REVIEW >> ELECTRONICS & OPTICS | 電子・光学機器類 >> ELECTRONICS & OPTICS | 光学機器類・電子機器類

ジャンル:暗視装置、デジタル暗視カメラ

SIONYX社のAuroraシリーズの暗視性能等を強化した最上位版。

執筆時期:2021年1月

※本製品を提供してくださったS氏に感謝いたします。

※追記1:2024年4月、Sionix – Opsinについて追記。

廉価版「Aurora Sport」の詳しいレビューはこちらへ ↓ ↓

【レビュー】 SIONYX – Aurora Sport & Pro

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) SIONYX(アメリカ合衆国・インドネシア)
全長 約11.8cm
重量 約274グラム
撮影素子 1インチCMOS
焦点距離 16mm
F値(開放) F1.4
最大ISO感度 819200
画角 42°
防水性能 IP67
使用バッテリー(稼働時間) SP-50、もしくはNP-50リチウムイオンバッテリー(約2時間)
価格 999ドル

軍や警察組織からも注目されているデジタル暗視カメラ


とりあえず使えるレベルのフルカラーデジタル暗視カメラを世に送り出したSionyx社、その廉価版である「Aurora Sport」が発売されてしばらくした2020年、暗視能力等を向上させた最上位版である「Aurora Pro」が発売された。発売当初は、通常版との差はほとんど無く、むしろ暗く写っているのではないか?と評判は良いとは言えなかった。少し間を置いてファームウェアのアップデートが行われ、改善されたとの話だ。その後Aurora Proは、FBIとの5年間契約を結ぶことができ、米陸軍もSionyx社に資金提供等を行い、何やら新しいデジタル暗視単眼鏡等を開発しているみたいだ

いったいどれほど変わったのか、それはそれは興味がわいてくるというものだ。今回レビューできたSportとProは貸与してくれた人も時期も違うため、両者を並べての厳密な比較はできなかったが、記憶が薄れぬうちにレビューをしていこう。


Proは付属品からして気合が違う。紙箱パッケージなのは同じだが、その中からは物々しい携行用樹脂ケースと、6冊もの多言語説明書がドサドサと入っている。

本製品はアメリカ版を購入。ドサドサと入っていた多言語説明書は英語、デンマーク、ポルトガル、ラトビア、ベトナム、トルコ語に対応。

ちなみに、FBIが購入契約を結んだパッケージにはこれに加え、IRフラッシュライト(940nm)、IRフラッシュライト用レールマウント、各種外部充電器等が追加で含まれているみたいだ。

このセットは、エクスプローラーエディションとして、後に一般販売されている。


廉価版とは違うので、、、と言わんばかりの携行用樹脂ケースは、耐衝撃や防塵、防水だけでなく、トリジコン ACOGシリーズに付属しているケースと同じく自動気圧調整バルブ付き。

その他、バッテリー(Auroraシリーズ共通SX-50)が2個、ストラップや外部通信・充電用USBケーブル、32ギガのMicro SD等が付属。


外観上の違いは、通常のAuroraの色を黒に塗り替え、金の差し色にしただだけで、ほとんど同じである。

現在(2022年)、AuroraシリーズはSportが市場から消えつつあり、代わりに黒く塗り替えたAurora Blackと、通常版、そしてこのProがラインナップされている。暗視性能の向上が図られているのはProだけだ。


EVFユニットをボコッと取り外して、バッテリーやMicro SDカードを挿入するのも同じ。

Proは256ギガまでの容量のMicro SDに対応した。連続撮影可能時間も、大容量SD使用時には30分から10時間以上へと電源がある限り大幅アップしている。

Auroraシリーズのカメラ技術に関しては、OEMや法人向けデジタルカメラメーカーであるXacti(ザクティ)との共同開発で作られたものである。

ザクティは、元を辿れば三洋電機のブランドとして生まれた日本メーカーである。

夜間撮影 | Sportとの比較を交えて

さて、ここからは実際に様々な環境下における夜間撮影の様子をレビューしていこう。

最初は今回のAurora Proと前回レビューした廉価版のSportとの比較を行っていいく。掲載している写真に関しては、動画モードをキャプチャーしたものだ。

2つとも撮影時期は2ヶ月ほど違い、新月で星明かりがある状態。

Proのほうは晴天で、Sportの方は4割ほど曇り、6割星空といった感じの空であった。

露出補正はその環境下におけるノイズと明るさのバランスが一番良いと感じた数値に設定。フレームレート(FPS)はある程度の動きを考慮に入れた関係で24に設定。


※Proは露出補正-1の映像です。

※SportのF値が1.8になってますが、1.4の間違いです。

肉眼だとカラーボードの色は判別できるが少し曖昧で、後ろの雑木林は辛うじて見える。

まず色温度の違いが目に入る。SportはProと比べると暖色寄りに映るようだ。

露出補正はProが-1、Sportが0だが、ノイズはProの方が多い印象だ。


肉眼だと点字ブロックの存在はわかるが、模様やパターンはかなり見えにくい。

比較してみると、Sportの方がコントラストは低めであり、明るく映る。

色合いに関しては、Sportが光に対して紫がかった映像になりがちで、Proが緑色になる傾向が強い。

周囲の明るさは両者とも大きな違いはなかったはずだが、どう贔屓目に見てもSportのほうが暗視カメラとして明るく映っている。


真っ暗な公園で100メートル先の小屋を映してみた。肉眼だと小屋の輪郭のみわかる。

まず全体的にProのノイズの多さが目立つ。

小屋や消灯された街灯、周囲の様子は基本的にSportのほうがくっきりと、そして明るく映る。

遠くの民家の明かりに照らされた樹木に関してはProのほうが明るく映されているが、これに関してはその時々の点いていた民家の明かりに関する記憶が曖昧なのであまり気にしないでもらいたい。

