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ジャンル:ダットサイト

近年の小型ダットサイトブームのまさに火付け役とも言えるAimpoint社が手がけたMicro T-1とH-1。その他光学機器メーカーからもインスパイア(& パクった)した製品が多数出ている。今回は、ただ小さいだけではないこの照準器を紹介しよう。

実弾射撃評価:有り

※1:2016/09/25 光学照準器3機種の見比べ動画をアップ

※2:2019/05/11 逆光条件、100メートル照準、パララックス等のデータを追記

SPECS | 性能諸元 (T-1)

メーカー名(メーカー国・製造国) Aimpoint(スウェーデン王国)
サイズ 62mm×49mm×41mm
重量 116グラム(ローマウント込み。本体のみは84グラム)
倍率 1倍
イルミネーター LED 12段階(暗視装置用4、通常用8段階)
使用電池 (電池寿命) CR2032(光量「2」「8」で5年)
レティクルパターン 赤色ダット 2MOA(その他4MOAのラインナップもあり)
平均価格(購入価格) 2016年:640~720ドル(2013年海外通販にて750ドル)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 他社や業界を牽引するセグメントを作り上げたコンパクトなボディ
  暗視装置、夜間から雪原や砂漠まで使える非常にメリハリのあるイルミネーション設定
  高い耐久性
改善を要する点 パララックスが大きい
  光源を背面にした際、角度によっては内部の反射が目障り

 

バックアップや拳銃のためだけじゃない!実戦的なコンパクトダットサイト

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それまで、この手のコンパクトダットサイトは主に拳銃に載せたり、スコープに載っけて近距離射撃時に使用するという用途が多かった。というのも、当時のコンパクトダットサイトはオープンタイプのダットサイトが多く、視界の確保には優れていたものの、どうしても信頼性という面では、弱かった。T1のようにチューブタイプのコンパクトダットサイトもあったものの、メーカー的にはイマイチ信頼性に欠けるところが多かったのが事実だ。そんな中、ダットサイトを作らせたら天下一品である、エイムポイント社がチューブタイプのコンパクトダットサイトを手掛けた。それがMicro T1(軍用)H1(民間版)である。発売当初こそは、従来通りの拳銃等に載っける運用が多かったが、その堅牢性や軽量さ、そして精巧な作りから、次第にサブマシンガンやアサルトライフルに有名インストラクター等が載っけだして人気が出た。

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紙箱に、多言語説明書とちょっとだけ詳しく書かれた英語説明書、調整工具が付属する。

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このユニークな形の調整工具1個で全てのことが可能だ。先端のドライバーはマウントのネジを、左右の出っ張りは電池蓋を、そしてお尻の出っ張りはダットの上下左右調整に使用する。

ちなみに、ダットの上下左右調整は、調整ネジを保護しているフタに付いている突起でも調整可能だ。フタにも工具にも、どちらに回せばダットがどう動くのか表記してあるのは助かる。たまに忘れちゃうんだよな。(UP:上、R:右)

1クリックの移動量はエレベーション及びウィンデージ共に100メートルの距離で13mmとなっている。

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対物レンズ部分だが、光の当たり具合で赤や緑と違って見えてくる。このコーティングのおかげか、レンズは大変クリアで射手の視界を妨げない。

対物レンズ側からダットが灯っている様子は、環境に合わせた適正な明るさだと相手側から肉眼で見えることは無い。コーティングが甘いダットサイトだと、ここらへんが疎かになり、ダットの光で相手側に射手が発見されてしまうこともある。

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写真右がH1、左がT2である。外見的な違いはロゴマークが黒塗りか白塗りかの違いくらいなもんだ。あとは個体差かもしれないが、T1の方が少しザラついたコーティングをしてるように思える。レンズの色が違って見えるが、光の当たり具合で変わるので同じである。余計な突起等がなく、シンプルで邪魔にならないデザインだ。

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後面。上と右に付いている小さな円柱パーツがダット調整ネジのフタだ。コレを取るとダット調整ネジが出て来る。フタの突起はそのままネジ調整に使える。が、このフタの突起がとある不具合を生んだことがある。後で後述しよう。

側面のダット調整ネジ蓋の前にある大きな円柱は、電池ケース兼ダット光量切替ネジになっている。電池はコイン電池であるCR2032を使用する。Aimpointお得意の省電力設計なので、消し忘れで何ヶ月もつけっぱにしていても問題ない。光量切替ネジは、T-1・H-1はポコッ、ポコッと言った軽い感じのクリック感だ。T-2やH-2はグギッ、グギッと少し力がいる。私は前者のほうが好きだ。

ダットの光量は、T-1とH-1で違いがある。T-1は12段階中、4段階が微光暗視装置用(肉眼では目視できない)となっている。H-1は12段階全部が通常用となっている。暗視装置を使わないのであれば、通常光量の幅がより細かいH-1をオススメする。これだけの違いで、H-1のほうが100ドル前後安いしね。

