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ジャンル:懐中電灯
ジルコニウムのガラスブレーカーを備えたタクティカルライト
執筆時期:2022年7月
※本製品を提供してくださったY氏に感謝いたします。
SPECS │ 性能諸元
メーカー名(メーカー国・製造国) | OLIGHT(中華人民共和国) |
サイズ(全長×ヘッド径) | 14.9×3.9cm |
重量(電池+リング込) | 255グラム |
カラー | ブラック、デザートタン、デザートカモフラージュ(本製品) |
使用LED | Luminus SFT-70X-W |
LED色温度 | 6500K |
光量(点灯時間) | Mode 1 : 2500-1000-300ルーメン(2.5分+129分+13分) |
Mode 2 : 300ルーメン (8時間) | |
使用電池 | 21700リチウムイオン充電池(5000mAh) |
最大照射距離 | 560メートル |
防水性能 | IPX-8 |
耐衝撃性能 | 2m |
価格 | 16495円 |
「X3」ではなく「X 3」です
中国製懐中電灯は、まるで自動車のようにモデルチェンジやマイナーチェンジの頻度が高い。年に何回もコロコロと改良を行い、令和最新版がやってくる。
オーライトの製品もそう言えるだろう。今回は同社タクティカルライトシリーズの3世代目である「Warrior X 3」を紹介する。どうせまた明るさを向上させて、若干のデザイン変更を行ってきただけだろうと思っていたが、ちょっと変わった要素を入れてきたので取り上げてみた。
オーライトはタクティカルライトをWarrior(戦士)と銘打っている。Warrior シリーズは大きさによって3種類に大別され、Warrior Mini > Warrior > Warrior Xとなっている。
今回のWarrior Xシリーズは最も大きく、高出力で遠距離照射が得意な製品となっている。X 3は3世代目だが、Warrior X2は存在せず、Warrior Xの高出力版として出ていたWarrior X Proの改良版という形でX 3は誕生したようだ。
→より大型のリフレクターを搭載し、遠距離照射能力を更に高めた「Warrior X Turbo」という製品もあったが、ややこしくなるので今回は割愛する。
●パッケージは相変わらず、ちょいお高めのスマホのような白く気品のあるものとなっている。
●全体的なデザインは、長く大き目のヘッドとタクティカルリングが目立つ。
●タクティカルリングは樹脂製ではなく、スチール製であり、リングだけでひんやりと重厚感がある。
→この部位を金属にするのは好みが分かれそうだ。個人的には温度状況に左右されにくく、手触りもよくて扱いやすい樹脂製が好みではある。
●この独特なカラーリングは「デザートカモフラージュ」というもので、半限定カラーとなっている。
●全長は14.9cmで、Streamlight – HL-X(13.8cm)やSurefire – FURY-DFT(14.2cm)よりも大きい。見た目通りフロントヘビーなことに加え、重量も太い21700充電池を収納した255グラムなので少し重めだ。
●タクティカルリングはテールキャップよりも下に配置されており、人差し指を通すThyrm – SwitchbackやSurefire – Combat Ringsとは違い、中指を通して使う。
●そのおかげで、クルッと持ち替えてライトを保持したまま弾倉交換等の作業をしたりすることがやりにくい。
●リング上部にある突起は、おそらくスイッチバックテクニック等を行うためであろうものと思われるが、スイッチの形状や材質も考えるとそれもやりにくい。どちらかと言えばこの突起は格闘戦で突くためのものか?
●さてこのタクティカルリングは、取り外すと共にSurefire – G2ZXのような付属のシリコンリングに交換することも可能だ。
→ちなみにこのシリコンリングはTGR(Tactical Grip Ring)という名称がついている。
●いわゆる注射器持ちがしやすくなる。こちらのほうが良いという人もいるだろう。
●ガンメタルなステンレス製ストライクベゼルには、それぞれの突起にジルコニウムビーズが埋め込まれている。
→ジルコニウム(Zr)はその高い耐熱性や耐久性、そして化合物としての利便性から、医療やエネルギー分野等様々な方向性に利用されている物質だ。
●緊急時の護身用やガラスブレーカーとしての使用を想定されている。警備員や治安維持等に関する職務中以外は、普段遣いとして携行するのはあまりよろしくないだろう。
●木に対して20回以上の殴打をしてみた限りでは、不具合等発生しなかった。
●LEDは懐中電灯用途しての採用は珍しいが、「Luminus SFT-70X-W」が入っており、深めのスムースリフレクターとの組み合わせで、明るく遠方照射に強い配光設計となっている。
●リフレクターとレンズの間には粒状のエメラルドグリーンに光る蓄光リングが挟み込まれている。
●タクティカル用途でのライトにこのような蓄光パーツは珍しく、個人的には不要、もしくは場合によって邪魔なのではと思う。
