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ジャンル:ライフルスコープ

ボルテックスのリーズナブルなショートスコープがさらにパワーアップ!

実弾射撃評価:有り(AR-15系)

執筆時期:2020年11月

※1:2024年5月 実弾射撃評価を行ったため、加筆・修正等を実施。

※2:2024年5月 FFP版にも見て触れてきたため言及

→本製品を提供してくださったT・I氏に感謝いたします。

前世代の「Vortex STRIKE EAGLE 1-8×24 AR-BDC2レティクル版」はこちら ↓ ↓

【レビュー】 VORTEX – STRIKE EAGLE 1-8×24

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) VORTEX OPTICS (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 25.4cm
重量 約499グラム
対物レンズ径 24mm
倍率 1倍~8倍
視野 (FOV) 109ft~14.4ft / 100yds:33.2m~4.3 / 91.4m
アイリリーフ 8.89cm
レティクル AR-BDC3(MOA)
イルミネーション 赤LED 1~11段階
使用電池 CR2032リチウム電池
価格(購入価格) 499.99ドル(2020年9月、429.99ドルで購入)
  2023年、価格は699.99ドルに値上げ

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 CQBでも狙いやすい多機能なレティクル
  スローレバーが付属
改善を要する点 晴天時にはイルミネーションの明るさが今ひとつ足りず、夜間では少し明るい
  大幅な値上げにより商品力が低下

 

ツノを生やして新登場!


求めやすい価格で、アマチュアシューターを中心に人気のボルテックス社のライフルスコープ「Strike Eagle:ストライクイーグル」シリーズ。特に「Strike Eagle 1-6×24」と「Strike Eagle 1-8×24」は、3Gunやサバイバルゲームのユーザーからの支持も高い。そんなストライクイーグルシリーズが、3度目のマイナーチェンジが行われた。レティクルがより高機能&使いやすくなり、倍率変更がしやすいスローレバーが標準装備化されている。しかもお値段据え置きである。そこで、以前紹介したStrike Eagle 1-8×24のマイナーチェンジモデルを今回入手したのでレビューしていきたい。


外箱は以前のものと比べて商品写真の背景を白に変えただけと思いきや、内側にもクールな写真を追加して少しリッチになっている。


本体とレティクルの説明書も写真が見やすくなっており、改善を感じさせる。

本体説明書は1-6×24と1-8x24と共用。


全長(25.4cm)や表面のコーティング等は特に変わりない。

1-6×24の方は約26.6cmとこちらより1cmほど長い。


重量は以前の468グラムよりも30グラムほど増した499グラムと増量。

ちなみに1-6×24は524グラム。


体重が増えた主な原因は、このスローレバーが増設されたことにあるだろう。

今までスローレバーは別売りのものを取り付ける必要性があったが、これにより、倍率変更が非常に行いやすくなっている。

このスローレバーは、ねじ込み式なので脱着が可能。


マイナーチェンジ版のもう一つの変更点が、倍率を上げる際に回すダイヤルの方向が、反時計回りから時計回りへと変わったことだ。今まで、上位モデルと比べてStrike Eagleシリーズだけ逆だった。


イルミネーションダイヤル(左)とエレベーションノブ(上)、ウィンデージノブ(右)は特にデザインや機能の変更は無し。


エレベーション&ウィンデージダイヤルのマーカーで書かれた基準点や、ウィンデージダイヤルカバー裏の予備電池入れも前世代と同じ。


これも同じく、前後フリップアップレンズキャップが付属する。

個体差だと思うが、後部フリップアップキャップが緩く、何かで引っ掛けるとスっぽ抜けやすかった。藪漕ぎなんてしたら確実にMIAだろう。

後日、店頭展示してた別個体に触れた際はここまで緩くなかった。やはり個体差か?


レンズのコーティングは、紫系が多かった前世代と比べ、緑系のコーティングが多くなった印象。

倍率はこちらの方が上だが、レンズの質に関しては1-6×24の方が若干上という報告があがっている。


もう一つの大きな変更点がレティクルにある。前世代のAR-BDC2から、AR-BDC3に変わり、機能が増えたり、より詳細になっている。

まず、中央のホースシュー(馬鉄型)レティクル「B」の上にある線と数字は、人間の上半身を模した、IDPA等の競技で用いるダンボールの人型ターゲットの距離測定を行なう際に利用する。具体的な使い方は、「A」の横線に人間の上半身の最底辺を合わせ、頭頂部が上のどの数字のラインに近いかで距離を測定する。例えば、頭頂部が3のラインに合わさっている場合、ターゲットまでの距離は約300ヤード(約274.3m)ということになる。数字の通り、300~600ヤードまでのターゲットの距離測定が可能だ。

よく用いられているダンボールの人型ターゲットの高さは76~85cm前後。

さて、次は中央付近にごちゃごちゃ固まってるレティクルの説明に移ろう。ど真ん中の1MOAサイズの中心点「C」のセンタードットを、77グレインの5.56x45mm NATO弾を使用し、200ヤード(約182.8m)でゼロインしたとしよう。すると、下段の横線がBDC機能(距離における弾丸の落下予測)として用いることができる。距離は300~650ヤードまで対応。

その他、近距離でゼロインした場合や、7.62x51mm NATO弾にも対応している。

左右3つずつ横に連なっている0.25MOAサイズのドットは、距離毎の風速5mph刻みの弾丸が流される予測ポイントを表している。

例:500ヤード先のターゲットに対し、風速10mphの風が左に吹いている場合は、「☆」の位置でターゲットに照準する。

もちろんだが、本スコープはSFP(Second Focal Plane:第二焦点面・・・倍率を変えてもレティクルが拡大&縮小しないタイプ)なので、最大倍率じゃないとこれらの機能は使えない。

