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ジャンル:懐中電灯、タクティカルライト

ストリームライトのハンディーなタクティカルライト

執筆時期:2020年7月

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) STREAMLIGHT(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
サイズ(全長×ヘッド径×ボディ径) 13.8×3.5×2.54cm
重量(電池無) 約162グラム
使用LED C4 LED Cool White
光量(点灯時間-CR123A) High : 1000ルーメン(1時間15分)
Mid  : 400ルーメン (3時間)
Low : 65ルーメン (20時間)
使用電池 18650 Li-ion or CR123A ×2個
最大照射距離 330メートル
防水性能 IP68
耐衝撃性能 2m
購入価格 68ドル

コストパフォーマンスと信頼性に優れたライト


仕事でも日常でも使用していたOLIGHT M2Rがある日突然天に召し、OLIGHT社からの提案で代わりに導入したM2R Proは攻撃性をアップさせた良い製品ではあったものの、私の要求を満たすものではなかった。そこで、久々に要求を満たす懐中電灯を求める旅を始めた。私は同じような用途の物を所持したくない性分なので、日常でも訓練・研究業務(もしくは戦闘)でもライトに関しては、あまり道具を使い分けることなく同じものを持っておきたかった。故に選定基準は以下の通りである。

○全長はEDCとタクティカルライトとしての使用を考えて9.5~13cmの範囲。

○Hiモードとストロボモードが即座に発動できること。

○格闘戦に耐えれるだけの耐久性や信頼性。

○コンバットリング等のハンズフリー装備が装着可能。

○日常使いとしても使いやすい光量や長いランタイムであること。

○充電池も使い捨て電池も使用可能。

結論から言ってしまえば、現時点でその要求を満たすものは無かった・・・とは言え、仕事でも日常でも懐中電灯が必要な生活に変わりはない。そこで、ある程度妥協をして、暫定的にとある製品をチョイスした。それが、ストリームライト社のプロタック HL-Xだ。


まずは全長。13.8cmと若干オーバーしており、ヘッド径も3.5cmとこれまた若干ボテッと大きい…が、携行に大きな支障は出ない範囲なので良しとした。

外装はアルミニウム製で、その他ストリームライトのタクティカルライト系と同じく光沢が抑えられ、少しザラつきのある処理がされている。ボディやテール部のローレット加工も、そこまでトゲがなく、滑らかなさわり心地。

クリップは長い両挿しタイプのものが装着されているが、折返しから先は短めだ。クリップのテンションは、長いテールキャップから挿す側はそこまでテンションが強くなく、反対の短い方が強めだ。


ヘッド側を見てみよう。

4本の凸タイプのヒートシンク(放熱板)が目立つ。

ヘッド部は取り外し可能。(通常取り外す必要性は無いが)


強化ガラス製のレンズの奥にはスムースリフレクターの反射板と、C4 LEDユニット(例によって詳細不明)が見える。

ボディに対して深く大きなヘッド部、スムースリフレクターを搭載していることから、遠距離照射系の配光パターンだと予想できるだろう。

他の同社タクティカルライトと同じく、ベゼルの突起は3本爪のタイプ。


ヘッド同様に3本爪で守られたテールキャップはストラップホール付き。

スイッチはこれまた従来のストリームライト製品同様に、柔らかいテンション。スイッチの音はカチンカチンと音が鳴るタイプ。半押しによる完結点灯可能。

デフォルトだと、スイッチを素早く押す毎にHiモード(1000ルーメン)→ストロボ(1000ルーメン)→Loモード(65ルーメン)の3モード仕様。タクティカル・日常使いをする上で、これなら両立できるかな?という及第点だ。

ストリームライトは基本的にLoモードを明るく設定しており、HL-Xの場合は65ルーメンである。この明るさで20時間(CR123A電池×2個)のランタイムなので、点灯時間は悪くないのだが、私の好みとしてはもう少し明るさを抑えて欲しいところ。

ストロボモードの間隔は20~25Hzくらいだと推測される。

スイッチ半押しでモード変更を素早く多様してると、Loモードばかりが点灯する現象が起こりがちになってしまう。慌ててプコプコスイッチを押してるとストロボやHiモードを繰り出したいのに何度スイッチを押してもLoモードしか点灯しないといった事態も想定されるので、スイッチの癖と押すタイミングを練習しておくべきだ。

今回も同社の特徴である10タッププログラムが搭載されており、スイッチを9回素早く半押しを行い10回目でカチッとクリックさせるとプログラムを切り替えることができる。これにより、Hiモードのみ、Loモード→Midモード(400ルーメン)→Hiモードと言った別のプログラムに切り替えることが可能だ。

Hiモードのみが選択できるので、シンプルに訓練でも使用できて助かっている。


Protac HL-XはCR123A、18650の2種類の電池に対応している。

推奨はされていないものの、3.7Vの16340×2個でも点灯ができた。

CR123Aや16340で運用する場合、電池とボディの間に隙間ができ、横に振った際に少しカタカタと音が鳴る。点灯に影響は無いものの、気になる場合は、写真のようにスリーブをかませると良いだろう。

参考までに写真のスリーブはナイトコア社のNBM1618 Battery Magazine。

個体差なのかどうかわからないが、私のHL-Xのテールキャップとヘッド部は、ネジ部へのグリスが甘く、キャップを回した際にやけに引っかかりを感じた。そういう個体の場合は、摩耗にもつながるので、適度にグリスアップをしよう。


