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ジャンル:トレッキングシューズ

グリップ力と機動性に優れたサロモンのトレッキング向けミドルカットシューズ。次期型の「CROSS HIKE 2」との比較も。

執筆時期:2023年2月

※本製品を提供してくださったKUSEMONO KUROKO氏(の中の人)に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元

メーカー名・国(メーカー国・生産国) SALOMON (フランス共和国・中華人民共和国)
サイズ 女性サイズ22cm~27cm、男性サイズ25cm~30cm
重量 女性用23cm:320グラム、男性用25.5cm:362グラム、男性用27cm:396グラム
アッパー素材 テキスタイル、合成素材 MCL
購入価格(共に2021年12月に購入) 14800円(レディース版)、85ドル(メンズ版)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 軽量で柔軟な可動性、機動性とグリップ力の両立
  汚れが落ちやすい素材
  靴の脱着が非常に容易
改善を要する点 特になし

 

脱着にも優れた高機動型トレッキングシューズ


見た目は地味子、中身はアウトドア派の当研究会撮影モデルであるKUSEMONO KUROKOは、ハイキングやトレッキングをよく行う。今までアウトドア用途にはモンベルのローカットタイプのハイキングシューズを使用していたが、ちょっとした水場やぬかるみに弱い点を少し気にしていた。野山に放たれると元幕府陸軍普通科時代の血が騒ぐのか、飛んで跳ねて走ってはしゃぎまくるため、機動性と軽快感を重視してのローカットタイプをチョイスしていたようだが、靴内に水が浸水した際は上がっていた気分もガタ落ちとなる。


靴もだいぶお古で損傷も見受けられてることもあり、ミドルカットでありながら機動性に富んだものを探そうということでスポーツ・アウトドアショップ巡りを行った。

なお、私がよくチョイスするような軍・警察向けモデルは地味・可愛くないということでカタログを見ることすら拒絶された。

要望事項は以下の通り。
山の斜面、少々の岩場でも走破性の良いもの。

戦技・格闘訓練もしやすい運動性能の良いもの。

防水性や通気性の良いもの。

車の運転でのペダル操作に大きな支障がないもの。

靴ひもがほどけにくく、尚且つ脱着が容易なもの。

他にも、国内外の地方の観光地を疲労感無く歩きたい!帰りにショッピングモールや駅・空港周辺のお買い物でも難なく歩けるのがいい!!等、もはや言わせたらきりがないため、早々に商品選びへと移行した。


そんな中、これカッコいい!!と手に取り、これすごい動きやすい!と飛んで小走りしてローキックまで行っての試着を堪能して採用となった商品がSALOMONの「CROSS HIKE MID GORE-TEX」だ。そして店内で暴れるのはやめていただきたい。

当初、外観に一目惚れして選んだだけでは?と思い私も試着すると、ミドルカットなシューズながら縦横無尽な機動力を損なうことなく動きやすく、ちょっと興味が出てきた。

さて、気になったからにはいろいろ試してみないと気が済まない。だが、クロコが購入したのは女性用でもあるし、そもそも私ではサイズが合わない。そこでネット上で調べていると、北米の某アウトドア系通販サイトでクリアランスセール品となっており、リーズナブルな価格で入手ができ、私も実際に履いて検証を行う事が出来た。

→色が違うとはいえ後日同じ靴を履いてきた私を見て、KUROKOは何とも味のある表情をしていた。

SALOMON(サロモン)はフランスのスキーや登山用品を販売している老舗メーカーだ。一時期はドイツのadidas社に取り込まれていたが、今は中国の安踏体育用品有限公司の傘下となっている。


クロスハイクは、同社のトレイルランニング向けシューズ「スピードクロス」をベース作られた、トレイルランニングとトレッキングシューズの特性を併せ持った靴だ。山道や悪路に対し、走って跳ねての高い機動性を持ちつつ、1歩1歩しっかりとしたグリッピングと足の保護性能も確保している。

