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ジャンル:暗視装置、デジタル暗視カメラ

ハンディーなカラーデジタル暗視カメラの代表格、SIONYX社のAuroraシリーズ。闇夜の世界に色を与え、従来の暗視装置を過去の遺物へと変えれるのか?SportとProの2機種で検証したい。

 

執筆時期:2021年1月

※本製品を提供してくださったT・O氏に感謝いたします。

より高性能な暗視性能に改良された、最上位モデル「Sionyx – Aurora Pro」のレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 SIONYX – Aurora Pro

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) SIONYX(アメリカ合衆国・インドネシア)
全長 約11.8cm
重量 約274グラム
撮影素子 1インチCMOS
焦点距離 16mm
F値(開放) F1.4
最大ISO感度 819200
画角 42°
防水性能 IP67
使用バッテリー(稼働時間) SP-50、もしくはNP-50リチウムイオンバッテリー(約2時間)
価格 399ドル(後に599ドルに値上げ)

グリーンな闇夜をカラフルに


暗視装置やナイトビジョンと言えば、光増倍管を用いたものが主流であった。そこには真緑の世界が広がり、実際に使用したことが無い人も、一度は映画やテレビ、ゲームの世界で見たことがあると思う。

近年、かつての大戦時より続いてきた光増倍管方式の他に、デジカメやスマホのカメラに使用されているCMOSイメージセンサーを用いた「デジタルナイトビジョン」が徐々に頭角を現してきている。それまでCMOSセンサーを用いたデジカメで暗視を行うとなると、IR(赤外線)ライトの助けを借りないと、肉眼のほうがよっぽどかマシなレベルであった。近年、高感度技術が発達したおかげで、従来の光増倍管を用いたナイトビジョン並の実用域に到達しつつあり、キャノンやNEC、ソニー等の国内メーカーも、安全保障やセキュリティーを視野に開発を行っている。

狩猟やセキュリティー、アウトドアを目的とした民生品のデジタルナイトビジョンは、赤外線ライト無しでは使い物にならないガラクタが多かったが、Sionyx社のAuroraが出ると、従来のナイトビジョン並に使えるすごいデジタルナイトビジョンだ!と話題になった。今回はその廉価版であるAurora Sportと、より高性能版のAurora Proをレビューしていこう。


まずは廉価版のAurora Sport(CDV-200C)からだ。

見てくれこの外観、というよりもこのカラーリングを!まるでXウイングのコックピット後方に鎮座し、おしゃべりな金ピカドロイドが今にもやってきそうなデザインだ。

初代Auroraは黒と緑の少しミリタリー用品っぽいデザインだったが、Aurora Sportは暗視カメラとは思えない明るい色合いになった。これは、狩猟やセキュリティーだけでなく、より幅広い用途の夜間撮影に使用してもらいたいことから、このような親しみやすい色にしたそうだ。

初代Auroraとの違いは、GPSと電子コンパス、電子表示ファインダー、アイセンサー等を排し、価格を799ドルから399ドルへとプライスダウンさせている。


焦点距離16mm、開放F値1.4のレンズ前方には取り外し不可能なレンズプロテクターが付いている。

センサーには出自は明らかにされていないが、1インチの超高感度CMOSイメージセンサーが搭載されている。


電源やモード切り替えは左側面のダイヤル操作によって行う。

電源を入れるとダイヤル横のインジケーターが緑色に点灯する。

ダイヤル下のカバー内にはUSBポートがあり、充電等を行える。


本体上部には赤い録画及び撮影ボタンや設定や倍率変更等に使用するボタン類が配置されている。


レンズ付近には、フォーカスダイヤルがある。ピント合わせは手動によるマニュアルフォーカスである。

その下の「SCENE」と表記されているダイヤルは、日中撮影用の「DAY」、薄暗いエリアでの撮影に適した「TWLT(Twilightの略)」、そして夜間や暗闇での撮影用の「NIGHT」モードの計3種類のモード切り替えができる。

ナイトモードに切り替えた際は、内部でカチッという音と共に赤外線フィルターがレンズ前方に出てくる。


底面には一般的なカメラ用三脚ネジの規格である1/4-20UNCサイズのネジ穴がある。

これにより、三脚に固定するだけでなく、ナイトビジョン用のヘルメットマウントに装着する人もいるようだ。

ヘルメットマウントに装着すると、モニターの情報表示が逆さまになりそうだが、設定で表示を上下逆にすることができる。ちゃんとそういう用途を考えられているようだ。


後面の接眼部にはEVF(電子ビューファインダー)として有機ELのマイクロディスプレイがはめ込まれている。右側のダイヤルは視度調整で、これでディスプレイのピント合わせを行う。