星明かりに関しては、Sportの方も肉眼では見えていたのだがほとんど映っておらず、Proのほうはばっちりと映っている。


ちなみにProの方の露出補正を+1に上げてみたが、ノイズが多いだけでより周囲の様子はわからなくなった。

Proと他Auroraシリーズとの違いの一つに、録画中も露出補正が可能になった点がある。これはSportをレビューしていた時から欲しかった機能だった。

Proの撮影をしていた際、Sportは持っていなかったが、もう最初の段階から明らかにSportとほとんど変わらないか、むしろ暗いのでは?と感じていた。

Youtubeに動画をアップロードしたので、皆様にも見てもらいたい。


こちらは小屋を3倍ズームした映像。

Auroraシリーズはどれも3倍のデジタルズームが可能だが、光学ズームではないので、不鮮明な画像をズームしたところであまり利便性は感じられない。明るめの環境以外は無いよりはましといった程度だ。


こちらは865nmのIR(赤外線)ライトを照射した様子。

Proは暗めに映ってしまうことが多く、Sport以上にIRライト等の外部光源の必要性を感じる。


土手を背景に、真っ暗な広場の50メートル先に人を立たせてみた。肉眼だと辛うじて見えるかどうかといった感じだ。

Aurora Proで見ても、辛うじて見えるかどうかといった具合で、この環境下に関しては肉眼とほぼ変わらない印象だった。

露出補正は-2で、これ以上上げるとノイズで人はほぼ見えない。


丘の上から先程の小屋のある公園を撮影。肉眼だと小屋の輪郭だけでなく、窓の様子も少しわかる。

この環境下に関しては、Aurora Proを用いるよりも肉眼のほうがまだマシであった。ノイズ等で映像が不鮮明で、ピントがずれているのか確認したほどだ。


Auroraシリーズはフルカラー撮影以外に、状況に応じてグレーとグリーンの撮影色の切り替えが可能だ。

グレーに関しては光が少ない環境下でまぁ…たまに使おうかな?と思えるが、グリーンに関しては白飛びしたような映像になりがちで、緑は目が疲れにくい波長と言われてはいるものの、これでは逆に目が疲れてしまう。

どちらにしろ頻繁に切り替えたり、フルカラーそっちのけで使おうと思える映像レベルではない。


本当にこれはAuroraシリーズの最上位機種なのか?と不安になってきたが、かまわずどんどん暗い場所に行こう。

ここは従来の暗視装置でもノイズが多く見えづらい暗い小道だ。新月であることは変わりないが、今回はSportの時と違い星明かりはある。

Sportの時に辛うじて見えていた20メートル先の人間が、Proだとほぼ見えない。かと言ってこれ以上露出補正を上げるとノイズまみれでそれこそ何も見えなくなる。

さすがにこの撮影結果には困惑した。カメラの全ての設定項目を見直し、私達の操作によるミスが無いのかも含めて考え直したが、結果は同じであった。


最後に完全な真っ暗闇な森の中にて。ここは第3世代ナイトビジョンであってもIRライト無しではノイズが多くて困る場所だ。

IRライト無しでは、当然のように何も見えない。この点はSportでも同じであった。

Conclusion | 総評


Sportや通常版のAuroraと比較している他のレビューを見る限りだと、ファームウェア更新後はProの方がコントラストが高く、少し暗く映るらしいが、ノイズは少なく画質も良くなっているとのレビュー等をよく見る。

ファームウェアが最新のものになっているのを確認し、カメラの設定や操作手順、場のセッティングや撮影環境を何度も見直したが、ほとんどの状況下でSportよりも暗くノイズが多く、画質も悪い映りとなってしまった。

Sportの撮影時にある程度広がっていた雲が街灯や施設の光を反射して、少し明るく映っていたといえばそうかもしれないが、それでも両者の撮影時の明るさに大きな違いは無かったと記憶している。

今回お借りしたこの個体がたまたま不具合か不良品だったのか?それとも私達が気づいていないだけで、何か致命的な撮影ミス等をしたのか?

Sportと比べて価格は300ドルアップしている本製品。今回のような結果は論外であり、とても良い評価は出せない。

他の方のレビュー写真や動画を見ての判断だと、Proを300ドル以上上乗せして買う価値があるかどうかは微妙なラインだ。IRライトを使用できる使用用途だと、わざわざProまで買う必要も無いと思うし、IRライトを使わず使用したいのであれば、Proを購入しても良いのではないかと考える。

どのAuroraシリーズにしろ、従来の光増倍管タイプの第2世代~第2世代+のナイトビジョンを超えるような暗視能力はまだ備わっていない。

※追記1:これに関しては後に販売され、より性能を上げた同社のヘルメットマウントデジタル暗視装置「Sionyx – Opsin」もProより価格は倍以上するものの同レベルのようだ。

予算に余裕があり、純粋な暗視能力だけを求めるのであれば、第3世代以上のナイトビジョンやサーマルカメラでも購入した方が絶対に良い。

だが、Auroraシリーズは日本国内であっても、安いものだと10万円以下で購入できる。手軽に暗所での録画等が可能で、しかもフルカラーでの撮影が可能だ。暗視能力の限界を把握しつつ、この強みをどれほど活かすことができるかで、Auroraシリーズはただのオモチャにも優秀な暗視撮影機材にもなるだろう。

将来、Sionyx社だけでなく様々なメーカーからフルカラー撮影が可能なデジタル暗視装置が出てくることであると思う。Auroraはその過渡期に産み落とされた、金の卵なのかもしれない。

廉価版「Aurora Sport」の詳しいレビューはこちらへ ↓ ↓

【レビュー】 SIONYX – Aurora Sport & Pro