REVIEW >> ELECTRONICS & OPTICS | 電子・光学機器類 >> ELECTRONICS & OPTICS | 光学機器類・電子機器類

前編(HE509T X2編)はこちら ↓ ↓

【レビュー】 HOLOSUN – HE509T X2 & EPS (前編:509T編)

ジャンル:ダットサイト

ホロサンのハンドガン向け密閉型ダットサイト2機種を比較検証。

執筆時期:2025年9月

検証人数:4人

実弾射撃評価:有り

→Glock – G17 / 9x19mm弾

→AR-15系小銃 – 5.56x45mm弾

※EPSの購入等に協力してくださいました、MILITARY BLOOD様に感謝いたします。本製品はMILITARY BLOOD様にて購入可能です。オンライン、実店舗(埼玉県川口市)共に豊富でお値打ち価格な品揃えのお店です!

MILITARY BLOOD様公式サイト ↓ ↓

https://tactical-club.com/

Amazonヤフーショッピング楽天市場にも出店しております。

HOLOSUN – EPS販売ページ ↓ ↓

https://tactical-club.com/view/search?search_keyword=eps


SPECS | 性能諸元(公式:EPS)

メーカー名(メーカー国・製造国) HOLOSUN(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
サイズ(全長x全幅x全高) 41x30x25mm
重量 39グラム
ボディ素材 7075-T6アルミニウム
倍率 1倍
対物レンズサイズ 16x23mm
レティクル 2MOA+32MOAマルチレティクル、2MOA(本製品)、6MOA
イルミネーター 赤色LED 12段階調光(内4段階は暗視装置用)、その他緑色LEDモデルあり
使用電池(最大電池寿命) CR1620リチウム電池(2MOAドット:輝度6で50000時間以上)
防水性能 IPX8
耐衝撃性能 5000G
動作保証温度 -30~60℃
希望小売価格 388~530ドル(モデルによって上下)

Pros & Cons | 一長一短(EPS)

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 コストパフォーマンスに優れた光学性能
  軽量コンパクト、ノイズの少ないデザイン設計
  夜間でも十分に暗くできるイルミネーション
改善を要する点 1クリックの移動量が1.5MOAと少し大きい

一人称視点動画はこちら ↓ ↓

 

コンパクトなハイコスパ製品


さて、ホロサン似たもの密閉型比較の後編はEPSについて深堀りしていこう。

株式用語みたいな名前のEPSだが、Earnings Per Share(一株あたりの純利益)ではなく、Enclosed Pistol Sight(密閉型拳銃用照準器)の略である。昨今、ホロサンは自社製品の命名規則を英数字の羅列ではなく、照準器の使用用途を略称にしたものに変えつつある。これもその一環だろう。


さて、509Tと外観は似ているが、ハウジング部の構成素材はまったく違う。509Tがグレード5のチタニウムなのに対し、EPSはアルミニウム製になっている。
チタンほどではないが、アルミは強度に優れる7075-T6を採用している。

全体のサイズは先に紹介したHE509T X2とほぼ変わらない(41x30x25mm)。違いはEPSが4mm低いことだ。

ちなみに同社の密閉型ダットサイトでSCS Carryと呼ばれるものがあるが、こちらはEPSシリーズよりもさらにコンパクトだが、ソーラー給電式の内蔵充電池で点灯する。


これにより、EPSは一般的なフルサイズハンドガン向けオープンダットサイトとほぼ同じか、比較機種によって若干小さなサイズに加え、ハウジング部がエンクローズドタイプ(密閉型)の中では短く、より小さく見えるような外観デザインになっている。そのため、欧米の郵便受けのような長方形が多いこの界隈において、一見すると密閉型ではなくオープンタイプにも見えてくる。現に私も初めてEPSを見た時はどちらか一瞬迷った。

また、重量も密閉型としてはかなりの軽さで本体実重量はわずか35グラム(電池込)である。写真のように付属のRMRアダプタープレートと取付ネジ2個を追加してもまだまだ軽い45グラムしかない。

この軽さならば、実銃ユーザーだけでなく重量物を拳銃スライドに載せると動作に支障が出るガスブローバックハンドガンユーザーにも良いだろう。


独自規格であると同時に、HE509T X2以同様にややこしいのがEPSシリーズの「Kフットプリント」だ。

このフットプリント、一見するとRMScフットプリントに似ているのだが、後面のリコイルラグが無く、全面のリコイルラグは浅い。そのため、他社製品にただ似ているだけの互換性がほぼ無いホロサン独自規格のフットプリントとなっている。

