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ジャンル:サングラス・メガネ・アイウェア

タフなシーンに立ち向うアスリート向けに作られたオークリー社のJAW BONE(ジョウボーン)。そのスリムなバージョンがこのSPRIT JACKET(スプリットジャケット)だ。迅速なレンズ交換や拡張性はそのままに、ロープロファイルな姿へと進化したサングラスを、オークリー純正の最新光学テクノロジーで生み出された度付きカーブレンズ「TRUE DIGITAL」と共に紹介しよう。

執筆時期:2017年4月

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) OAKLEY(アメリカ合衆国)
重量(度付きレンズ込) 35グラム
耐久性 ANSI Z87.1+規準合格
レンズコーティング 対UV-A、B、C、一部青色光カット、撥水、撥油
国内標準価格 フレーム:26000円+トゥルーデジタルクリアレンズ:28000円

ダイエットしたジョウボーン


プロのアスリートや、ツワモノ達が選ぶアイウェアと言えばオークリーだろう。ファッションや紫外線防護のためだけのサングラスでなく、様々なものから目を保護する耐久性機能性を両立しながらも、クールなデザイン性を犠牲にしていない。信頼性は当然のことながら、このデザイン性というのは大事なことだ。我々はボーグではなく、美しいものを愛でる人間である。デザイン性が良くないと、どれだけ良いものであろうと使う気は失せてくる。それはプロの世界でも無視できないようだ。そんなオークリー社の人気商品にJAW BONE(ジョウボーン)という機種がある。同社2枚レンズのシリーズの中でも大きめのレンズで、ワンレンズ(1枚レンズ)タイプのように広い視界を確保できる。だが、何よりも人気の秘訣は、リム(レンズを保持する枠)の下部が製品名であるジョウボーン(下顎骨の意)のようにガパッと開き、今までレンズやフレームに負担をかけていたレンズの脱着や交換が圧倒的にやりやすくなった。ただ、このジョウボーンは少々大きめのサングラスだ。しかも、カラーラインナップはゴロカ族と間違えられそうなツートンで派手な色が多い。そんなジョウボーンをロープロファイル・スリム化したものがこのSPLIT JACKET(スプリットジャケット)だ。カラーリングもジョウボーンに比べると落ち着いたものが多く、ガンマン業界の中でもこの機種を愛用している人をよく見かける。


私が所持しているスプリットジャケットは、光沢の無いマットブラックフレーム。レンズはClear(クリア:透明)カラーに、曇り軽減のベンチレーションとRX度付きレンズをオプションで付けてもらった。一見ゴツそうな外観に見えるが、度付きレンズ込みでも重量は35グラム程度。


テンプル部分はOAKLEY自慢のUnobtainium素材のイヤーソックが付いており、装着感や安定性が良い。Unobtainiumは、OAKLEY社が開発した汗等の水分が付着すると吸着性や密着感の増すラバー素材で、数多くの同社アイウェアに用いられている。このイヤーソックは、白や赤等の各色があり、ノーズピース共に交換可能だ。テンプル先端には、後述するストラップ用の穴がある。


マネキンヘッドが、平均的な成人のものよりも小さめなのでご容赦願いたい。ジョウボーンと比べると、ロープロファイルで落ち着いたデザインなので、この程度であるならば日常でも使えないことはない(あくまで私の感性)。フレームはアジアンフィットモデルを購入した。アジアンフィットと通常のUS版との違いは、モデルによって差はあるが、

○ノーズブリッジ(レンズとレンズの間。鼻が埋まる場所)の幅の短縮。

○ノーズパッド(鼻あて)の大型化。

○テンプル(ツルの部分)カーブを日本人の頭蓋の形に調節。

○フレーム正面のカーブを緩めて、頬やこめかめへの干渉を軽減。

と言った感じに変更が加えられている。このアジアンフィットでないと、平たい顔族である私はフレーム下部が頬と接触し、レンズもわずかな衝撃で目に当ってしまう。使用感が悪くなるばかりか、目の保護にも悪影響を及ぼす。とは言え、日本人全員がアジアンフィットでフィットするわけでも無いので、取扱店に行き、両方のモデルを実際にかけてみることを強くオススメする。


