上げることによってレンズが暗くなる事に関してはそう気にならなかった。

どちらかと言えば、10倍時は特にアイボックスとアイリリーフの幅が狭くなるので、少し顔を動かしただけでけられやすくなる。また、イルミネーションを点灯した際にも、顔を動かすとイルミネーションのチラつきが気になる

EoTech Vudu 1-10×28に関しては、動かした際、レンズ中央付近が魚眼レンズのように少し歪むように感じる。

他にも写真には写っておらず、さほど大きな問題とまではいかないが、倍率を上げるほど接眼レンズへの顔の映り込みが少し出てくる。これはわずかではあるが、1倍率でも出ていた。

ガンハンドリング等


いろいろな事情もあり、今回このスコープを当研究会会員のY氏が購入してから、私がレビュー記事を書くまでは2年もかかった。その分、多数の人達に検証してもらい、4回の実弾射撃と数日間の演習に3回使用することができた。

標準的なショートスコープ、LPVOとして考えると、609グラムという重量は軽いわけではない。ただ、1倍~10倍までとすごく幅広く倍率を可変できることや、少しムチッとしたその外観から想像するよりは、若干軽く感じた。小銃に搭載した際の重量バランスを考えて設計しているのだろう。

そのため、複数の近距離ターゲットへの素早い射撃等を行っても、変な遠心力や違和感はあまり感じない。素晴らしい光学性能と明るいイルミネーションにより、慌ただしいCQBにもばっちり対応できる。この点はGen2-Eからの乗り換えを行ってもすぐに馴染むだろう。ま、操作方法や形状に関してもほぼ同じだしね。

ただ、600グラムの重量物が銃の上に載っていることには何も変わりなく、長時間の演習等では重く煩わしく感じることもある。筋力を増やす以外にも、軽くて良いマウントを選ぶのも重要だろう。(装着している同社Pro Extended Cantilever Mountの重量は207グラム。もっと軽くて良いマウントはお金さえ積めばいくらでもある。)


射撃に関しては、距離5メートルの近接射撃から、最大で300メートルの中距離射撃まで行ったが、10倍率にできることへのアドバンテージは距離が伸びるほど当然だが感じる。300メートルでのマンターゲットへの射撃で、ヘッドショットを連発するのも簡単であった。

信頼性や精度に関してはRAZOR HDシリーズの名に恥じないのは言うまでもない。不具合らしいものは今まで一度も起きてない。

Conclusion | 総評


Gen2-Eと同じ重量ながら、倍率を10倍まで伸ばし、高い光学性能と明るいイルミネーションにより、近~中距離戦闘はもちろんのこと、ある程度の遠距離戦闘も視野に入れることができるようになった3世代目Razor HD ショートスコープ。

倍率を上げたことにより、Gen2-Eと比べて多少光学性能が低下したものの、発売当初なら太鼓判を押すような総評で締めくくっていたものだろう。

だが、最初は2500ドルほどだった希望小売価格は、2回ほど値上げが行われ、2022年現在では3600ドルに膨れ上がっている。1ドル145~150円の歴史的円安に直面している日本人からすると、50万円を余裕で超える価格には意識が遠のきそうである。

もちろん、実売価格は2500ドルほどではあるが、今回ライバル機種として比較したEoTech VUDU 1-10X LPVOは実売価格1800ドルだ。

光学性能の総合的な質はGen3 1-10xが高いが、レンズの透明度や重量等はVUDU 1-10Xも同レベルだ。どちらも、ある程度イルミネーションを使用することを前提に設計されている割には、Gen3 1-10xが暗くできない面があり、VUDU 1-10Xは最大光量がちょっと足りないと感じる場面もある。

Gen3 1-10xがVUDU 1-10Xと比較して、700ドルをお財布から余分に吐き出すほどの価値があるのかどうかは、我々の総意としてはVUDUの判断材料が少ないので何とも言えない。Gen3 1-10xとVUDU 1-10Xの両方を比較できたのは、今回検証した6人の中で1人だけであり、しかも彼が触れたのは短時間だけだ。

もちろん、1倍から10倍までをカバーし、遠距離射撃をも視野に入れたLPVOが欲しいのであれば、有力な候補であることは間違いない。更に言うと、光学性能、特に1倍率時を重視し、遠距離射撃や中距離の精密射撃をそこまで求めないのであれば、引き続き併売されている名機 Gen2-E 1-6×24を購入したほうが断然よい。素晴らしい光学性能ながら、1000ドル前半の実売価格で購入できる点も魅力だ。(2022年10月現在)

VORTEX Razor HD Gen II-E 1-6×24のレビューは下記へ ↓ ↓

【レビュー】VORTEX Razor HD Gen II-E 1-6×24