ヘッド部は少し太めながらも、ボディ径はポピュラーな1インチ径(2.54cm)なので、握りやすい。クリップ部分も長いわりにはそこまで手に干渉しない。

クリップが邪魔な場合はプラスネジ2つで留められているだけなので、簡単に脱着が可能。


本製品はThyrm社のSwitchBack 2.0 フラッシュライトリングに完全対応しているので、ライトを使用した戦闘時における脱落防止や、ライトを持ったまま弾倉交換等のハンズフリー作業が可能となる。クリップの食いつきも、この樹脂製のものの方が良い。

HL-Xにこのリングを付ける場合は、HL-Xのクリップを外し、付属のアルミスペーサーをボディとテールキャップの間にはさんで使用する。だが、私はアルミスペーサー無しで使用している。スペーサーが無くても点灯可能で、SwitchBackがボディ側の隙間を2mmほど前後するだけだ。戦闘での使用にもさほど影響を感じず、電池交換毎にスペーサーの落下を心配しなくてよい。


冒頭のライト選定基準でも述べたが、タクティカルと日常の両立ライトを選ぶ際にこのようなハンズフリーが可能なリングを選べるか否かは私にとって重要な要素だ。

戦術面でも、日常面でも役立つ装備なので、もはやこれを付けられないライトは考えられない。

このリングを付けた場合は、クリップが太めなので、握り心地はデフォルトよりも少し低下する。ただその分リングがあるので、脱落に対する不安感は抑えられる。


HL-Xはテールキャップの爪が誤点灯を防ぐためにスイッチを覆っているため、SwitchBack推奨の中指の背でスイッチを押すテクニックを使用するのが難しい。

そのため、銃器と併用するには、従来のハリステクニックを使用するか、写真のように拳銃を持つようにライトを保持して、親指でスイッチを押す方法が良いだろう。

この場合ライトを使用した格闘戦能力は低下する。


付属品として携帯用ポーチが付属する。ベゼルダウンでもアップでも挿入が可能。ベルトループの幅はベルクロで自由に変えることが可能。

説明書はペラ紙一枚で、英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語の4ヶ国語対応。

パッケージは紙箱とブリスターパックの両方がある。


さて、点灯してみよう。

配光パターンは、やはりスポットが強く、周辺光も絞られているパターンだ。外縁光もうっすらとあるようだが、おそらく外で使用するとほぼ無いも同然だろう。

公園にて、100m先の自転車と地面に中心光が半々の割合で当たるように照射。奥の森までは150m。(写真クリックで拡大可)


写真中心部拡大(写真クリックで拡大可)


ちょうどいいので、Olight M2R Proと比較照射してみた。

ご覧の通り、M2R Proの方が、遠距離、周辺光、視認性全てにおいてリードしていると言ってもいいだろう。これはルーメン数値だけではなく、ニュートラルホワイトのLEDや様々なレンジで強みのあるTIRレンズを使用している点にある。

HL-Xは特にリフレクターの形状で、遠距離照射能力はまだしも、周辺光の狭さが目立つ。実際夜歩きを悪路でする際は、周辺光の照射範囲がもう少し欲しいと感じることはある。

HL-Xの公称最大照射距離は330メートルで、実際に使う場合は150~200メートルくらいが実用最大距離といった印象だ。

RCR123Aを使用した場合、18650と比べて100~200ルーメンほど明るく感じる。

FBIテクニックや、ネックインデックスでの使用を想定して、170センチの高さから15メートル先のベンチと自転車に向けて照射。


HL-Xの外縁光に関しては、写真の明るさ等を上げると薄っすら見えてくるが、実用とは言えない。周辺光や外縁光の範囲を増大させるには、同社のTLR-1 HLProtac 90に搭載されているようなTIRを載せて欲しいところだ。

クールホワイトのLEDなので、視認性は場合によって良くないが、目潰しとしての効果は高い。


こちらはLowモードの65ルーメンで照射した写真

65ルーメンのLowモードは明るく、散歩で使用する場合は安心感を持って歩くことができるだろう。最大照射距離も50~70mくらいまでなら使える。点灯時間も20時間なので良い。

ただ、やはり最低光量としては明るい。夜道ならまだしも、狭い室内や手元を確認する場合は明るさを半分以下に抑えて欲しいところだ。

同社1L-1AAと違い、RCR123AでもLowモードの明るさは18650やCR123Aと目に見えて変わらない。

Conclusion | 総評

ストリームライト プロタック HL-Xは、あくまで私が良いと思えるライトが世に出るまでの暫定的な採用であり、照射に関しては文句ばかり言っている印象があるかもしれないが、実売70-80ドル程度で購入できるライトと考えれば良いライトだ。

購入して以降、毎日携行して使っている以外でも、格闘訓練で2回、6日間の酷い天候の演習で1度使用したが、今のところ故障や不具合は一切無い。

70~100ドルの価格帯だと、中華メーカーライトを中心にもっと明るく、機能性にも富んだフラッシュライトはいくらでも選択肢がある。普通ならば、このライトを選ぶことは無いだろうし、私も誰かに日常的に使うという用途ならば他の機種を勧める。だが、抑えられた価格である程度の過酷な環境下でも使用できる信頼性のあるタクティカルライトが欲しい場合は、HL-Xは良い選択肢になってくれるだろう。