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ジャンル:懐中電灯、タクティカルライト

OLIGHT M2Rをより攻撃的に鍛え上げたバージョン。

執筆時期:2020年5月

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) OLIGHT(中華人民共和国)
サイズ(全長×ヘッド径×ボディ径) 13.6×2.95×2.62cm
重量(電池込) 約179グラム
ボディ材質 AL6061-T6アルミニウム&ステンレス
使用LED Cree社 XHP 35 HI NW
光量(点灯時間) Turbo:1800ルーメン(4.5分、その後750~250ルーメンに光度を落としながら195分)
  High:700ルーメン(160分、その後250ルーメンに光度を落としながら40分)
  Mid 1:250ルーメン(10時間)
  Mid 2:60ルーメン(40時間)
  Low:15ルーメン(130時間)
  Moon Light:1ルーメン(50日)
使用電池 21700リチウムイオンバッテリー
最大照射距離 300メートル
防水性能 IPX-8
耐衝撃性能 1.5m
価格 12295円

一回り大きくなった戦士

First Light USA T-MAXを退役させ、使い勝手の良いオーライト M2R Warriorを次期EDCライトに採用した件に関しては、ここを見ている方の記憶に新しいことだろう。タクティカルと日常使いの両立を見事に構築できていた点は大変評価できる良い製品だった。しかし、1年も経たずうちに終わりはあっけなくやってきた。夜の散歩でLoモードを点灯させようと思ったところ、突如帰らぬ人となってしまったのだ…もちろん、普段の業務等で携行していただけでなく、CQBや格闘、偵察訓練等の過酷な環境下で使用していたこともあったのだが、何の前触れもなくこうもあっけなくご臨終なさるとはOLIGHTに対する信頼性が少々低下してしまった。SUREFIRE、Wolfeyes、First Light USAを使用していた頃は、もっと無茶なことをしていたのだが、点灯すらできなくなる故障が起きたことは一度も無かった。まぁ、OLIGHTにそこまで求めるのはお門違いかもしれないが。


さて、OLIGHT側にこの一件を報告すると、M2R PROなるより明るさと攻撃性を増したモデルが出るので、それで手打ちにしないか?という提案をいただいた。それがこいつだ。

ここ半年ほど、OLIGHT社の製品パッケージは白を基調としたシンプルで清潔感のあるパッケージとなっている。


マグネット内臓のパッケージを開けると、携行ポーチ、ランヤード、マグネット式の充電ケーブル、説明書が入っている。付属品はM2Rとほぼ同じだ。

パッケージデザインはまるでちょっと意識の高いスマートフォンのパッケージのようだ。


M2Rに攻撃的なストライクベゼルを加え、光量をアップさせただけのものだろうと、よくスペックも見ずにOLIGHTの提案を飲んだ私だが、届いてみるとサイズからしてまず一回り大きい。

M2Rが全長13cmなのに対して、M2R Proは13.65cmに、そして2.44cmだったボディ径は2.62mmとなっている。

おかげで、M2Rに装着できたThyrmのSwitch Backは装着不可となってしまった。(Surefire社のコンバットリングはチューブに装着可能)


寸胴ボディに長いクリップが付いていることもあり、少し逆手持ちがやりにくくかったM2Rだったが、一回り大きくなってしまったおかげで、Proは余計しっくりと来ないグリップ感になってしまった。

特に私のように手が小さな人はそう感じるだろう。

ほんの少しのサイズ差だが、意外にも違和感は大きい。


違和感の大元であるボディ径が大きくなっている理由は、M2Rに入っていた18650リチウムイオンバッテリーが、一回り大きな21700リチウムイオンバッテリーに変更された点にある。

より明るく、より長時間の点灯を目指し、近年中華系ライトメーカーが採用してきているバッテリーだ。

バッテリー関連に関しては、個人的にデメリットが目立つ。ボディ径が大きくなっただけでなく、M2Rでは使用できたCR123Aリチウム電池×2個の使用ができなくなった。また、21700はOLIGHT独自のプラス端子周りに樹脂でシールドされているタイプなので、他社の21700バッテリーとの相性問題も出てくる。

ちなみにM2R Proの使用可能な電圧の範囲は3~4.2Vだ。

CR123A×2個が使用できない点は痛い。充電が望めなかったり、デリケートなリチウムイオンバッテリーをあまり持ちたくない状況下で使用することが多いからだ。同じく21700を使用するACEBEAM W10のように両方使える仕様だとよかったのだが。


ヘッド側にも変更点は多い。まずは一番目立つ、トゲトゲしさが増したストライクベゼルだ。かなりエッジが効いているので、衣服や装備品に装着する場合は周囲を傷つけてしまう恐れがある。このベゼルに関しては、控えめながらも少々ストライクベゼルとしての能力を有しているM2R版のほうがよかった。

だが安心してほしい、OLIGHT公式通販では、M2Rのような控えめベゼルを一人一点無料でもらうことができる!しかも、目立つ青色ではなくて、ブラック塗装されたバージョンなのも個人的にポイントが高い。

