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ジャンル:インソール、中敷き

スペンコの長距離の歩行性能を重視&瞬発性を重視したインソールの双方をレビュー

検証人数:3人

執筆時期:2024年9月

足をアップデート


靴の中に別途インソール(中敷き)を入れる歴史は古く、少なくとも2000年以上前の古代ローマ時代にはその存在が確認されている。人間の足回りは現代に至るまでフルモデルチェンジが神仏によって行われていないため、インソールの形状も古代ローマの露店で販売されているものと、Amazon.comで売られているものとはあまり大きな違いが無い。


だが、快適性や持続走破性、瞬発性能等のため、使用素材や細かな形状を組み合わせたり変えたりして、日々進化していることには変わりはない。ただし、とりあえずこれを選んでおけば間違いないと言うような決定打たる製品は存在しない。個々人足の状態や使用環境、そして感覚も違うため、他者に勧められて買ったはいいが思ってたものと違う…という事はここを見ている方々もあるのではないだろうか?
当研究会においても、皆多種多様なインソールを使用している。例えば私は硬質系インソールの代名詞とも言える「スーパーフィート」を長年使っているし、当研究会の撮影モデルであるKUSEMONO KUROKO(以下クロコ)は、靴や活動内容によってインソールを使い分けてたりする。この度、クロコがSpenco社のインソールを2点用途別に購入し、具合が良いとのことなのでレビューを行うことにした。


米国の有名インソールメーカーであるSpencoスペンコ)社。今回チョイスしたのはフラッグシップモデルとも言うべき、それぞれ性格の違う2種類を選んだ。それが、持続走破性やサポート性能を重視した「トータルサポート MAX (TOTAL SUPPORT)」と、瞬発性能を重視した「グラウンドコントロール (GROUND CONTROL)」だ。

レビューの評価人員として、クロコと似たような靴サイズの研究員にも同じインソールを使用してもらい、私もトータルサポート MAXを購入して評価をしてみた。


まずはトータルサポートの外観レビューからしていこう。

トータルサポートは3種類に別れており、バランスの取れた「トータルサポート ORIGINAL」と、競技用のスパイク靴やビジネスシューズにも入れやすい薄型の「トータルサポート THIN」、ヒールカップやアーチ部が硬めでホールド感を高めた「トータルサポート MAX」がラインナップされている。この黒と青の色合いの本製品はトータルサポート MAXだ。

外観表面の特徴から見ていこう。中央前面部、第三指中足骨付近に当たる膨らみは、指の付け根にかかる圧力を軽減しつつ、足の横アーチの形状維持に役立つ。

表面の手触りは摩擦がグラウンドコントロールや、私が長年愛用している「SUPERFEET – Trim Fit Green」よりも少なく、靴下の摩耗や足の擦れ少なくなるだろう。ただし、その分少し靴内での滑りを感じる人もいるかもしれない。


※写真上段がトータルサポートの裏面です。

なんだかカラフルな裏面踵部。外側部に集中している青の柔らかめのパッドは、歩行時の快適性とリズミカルな足運びをサポートしてくれる。

内側部にある赤い硬めのパッドは、足首が内側に倒れ込む回内や捻挫を防いでくれる役割がある。

前面部にある通気孔がついている黒い「SpenCore フォアフットクラッシュパッド」は、反発性のあるクッション素材を用い、前足部にかかる衝撃を吸収すると同時に、蹴り出しの力を補助してくれる効果がある。

トータルサポートは総合バランスが良く、長距離歩行能力を高めてくれる設計となっている。


次はグラウンドコントロールだ。

鮮やかなブルー・ピンク系の色合いが目立つこのインソールは、瞬発力や飛んで跳ねて走ってと言ったより激しい動きが求められるスポーツ向けに特化されている

グラウンドコントロールは足の縦アーチに対する高さをHigh(3.3mm)、Mid(3.0mm)、Lo(本製品:2.7mm)の3種類ラインナップされている。ちなみにHigh以外はアーチ部の硬さがやや硬めで、Highのみ硬めとなっている。自身のパフォーマンスや快適性、足の形状から細かく選べるのは良いことだ。

クロコが所持している写真は最もアーチが低いLo仕様。

表面部は滑りを軽減し、抗菌消臭効果のあるSIPURE素材を採用。


※写真下段がグラウンドコントロールの裏面です。

特に裏面はトータルサポートとの大きな違いが出てくる。踵部のピンク色のヒールパッドはトータルサポートの青のヒールパッドのような感触となっており、着地時の衝撃を吸収する効果がある。

