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ジャンル:耳栓

SUREFIRE社のフィルター機能付き耳栓

検証人数:5人

銃砲使用評価:有り

執筆時期:2024年2月

SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) SUREFIRE(アメリカ合衆国)
NRR (Noise Reduction Rating:騒音減衰性能) EP4:24dB、EP7:28dB
カラー クリアー、ブラック、オレンジ
素材 低刺激医療グレードポリマー
価格 EP4:16.95ドル、EP7:21.95ドル

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 ロープロファイルで各種ヘッドセットやイヤーマフとの組み合わせに良い
  国内通販や全国の駐屯地で比較的入手しやすい
  ランヤードが付属しており、脱落防止に良い
  医療グレードのポリマー素材を使用しており、低刺激で着け心地がよく、脱落しにくい形状
改善を要する点 フィルターの外音取込効果は限定的
  ただ耳にはめたり、入れるだけの耳栓と比較し、挿入が少しやりにくい
  フォームチップタイプのものは長期間の使用に適さない
  フランジタイプのものは手入れが少しだけ面倒

フィルター付き耳栓の定番


数十年前、遊ぶ約束よりも1時間ほど早く山中の秘密基地に出向き、かんしゃく玉を集めて加工した即席の地雷を作り、基地周辺にばら撒いて友人達を一泡吹かせてやろうとしていたバカな子供がいた。その子供は、ワクワクして周りが見えていないあまり、敷設中に誤って自爆してしまう。私にとってそれは、初めて耳がキ~ンとなった経験であり、俗にいう音響外傷症状の一つである。大人になってからも、急に近くにいた奴が空に向けて雄たけびと共に銃を撃ち出したり、IEDやKAMIKAZE自爆野郎が予告なく爆ぜてくれたおかげで同じような目にあったことが何度かあった。

言うまでもないだろうが、この症状は出血や痛み同様に身体の危険信号である。キャパオーバーの音を急に、もしくは長時間晒された時、最悪の場合は不可逆的な聴覚障害や脳神経系のダメージを負うことになる。

日本には騒音性難聴の人が1000万人以上いると推定されており、銃の発砲や爆発物の使用する我々だけでなく、耳に刺さる騒音が多い大音量のライブ会場や工場等では、何らかの聴覚保護デバイスを使用することはもはや必須であると言える。

とは言え、耳栓の類は形状や機能等の違いも含めて星の数ほど種類があり、自分にとって必要だと思える環境に合ったものを選ぶことが大事だ。私は昔からSUREFIRE社のEarPro Ear Defendersシリーズを使用している。今回は射撃業界では定番商品であるこいつの紹介をしよう。

いっぱいあるけど何がどう違うの?


このEarProに関しては遮音性や快適性によって様々なバリエーションがある。しかし素人目には何がどう違うのかわかりにくく、飛行中のタヒバリとホオジロとスズメを見分けろと言うようなものである。まずは大まかにどのような差別化や性能差があるのかを見てみよう。(そんなのわかってるよって人はここを飛ばしてくれてOK)

日常音も聞きやすいフィルター付きか、遮音性重視のフルブロックか

今回紹介するEP4やEP7のように、開閉可能なキャップが付いているものは、日常音も聞きやすくなる騒音低減フィルターが付いている。

キャップを開けていても、一定以上の音量が飛び込んできた場合はブロックしてくれる。そしてキャップを閉じればより遮音性は上がる。

ただし、遮音性をより高めたい場合は、フィルターなんて存在しないフルブロックタイプには負ける。

ダブルフランジ?トリプルフランジ?いや、フォームチップかい?

スタバのメニューや経済番組を見て頭痛を引き起こすような横文字アレルギーの人は気分を悪くしてないだろうか?大丈夫、難しい話ではない。外耳道、いわゆる耳の穴に入れる物体の形状や素材は何がいいんだい?って話だ。フランジタイプのものは、返しの付いたフィンやヒダのような形状のシリコンを耳に入れるもの。そのヒダの枚数を2枚か3枚かで違ってくる。

2枚のほうが耳の穴が狭い人や深く異物を入れたくない人に向いている。遮音性を選ぶのなら3枚タイプだ。

より快適性や遮音性を高めたいのであれば、フォームチップタイプが良いだろう。低反発のスポンジ状のフォームなので、耳の穴に合わせてフィットしてくれる。ただしこいつは水分にあまり強くなく、耐久性が低いのが難点だ。