●テールスイッチはマグネット式の充電をする関係上、全て金属製となっており、電子式スイッチだ。
●スイッチを押した感触はプコプコとした押し心地で、静かに押すことが可能。
●スイッチを軽く短押しすると、Mode 2(300ルーメン)で常時点灯、奥までグッと短押しするとMode 1(2500ルーメン)で常時点灯となる。
●スイッチ長押しで、押している間だけ点灯する間欠点灯となる。手動ストロボや、極瞬間的に点灯させるような攻撃的なフラッシュライトテクニックをするのは難しいスイッチシステムだが、300ルーメンと2500ルーメンというどちらも明るいモード設計なので、ちょっとした護身や警備・巡回業務等で使用することはできるだろう。
●電池は同社のM2R Proと同様に、太い21700リチウムイオンバッテリーを使用する設計になっており、CR123Aや18650リチウムイオンバッテリーを使用できるようにはなっていない。
→21700という規格は、米国電気自動車メーカー「テスラモーターズ」が、モデル3に搭載する新型の電池規格としてパナソニックと共同開発をしたものだ。
→数字の意味は、18650等と同じく電池のセルサイズを表している。(直径21mm、全長70.0mm)
●18650と比べて容量は多いものの、21700を使用した場合、ボディは太くなるわ、CR123A等の他の電池を使用できないケースが多いわで、電源を確保できない環境で使用することが多い用途からするとあまり好ましくない。
●リングは防水用のOリングとは別にあるOリングで固定されている。
●充電池はUSBに接続して充電する、MCC3マグネット充電ケーブルが付属する。これをスイッチの上に置けば充電開始だ。
●説明書は日本語を含めた20ヵ国語に対応しているが、それはスイッチの操作方法のみであり、基本的な説明は英語表記である。
●ベルトループ付きホルスターは布製ではあるがかなり硬く、どちらかと言えば樹脂ホルスターのように使用できる。
●底面には大き目の穴が空いており、不意の誤点灯にも気づきやすくするため。
●ホルスターにはベゼルを下にして挿入し、ライトの形状に合わせた作りになっているので、樹脂ホルスターのようにカポッとはまり込み、スパッと抜くことができる。
●フラップ(蓋)も、布製ホルスターに多いベルクロではなく、マグネットで留めるようになっており、静かにそして素早く開閉できる。タクティカルライトの付属ホルスターとしては、用途に合った良いホルスターだ。
●配光パターンに関しては、ご覧の通り中心光も周辺光も「飛べオラッッ!!」と言わんばかりに遠距離照射能力に振り切ったタイプとなっており、外縁光に関しても近場周囲を照らすことは期待できないだろう。
●同じく深めのスムースリフレクターであるストリームライト – HL-Xよりも配光パターンは若干狭く、外縁光がより少なく遠距離照射重視となっている。
100m先に設置した自転車に向かって照射。奥の森林までは150m。
●遠距離照射が得意なリフレクター構造に、2500ルーメンもの大光量なだけあって、遠距離照射能力と周辺光の明るさはお手の物だ。実用的な面で考えても、350メートル前後の距離ならば遠くまでハッキリと照らし出すことができる。
●この配光パターンに加え、LED色温度は6500Kの昼光色なので、近場を照らした場合は照り返しがきつく感じることもある。
●三脚周辺が明るいので、一見実用的な外縁光があるように思えるかもしれないが、ここ最近この公園周りに住宅地・店舗や街灯が増え、周囲が明るくなってしまった影響だ。実際にはTIRのような実用的な外縁光はほとんど無い。
→故に照射撮影の別候補地を現在探索中である。
●低出力モードであるMode 2でも300ルーメンもの光量だ。手元確認用なんて軟弱なものは入れず、21700バッテリーの大容量を活かした、300ルーメンというタクティカル用途にも有効な光量で8時間の持続性を確保している。
●このモードの実用最大照射距離は150メートルくらいだ。
●配光パターンから考えると、整地された広い施設やエリアでの巡回警備等での使用に適しているのではないだろうか。
FBIテクニックや、ネックインデックスでの使用を想定して、170センチの高さから15メートル先のベンチと自転車に向けて照射。
●照射範囲は広くないので、警備やタクティカル目的で使用する場合は、死角になる範囲を考えての取り扱いが必要だ。
●この手の近い距離だと外縁光が薄っすらとはあるのだが、不整地を歩けるほどの明るさでも範囲でもないので、足元の確認はよく行ったほうがいい。
Conclusion | 総評
●強烈なスポット光に2500ルーメンの大光量。タクティカルリング、ジルコニウムビーズ内蔵型ストライクベゼルを搭載し、他にもバッテリー残量が少なくなると内臓バイブレーターにより、静かにユーザーに知らせてくれる機能もある。
●専用21700バッテリー以外は使えない点や、遠距離照射重視の配光等、考えようによってはネガな点もあるが、シンプルなシステムなので、割り切って使えば非常に強力なビームを浴びせるタクティカルライトとして使えるだろう。別売りのsROD-7リモートスイッチを装着すればウェポンライトとしても使える。