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ジャンル:眼鏡レンズ、カーブレンズ

眼鏡ユーザーにとって、過酷な「3K」が多い、スポーツや戦場での活動は大変悩ましいものであった。眼鏡はもろくて邪魔な存在ではあるが、無くては仕事にならない困った存在だ。そんな人達の救世主が、オークリー社の最新光学技術で生み出された、度付きカーブレンズ「トゥルーデジタルテクノロジー」かもしれない。

執筆時期:2017年4月


図書館の片隅で、知的な顔でポール・ヴェルレーヌの詩集を読むようなメガネっ子ではなく、ラスト15分のランボーのような形相でお外を駆けずり回る武闘派メガネっ子は、自らの目が悪いことに対して、蛇蝎の如く恨んだり、歯がゆい思いをしたことが幾度となくあっただろう。少なくとも私もそうだ。この点に関しては、花粉症と同じく、目が良い者には理解できない話だろう。眼鏡があれば問題ないのではないか?1000年近く構造がほとんど変わらないこのシステムは、鼻の上にガラス細工をのせているようなものだ。ふとした衝撃や遠心力・重力加速度で飛んで行き、無残にも壊れてしまう。しかも視野が狭い。これだとコンタクトスポーツや戦闘行為なぞ、自殺行為に近い。そういう人はコンタクトレンズをすれば良いのでは?残念ながらそんなに甘くはない。コンタクトレンズは乾燥や異物が入ると、目の違和感や痛みで、この世全てのものがどうでもよくなる。そういう意味では、メガネを消失してボヤけた視界の中で目が「3 3」になっている方がまだマシだ。(眼鏡を無くした人の気持ちをこの表現方法で表した漫画家は天才であると思う。本当にこんな感じなのだ。)レーシックはリスクが大きいのが怖い。メガネやコンタクトのように合わなければヤメヤメとはいかない点も問題だ。


私も、今まで何個ものメガネを大破させてきた。コンタクトレンズも、演習場の弾着点の砂ぼこりで酷い目に会ってからは使用を控えている。メガネを壊し、コンタクトで泣きを見て、CROSSBOWとRXインサートの組合せで銭失いをして、ゴーグルとメガネとの組合せで落ち着こうとしてたところに、サングラスメーカーでお馴染みのオークリーが、度付きカーブレンズの作成可能度数を大幅に上げたというので飛びついた。元々、オークリーの度付きレンズは素晴らしいという噂を聞いてたが、私の度数(-3.50D)では無理だったので歯がゆい思いをしてたところだった。2017年現在では、モデルやレンズによって上下するが、最大+4.00D~-6.00Dまでの範囲が可能とのこと。現在、私が度付きレンズ化しているのはSPLIT JACKETFLACK JACKETの2種だ。激しい動きをする場合はスプリットジャケット、軽いスポーツやシューティング等ではフラックジャケットと使い分けている。


こちらがSPLIT JACKETのTRUE DIGITAL RX度付きレンズだ。正面から見ると、ただのクリアのレンズだが、

(SPLIT JACKETの詳しいレビューはコチラ


サイドから見ると、クリアのレンズの下に、度付きレンズがあるのがわかる。独自の加工により、接着剤やフィルム等を使用していない。これにより、度付きレンズとしての機能を持ちつつも、オークリーの高い光学性能と、目を保護する強靭なレンズとしての性能を両立させている。今まで、高速で飛翔してきた金属片や小石、格闘での打撃等々、普通のメガネだと間違いなく破損し、裸眼だと失明や、最悪命を落としていた事態にも遭遇したが、このレンズのおかげでしっかりと守られてきた。現在少し傷は付いているものの、使用にはまったく問題無い。


こちらは、FLACK JACKETの同レンズだ。-3.50Dの度数だが、どうしてもカーブレンズでの作成上、通常の平面なメガネと比べるとレンズの厚みは出てしまう。とは言え、アジアンフィットモデルのフレームと組合せると、レンズが顔やまつ毛、目に干渉するようなことは一切無い。最初こそ、カーブレンズの独特な視界に違和感を覚えたり、気分が悪くなる人もいるかもしれないが、眼はすぐ慣れてくる。数十分→数時間→半日→1日中と言った感じで徐々に慣らしていけば良いだろう。私の場合は、2日ほどで丸一日使用しても問題無いくらいに早く慣れることができた。