現在(2024年2月)、これらの違いが組み合わさって様々なラインナップが展開されている。それを踏まえた上で、各種紹介していこう。(EP6等のかつて存在していた欠番モデルについては割愛)

EP3 Sonic DefendersとEP4 Plus:この二つが基本となる。フィルターキャップ付きで、EP3がフランジ2個、EP4がフランジ3個となる。騒音を低減させてくれる数値であるNRR値は共に24dBだが、フィルターキャップを解放している際は、EP3が11dB、EP4が12dBの減衰と差が出る。

公式サイトでは開放時のNRR値はもっと高い数値を表記してあるが、説明書には上記の数値が表記されてある。SUREFIREに問い合わせたところ、説明書の数値がより正確とのこと。(公式サイトをなぜ修正しないのかは不明…)

EP5 SONIC DEFENDERS MAX:EP4からフィルターキャップを排し、フルブロック仕様にしたモデル。周囲の音は聞き取りづらくなるが、NRR値は26dBに上がっている

EP7 SONIC DEFENDERS ULTRA:フィルターキャップを備えながらも、フランジタイプからフォームチップになったことで、NRR値はより高い28dBになったモデル(フィルターキャップ閉鎖時。開放時は14dB)。

EP9 SONIC DEFENDERS COBALT MAX:これはEP5の色違いなだけでは?と思われがちだが少し違う。コバルトブルーが示すように、医療従事者や食品衛生関係者向けの製品。異物混入等を防ぐため、金属スキャンに反応する金属粉入りであり、ストラップの取り外しはできなくなっている。その他はEP5と同じ。

EP10 SONIC DEFENDERS ULTRA MAX:EP7からフィルターキャップを排し、騒音をフルブロックすることにより、NRR値は30dBになっている。是が非でも大きな音を耳の中に入れたくない方はこれだ。

NRRNoise Reduction Rating騒音低減値)は、米国環境保護庁が定める、特定の作業環境内で騒音暴露を低減するための聴覚保護装置の有効性を判断するために使用される測定単位。NRR の数値が高いほど、製品の聴覚保護レベルが高くなる。

我が研究会では銃砲、爆発物等の大きな騒音に晒されることが業務上多い為、EP4を配備している。また、一部私物としてEP7も所持しているため、今回はその二つを中心にレビューしていこう。

EP4&EP7

さて、星の数ほどある耳栓の中から、このEarProのEP4やEP7を選ぶ理由はいくつかある。

品質が安定している:耳に触れる部分は、医療グレードの低刺激性ポリマー素材を用いており、耐久性にも優れる。

雨や水中でも使用できる:EP4は水分によって変性が起きにくい素材を用いているため、雨や水中での使用も可能だ。

電子機器を使用しておらず、コンパクト:嵩張らず、コンパクトであり、電子機器類も使用していないため、持ち運びや使用環境を選ばない。

騒音低減フィルターがある:完全に周囲の音をシャットダウンをせず、ある程度の聴覚保護を継続できる。

定期的な買い替えが許容できる価格:保護性能低下を防ぐため、買い替えが許容できる価格(2024年2月:2000~3000円台)である。


このEP4は旧型モデルで、現行モデルはフィルターキャップや携帯ケースの形状等が変更されている。その他機能は変わらない。

研究員に配布しているこの旧EP4は、数年前にセールで大量購入。まだけっこう余っているため、あと2~3年は使うことになるだろう。


全体像を見てみよう。キノコの傘のような透明なフランジの後方に、半円を描くように黒いパーツがある。この黒いパーツはEarLockと呼ばれており、先端の尖った部位を耳の耳甲介に差し込むことで、耳孔(耳の穴)に入れたフランジと共に、耳から抜け落ちないよう留め、フィット感も高めてくれる。

両パーツ共、医療グレードのクニャクニャと柔らかいシリコンでできている。

フィルターパーツが赤い側が右側となっている。

カラーリングは3種類あり、写真はブラック。他にもクリアー(透明)とオレンジがある。また、サイズもスモール、ミディアム、ラージとあるが、ほとんどの人はミディアムで大丈夫だ。

