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ジャンル:ダットサイト、ホログラフィックサイト

ホロサイトへの対抗馬としてボルテックスが世に送り出した「UH-1」の第2世代版

執筆時期:2020年8月

実弾射撃評価:有り(AR-15系)

※1:2024年4月、実弾射撃等の評価を追記。

※2:2025年10月、再検証により大幅に追記。

※再検証の際、本製品を提供してくださいましたI氏に感謝いたします。

第1世代版とマイナーチェンジ版の「VORTEX RAZOR AMG UH-1」とEBR-CQBレティクルのレビューは下記へ ↓ ↓ 

【レビュー】 Vortex – Razor AMG UH-1 HOLOGRAPHIC SIGHT ( Gen1 )

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) VORTEX OPTICS (アメリカ合衆国)
全長×全高 9.9×6.9cm
重量 311.8グラム
倍率 1倍
レティクルパターン 赤色レーザー 1MOA & 65MOA
イルミネーター 赤色レーザーダイオード 15段階+NV用8段階
使用電池(電池寿命) CR123Aリチウム電池(中光量で約1500時間)
価格 959.99ドル

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 歪みの無いレンズ
  近距離でも中距離でも使いやすいレティクル
  対物レンズ側から見えないイルミネーション
改善を要する点 イルミネーションの日中モードと暗視モードの中間の明るさがほしい
  ホログラフィックサイトとしてはレンズの光透過性が暗視装置越しではあまり良くない

 

一人称視点動画はこちら ↓ ↓

 

商品力を高めた第二世代版


世がコロナ騒動で右往左往しており、その煽りで様々な仕事が滞ったり消滅してしまった私は、時間も空いたことだしマイナーチェンジ化された、「VORTEX RAZOR AMG UH-1のレビュー」でもそろそろ書こうかと重い腰を上げようとしていた。

そこへ、UH-1が第2世代版(Gen2)、言うなればフルモデルチェンジという形で発売されたという知らせが届いた。どうせならコイツのレビューも同時にしてやろうということで、入手を図った。


第2世代(AMG-HS02)になることによって、大きく改良された点は以下の4つだ

暗視装置対応モードの搭載

軽量化を目的とした肉抜きデザイン

接眼レンズの大型化

電池蓋を改良し、充電ポートを除外

あと、名称が「RAZOR AMG UH-1」から「AMG UH-1」へと変わっている。RAZORはどこ行った?


付属の説明書に関しては、かねてから私がボルテックス製品全般にちょくちょく文句を言っていた、「説明書のイメージ写真の解像度が低い問題」が少し改善されていた。


正面対物レンズそのものの大きさは変わっていないが、レンズガードを兼ねている全面ハウジングを切り抜いたことで、レンズが大きく見える。

ちなみに対物側のレンズは二重構造となっており、奥に見える傾斜したレンズが対物レンズであり、手前はレンズプロテクターとなっている。

このUH-1の現所持者であるI氏は主にサバイバルゲームで使用しており、今までインドア戦で一度このレンズへの被弾を受けたが傷一つ付いていない。

第1世代版でこれまた私が似合わないと文句を言っていた、レンズ下部の文字列は消滅していた。


全周にわたって様々な箇所の贅肉を削ぎ落とし、肉抜き化されているため、第1世代版のストン・ヌルっと言った印象のデザインから、ギア感が伴った印象が出てきた。


ちょっと開けにくかった電池蓋は、折りたたみ式の取っ手が設けられて改善されている。

電池関係の大きな変更点として、LFP123Aリチウムイオン充電池を挿入した際に使用する充電ポートは廃された。やはり、あの機能は需要がなかったのだろう。

充電ポートは廃されたが、LFP123Aリチウムイオン充電池は引き続き使用できるとのこと。


ちょっと殺風景だった上面も、全体的にスリム化が施されている。


かなりの箇所を肉抜きされ、さぞ軽くなったのだろうと思うかもしれないが、重量は311.8グラムと、第1世代版の334.5グラムと比較すると、22.7グラムほど軽量化したに過ぎない。