ノーズパッドを上方に上げると、フレーム下部のロックが外れ、上記のようにレンズを簡単に付け外しできる。ジョウボーンからこのシステム(スイッチロック)は受け継がれている。従来のレンズは、付け外す際に、フレームやレンズに負担をかけていた。特に度付きのレンズの場合は、歪みも発生する可能性があるのであまりよろしくない。このシステムのおかげで、レンズだけ取り外してのメンテナンスやクリーニングも素早く快適にできるようになった。また、フレームやテンプル等は簡単に取り外しができるので、色違いの同モデルでパーツの付け替え等ができるのも、オークリー製品の面白いところだ。


付属品は他のオークリー製サングラス同様、頑丈なケースと眼鏡袋兼レンズ拭きが付属する。レンズ拭きは袋を裏返して使用する。

RX純正度付きレンズとゴーグルへの拡張性

アジア人は矯正視力人口が多い。私もその例に漏れず、中学生の頃からメガネっ子である。そんな人達にとって、スポーツ等の身体を動かす活動は頭痛の種だ。特にこのような身体を使う戦闘職種は頭を抱える話である。裸眼族の方々にはわからないかもしれないが、普通の眼鏡だと、タフな現場ではとても強度が足りず、ふとした衝撃で外れたり破損してしまう。かと言ってコンタクトレンズは、目にゴミが入ると文字通り目も当てられない事態になり、戦闘どころではなくなる。レーシックは、まだまだ長期的なデータも乏しく、失敗例も多い。眼科医が眼鏡をし続けている限り、ベターな選択肢は眼鏡しか無いのか。

そこで私は、海外への訓練留学に行く際、ESSのCROSSBOWと度付きのRXインサートを新調し、訓練に臨んだ。全くもって考えが甘かった。レンズは有名なHOYA製だったが、カーブレンズのくせに視野が普通の眼鏡よりちょっといい程度。いくらアジアンフィットモデルとは言え、サングラスの中に眼鏡フレームをまた入れ込んでるので、目とレンズの位置が異常に近い。まつ毛が常にワイパーのように瞬きの度にレンズに干渉してしまう。そのため、当時の私はまつ毛を短くカットしていた。何ともマヌケな話だ。結局、使い勝手が悪いので普通の眼鏡の上から、ESSのNVGゴーグルを付けて訓練に挑んでいた。これはある意味では仕方がなかった。当時オークリーの純正度付きカーブレンズが対応できる度数はかなり限られており、私の視力ではオークリーを使用する選択肢は無かったからだ。


時は過ぎ、この不便さを解消するために相変わらずメガネ屋各店を放浪していると、オークリーの度付きレンズ可能範囲が広がったとの朗報が飛び込んできた。そこでこのSPLIT JACKETで制作してもらった。このような左右での2枚レンズタイプのサングラスだと、通常のレンズの下に度付きレンズを入れていると言う。いかにも度付きレンズを加えていると言う不自然さは一切感じられない。視野も通常のオークリーサングラスと同様で、一般的な眼鏡とは比べ物にならないほどの幅広い視界を得ることができる。「そうだ、裸眼の時はこんな感じだった・・・」と思い出させてくれる。カーブレンズなので、どうしても最初は世界が少し歪んで見えるような違和感は感じる。だが、使っているうちに、目がこのシステムに順応してくれるのですぐ違和感はなくなる。私は2日ほどで何の違和感も無く使用できるようになった。実に素晴らしいレンズだ。当初、アメリカ製の眼鏡レンズなんて大丈夫なのだろうか?大手のHOYAのカーブレンズでもあんな感じだったのにという不安はあった。だが、このトゥルーデジタルレンズテクノロジーにそんな不安は一切無用であった。少なくとも、現時点での各社カーブレンズの中では最高ランクだと私は思う。