メガネ等をかけていると画面端が少しケラれてしまうのはこの手のファインダーの宿命だ。


後部のEVFユニットは取り外すことができる。内部にはバッテリーとSDカードを入れるスロットがある。

使用バッテリーは、SX-50という充電式リチウムイオンバッテリーだ。このバッテリー形状、どこかで見たことがあると思ったら、富士フィルム社製のデジタルカメラによく使用されるNP-50というバッテリーと同形状であり、互換性もあるとのこと。

私がかつて使用していたFujifilm X-10のバッテリーもこれだった。


全長11.8cmのハンディーサイズであり、重量も274グラムとヘルメットにマウントしても苦にならないサイズと重量だ。

操作性は見た目よりはやりやすく、モードの切り替えやズーム操作はパパっと行うことができる。

日中撮影


デジタルナイトビジョンではあるが、日中でも動画や写真等の撮影は可能だ。ただ60fpsとは言え最大でも720pのフォーマットでしか記録できず、まぁ画質もご覧の通りだ。最近のスマホのほうが動画も写真もはるかに綺麗に撮れる。



従来の光増倍管方式のナイトビジョンだと、日中での使用は場合によって損傷の原因ともなるが、本製品の場合はたとえナイトモード(NIGHT)であっても問題なく使用できる。

ナイトモードの場合、装着されるフィルターや映像処理の関係上、写真のような赤紫色がかった色合いの映像となる。

夜間撮影 | 各モードで


さて、そろそろ本題の夜間撮影を行ってみよう。

○まずは雑木林を背景に、10m先に赤・黄緑・水色・黄色のカラーボードと専属警備員(犬)を配置した状態で撮影

○月が見えない新月で、星明かりと左30メートル先に民家の明かりがある。

という状況下だ。

Day(日中)モードではご覧の通り非常にノイジー。カラーボードの存在は確認できるが、夜見えにくい赤や黄緑のボードは不鮮明になっている。背景の雑木林や犬に関してもほぼわからない。

ちなみに肉眼だとこの不鮮明さからノイズがなくなった感じである。

Twilightモードになると、ノイズも少なくなり、雑木林や犬の様子がわかるようになった。


こちらがオーロラの本領発揮、NIGHTモードである。

Twilightモードと比べると、ノイズがより少なくなり、彩度が上がっている。だが、劇的にディティールや全体が鮮明になっているわけでは無い。

設定により、フレームレートの変更はできるが、いろいろと試した限りだと24fpsがノイズの量と動体物や動きながらの撮影のバランスが一番良いと感じた。以後の動画撮影はこの設定で行っている。

フレームレートが30fps以上だとノイズが目立つようになり、20fpsを下回ると動きに弱くなる。

これ以降はこちらで作成したYoutube動画と共に見ていただきたい。

基本的にこちらのページに載せる写真は写真モードで撮影したものなので、動画モード時との違いも兼ねて見ていこう。

夜間撮影 | 露出の変更による見え方の違い

次は露出補正能力を用いて-2から1づつ上げていき、見え方の違いを検証したい。

○撮影状況は新月で星明かりのみある公園にて、100メートル先の小屋を撮影。

動画は0:50~


露出-2や-1では、何があるのか分かりづらく、-1で小屋があるのがわかってくる。

肉眼ではちょうど-1くらいの見え方であった。


0や+1と上げていくと、小屋の細部や街灯の様子、生け垣や地面の状態までわかってくる。

だが、それと同時にノイズも多くなってくる。動画だけでなく、写真でもそれは顕著だ。


最大値の+2にしていくと、右や左端の倒れたサッカーゴールポストの様子もわかり、小屋と生け垣の境界、地面の起伏、木々のディテールがよりわかる。

ノイズの色合いは白っぽい色が多いため、写真も動画も露出をここまで上げていくと、木々や陰が濃い場所を除き、一見ノイズが若干少なくなったかあまり変わらないようにも見えてくる。

このような環境下では、ケースバイケースで露出+1~+2で使用していくのがいいだろう。

夜間撮影 |赤外線ライトを用いた補助光


動画は1:19~

※写真と動画で使用した赤外線ライトは波長865nMのものを使用。

さて、本製品はNIGHTモードに切り替えるとIR(赤外線)フィルターがかかるので、本体に赤外線ライトは備えていないものの、外部から赤外線ライトを用いての補助光として使える。

赤外線ライトなので、肉眼では照射の様子は見えないが、照らすと通常の懐中電灯を使用しているかのように、今まで写っていなかった地面に生えた雑草や遠くの様子が鮮明にわかる。

どうしても赤外線の特性上、色まではわからないが、より鮮明に見たい時や、このカメラの能力ではよく見えない状況下の際に、この装備があるとより使用状況を広げられるだろう。

言うまでもないが、人間の目には見えなくとも同じような機材や暗視装置だと赤外線ライトが灯っている様子はわかる。監視や偵察任務等で相手も同様の装備を持っていることが想定される場合の使用はご注意を。

夜間撮影 | 月明かりも星明かりもない暗闇での撮影

では月明かりも星明かりない暗闇ではどう映るのか?