しかし、全体的な重量バランスも見直されたのか、数字以上に軽く感じる。おかげで、銃をかまえながら激しい動きをした際も、光学照準器に振り回されている感は軽減された。



第2世代版になっても、その強烈なSFチックな外観は健在。どんな銃器に載せても近未来のエネルギー銃と化す。

肉厚で装着感の高いQDマウントも第1世代から続く良いポイントだ。この手のマウントを交換できないタイプの照準器はこうでなくては困る。


ボタンの感触は少しグニャッとした感じだが、押した際のクリック感はわかりやすく、手袋をしていても操作しやすい部類。ただし後面に配置されているため、本体後方にマグニファイアを設置した場合は操作がやりにくくなる。

ボタン操作、オートシャットオフ機能等は何も変わらず同じだ。ただ違うのは、プラスボタンとマイナスボタンの間に暗視装置対応モードである「NV」ボタンが加わっている。

暗視装置対応モードにするには、「NV」ボタンを長押しする。NVモードでは明るさを8段階で調整可能だ。無かったNVモードの追加だけでなく、輝度調整数を8段階設けたのもEoTechホロサイトを意識しているのだろう。暗視装置モードについては後ほど詳しく述べよう。

近距離における照準

林内にて5~30mのCQBを想定した照準。ターゲットは人間の上半身を模したUSPSAマンターゲット(縦75cm×横45cm)。


後方から見たボディ全体として、余計な出っ張りの無いシンプルな箱型デザイン故、ノイズの少ない視界が広がり特に近接戦が行いやすい形状だ。


また、レンズの歪みが皆無なのも良い。自分の視界内に違和感少なくこの照準器を溶け込ませることができる。


この写真の接眼部右上に少し出ているが、日陰等では接眼レンズの薄紫色のコーティングが少し反射することがある。照準の妨げになるような大きな支障になることはない。


イルミネーションは日中使用を想定したモードが15段階の輝度調整が可能。暗視装置対応モードは8段階。

日中モードの最大輝度は初代と同じくほとんどの日中環境の使用で問題なく十二分に明るいが、ガッツリと晴れた砂漠や雪原では最大輝度でちょうどいいか、もしくは少し物足りないかもしれない。

日中モードの最低輝度に関しては薄暗い部屋でも十分に視認できるほど明るい。これについては暗視装置モードと合わせて少し問題があるので後述しよう。

50メートル照準 │ レンズの質について

距離を50メートルに伸ばし、光学品質をより詳しく見ていこう。ターゲットは180cmの位置に吊るした青いツナギ。


接眼レンズを若干サイズアップしたことにより、視界の広さはそこまで変わらないが、覗きやすくなっている。

レンズの透明度に関しては、第1世代マイナーチェンジ版とほぼ変わりなく、レンズ全体に若干の青みがある。レティクルのツブツブ感も同じ。

レンズの歪みは皆無に等しく、違和感を一切感じさせない。この点はEoTechホロサイトも同様だ。多くのダットサイトによくある、動かしてわかるレンズ周辺部の歪みも無い。そこは同じ箱型であったとしてもHOLOSUN 512AEMSLead & Steel Promethean LP-1と比べて大きなアドバンテージである。

接眼レンズが大型化されたことにより、レンズの縁や鏡筒内部の反射は少し増加傾向にあるが、発生頻度は少なく激しい逆光下においても目障りなレベルではない。

パララックステスト │ 50m&100m


第1世代版↑(こちらの方がイルミネーションを暗く設定)