何よりも、アメリカのアイウェアの厳しい適合規準である、ANSI Z87.1を大幅に越えたオークリー独自規格にクリアしているレンズ性能という点が安心できる。散弾銃の鳥撃ち弾程度では割れないという脅威のレンズだ。現に私はこのレンズに救われている。レンズ中央上部に髪の毛のような細い傷が付いているのが見えるだろうか?これは、某機関銃を使用中、様子がおかしくなったので規定の手順で故障排除をしていると、突如暴発してあろうことか機関銃の部品と発射ガスが私の顔めがけて飛んできた。部品やガスはこのスプリットジャケットのレンズに当たって逸れたので、私は無傷だったが、万が一アイウェアをしていなかったり、通常のメガネだと、飛んできた部品は大きめの物であったので、失明やそれ以上の大事になっていたかもしれない。(後にこの機関銃はリコールとなったが、それはまた別のお話で)

ただ、カーブレンズが故の弱点もある。顔に沿ったレンズやフレームなので、普通の眼鏡よりも曇りやすいという弱点がある。普通の気候だと対したことはないが、冬場で全力疾走等をした後に停止し、息が上がっていたり、温室等の湿度が異常に高い部屋に急に入った場合などはレンズが曇ってくる。その点も含めて、写真のようなベンチレーション(レンズ周囲の通気穴)を開けてもらった。これにより、完璧に曇りを防げるわけではないが、多少緩和される。ベンチレーションを開けることで、レンズの保持力はどうしても少し低下するが、使用する状況次第では考慮する価値はあるだろう。特にこのスプリットジャケットのような、フレームがレンズ全体を覆っているようなタイプのサングラスは曇りやすいのでオススメしておく。このベンチレーションはプラス5000円~7000円前後で加工してくれる。

ちょうどいいのでもう一つの弱点というか泣き所を言うと、その価格にある。オークリーのサングラスフレーム本体が1万円前半~2万円後半の値段帯で販売されている。これに、この純正RX度付きレンズを付属させると、プラス28000円~となってくる。私が愛用している、この透明レンズでプラス28000円、合わせて5万円台という最低価格なので、これに色や偏光・調光レンズ付きのものになると、5万や6万円という値段が本体フレーム価格にプラスされる。メガネが3000円程度で購入できてしまう今のご時世で考えると、なかなかのお値段のように思えるかもしれない。だが、視力が悪くとも、今まででは考えられなかったパフォーマンスを発揮することができ、ただでさえ性能の悪い目を、不慮の事故等でこれ以上悪くしないためにも、この選択肢は安いと思えるくらいのポテンシャルを持っていると、オークリーサングラスを数本メガネ化している私は言える。

(オークリー RX度付きレンズ単体の詳しいレビューはコチラ


ちなみに、このスプリットジャケットはサングラスからゴーグルへと変えることができる。別売りのウインドガスケットを装着することで、ゴーグルへと変貌できる。装着は簡単で、柔軟なゴムと樹脂製のフレームをそのままテンプルとフレームのすきまにポン付けし、ストラップをテンプル先端の穴にカチっとはめ込めばいい。取り外しも楽だ。


ガスケットそのものは、ベンチレーションが設けられているいるので、曇りどめにもなる。装着感が増し、不意の脱落も防ぐことができる。特に、このようなテンプルが耳の形に合わせて曲がっていないサングラスは、勢いよく下を向いた時にポロっと外れてしまうことが多い。風の巻き込みや異物の侵入も大幅に軽減されるので、モータースポーツや格闘技をする際は重宝する。私も近接戦闘の訓練等をする際にはこれを愛用している。2017年現在、このウインドウガスケット

このスプリットジャケットは使用し続けて5年以上になるが、今でも射撃や各種訓練やスポーツ、アウトドアの際には大変重宝している。今まで、ライフルのストック、格闘、薬莢等々、様々なモノに対して、私の顔の前に立ちはだかって守ってくれたが、損傷らしいものは一切無い。一時期、イラクで警備の仕事をしていた時も、このスプリットジャケットは私の目となり、守護者となって無事帰国させてくれた。2017年現在、このスプリットジャケットはポリッシュドブラックを除いてほとんどが販売終了してしまってるのが残念だ。とは言え、このスプリットジャケットそのものは、まだまだオークションや在庫のある店舗で販売していることも多く、それを入手してタナカ眼鏡等のオークリーを取り扱っている店舗に持っていき、RX度付きレンズを装着してもらうことは可能だ。お求めの方はぜひ。