自分の耳に飛び込んでくる危険な騒音は、この耳栓内で圧縮され、熱エネルギーへと変換される。

大丈夫、射撃やライブ中にどんどん耳の中が熱くなることはない。イヤープロが加熱され、耳の中が熱く感じるレベルの音がした場合、耳栓云々の前に人間の身体が死ぬ。


EP4は透明なキノコのような傘が3つあるのが伺える。フランジタイプのEarProシリーズはこれを耳の中に入れるようにできている。

絶妙な柔らかさと厚みで、脱着時の痛みや挿入中の違和感は少ない部類だと思う。ただ、返しがついている形状のため、引き抜く際に耳垢も同時に引き出され汚れがちだ。

衛生上だけでなく、劣化を抑えるためにも使用毎に水や中性洗剤、アルコール等で綺麗にしておくべきだ。


フランジキノコの軸の部位は、フィルターキャップを引っ張ることで前後に調整が可能。耳の形状等に合わせて調整しよう。


一方、こちらはフランジタイプではなく、フォームチップタイプ(正式名称「Comply Canal Foam Tip」)であるEP7。

カラーはクリアー。完全な透明ではなく、少し薄肌色のような色味がある。装着して一番目立ちにくい色合いとのこと。

EP7は低反発のスポンジ状のチップを指で潰し、耳の中に挿入する。すると、耳の穴の内部形状に合わせてフォームチップがフィットするようにできている。

先程のEP4のようなフランジタイプが耳に合わなかったり、より遮音性を求めたい場合はこのフォームチップタイプ(EP7とEP10)が良いだろう。

ただ、このフォームチップタイプのものは劣化が早い。写真で片方もげているのはそのためだ。この件については後述する。


EP3、EP4、EP7にはキャップ付きの騒音低減フィルターが付いている。周囲の音をシャットアウトして保護性能を最大限高めたい場合はフィルターキャップを閉鎖し、フィルターキャップを開放している時は、周囲の音や声を聞きながら、大きく有害な音が飛び込んだ際は軽減してくれる

写真では赤い右側をキャップ閉鎖している。

ただし、これはあくまでセールス上の聞こえの良い謳い文句だ。フィルターキャップ開放時は周囲の音が聞けるとはあるが、「3M – Peltor ComTac VI NIB」のようなデジタルイヤーマフのようによく聞こえるわけではなく、あまり性能の良くない耳栓を入れているような中途半端にくぐもった聞こえ方となり、人や環境によっては、耳をすまさないと会話も聞き取りづらくなる。

当然ながら、開放時の遮音性もNRR値はEP3で11dB、EP4で12dB、EP7で14dBと大幅に低下することにも留意しておきたい。

ただ、無いよりはましだ。周囲の音や声は聴きたいが、いつドデカい音が飛び込んでくるかわからない状況は、射撃場や現場を問わず多い。耳栓を外したいのに外せないというアンビバレントなもどかしい状況下の「及第点」として活用できる。

ちなみに、このフィルターキャップは取り外すことができ、SureFire EarPro EP220等の無線通信用アタッチメントを装着することもできる。


脱着可能なランヤードが付属する。耳栓は少し外してる際に無くすことが多いため、このようなランヤードが付属するのは助かる。

装着について


説明書によると、装着手順はこうだ。1:少し後ろに傾けながら本体を挿入し、前方に回すようにEarLockを耳甲介に差し込む → 2:フィルターキャップに指を当ててわずかな吸引を確認できればOK → 3:フィルターキャップを外した状態で耳元で拍手する。耳栓を装着していない時と比べてあんま変わりないなら1から付け直せとある。

個人的には手順1のやり方ではうまく入らないことが多い。私はフィルターキャップをつまみながら耳の奥に入れ、その後EarLockの部分を曲げながら耳甲介内部に入れている。この方が奥まですっぽり素早く入れることができる。聞くと他に2人の研究員も似たような手法で挿入しているようだった。

実弾射撃や訓練での使用感等


今まで、このEarProを用いて拳銃から機関銃、対戦車ミサイル、戦車砲等々様々な銃砲火器の射撃を行ってきたが、基本的には射撃用途の耳栓としての役目はほとんど無い自覚症状を見る限りは果たしてきている。だが、例外もあった。

これはEP4に関してだが、フィルターキャップ開放しっぱなし(NRR値12dB)で屋内射撃場で5.56mm弾を撃った時に一度、フィルターキャップ閉鎖時(NRR値24dB)でも、フラッシュバン、爆発物なんでもありの多人数CQB訓練をした際は耳が少しだけキーンとなった。

かと思えば、幕府陸軍現役時代、記念日行事の模擬戦闘イベントの練習中、LAVの銃座で軽機関銃を構えてボーっとしてた私のすぐ近くで、空砲とは言え周囲に十分な告知無く74式戦車の主砲が火を噴いたことがあった。背後からドロップキックを受けたような衝撃波をいただいたが、特に自覚症状や障害はなかった。