第2世代版(Gen2)↑

パララックステストだが、第1世代で指摘していた、レティクルを左端に持っていくとだんだん消えていく現象に関しては大きく改善していた。

ただ、50メートルの距離において右に5cmほどズレていたレティクルが、Gen 2は左に5cmほどズレているという結果になっている。

また、上面へのレティクル投影の限界値が少し下がっているのも比較するとわかるだろう。

今回追記するにいたり、100メートルでのパララックステストも実施した。


距離が倍になり、パララックスも概ね倍になった。ただ右上のズレは最大で15cm前後となった。よくパララックスが皆無と言われているEoTechホロサイトについては、パララックスの検証までは当研究会でしたことはないのでここで比較はしない。

対物レンズからのイルミネーションの見え方


EOTech ホロサイトとは同じホログラフィックサイトでも構造が違うと言われているので、詳しい技術的なことはわからないが、通常のダットサイトと違い、レティクル発光面が対物レンズ側から見えにくいので、明るさを最大にしても、このように日中であれば対物レンズ側から発光面はもちろん、鏡筒内の反射も見えない。夜間や暗所であっても、常識的な明るさであれば肉眼での視認はまずできない。

100メートル照準 │ マグニファイヤーとの併用

ターゲットは同じで、距離を倍の100メートルにして照準


中心部の1MOAレティクルは非常に小さいがはっきりと映し出される。よくある2MOAドットのダットサイトでは得られない緻密な点であり、CQBに強いレティクルではあるが、精密射撃や中距離射撃時にも非常に有効だ。

周辺の65MOAのサークルレティクルも、HOLOSUNやEoTechのそれと違い、ところどころに適度な隙間があり、サークルレティクルとターゲットが被るような状況でもターゲットが認識しやすくなっている。

ただ、これはEoTechも同じだが、小さな点の集合体であるサークルレティクルは、乱視等があると銃や顔を動かした際に点ひとつひとつが瞬いて見えやすい。人によってこれは目障りかもしれない。もしこの点々が気になる人は、HOLOSUNやSIGSAUERのような通常のダットサイトにあるサークルレティクルをチョイスすべきだ。


このように視度調整を行えるマグニファイヤーを使用すると、緻密なレティクルがより鮮明に見え、1MOAの中心点での狙撃がより行いやすい。

暗視装置モードについて


日中モードとは別に8段階の輝度調整が可能な暗視装置モードだが、最高輝度であっても夜間薄っすらと視認できる暗さであり、4段階目以降は裸眼での視認が不可能なほど暗くなる。

一見優秀そうな輝度調整に思えるが、ここで日中使用モードの最低輝度を思い出してほしい。こちらは日中の薄暗い部屋でも使える明るさであり、暗視装置モードの最高輝度は夜間薄っすらと視認できる明るさである。そう、つまりこの中間の明るさが無く、前者は明るすぎ、後者は暗すぎると感じることが多い

そう感じるのは肉眼だけでなく、環境によって暗視装置を用いた時も同じ印象だ。日中15段階、暗視8段階の幅広い段階を設けているのに残念な設定だ。

そして問題はイルミネーションだけではなく、一見良さそうなレンズの光透過性能もEoTechと比べるとそこまで良くない。これは暗視装置の性能によっても大きく左右されるものの、こちらが普段業務で使用している第3世代型の微光暗視装置で見た限りでは、薄い膜が張っているような見え方であり、そこらのダットサイトとあまり変わらない。暗視性能が光学的にも非常に優秀なEoTechホロサイトやAimpoint T2、SIG SAUER ROMEO8Tとは比べ物にならず、HOLOSUN 512AEMSとあまり変わらない。

いわゆるホロサイトアメーバ現象について


EoTech ホロサイトシリーズを語る上で避けては通れない「レンズコーティング剥離問題(俗に言うアメーバ現象)」は、2017年以降のモデルでは以前と比べて報告数は減少しているものの、今だ一定数アメーバ現象を嘆く声はある。北米のよく付き合いのあるショップに聞いてみたが、2020年以降の製品であっても、5年程度、早い人は3年くらいでアメーバが住み着いてメーカー修理となる依頼は今もあるそうだ。このアメーバ現象については誰もが出るわけではなく、温湿度環境が高いエリアにおいて発生することが多いようだ。