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T-1・H-1をアサルトライフル等で使用する場合は、様々なメーカーが出しているハイマウントを購入することをオススメする。とは言え、このハイマウントが意外と高いのだ。だいたい100ドル~200ドルくらいの値段帯だ。私は、安価で精度もいい事から、Larue社の「LT660」を使用している。値段も100ドル前後だ。

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このマウントは、T-1・H-1を付属のローマウントよりも約2センチ底上げすることができる。これは、一般的なAR15やM4カービン系のアイアンサイトとほとんど同じ高さだ。(1/3 Co-Witness)故に、この高さであれば、ダットを取り外さなくても、アイアンサイトを使用することが可能だ。

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また、各社で販売されているマグニファイヤーやブースターを使用する際もこのマウントが良いだろう。写真はノーベルアームズの3×マグニファイヤーと、Frip to side mount (HIGH)を使用。若干ケラれるが、値段の割には信頼性もあるので、サバイバルゲーム程度ではちょうどよい。

このマウントは、微細な調節は可能だが、基本的には20mmピカティニー規格のレールにピッタリ適合するよう作られているので、粗悪な作りのものや、メーカーによってはレールに付かない場合がある。QDタイプで、簡単に取り外しができ、ロックもできる優れものだが、その点には注意されたし。

不安な場合は、QDタイプよりも調節幅が大きい、ネジ止め式のマウントを使うのが良いだろう。ちなみに、T-1・H-1はもちろん、後継機のT-2・H-2も同じネジ穴なので、マウントの使い回しは可能である。

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T-1・H-1の泣き所が、レンズを守るカバーが付属のゴムカバーしかないことだ。着脱は面倒だ。形状からバトラーキャップを付けるのも少し難しい。GG&G社から出ているマウントと一体型のカバーや、TANGO DOWN社の本体カバー等を買うのをオススメする。

私は、GunsModify社のT-1用レンズカバーを使用している。ポリカーボネートのレンズを、T-1の対物レンズボディにカポっと被せて使用する。レンズの質は可もなく不可もなくという程度で、至近距離からのBB弾の被弾は、凹みが残ってしまうが、本体レンズがヤラれるよりはマシだ。

この点を、Aimpoint社も把握していたのか、後継機のT-2・H-2はバトラーキャップが設置可能&付属している。実はこのバトラーキャップは対物側のみT-1にも使用可能なので、これのみ入手するのも手だ。

後継機のT-2よりも見やすい!?



レンズの青みに関しては、T-1が発売された当時は、チューブタイプのダットサイトとしては抜群の透明度を誇っていた。今となってはもっと安くてこの透明度に迫るものや凌駕するものは多く存在するが、発売から10年以上が経過する現在(2019年現在)でも、コンパクトダットサイトとしてのベンチマーク的存在としての地位は揺るがないだろう。

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↑写真クリックで拡大可

Trijicon MROAimpoint T-1T-2(後継機)とで比較してみた。(シャツまでの距離:50m)

T-2と比べると、T-1のレンズは若干青みがあり、特に縁は少し濃くなっている。とは言え、普段使用で気になる程度ではなく、Trijicon社のダットサイトよりもはるかに綺麗なレンズだ。ダットの形状も、T-2の方がキレイだが、マグニファイヤー等を使用しないのであればほとんど誤差の範囲だ。

そんなことよりも気になるのが、T-2のレンズ右下の縁だ。T-2のレンズは、コンパクトダットサイトの宿命とは言え、T-1よりも傾斜が大きくなっている。その縁が、光で反射して大変視界の妨げになっている。レンズ径が小さいダットサイトでこのような視界の妨げは大変邪魔だ。レンズやダットの質は向上しているだけに残念だ。故に私は、T-2が出た今でもT-1を使用し続けている


↑写真クリックで拡大可。

こちらは100メートルの距離で高さ180cmの位置に青のツナギを吊るして照準してみた。

2MOAという小さなダットなので、100mでヘッドショット、200m程度なら余裕でマンターゲットを狙うことが可能だ。ダットが小さいからと言って、狙いにくいことはそこまでない。光量を上げれば必然とダットも大きくなるのでOKだ。個人的に大きなサイズのダットで標的が隠れてしまうよりはいい。

ダットの明るさは十分で、砂漠や雪原の直射日光下でも使用できるだろう。


パララックステストを行ってみた。レンズに光を投影させて照準を行うダットサイトには、その構造上光点とターゲットの間にズレが発生する(視差)。正面からきっちりと覗いた場合は問題ないのだが、上下左右斜めとズレた姿勢からダットサイトを覗いた場合はそのズレが大きくなり、当然命中点もズレてくる。光学照準器メーカー各社は、このズレを少しでも少なくしようとレンズや光源の位置等を研究し、パララックスフリーを謳う製品も多い。このT-1もパララックスフリーを謳ってはいるが果たしてどうだろうか?100m先のマンターゲット胸部中央に照準して上下左右ズレた方向からそれぞれ覗いてみた。