このような改造を行った理由としては、通常のRMScフットプリントだと防水性等が確保できなかったらしい。

このフットプリントは同社の407Kや507K、そしてEPSシリーズのみが現時点では採用している。どの製品も北米では人気の製品ではあるので、このフットプリントに対応したスライドやマウントは一定数存在はしている。

それらが無い、もしくは導入する気がない場合は大人しく付属のRMRアダプタープレートを噛ませて使用しましょう。まぁなんだ、既存のフットプリントのまんまだと自分たちが求める各種性能を発揮できない。かと言ってまったく新しいフットプリントを考えるのは手間なので既存のフットプリントに手を加えたところだろう。


EPSの装着方法はRMRやRMSc同様に後部にネジを2本挿して留める。

EPSのウィンデージとエレベーションダイヤルの移動量は509Tと同じく最大30MOAと少なめだ。そして1クリックの移動量が1.5MOAと509Tの1MOAと比べて大きいという違いがある。

1MOAは100ヤードの距離で1インチ動く。これを100メートルで計算すると約27.8mmである。となると1.5MOAだと41.7mmも1クリックで動くことになる。精密射撃や、小銃等に載せて100メートル以上の射撃でゼロインをしたい場合はこの点に留意してほしい。

使用する電池についても地味に違う。509Tは1632リチウム電池を使用するのに対し、EPSは厚みが少し薄い1620を使用する。電池寿命は2MOAドットの輝度6で5万時間とのこと。509Tも電池容量が多いにも関わらず2MOAドットの輝度6で5万時間だった。イルミネーターの省エネ効率がEPSのほうがいいのだろうか?

輝度6は薄暗い室内で使用するような明るさ。

Reticle │ 2MOA



その他外観等に関しては前編のHE509T X2編ですでに触れてきたので、ここからはさっそくEPSの光学性能に関して語っていこう。

ノッチフィルターの濃淡はレンズ中央に向かって透明度が増していく点は509Tと同じだが、全体的な透明度はEPSがはるかに高い。私はレンズの透明度が高い低いことだけに関してはそこまで気にしないが、ノッチフィルターの濃淡グラデーションが目立つものはあまり好きではない。この点EPSは優れている。

ちなみにレンズの透明度は格安透明番長である同社HS403Bよりは青みがあるが、密閉型拳銃向けダットサイトの中ではAimpoint – ACRO P-2の次くらいの高い透明度だ。

EPSは3種類のレティクルラインナップで販売をしている。一つは509Tのように32MOA+2MOAのマルチレティクルモデルで、これのみ本体上部にソーラー給電システムを備える。他には2MOAドットと6MOAの2種類がある。後者2種類はマルチレティクルとソーラーシステムが省かれている分、マルチレティクルモデルよりも150ドル前後安く購入することが可能だ。その他各レティクル毎にグリーンレティクルモデルも選ぶことができる。

今回EPSの購入は当研究会の経費ではなく、私の独断と偏見により身銭を切って購入。私はソーラー給電や32MOAサークルレティクルにはあまり魅力は感じないので、節約も兼ねてこのシンプルでお値打ちな2MOAモデル(EPS-RD2)を購入した。

近距離における照準

林内にて5~30mのCQBを想定した照準。ターゲットは人間の上半身を模したUSPSAマンターゲット(縦75cm×横45cm)。カメラとダットサイトの位置はハンドガンに搭載し、腕を伸ばした想定距離で設置。


EPSのレンズサイズは16x23mmであり、509Tより縦に1mm低い程度。

接眼レンズ上部のハウジングに付けている白いマーキングは、ダットサイトを覗く暇も無いような0~10m程度の至近距離戦闘時における勘撃ち(俗にPoint ShootingもしくはInstinctive Shootingと呼ばれている)を行う際の簡易照準を行うためのもの。全高が密閉型ダットサイトの中では抑えられているため、このような射撃を行っても狙点と着弾点のズレが少ないし余計な意識をせずに撃ちやすい。


明るい場所を映すとレンズの透明度はより際立って見える。

この透明度に加え、ハウジング部の大きさに対するレンズ専有面積が高いことや、余計な凹凸の無いシンプルなデザインのため、まるでヘッドアップディスプレイのように集中して射撃や照準を行うことができる

拳銃向けどころか、正直そこらの小銃用ダットサイトよりも「ダットサイト」を覗いているという意識を無くして使いやすく感じるまである。


このEPSシリーズはより小さくて軽いEPS Carryというモデルもあり、コンシールドキャリーユーザーに人気だ。

ただ、以前どこぞの展覧会で両者を比較した際はEPSと比較してレンズの歪みが目立った。そのため今回はEPS CarryではなくEPSを導入した。EPSと比較してのレンズ品質の差は個体差だったのか仕様だったのかは不明。