恐らくその時の体調や細かな状況の違い等で変わるものでもあるし、そもそもNRR値という指標も、様々な観点からあまり過信できないものであるということは広く知られている。そのため、真に自分の騒音環境に適した耳栓類は、様々な評価を見ながら様々な商品を使用し、定期的に耳鼻科等の検査を受けながら選ぶべきだ。

その耳栓の能力の真の良し悪しを推し量ることは難しい。一見なにも問題無さそうでも、長期的な使用で聴覚や脳神経に問題が出ることもある。かと言って指標であるNRR値はまったく信用できないとは言わないが、全幅の信頼には値しない。

さてEP4とEP7の遮音性の違いだが、個人的には大きな違いは射撃場で比較した限りでは感じられない。ただ、フォームチップが耳穴の形状によりフィットするため、耳の中が真空になって澄んだような感覚には少しなる。

着け心地に関しては、個人的にEP4のフランジタイプも嫌いではないので、どちらでもよい。どちらも訓練や現場で激しく動いてもずれたり落ちてくるような事はない。

メンテナンスや交換時期


前述したが、メンテナンスは使用毎に行うべきだ。EP4等のフランジタイプは、ぬるま湯や中性洗剤、ハンドソープで耳垢等を落として乾燥させよう。アルコールや綿棒等を用いても良い。フランジタイプはどうしてもその傘のような形状なので、隅々まで綺麗にしたい場合は少しやりにくく感じることもある。

EP7等のフォームチップタイプは、通常は水やぬるま湯でさっと洗って完全に乾燥させる。無理に汚れを取ろうとすると損傷しやすいため、汚れが酷い際は交換となる。

さて、意外と知らない人も多いが、だいたいどんな耳栓にも使用期限というものがある。主に耳内部に入るシリコンやスポンジ等のフォーム部分が使用に伴い劣化していくのだ。

使用期限が表記されていないものについても、基本的には劣化していき、防音効果は薄れてくるものと認識しておいたほうがいい。駄菓子価格で購入した耳栓で長年射撃訓練をしている兵の多いこと多いこと。

EP4についても、使用期限は開封後、適切にメンテナンスや保管をして「6か月」となっている。EP7については、フォームチップ部分は「2~4週間」と短い。さて、ここで考えてしまうのは果たして使用期限後どれくらいまで実用上使用が可能なのかということだ。

これはあくまで私のケースだが、昔EP4を2年以上使い続けたことがある。ふとそろそろ変えなくてはいけないと思い、新品を購入した際に新品とどう違い、劣化しているのかを射撃訓練で検証した。見た目や使用感に変わりは無く、主観としてはこの程度ならば問題が無いように思える。しかし、聴覚への負担としてどれほどの違いがあるのかを専門家や測定機材を用いて調べたわけではない。現在は私以外にも研究員達に配布している関係上、6カ月を目安に交換させている。

一方のEP7のフォームチップ「Comply Canal Foam Tip」だが、例によって半年で6回ほど使用していたら、軸を残してポロリとフォームチップがもげてしまった。替えのチップは3セット分入って2500円~3000円台で販売されている。

EP7の本体も6ヵ月を目安に買い替えが必要とされている。

Conclusion | 総評


今まで、寝ながら・座りながらの「的当て」ばかりに弾を消費してきた幕府陸軍だが、近年(2024年)は動きながらや、複数もしくは識別が必要な標的、暗視装置を用いての射撃やCQBを念頭に置いた射撃をようやく幅広い部隊にも広めてきている。

そうなってくると、より聴覚へのダメージが大きな屋内射撃場の利用も必然と多くなってくるだろう。射撃を伴う訓練の際、聴覚保護デバイスの使用を必須にしているにも関わらず、その選定に関する明確な規則もなく、自腹で購入しなくてはならないのが現状である。

しかし、聴覚障害を他人事や大したことのないものとして捉えず、自己防衛のためにも良いものを選んでいただきたいものだ。そして、このSureFire EP4やEP7は、その最低ラインと位置付けて良いのかもしれない。

デメリットやメリット、そしてそれらを考慮しながらの2000円~3000円代の価格を考えると、抜群のコストパフォーマンスというわけではないが、安定した品質と入手のしやすさを考えると悪くない選択肢だろう。