○100メートル程度先に民家の明かりは見えるが、肉眼だとほとんど何も見えない木々に囲まれた小道を撮影してみた。

動画は1:33~


この道は街灯が無く非常に暗く、月明かりも星明かりも無いと、肉眼では露出-2かそれ以下にしか見えない。

たとえ第3世代の光増倍管方式のナイトビジョンでも、ノイズが多くて非常に見えにくい。

-2と比べて-1ではノイズが顕著に出てくる。やはり暗闇で露出を上げたところでノイジーな画像しか出力されないのだろうか…


と思っていると、+1になった途端周りの光景が認識しやすい映像へとなった。


これが+2。木々や側溝の様子までわかりやすくなっているではないか。これなら暗闇でも暗視装置として使えのではないか?そう思わせてくれる。

ノイズそのものは露出を上げる毎に比例して多くなっているのだが、露出を上げて光を取り込こむ量が増えることにより、ノイズが背景の明るさに隠れて見えにくくなっている。

だが、これは静止画モードで撮影したjpegの場合の話だ。動画モードやビューファインダーで見ると、露出補正-1以上はノイズが多すぎて何が写っているのかまるでわからない。+2なんて砂嵐の中にいるような映像でとても見れたものではない。

動画の場合詳しくは1:33~を見て欲しいが、-1の状態で写真モードでの-2と-1の中間のようなノイズや明るさの状態が、この機種での限界だと感じた。20メートル先にいる人間が動いているとわかるくらいだ。

夜間撮影 |人工光がある場所での撮影


ただこの機種は人工光がある場所だと強い。肉眼やそこらのミラーレス一眼レフカメラでは黒く潰れてしまうような、薄暗い建物でも、少しでも光源があるとカラーの暗視能力をうまく発揮してくれる。

このような環境下だと先程の暗闇と逆で、動画のほうがノイズが少なくて見やすいのも特徴だろう。(動画は0:25~

Conclusion | 総評

まず従来の光増倍管方式の暗視装置と比べると、第2世代(Gen2)程度で、環境によっては第2世代+(Gen2+)くらいの暗視能力だ。どう転んでも第3世代には届かない。

開けておらず、あまり光がない暗闇だと、ノイズが多すぎるため、場合によって肉眼と同レベルなことも多い。

画質設定は最大でも720p程度ではあるが、ちょっとしたナイトイベントや、月明かりで開けた場所、人工光が多い場所ではカラーでの撮影ができるという強みもある。ある程度のノイズさえ我慢すれば、そもそもそこらのデジタルカメラよりも周辺や物が見えやすい映像が撮れる。

本格的な夜間偵察や監視任務等では正直使用できるレベルではないが、夜間での気軽な動画撮影、家やオフィス等でのちょっとした防犯目的なら、価格から見ても悪い製品ではないだろう。多くを求めさえしなければ。

第3世代暗視装置の場合

ちょっと話は逸れるが、第3世代型の光増倍管を用いた暗視装置(PVS-14)の見え方を参考までに貼っておく。


左が古いタイプの第3世代暗視装置で、右が改良型の比較的新しいタイプの第3世代+の暗視装置の視界だ。

撮影時期と場所は違うが、2つとも新月で星明かりのみある状況下の山中で撮影した。

一見すると、闇夜の世界をよく映しているようにも見えるが、星明かりすら無い、届かないより暗い環境下だとノイズが非常に多くなり、視界の狭さや距離感覚の狂いやすさも相まって、場合によっては肉眼のほうが良いと思えることもある。

このタイプの暗視装置に関して、少なくとも私は第3世代からであれば、万能では無いが使用しても良いと思える。Sionyx社の次世代暗視デジタルカメラは、このレベルくらいにできれば進化してくれると、より多方面での有用性が出てくるだろう。

より高性能な暗視性能に改良された、最上位モデル「Sionyx – Aurora Pro」のレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 SIONYX – Aurora Pro