ラインナップは今回紹介する、足首もしっかり保護してくれるミドルカットと、軽快なローカットの2種類がラインナップされている。トレランとトレッキングシューズを合わせ持った性格をより強く感じるのは、このミドルカット版だろう。

このCROSS HIKEだが、すでに生産を終了しており、後継となる「CROSS HIKE 2」が席を埋めている。まだ在庫が残っているショップでは新旧両者が飾られているため、今回は両方の比較も少し行おう。


正直に言うと、このSF映画やゲームに出てきそうな外観に関しては私もけっこう好きだ。特にこのレディース用カラーの「Lead / Stormy Weather / Charlock」は素晴らしいカラーリングだと思う。KUROKOが一目惚れしたのもうなずける。

カラー展開については、売られている国によっても違ったりしており、黒がメインカラーである「Phantom / Black / Ebony」以外は男女それぞれ共通のカラーが無い。メンズ用は派手か地味かの色合いが多く、レディース用の方が私好みの良い色合いが多かった。

では女性用だって22~27cmまでのサイズ展開があるんだから、好きな色を買えばいいじゃないかと思ったが、女性用は足の高さや幅が私の足には合わなかった。

一方、CROSS HIKE 2は外観やカラー共に無難な、悪く言えば平凡なものとなった。そういう意味でも、後継にも関わらずお互いあまり食指が動かなかった。

外観表面はサラッとした手触りのナイロン系素材をメインにした合成素材である。汚れが落としやすくてメンテナンス性は良い。


こちらは私が購入したメンズ用で、カラーは「Olivine/Magnet/Gum1a」。

さて、この手の海外製の靴やら衣服を購入する場合、悩むのはどのサイズを選ぶかだ。普段購入している日本サイズでは合わないことが多いからである。衣服の場合は少々大きくてもまだ着れないことはないが、靴の場合は大きくても小さくてもだめだ。サロモン製品に関しては、スポーツ・アウトドア用品店での取り扱いが多いため、実際に試着がしやすい。

KUROKOは普段23.5~24cmの靴を履いており、クロスハイクは女性用23cmが登山用の厚手の靴下を履いた状態でちょうどよかったようだ。
登山靴等は、むくみ等を考慮して少し大き目を購入した方が良いという意見もある。できれば、自分の使用スタイルに合ったものを実際に試着してから購入してもらいたい。

一方、普段25cm~26cmの靴を履いている私は、男性用25.5cmを選択。少し大きく感じたが、25cmは若干窮屈に感じた。

SALOMONの靴は比較的横幅を広く作っているため、日本人基準からすると狭く作っている欧米製品の中では、比較的普段自分が使用している靴サイズを選んでも失敗が少ない。


靴紐部分はSALOMON独自の瞬時に緩めて、締め上げることができる「Quicklace」が取り付けられている。

写真手前側の靴の靴紐をご覧いただきたい。先端の棒状のパーツを引っ張って靴紐を締め上げ、中間部分のバックルを引き上げることでストッパーとなる。靴紐を緩めたい時は逆手順であり、3秒程度で緩めるも締め上げるも即できる

締め上げが完了したら、写真奥の靴のように、Quicklaceパーツ群をベロ(タン)内に収納できる構造になっている。

靴紐が細くて千切れそうとか、ベロからポロッと出てきそうとか少し懸念していたが、この細い靴紐はけっこう頑丈だし予備パーツは別売りされている。そしてベロも出入り口が伸縮ポケットなので、適切にしまい込めば長距離歩行でも落ちたことはない。

このQuicklaceは素晴らしいシステムだ。靴紐が関わる煩わしい問題から文字通り解放される。これだけでもSALOMON製品を買いたくなる。


靴底(アウトソール)はテトラポットのようなY字パターンをしている「Contagrip」。特に泥道やぬかるみ、湿った野原でのグリップ力を高め、様々な方向へ負荷が偏った際でも安定性を高めてくれる。