2023年、倍率に応じてレティクルが拡大縮小されるFFPモデル(First Focal Plane:第一焦点面)が加わった。各種ダイヤル等の形状が上位モデルであるViper PSTやRazor HD Gen2のような形状になった上位モデルとしてラインナップに加わっている。

最後に「D」の外縁上左右から出っ張っている太めのクロスヘアを見てもらいたい。前世代と比べて大きく、そして中央付近にあったものが、外縁部から伸びて先細る形状になったので、近接戦闘等で大まかに照準を付ける際のガイドとして使用しやすい。このようなレティクルは私好みだ。


こちらは前世代の1-8×24のAR-BDC2レティクル。比較用にどうぞ。あなたはどちらのレティクルが好みだろうか?

撮影機材や、撮影環境、あと撮影当時の設定等が違うため、いろいろと違うとこが多いと思われるかもしれないが、レティクル形状以外のレンズの質等は前世代もマイナーチェンジ版も大きな違いは見られなかった。


※画像クリックで拡大可

1倍率時に、イルミネーションOFF時とON時の様子を撮影してみた。

前世代は暗所でのレティクル補助光程度の明るさのイルミネーションだったが、マイナーチェンジ後は2~3段階ほど明るくなった。晴れの日でもくっきりと使えるレベルの明るさではないが、日陰や曇り空の元ではハッキリと光っているのがわかるレベルだ。CQB戦時でダットサイトのように使う手法もできないことはない。もう3段階ほど明るく設定できればより良いのだが・・・

イルミネーションの明るさについては、上位モデルであるFFP版も同じであった。

前世代と比べて、イルミネーションの発光部位も、ホースシューレティクルとセンタードットのみになったので、パッと照準が合わせやすい。

最低光量も若干明るくなっており、夜間だともう1~2段階ほど暗くなってもらいたい。

対物レンズ側からイルミネーションが灯っている様子が見えやすい点は変わりない。

レンズの歪曲に関しては、同価格帯のLPVOの中では全体を通じて少し多い部類だ。1倍率時の時もスコープを上下左右に大きく動かしていると目立ってくる。


※画像クリックで拡大可

4倍と8倍時

等倍の時から気づいている人もいるかもしれないが、レンズ左上にある緑色のゴーストが倍率を上げていく毎に色濃く、大きくなっている。やはりレンズそのものは大きく変わってないのか、こういう癖は前世代と同じだ。基本的には外縁部に出るので、ターゲットへの照準に大きく影響することは少ない。

特に光源を背にした際に出やすい傾向にある。

AR-BDC3レティクルは、Leupold社のMark6やD-EVOに搭載されている「CMR-W」レティクルを少しシンプルにし、CQB戦での使い勝手を向上させたようなレティクルだ。50ヤード(約45.7m)の近距離で複数のターゲットに対しての射撃を行ったが、自然とターゲットがレティクル中央に吸い込まれていく。近距離~中距離で柔軟に使える良いレティクルだと思う。

レンズの歪曲は4~6倍率時では比較的ましだが、8倍率時は大きくなる。


アイリリーフに関しても、1倍時で約9cm~11cm、8倍時で7.5~9cm弱と前世代とほとんど変わりなかった。

アイボックスについても同様で、1倍率時ではこの価格帯のLPVOとしてはけっこう広い部類であり、CQBや競技等で有利に働く。ただ4~6倍率時のアイボックスは可もなく不可もなくと言った感じだが、8倍率時はかなり狭くなる。頬付けや構えをしっかり行わないとレンズにケラれやすい印象だ。レンズの歪み共に、この価格帯の8倍率LPVOならこんなものか。

重量増に関しては、体感的にはそこまで感じない。

Conclusion | 総評


増設されたスローレバーのおかげで、倍率切り替えが圧倒的に素早く行えるようになった。1倍~8倍までは180度近い移動量があるので、この手のスローレバーは可変倍率範囲が大きい機種ほど欲しいものだ。

その他レティクルを、CQBと精密射撃の両方を向上させれるように改良し、イルミネーションももう一声、二声欲しいながらも光量アップ。それにも関わらず、重量が少し増えた程度でその他大きな欠点が増えたわけでもなくお値段据え置き、1-6×24で399.99ドル、1-8×24で499.99ドルと実にバーゲンプライスという価格だった。

ただ、2023年に価格は1-6×24で449.99ドルに値上げ、そして1-8×24は699.99ドルと200ドルも値上げされた。1-6×24に関してはタレットが変更され、ご時世も考えると50ドル程度の値上げはむしろ少ないと感じる。

ちなみに1-6×24はStrike Eagleシリーズではなくなり、新しく新設された下位グレード扱いのVenomシリーズとなった。

1-8×24に関しては、特段変更点もなく200ドルの値上げは少々厳しいものがある。700ドルという価格帯になると、別の選択肢が思い浮かんでくる。

そして、FFPモデルは899.99ドルという価格になる。正直この価格ならば、倍率は下がるが同じ値段でより性能の良いレンズやイルミネーションを備えたViper PST Gen2に切り替えるべきだ。

700ドルでこのレンズの歪み等については少し気になってくる。倍率よりもアイボックスやレンズの質が良い方を選びたいのであれば、残念ながら1-6×24を購入したほうが良い。