ちなみにEPS Carryに付属しているアダプタープレートは、コンパクトやサブコンパクト拳銃向けが多いRMScフットプリントである。

木陰林内エリアである30メートル照準では509T X2と比較してみよう。



こういう薄暗いエリアではノッチフィルターが薄く透明度の高いEPSがターゲットへの視認性が高いことが伺える。逆に太陽降り注ぐ眩しい環境下ではノッチフィルターが濃いほうが見えやすい場合もある。

50メートル照準 │ レンズの質について

距離を50メートルに伸ばし、光学品質をより詳しく見ていこう。ターゲットは180cmの位置に吊るした青いツナギ。今度はAR-15タイプの小銃にダットを載せた想定距離で撮影。


当初ネットでの情報収集をしていた段階では、EPSは509T X2よりもレンズの歪みが大きいという報告もあれば、その逆もありでいったいどっちなんだろう?と思っていた。そして我々の手元に届いた両者を見比べてみると、明らかにEPSのほうがレンズの歪みは少なかった。これについても個体差なのかロットの違いなのかは不明だ。

どうしても球面レンズでレンズ面積が小さいと歪みは目立ちやすい。このEPSも同社HS403BやPrimary Arms – MD21のような小銃向けダットサイトと比較すると歪みは少し目立つものの、見比べないとわからず、ハンドガン向けダットサイトの中では優秀だ。(一応EPSは非球面レンズという触れ込みではあるが完全な非球面ではない)

ハンドガン向けで歪みがより少ない製品が良いのであればAimpoint – ACRO P2だ。

各種レンズ反射について


EPSは順光時に少し下から覗くとレンズ上部に赤い反射が横一線に出やすい傾向があるものの、中央や多くの面積を埋めるようなことはないため大きな問題にはならない。

他には側面から多くの光を受けた場合、自分の顔が映りやすい傾向もある。これは日陰や室内で気づくだろう。この点に関してはより格安密閉型ダットサイトであるSwampfox – Krakenに劣っている。そうは言うが、照準が不能になるほどはっきりと映り込むわけではない。

どちらにしろ509T X2より余計な反射含めてレンズ品質は総合的に高く、密閉型ダットサイトの中ではかなり上位の部類に入るのではなかろうか。

100メートル照準

距離を100mに伸ばして照準。ターゲットは50m時と同じ。


歪みや淀みが少ないレンズなので、このような距離であっても非常に狙いやすく優秀。これで1クリックが1.5MOAではなく1MOAであれば文句なしだったのに惜しい。

32MOAサークルは距離によってターゲットを覆うような場合もあるため、2MOAドットはどんな状況でも使いやすくて良い。ハンドガン向けでは非常に少ないが、大きな65MOAサークルがあればもしかしたらマルチレティクルモデルを購入していたかもしれない。

パララックステスト │ 100メートル


EPSのパララックスは左から覗くと最大12cmほど、右からは5-10cmほどのズレとなる。上からの場合は同じく12cmほどで下からは5cmくらいだ。509Tより少し大きいかあまり変わらないくらい。

509T X2よりもズレが大きく見えるかもしれないが、EPSの場合撮影時に計測基準となる中央時の狙点がつなぎ服の右になっていたためそう見える。紛らわしい写真で申し訳ない。

イルミネーションの明るさについて


イルミネーションは12段階の切り替えが可能で、最大輝度は同社の小銃向け格安ダットサイトであるHS403Bより若干暗い程度。炎天下でも問題なく使える明るさではあるが、晴れた砂漠や雪原では場合によってもう少し光量がほしくなるかもしれない。

最低輝度については両者ともに非常に暗く設定でき、肉眼での視認は不可能。多段階あるNVモードも含めて夜間の森林から都市部に至るまで柔軟に使える柔軟さがある。これならば暗視装置無しのパトロールや戦闘も環境を問わず使いこなすこができるだろう。


EPSはまるでAimpointのように4段階もの暗視装置対応モードを備えるものの、明るさについては2段階の509T X2とさほど変わりはない模様。

暗視装置併用におけるレンズの見えやすさは、同じ拳銃向けダットで比較すると、両者ともAimpoint – ACRO P2には劣る。小銃向けの場合はAimpoint – Duty RDSと同等か少し劣る程度の性能と言えるだろう。509Tと比較した場合、EPSのほうが若干見えやすいが比べてみないとわからないレベル。