ストライクベゼルを外すと、防水パッキン、リフレクター、リフレクター保持カップがこぼれ出てくる。もうお気づきの人もいるだろうが、オレンジピールリフレクターだったM2Rから、ProになってTIR(Total Internal Reflection)レンズへと変更されている。

また、LEDに関してもクールホワイトのXHP35から、視認性の良いニュートラルホワイト仕様へと変わっている。


両刺しクリップは健在。ちなみに、クリップも若干大きくなっているのでM2Rと形状は同じだが互換性は無い。

モードスイッチにあるインジケーターLEDもそのまま。操作方法に関してはM2Rとまったく同じ。


テールスイッチに関しても変更点がある。まずスイッチ周りにエッジが緩めの突起が設けられた。誤点灯防止や立てるためだろう。

また、スイッチそのものも若干浮き上がっている。突起を設けたことで押しにくさを避けるためだろうが、スイッチのテンションが変わったこともあり、誤点灯がM2Rよりもむしろ起きやすくもなっている。

電子テールスイッチの挙動もM2Rとまったく同じだ。Enhancedモードの半押しで最大光量、全押しでストロボ照射という実にタクティカル向けの素晴らしいシステムもそのまま。この点は本当に評価できる。

この素晴らしい操作システムに関しては、M2Rのレビューを見て欲しい。

スイッチのテンションが若干変更されており、全押しと半押しの違いがより明確にわかり、クリック感も増している。これも評価できる。

マグネット式でテールスイッチに装着する充電ケーブルは今回も使用できる。本体側で2A充電が可能となったので、バッテリーが大容量化したものの、充電時間はM2Rとあまり変わらず5時間前後。


ボディの凹形状だったローレットに関しては凸形状に変わり、少しエッジも効かせることでローレットによるグリップ感は向上している。ただクリップがグリップを阻害していることに変わりはない。

他にも、ヒートシンクスリットの排除、ヘッド部やテール部も若干のデザイン変更が行われており、一見M2Rにストライクベゼルを付与しただけのものに見えるが、その実まったく違うライトになっている。


TIRに変更されたことにより、まず周辺光よりも更に外側の外縁光の照射確度が大きくなっている点に期待したが、期待通り170°近い広範囲を照らしている。

ストライクベゼルによる照射範囲の阻害を少し心配したが、ベゼルそのものはそこまで大きく出っ張っているわけではないので、目に見える支障が出るほどの阻害にはなっていない。


※画像クリックで拡大可


中央部拡大画像

☆100m先に設置した自転車に向かって照射。奥の森林までは150m。

※いつもと同じ公園での照射テストだが、M2Rに関しては使用不能なので前回のレビューの写真を使いまわしている。場所が同じだけで、周囲の明るさもカメラ設置位置も若干違うので注意を。

オレンジピールリフレクターからTIRに変更された恩恵は十二分にあるようだ。近距離の照射範囲拡大はもちろんのこと、遠距離照射に関してもスポットが明確になり、写真のように自転車や奥の森林にはっきりと届いている。

また、LEDがクールホワイトからニュートラルホワイトに変更され、色温度が低くなったことも視認性の向上に大いに役立っていると言えるだろう。

配光に関しては、遠距離を稼ぐために周辺光への配分を少し削っているので、M2Rと比べると中距離が少しだけ暗くなり、ムラがあるように思えるが、さほど問題とは思わない。

最大照射距離は公称値で300mだが、実用的には200mくらいだろう。


TIRにより、ぼやけ気味だった中心光はくっきりとなり、周辺光の光量を落として、外縁光共に範囲を広げることで、暗順応阻害も軽減し、視野も広がっている。タクティカルライトとしては悪くない配光だ。

電池容量も増えたことで、各モード共に照射時間も伸びている。特にMed1の250ルーメンは10時間、Med2の60ルーメンは40時間と、ある程度の光量を長時間点灯可能なのはアウトドア等で利便性が高い。

ただ、最高出力を1500ルーメンから1800ルーメンへとアップさせることに関しては目に見えるような大きな変化は無いし、効率を悪くするだけなのであまり良いとは思えない。宣伝材料として数値を高くすれば宣伝しやすいという気持ちはわかるのだが…。

Conclusion | 総評


M2R Proになり、TIR化して配光もよくなり、点灯時間も伸びて良いことづくしに思える。

一般的に考えればそれでいいのかもしれないが、私個人としてはCR123Aが使用不能となり、銘柄を選ぶバッテリーしか使えなくなった。そしてなにより、ボディサイズが大きくなったことで、携行能力や持ちやすさが悪化し、各種オプションが装着できなくなった点が致命的だ。

バッテリーは18650でいい、M2Rのサイズのままで正常進化してくれればよかったのだが…残念だ。

何にせよ、M2Rがある日突然壊れてお陀仏となってしまったことが尾を引いてならない。5年間保証はあるものの、過酷な状況下で使用するタクティカルライトとしての信頼性を考えると、今回のOlight M2R Proの採用は見送ることにした。