T-1のダットは覗いた方向で奇妙な動きをする。下からダットを覗いた場合は左に、上から覗いた場合は右に移動する。左右から覗いた場合は上下だ

パララックスによるダットの移動量も少し大きく感じられる。距離によっては、しっかりと正面から覗かないとマンターゲットを外してしまう可能性があることに留意すべきだ。


次は逆光条件でT-1を覗いてみよう。

あまり余計なフレアやゴースト等は出ず、鏡筒内部が鈍く反射しているだけなので、逆光下でも射手のコンディションを極力阻害せずに射撃が可能だ。これこそが、毎年各社から新製品がドンドン出ているにも関わらずT-1を使い続けている理由だ。後継機種であるT-2のレンズ縁の反射は逆光下ではよりひどくなる。


しかしながら、T-1のレンズ性能に死角が無いわけではない。写真のようにT-1はゴーストが左斜め上にシュッと出やすい。これは、真後ろや斜め後ろから太陽等の光を受けた際に発生しやすい傾向にある。



また、逆光条件に関してもより厳しいテストをしてみた。こちらはニコン SPURと共に行った太陽が沈む前の完全逆光状態での照準だ。

どうしても撮影に使ったカメラのフレアやゴーストも出てしまっているので紛らわしいが、まず全体を見るとチューブ内部が反射しているAimpoint T-1とそうでないNikon Spurとでは視認性の良さは段違いだ。

また、両者のダットが灯っている付近の拡大画像を見てもらいたい。Aimpoint T-1は、発光素子の周辺に3つの金色の小さな金属端子が使われている。この部分が、光の特定の入射角度により、キラっと反射してレンズに映り込む。それが、写真のようにちょうど投影されているダット部に被るため、ターゲットへの照準を妨げることになる。これは、よほどの逆光下の元でしか起きないケースだが、場合によっては正確な射撃ができなかったり、目標を視認できなくなる恐れがある。

その他多くのダットサイトと比べて、T-1だけがこうなるというわけはなく、むしろこのような厳しい条件下でもT-1はよく映っている方だと私は思う。長年使い続けられる優秀なT-1だからこそ、より厳しい目線でこの照準器の限界を見てみた次第だ。

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さてこちらは民間版のH-1である。クリンゴン船が領空侵犯をしてきたので狙ってみた。レンズの質はT-1とH-1で差は無い。

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このMicroシリーズは、それまで大きな照準器を使っていた場合は小さく感じることもあるが、すぐに慣れてくる。信頼性とコンパクトさを取るならこのAimpoint Microシリーズ、コンパクトなのが良いが、もう少し大きいレンズと視野を確保したいという場合にはTrijicon MROが良いだろう。

光学照準器3機種の見比べ動画をアップしたので参考までに。(※1:2016/09/25)

チビのくせに爆発にも耐えるタフネスボディ


このT-1は光学機器のくせに、大変な堅牢性を持っていることで有名だ。こんなものは朝飯前ではあるが、非常に強烈なリコイルである12番ゲージスラッグでの射撃も、ゼロインが狂うことはない。マウントの精度も良いので、一度銃器から取り外して再度取り付けても大きくゼロインが狂うことが無い点も魅力だ。

私のあまり上手くない射撃能力なのと、散弾銃におけるライフルドスラグなので参考にならないかもしれないが、ご覧のようにグルーピングも良い。

また、下の動画をご覧いただきたい。これはダニエルディフェンス社のカスタムM4がどんだけ頑丈かを、テストしている動画なのだが、T-1を載っけている。銃とT-1が受ける仕打ちはヒドイものではあるが、車・ヘリから落とされ、泥や水中に放置され、銃で撃たれてもT-1は点灯している。さすがに、最後に混合燃料と石・砂との爆発物を食らわせるテストでは、接眼レンズが破損したが、それでもダットは点灯しており、ダットの精度に大きなズレはなかった。驚異的な耐久性だ。

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ただ、無敵と言うわけではない。これはあくまで私個人に起きたことだが、意外なところが破損した。

ダット調整ネジの蓋の突起である。訓練中に、岩場にT-1をぶつけて、その時にこの突起がそっくり取れてしまった。使用に問題は無いが、防水性能は失われてしまった。この突起、ある程度問題があったのか、T-2では無くなっている。とは言え、このMicro T-1・H-1の完成度は大変高い。少々値段が高いのが難点だが、その分の信頼性は兼ね備えてくれている。にも関わらず、後継機のT-2とH-2のクオリティが一部下がってしまったのは少々残念だ。

T-1を購入して5年以上、多数の銃器で1万発以上の実弾射撃(空砲射撃を含む)を行ってきたが、いまだ大きな不具合等もなく健在だ。(2019年現在)

次世代型であるT-2とH-2のレビューは下記へ

【レビュー】 Aimpoint Micro T-2 & H-2