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ジャンル:ダットサイト

90年台~2000年台初期のダットサイトの代名詞と言えばAimpoint M2・M3であった。その廉価版がこのAimpoint PROである。同社製品の中では安価だが、信頼性や耐久性に妥協は無い。

執筆時期:2017年3月

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) Aimpoint (スウェーデン)
サイズ(全長×幅×高さ) 130mm×55mm×67mm
重量 330グラム(レンズカバー、スペーサー込み)
倍率 等倍
イルミネーター 赤色 LED 11段階(内1-4は暗視装置用)
使用電池 (電池寿命) 3vリチウム電池 2L76又はDL1/3N(光度7で30000時間)
レティクルパターン 2MOA ドット
対物レンズ径 26mm
耐久温度(保管耐久温度) -45℃~71℃(-51℃~71℃)
耐久湿度 20℃~50℃の間で湿度95%
防水性能 45m(水温10℃)
耐衝撃性能 X軸:500g 0.7-11ms(3回)

Y軸:40g ±4g 11 ±1ms(2回)

Z軸:40g ±4g 11 ±1ms(2回)

耐振動性能 周波数範囲:10-150Hz 正弦波振動

10-30Hz ±1.587mm,30-150Hz,5.75g 1オクターブ/min

平均価格(購入価格) 400ドル前半(2016年海外通販にて422ドル)

安くとも実用十分なエントリー向けダットサイト


Aimpoint T-1や、ホロサイトが銃器業界に出る前は、同社のM2M3がアサルトライフルの上に鎮座していた。長きに渡り照準の主役であったアイアンサイトは、予備としての役目に追いやられ、赤い点を相手に合わせてトリガーを引くだけで、下手くそでも実に弾が当たりやすくなった。事実、米陸軍が自前のライフルが当たらない、不良品だと騒いでいたところに、この手の光学照準器を与えたところ、そんな寝言はピタりとやんだと言う。もちろん、それ以前にもダットサイトは存在したが、軍用として使えるほどのダットサイトを普及させたのは紛れもなくAimpoint社である。

Aimpoint PRO(Patrol Rifle Opticの略)は、そんな同社M2やM3の廉価版という立ち位置の製品だ。お値段も400ドル前半と半額程度となっている。


パッケージは簡素でシンプルながらもカラー写真付きのものだ。説明書は白黒だが、一応イラスト付き(英文のみ)。付属品は、後述するLoマウント用のネジとマウント分解用の六角レンチ付き。


レンズカバー
、しかもフリップアップタイプが付属するのは嬉しい。専用のものは意外と高かったりするし、対物・接眼レンズの径をわざわざ測ってバトラークリークを買うのも面倒なのだ。T-2同様、軍や警察向けの製品なので、接眼レンズは透明なポリカでそのままでも使用できるが、対物レンズ側は反射防止のため本体と同色の樹脂製だ。当然ながら、カバーは好きな角度に調節できるので、射手個々人の視界を妨げない。


Aimpoint M2とM3の特徴でもあった、エレベーション(照準上下調節)・ウインテージノブ(左右調節)、電池ケースのキャップに跨る脱落防止は無くなっている。とは言え、エレベーション・ウインテージノブのキャップ個々には脱落防止がちゃんと付いているので安心だ。1クリックで100m先、13mmの移動幅となる。


電池ケースの接眼レンズ側が、ダットの光量調節ノブとなっている。「カチッ」と「クリッ」を合わせたような感触で操作しやすい。光量は11段階あり、最初の4段階は暗視装置用で肉眼ではほぼ見えない。5~10段階が日中使用となる。また、最後の11段階目は数段明るい設定となっていて、よほどの直射日光や砂漠・雪原での使用が想定されている。


対物レンズのコーティングは鮮やかな真紅に染まっている。このレンズのコーティングは、反射を抑える役目の他、暗視装置を使用した際に、より的確に光を取り込めれるような波長が透過できるようにされているとのこと。鏡筒内にはネジがきられており、オプションであるキルフラッシュやカメラ用のレンズプロテクター等も入れることができるだろう。


電池ケースを開けると、普段はまずお目にかかれ無いであろう3Vリチウム電池の「2L76」が出てくる。特殊な工業用の電子機器とかに使ってることもあるらしいが、私はこのメーカーの照準器以外で使われてるのを見たことがない。また、同じ型である「DL1/3N」は同等製品なので、互換性がある。ヘンテコな電池を使おうが、廉価版であろうがAimpointお得意の省エネ設計は健在で、日中で使用できる7段階目の光量で3年間つけっぱなしができるとのこと。とは言え、こんな普及もへったくれもない電池なので、米軍では単4電池を使用するAimpoint M4が現在では多く採用されているようだ。


レンズカバー同様に嬉しい点が、全高9mmのスペーサー付きのマウントだ。スペーサーありだと、ちょうどM4やAR15系のフロントサイトの高さとなるハイマウントに、スペーサーを外すとショットガンやカラシニコフシリーズにも対応できる。また、大きく出っ張ったマウントの着脱ノブは、工具無しで銃器への装着ができる。ラチェット機構も搭載されており、手で締めるものながら、ネジの緩みを防止しし、少ない力で着脱ができる。余計なトルクがかからないようにもなっており、レールを保護する役目もある。ちなみに、付属のレンチでマウントは取り外しができるので、30mm系のお好きなマウントリングに付け替えることも可能だ。


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照準画像。(光量は7段階目)今回は、知人が所持しているAimpoint H-2と比較してみた。50メートル先のシャツだと、2MOAサイズのダットはちょうど顔より少し小さいくらいの大きさになる。さすがに、レンズの透明度は少し青みがかかっている。とは言え、Trijicon MROと同等か少し良い感じだ。過去に使用したことがある、Aimpoint M2と比べると、透明度はやはり落ちる。ダットの鮮明さは、同じ2MOAのTシリーズやHシリーズよりは滲むが、値段を考えると、実用上そこまで気になるレベルではない。そして、今回のH-2も相変わらずレンズの傾斜のおかげでレンズ縁が視界を妨げている…

マット処理されたアルミ製本体の重量は、カバーやマウント込みで330グラムで、ホロサイト程度だ。入門用の実用ダットサイトが欲しい、お金はかけたくないがちゃんとした信頼性のあるダットサイトが欲しい場合にこのPROはオススメだ。2MOAよりも大きめのダットがいい場合は、自衛隊でも採用している、サイトロンジャパン製のMD-33(5MOA)も同じ値段帯としては良いだろう。