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ジャンル:ダットサイト

ドイツ、STEINER社のコンパクトなダットサイト

検証人数:2人

実弾射撃評価:有り(Remington M870)

執筆時期:2022年12月

※本製品を提供してくださったY氏に感謝いたします。

※兄弟機と思われるFastFire 3のレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 Burris – FastFire 3

SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) STEINER(ドイツ連邦共和国・不明)
サイズ(全長×全幅×高さ) 48mm x 46mm x 40mm
重量 約70.8グラム
対物レンズサイズ 21mm×15mm
倍率 1.07倍
パララックス(視差)設定 40m
ドットサイズ 3MOA
イルミネーター 赤色LED 自動調光&手動3段階&NVモード
使用電池(電池寿命) CR1632リチウム電池(550時間)
耐反動性能 750G
動作保証温度 -25℃~55℃
防水性能 10m
価格(購入価格) 619.99ドル(2020年、430ドルで購入)

アメリカ生まれのドイツ育ち


ドイツにあるSteiner(シュタイナー)社は、日本と並んでドイツご自慢のレンズ技術を活かした、高性能なスコープや双眼鏡を販売しているメーカーだ。

そんなSteiner社が世に送り出した、法執行機関向けの拳銃や散弾銃、短機関銃用途の小さなダットサイトが「MRS (Micro Reflex Sight)」である。このダットサイトは、米国Burris社の拳銃用オープンダットサイト「FastFire 3」と似ている部分が多いというか、それをベースに作ったのではないか?と密かに言われており(公式は特に何も言ってない)、以前レビューしたBuriis FastFire 3との比較も交えながら話をしていこう。

実はBerettaホールディングスの傘下であるバリス社は、少し前にSTEINER社を買収しているので、おそらく間違いではないだろう。


まずSTEINER – MRSとBurris – FastFire 3はそもそもダットサイトのタイプが違う。FastFire 3はオープンタイプのダットサイトであり、MRSはチューブ式というかクローズドタイプ(密閉型)のダットサイトだ。アメリカ育ちの子がドイツに養子に出され、ガチっとした形状になりましたというのは面白い話である。

全長はFast Fire 3と同じく48mmだが、全幅と全高は側面に移設されたバッテリーコンパートメントやカバーのおかげで共に40mm台となった。

それでも、Aimpoint – Micro T-1と比較すると二周りほど小さい。

密閉型となったおかげで、MRSは10メートルまでの水深に耐えうる防水性能を獲得している。


細部じっくりと見ていこう。

STEINER – MRSとなり、上部に樹脂製のハウジング部が追加された。

樹脂製とは言え、FastFire 3に付属する密閉性の無い薄い樹脂製ウェザーシールドとは違い、こちらは強化複合樹脂であり、ちゃんと密閉されている。

重量はFastFire 3から約22グラム増の70.8グラムであり、けっこう軽く改造されているようだ。(共に20mmマウント込の重量。ちなみにAimpoint – T1は116グラム)


対物レンズサイズはFastFire 3と同じく21mm×15mm。

レンズのコーティング等はマルチコーティングなのは同じだが、色合い等がけっこう違う。

レンズ下部に白く光って溜まってるものは、コーキング剤である。FastFire 3に屋根を載せて、密閉性を高めるためにぶちゅ~っと塗布したのだと思うが、けっこう雑である。

その下にあるホクロのような小さな凹みは、光センサー受光部。ここから前方部の採光をし、自動調光の判断となる。


左側面にすべての操作を一役に担うボタンが一つある点は同じだが、MRSはボタンが大きくなり、ハウジング部から出っ張ったシールド付きとなっている。

FastFire 3の小さなボタンと比べてボタンの押し心地は硬くなっているが、押しやすさは断然こちらのほうが良い。グローブ等してたり、暗闇でも感触がわかりやすくなった。

操作方法もほぼ同じ。スイッチを1回押すと自動調光モードになり、前方の光センサーから得た情報を元に、自動的にダットの光量を調整してくれる。その他大勢の自動調光機能付きダットサイトと同じく、明るめに調光される。
それ以降のボタン操作は3段階の手動調光ができ、最大→中間→最低光量と切り替わっていく。
私はほとんどの自動調光機能の匙加減が気に入らないので、3段階とは言え手動で調光できるのは嬉しい。
最低光量後にもう一度ボタンを押すと電源をオフにできる。