エンクローズドタイプのダットサイトの中では暗視装置併用時のイルミネーションのメリハリもレンズ光透過性も優秀な部類だと思う。暗視装置の性能にもよるが、月明かりが少ない中であっても50メートル先のマンターゲットへ当てることは可能だ。

ちなみに、同じEPSであってもグリーンLEDモデルとレッドLEDモデルでは、レンズコーティングの違いからか今回のレッドLEDモデルのほうが光透過性が良い。

対物レンズからのイルミネーションの見え方について


基本的にホロサンのダットサイトは対物レンズからのイルミネーションの明かりが見えやすい傾向にある。だが今回に関してはAimpointには負けるものの、ホロサン製品としては見えにくくなっている。EPSは509Tと比較するとさらに2割ほど見えにくくなっている印象であった。

実弾射撃、各種訓練における使用感等


レンズの歪みや淀みが少ないため、ハンドガンに載せてグリグリ動きながらの射撃でも照準しやすく、そのボディ形状からも視界に余計なノイズが無いためストレスの少ない射撃ができる。

良いダットサイトだ。ハンドガンに載せるのであれば個人的にAimpoint – ACRO P2Steiner – MPSより気に入った。

レンズハウジング上部に白のインデックスポイントを入れたのも正解だった。5ヤード~10ヤード(約4.57~9.14メートル)での至近距離での射撃でマンターゲットのAゾーン(致命打を与えやすいエリア)~Cゾーンに素早く叩き込むことができた。


小銃に載せ、100~200ヤード(約91.4~182.8メートル)への射撃も行ったが0~300メートルまでの距離でHOLOSUN – AROやPrimary Arms- MD21のような小銃向けダットサイトと変わらないくらい狙いやすかった。

ただやはり長距離や精密射撃を行うとなると、ゼロイン時の1クリックが1.5MOAなのが悔やまれる。最大移動量も30MOA程度なので小銃等で使用するのであればある程度の妥協は必要だ。

密閉型の中では軽さは見事なので、写真のようにスコープをメインに使い、近距離や暗視装置で使用する場合のピギーバックやサイドキックダットサイトとして購入するのも良いだろう。今までダットサイトを載せたかったが、オープンタイプは耐久性に不安があり、密閉型は重くて嵩張るという不満を持ってた人にはEPSシリーズは素晴らしい選択肢だ。

Conclusion | 総評


価格はレティクル形状や色によって違い、実売330ドル~430ドルで売られている。日本国内でも6万~8万円台と、ここまでの完成度ながら509T X2Steiner – MPSAimpoint – ACRO P2よりも安く入手できる。

売れ行きはホロサン(USA)に聞いたところ、マルチレティクルモデル(EPS-MRS)が多いが、シンプルなものを好みコストを抑えたい人は2MOA、サークルレティクルは好きじゃないがドットは大きめを好む人は6MOA(EPS-RD6)を買うのだと言う。今回EPSを購入させてもらった国内ショップ(MILITARY BLOOD)においてもマルチレティクルモデルが多いとのことだ。


ただMPSのようにレンズは奥まった位置に無いし、ACROのように対物レンズの前に犠牲レンズがあるわけではないので、レンズの損傷を気にする人はCovertarmsのARDRadian WeaponsのOptics Guardを取り付けたほうがいいだろう。

また、ウィンデージ&エレベーションタレットの1クリックが1.5MOAではなく1MOAに、そして最大移動量をもっと多く改良してほしい点はある。


ただこの価格帯ながら軽量コンパクト、高い光学性能に加えて信頼性も悪くなく、ノイズの少ないデザインで射撃に集中することができる素晴らしいダットサイトだ

今回、当研究会でHE509TとEPSで選ぶならどちらが良いかを検証に参加した4人でアンケートを取ったところ、見事に2分された。私は軽量で高い光学性能のEPS派だが、HE509T X2もチタニウムボディの頑丈なイメージから根強い人気はあるようだ。

※EPSの購入等に協力してくださいました、MILITARY BLOOD様に感謝いたします。本製品はMILITARY BLOOD様にて購入可能です。オンライン、実店舗(埼玉県川口市)共に豊富でお値打ち価格な品揃えのお店です!

MILITARY BLOOD様公式サイト ↓ ↓

https://tactical-club.com/

Amazonヤフーショッピング楽天市場にも出店しております。

HOLOSUN – EPS販売ページ ↓ ↓

https://tactical-club.com/view/search?search_keyword=eps

記事内で紹介したAimpoint – ACRO P2のレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 Aimpoint – ACRO P-2

記事内で紹介したSteiner – MPSのレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 STEINER – MPS