我が研究会でもかつてEoTechのホロサイトを所持していた者が多くいたが、皆何かしらの問題が年月を経て発生し手放している(この手放されたホロサイトは2017年製より古い機種であることは留意しててほしい)。


ではこのUH-1はどうだろうか?今のところ、国内外のレビューサイトやSNS、掲示板を見る限りこのアメーバ現象は無いに等しい。まだ初代も含めてUH-1が販売されてそこまで年月が経過していないだろと言われれば一理あるが、それでも5年前後でアメーバが発生することがあるEoTechと比較すると皆無だ。

私からI氏へと所持者が変わった今回レビューしているUH-1 Gen2についても、購入から5年以上が経過しているが写真の通りどのレンズもアメーバが生存する沼にはなっていない。しかもI氏はコロナ禍で最後にサバゲーでプレイした日以降、空調設備の無い納屋の中にトイガンに装着したまま1年半近く布製のガンバッグに入れたまま放置していた始末だ。まぁ、そんな過酷な扱いをしていてもアメーバが発生していないからこそ今回レビューをする意義を見出したわけだが。

UH-1にアメーバが発生するかしないかについては今後も検証を行う予定だ。

実弾射撃、各種訓練における使用感等


UH-1のレンズ中央までの高さはGen2も変わらずLower 1/3 Co-Witness(1.57インチ = 約3.98cm)。AR-15での使用を想定されたアイアンサイトとの併用の場合、レティクル位置をアイアンサイトに重ね合わせるのは無理があるが、レンズ視界内にアイアンサイトが邪魔にならず、尚且つ同時使用もできるという点では良いだろう。

海外にてAR-15系のライフルを用いて実弾射撃を行ったが、あくまで個人的にはレンズの見やすさはEoTechのホロサイトの方が良いと感じたが、レティクルはUH-1が好みだ。

ただもちろんレンズの歪みはそこらのダットサイトよりはるかに少ないので、複数のターゲットへの射撃やCQBにおいて歪みによるノイズは感じない。

重量に関してはホロサイト同様に300グラムオーバーなため、ブンブン銃器を振り回していると少し重く感じる。なんちゃってホログラフィックサイトではあるが、レティクルが切り替えできてしかも重量は230グラムであるHOLOSUN – HS512Cの方が私は好きだ。耐久性や信頼性はどれが上かはわからないが、価格も安い。

Conclusion | 総評


UH-1 Gen2の希望小売価格は二回ほど値上がりして959.99ドル。ただし実売価格は600ドル前後であり、同じく暗視装置対応モードを搭載したEOTech EXPS3等で比べると今でも安く入手できる。

暗視装置モードが搭載され、重量バランスも改善された。ただ全体的なコンパクトさ、レンズの透明度を求めるのであればEOTechホロサイトの方に軍配が上がる。

耐久性や信頼性に関しては、UH-1の方が上という意見やレビューもあるが、これに関してもまだまだ検証が必要だ。暗視装置モードを搭載したことにより、これから法執行機関への採用や試験が行われるかもしれない。

両社とも、商品力が高いことに変わりはない。現時点でボルテックスとイオテックのどちらを選ぶかは、好みや使用スタイルで選んでも良いのではないだろうか?

ただ、100~200グラム前半台の重量が多い通常のダットサイトと比較すると重量は300グラムオーバーと少し重い。ダットサイトもレンズの透明度やパララックスの少なさに関してはかなり技術力が向上しているので、どちらが良いかはよく考えるべきだろう。


レビュー内で言及したHOLOSUN – HS512Cのレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 HOLOSUN – HS512C


レビュー内で言及したAimpoint – T2のレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 Aimpoint Micro T-2 & H-2