度付きのカーブレンズの作成は、一筋縄ではいかない。特にオークリーのサングラスに多い、ハイカーブでレンズを作るのは難しい。それもそのはずで、レンズの角度がどこも一定ではなく、そんな状態で違和感の無い視界を確保するのはよほどの光学技術が無いと不可能に近い。メガネレンズとして有名なHOYAのカーブレンズを購入したことがあったが、自分が使うメガネやサングラスのフレーム毎に調節されたレンズではなく、あくまで、フレームのレンズ規格にだけ合わせたカーブレンズなので、視界に違和感を感じたり、装着感が悪かったりで、スポーツや戦闘行為で使用するのは無理があった。


オークリーの場合は、フレームとレンズとの適合性をしっかりと合わせている。また、レンズのエリアによっても、綿密な設計がなされている。レンズ中央の前方・中間周辺野は、目標との遠近感や立体物の認識性能を、両眼での最適化が図られ、より正確に認識できることができる。私のような射撃がヘタな者でも、300メートルでのマンターゲットでのライフル射撃(ロートルの某64年生まれのライフル)で、このTRUE DIGITAL度付きカーブレンズを装着し、50点満点中47点を射ることができた。ちょっと上手い人ならば、満点も可能だろう。実に優秀で精密な光学性能なので、的を外した時はメガネのせいにできなくなってしまった。

一方、側方周辺野は、物の動きを察知することが得意なエリアなので、この能力を犠牲にしないように、違和感のある歪みやプリズムを最小限に抑えつつ、裸眼のような広い視野を得られるように設計されている。そう、大事なのはいかにアイウェアを装着しながら、裸眼のような視界を両立させるかである。特に、このFLACK JACKETのようなフレームがレンズ全体を覆っておらず、カーブの強いものは、本当に裸眼に近い視野を確保できるので、室内戦闘のようなCQBや、白兵戦での「察知・認識・速度」が重要視されるシーンでは、従来のメガネでは不可能だったパフォーマンスを発揮することが可能だ。それでいて、目を保護できるのだ。

(FLAK JACKETの詳しいレビューはコチラ


この度付きレンズの値段は、透明なレンズカラー(Clear)で最も安い28000円~となっている。これにフレームの値段が加算されるので、最低でも4,5万円という価格にはなる。これに遠近両用、他カラー、偏向レンズ等のオプションを付ければ、10万円を越えることもある。とは言え、それ以上の価値はあると私は思う。少なくとも、従来のアイウェアやコンタクトレンズでは満足できなかった人にはぜひ試してもらいたい。

また、各種スポーツ競技に特化した面白いモデルもある。

○PAL GOLF:ゴルフ用。遠距離がよく見えるエリアを広く設け、飛んでいったボールやゴールを確実に捉えることができる。また、中間部は不快な歪み等を最小限に抑え、確実な一撃を決めるれる。そして、近距離部を設け、スコアカード等の手元作業も行える。

○PAL CYCLE:自転車競技用:遠距離エリアをより広く設け、中間部は緩やかな度数変化にして、周囲の路面状況やサイクルコンピューターを認識しやすい設計がされている。

○PAL FISH:フィッシング用:こちらも遠距離エリアを広く設け、近距離エリアも広く確保して釣り道具の細かな作業をストレス無く、正確にできるように工夫されている。

さて、わざわざこのようなものまでレビューにして、オークリーの回し者かと言われるかもしれないが、私自身はこの選択肢がベストだとは別に思っていない。オークリーとは言え、様々な欠点もあるし、場合によっては従来の眼鏡やコンタクトレンズの方が良い場合もある。ただ、現時点でのベターな選択肢ではあるとは思う。故に私はオークリーを使い続けている。興味が沸いた方は、様々なメガネ・サングラスやスポーツ専門店で取り扱っている。詳しくはこちらで直営店やディーラーの検索も可能だ。ますますオークリーから金でも受け取ったような感じになってきたのでここらでやめておこう。