FastFire 3と比べて一つ違う点は、どのモードからもボタンを3秒以上長押しで暗視装置モード(超低光量)に切り替えられる。

ハウジング部は両側面にトルクスネジで留められているが、取り外せるようにはできていない。(そんなことをすれば密閉型ではなくなる)


FastFire 3では対物レンズ後方にあったバッテリーコンパートメントは、MRSで密閉型になったことにより、右側面に新造された。

ハウジング部から繋がる出っ張りは樹脂製だが、蓋に関しては金属製となっている。脱落防止のカバーされたワイヤーが付いている点は良い。

使用する電池はFastFire 3と同じくCR1632。一つ不可解な点があり、いったいどの光量設定を想定して説明書等にそう表記しているのかはわからないが、電池寿命は公式設定で550時間とけっこう短い。FastFire 3の電池寿命は5年間(これもどの光量を想定しての寿命なのか不明)なので、内部システムをいじっていないのであれば、電池寿命はあまり変わらないはずだ。

各種レビュー等を見る限り、電池寿命に言及している人は特にいないので、おそらくかなり明るい設定での電池寿命だと思われる。

ダットの上下左右を調整するエレベーション&ウィンデージダイヤルは、まったく同じ作り。ただ、1クリックの移動量は1MOAと同じだが、最大移動量は共に90MOAとなっている。(FastFire 3は115MOAと86MOA)

その他ダイヤル周りの各種表記は、白から目立ちにくいグレーに変更されている。

接眼レンズ部のコーキング剤は、黒色となっていて、対物レンズ部と比べると丁寧に塗られている。

だが、このコーキング剤が厄介なのだ。レンズをクリーニングしようと思い、レンズペンで拭いていると、だんだんと油脂というか曇りのような汚れが出てきて、いくら拭いてもそれが取れない。アルコールでも除去できないのでどういうことかと考えたら、なんとこのコーキング剤が薄く引き伸ばされて塗りたくられているではないか。レンズに傷をつけないように何とか除去したものの、こいつのレンズクリーニングを行う際は、コーキング剤に触れずに掃除するしかない。つまり、レンズの端っこはクリーニングはあまりできなくなってしまう。対物レンズ側の雑なコーキングと同様、これに関しては要改善である。


接眼レンズから本体内部を覗いてみると、FastFire 3の名残りと思われるバッテリーコンパートメントになるはずだった部位が見える。FastFire 3の途中製造過程からMRSになったようだ。


MRSには、拳銃等に装着可能なユニバーサルマウントのタイプと、今回紹介している20mmピカティニー規格のマウントの2種類がある。現在流通しているのはほとんどピカティニー規格モデルばかりで、Buriis FastFIre 3のように本体と20mmマウントを分離することはできない。

マウントの質等に関してはFastFire 3と同じだ。手締めでも固定できるが、より強固に絞めたい場合はマイナスドライバーを使用すればよい。



ここまで両者の共通点が多いことを書いてきたが、レンズを覗いてみると意外と違う点が多いことに気付かされる。

まず両者とも対物レンズサイズは同じだが、MRSは接眼レンズのある密閉型なのに加え、ハウジング部のはみ出し等で実際の視界が狭くなっているのがわかる。

FastFire 3が薄い水色のレンズなのに対し、MRSはレンズ上半分が薄く紫色がかっている。

公式によると、倍率は1.07倍と表記されている。この倍率はFastFire 3も同じであり、写真でも若干拡大されているように見えているのがわかる。

拳銃に載せるような小さなダットサイトのほとんどは、小さなレンズの光学的な設計上、完全な1倍ではなく、このように若干倍率があることがほとんどである。まぁだいたい1倍じゃない?って感じで「1倍」と表記するのではなく、厳密にどれだけの倍率かを表記してくれているのは良い参考となる。