底面中央付近の独特なテクスチャが目立つ黒光りする部位は、硬質な樹脂製でで足首の傾きをコントロールする役目がある。

足指部の青い部位は、反発力の強いポリマージェル素材でできており(フォアフットジェル)、蹴り出しをサポートしてくれる。

他にもトータルサポートとの違いで、裏面全体は通気孔の開いたEVA素材ボディーでできており、激しいスポーツでも快適性を損なわない作りとなっている。


ご紹介がおわったところで、それぞれの比較に移ろう。

比較には今まで山や都市部、各種訓練で使用してきた所見に加え、同じ靴で幕府陸軍で行う障害走の練習をそれぞれのインソールを交互に使用しながら行った。

わかりやすいのはやはり瞬発性や激しい動きのスポーツに特化したグラウンドコントロールだ。走りだけでなく、普通に歩いている時も蹴り出し時にバネのようなブーストを感じ、足が素早く出やすい。

また、ジャンプをしたり障害物を乗り越えたり等で高いところからの着地時の衝撃もトータルサポートと比較してグラウンドコントロールの方が上手だ。

トータルサポートもグラウンドコントロールには負けるものの、蹴り出し時のブースト感は悪くない。筆者が所持しているSUPERFEET – Trim Fit Greenと比較すると、トータルサポートのほうが蹴り出しのサポート感を感じることができた。

グラウンドコントロールとトータルサポートと比較してだが、意外にも荒れ地や障害走を除き、アスファルトの平地ではトータルサポートの方が走る際の加速性能が良かったと、使用者2人が口を揃えて言っていた。


ただやはり、ジャンプ時や着地時、サイドステップ等の単純な歩く走る以外の動きが加わるとグラウンドコントロールとの差が出てくる。衝撃吸収能力が高いだけでなく、飛びやすさや次の行動への素早い移しやすさがグラウンドコントロールのほうが上回る。

一方でトータルサポート MAXはアーチのホールド性が高いため、長時間・長距離の歩行でも、歩行スタイルを崩さず安定して歩ける能力が高い。疲労軽減効果を感じられたため、クロコはこれを行軍時や山歩きの際に使用している。

ただし、トータルサポート MAXは土踏まず部の高さと硬さのバランスから、直立立ちん坊状態での違和感や痛みが他のインソールよりも感じられた。これは3人同意見であったが、トータルサポート Originalだとまた違うのかもしれない。

インソールの通気性に関してはやはり通気孔が全体に開いているグラウンドコントロールが良い。特に通気性の良いシューズだとより実感できる。


同インソール共にサイズは足の長さが23cmからのXSサイズから32cmまでのXLサイズまでカバーされており、23cm以下や規定の長さでは気に入らない人も足指部をある程度カットできるため、幅広い足のサイズで使用することができる。

Conclusio| 総評


それぞれ性格の違うインソールを比較レビューしたが、基本的にはトータルサポートシリーズがオールラウンダーの側面が強いため、万人に紹介しやすいものとなった。

特にトータルサポートはアーチサポートを重視した作りとなっているので、足の疲労や足底筋膜炎の症状緩和に良い。スポーツをしなくとも、通勤通学、プライベートレジャーに使っても効果を発揮できる。


一方のグラウンドコントロールは、機動性や瞬発性を重視した作りなのでサバイバルゲームやCQB訓練、動きの激しいスポーツや野外での格闘訓練等、より足の瞬発的なパフォーマンスや衝撃が高い状況下での使用に強い。

クロコは以前レビューした機動性重視のミドルカットブーツ「SALOMON – CROSS HIKE MID」にはこのグラウンドコントロールと併用している。

インソールは靴同様に万人にとっての正解は無い。個々人それぞれ足の大きさや形状も違えば、使用用途や感じ方・動かし方だって違うからだ。

今自分が使用しているインソールに不満があったり、新たな可能性を模索してみたいのであれば、今回紹介したスペンコのインソールでもいい。二足歩行生物の可能性を上げる意味でもいろいろと試してみるべきだ

他製品との比較

ちなみに私もスペンコ社の「RX コンフォート」という低価格帯の薄さとクッション性能を重視したインソールを所持している。国内でも1500円以下という手頃に買えるインソールではあるが、サポートやフィット感が足りないのと、飛んで跳ねて走ってと言ったアクティブな運動時には限界性を早く感じる。同価格帯の他社製品か、あと数百円足して同社「RX アーチクッション」を購入したほうが良いだろう。

現在、RX コンフォートは私の家庭菜園用長靴インソールとして放り込んでいる。

また、ミリタリー向けに作られた同社「PolySorb ヘビーデューティー」という製品も使用したこともあったが、使用して数ヶ月後の行軍時に足の違和感を感じて脱ぐと、インソールのパッドが分離していたという残念な終わりを迎えた。


SUPERFEET – Trim Fit Green:以前レビューした私が長年愛用している硬質系インソールの代表格。今回のレビューでは自腹購入したトータルサポート MAXと比較を行った。スーパーフィートは足そのものの基本性能が上がったような印象があり、長距離行軍からスポーツ全般にと全包囲への強さがある。

このインソールは硬いこともあり、パフォーマンスの低い靴でもインソールを交換することによる差を感じやすい。ただし、その硬さ故にこのインソールも立ちっぱなしの時は痛みを感じやすい。どちらが好みかと言われれば難しい。これに関してはトータルサポートを長く使用してからの返答となるだろう。