ドットのサイズもFastFire 3と同じく3MOA。

50メートル照準 | FastFire 3 / MRS / T1




180cmの高さに吊るした青のツナギを、50メートルの距離に設置して照準。

レンズの透明度や、ゴーストやフレアの出やすさだけを見れば、3者とも大きな差はあまりない。

写真でも出ているが、MRSは接眼レンズ部に少し映り込みが出てくる。場合によって気になることもあるだろう。

こうして見比べてみるとわかりやすいが、T-1のダットLEDの色がピンクがかった赤なのに対して、MRSやFastFire 3はオレンジ色がかった赤だ。

ダットの明るさは、FastFire 3とMRSが手動3段階の中間設定、T-1が12段階中9段階。

MRSの最大光量はT1に置き換えると11段階目、中間光量は9と10の間、最低光量は7と言った具合だ。

最低光量は、照明を点けている室内だと丁度良いか少し暗く感じるレベルの光量。夜間は明るすぎるのであまり使用できないだろう。最大光量は直射日光下の元でも問題なく使える明るさだ。これはFastFire 3と同じ

100メートル照準


180cmの高さに吊るした青のツナギを、100メートルの距離に設置して照準。

MRSには手動や自動で調光できる最低光量のさらに暗く点灯できる、暗視装置モードがある。とは言え、暗視装置モードは肉眼で視認でき、夜の住宅街でちょうどよい明るさとなっている。暗闇で使用する場合は、できればもう2~3段階くらいは暗くなってくれないと使いにくい。

暗視装置モードはT1の明るさで例えると、12段階中6段階目。

写真の光量は50メートル時と同じく手動中間光量。もう少し細かく調光ができたら、100メートルでのヘッドショットもやりやすくなる。

このような白っぽい背景だと、レンズが上に登るに連れて薄水色から薄紫に変わるグラデーションがわかりやすい。少し色合いの違和感はあるが、薄いので大きな影響は個人的には感じない。

パララックステスト │ 100メートル


公式によると、パララックスフリーと表記されているBurris FastFire 3と違い、パララックス(視差)の設定は40メートルで設定されている。

100メートルの距離で調べたところ、上下左右共に約10cmほどのずれであった。FastFire 3と比べて少ない。


対物レンズから見えるダットが灯っている様子は、FastFire 3よりは見えにくくなっている。ただ、角度や周囲の明るさによっては適正光量でも見えてしまうので過信は禁物。(写真は手動中間光量で点灯)

ガンハンドリング、使用感等


Aimpoint T-1系よりもコンパクトなサイズなので、アサルトライフルに載せた場合でも非常にロープロファイルで重量も含めて任務遂行の邪魔になりにくい。当然ながら激しく振り回してもMRSを載せたことによる遠心力の増加等は感じにくい。


密閉型であり、防水性能や耐衝撃性能も高くなっているので、藪こぎや豪雨程度で壊れることはない。持ち主はこれをレミントン M870に載せて狩猟を行っている。

12番ゲージスラッグや.00バックショットを70発前後撃ってきたらしいが、不具合やゼロインのズレ等は一切無いとのこと。

Conclusion | 総評


個人的にはサイズや軽量さを生かして、サブマシンガンやショットガンに載せて軽快に元気に運用するのが好みだ。

縁で隠れる部分も含め、実質レンズ視野はそんなに大きくないが、横長形状のレンズは素早く動く状況でも狙いやすいと感じる。

ただ、Burris FastFire 3に屋根を付けて毛を生やしただけの部分も多く、煮詰めきれていない感じも否めない。そしてこの価格帯(希望小売価格619.99ドル、実売450~570ドル)だと、より細かなセッティングが可能でレンズ性能も高く、サイズもさらに小さい密閉型ダットサイト「HOLOSUN – HE509T X2」等の他の選択肢も出てくる。

また、ダットサイトとしての使いやすさなら、半分以下の価格でVortex – Crossfire Red Dotや、SIG SAUER – MSR等を購入したほうが良い。

レンズのメンテナンスのしにくさを除き、致命的な弱点は無いので、このアメリカ生まれドイツ育ちのダットサイトが気に入った場合は購入しても大きな後悔は無いだろう。