この靴のベースとなっているトレイルランニング向けシューズ「SPEED CROSS」も同じContagripを使用しており、CROSS HIKEはより安定性を高めたパターンとなっている。


インソール(中敷き)は米国OrthoLiteの製品が使用されている。多くの欧米シューズメーカーがここの製品を付属のインソールとして採用している。

正直インソールとしてのレベルはそこまで良くはないので、自分に合ったものがある人は入れ替えたほうがいいかもしれない。私は足裏のアーチ構造をしっかりと保ってくれる硬めのインソールをよく使用するので、このインソールは使わず、長年愛用しているSuper feetのGreenに入れ替えた。

ちなみにKUROKOはOrthoLiteの下に、薄いインソールをさらにもう1枚入れて使用している。これが一番しっくりきたようだ。


製品名の通り、CROSS HIKEシリーズにはGORE-TEX(ゴアテックス)メンブレンが使用されている。防水性や防風性を確保しながらも、通気をよくしてムレを軽減してくれるゴアテックスは、ある一定価格以上のシューズにはよく使用されている。

トレッキング、ハイキング、トレランでの使い勝手


さて、実際に山を走ろう。KUROKO(の中の人)の体力測定の一環で、アップダウンが激しく、湿地帯あり、岩場ありのコロコロと路面状況が変わるハイキングコースを、トータルで15キロ前後走った。

ミッドソール(アウトソールの上)にはEnergyCell+というクッション性と安定性、そして前へと駆け出せれる強い反発性を持った作りになっている。それを確かめるべく、急な全力疾走や方向転換を行ったが、不安定感や変な浮遊、脱力感は感じられず、素早い弾き出しができる。(もちろんランニングシューズと比べるのは酷だが)


この日の気温は、日中でも氷点下を下回る寒さであり、途中あえてぬかるみや小さな小川、水たまりも走りぬけたが、浸水や我慢のならない足の冷えはなかった。

また、急な斜面を登るような、体温や発汗の上昇が発生しやすい場面でも、嫌な蒸れは同種のミドルカットシューズの中では少ないと言えるだろう。もちろんそれはゴアテックスによる効果もあるのだが、どちらかと言えばきつく締め付けず、自由度と柔軟性を優先した足首・下腿周囲の構造にあり、空気が籠もりにくくなっている点が大きいだろう。


普通に走るのに飽きたKUROKOや私は、途中で丸太や岩等に飛び乗ったり、蹴り進んだりしたが、接地面積の少ない路面でも、しっかりと食い込んで安定感のある走りを維持してくれる。

また、このシューズの特徴の一つとして、重量の軽さも大変気に入った。KUROKOの女性用23cmサイズで320グラム、私の男性用25.5cmサイズで362グラムであり、男性用27cmサイズであったとしても400グラムを切る396グラムという軽量さだ。

だいたいこの手のトレッキング用ミドルカットシューズは、450~500グラム代の重量が多い。この軽さは実に素晴らしく、長距離歩行における負担の軽減や、トレッキングシューズとは思えない軽快な機動性につながっている。

ちなみに、靴としてのジャンルは違うが、私が愛用している「LOWA – Zepher GTX Mid TF」は555グラム。

ただ、写真を見てもわかるが、ミドルカットシューズながら、足首付近のホールド性はガッツリと包み込むようなものではなく、紐をきつめに締め込んでもあまり変わらない。これは、安定性・ホールド性よりも柔軟性を優先し、機動力を高めるためだ。

そのため、ホールド性をもう少し重視したいという人は、アッパーや紐のホールド構造がより高まった後継機のCROSS HIKE 2を選んだほうがいいだろう。

ただ、ミドルカットのトレッキングシューズながら、高い柔軟性と機動力、軽快な動きが可能という特徴は少し薄れてしまう印象だった。

格闘戦や銃撃戦での使い勝手


さて、今度は我が研究会らしく、格闘戦、錯雑地や山間部、CQBを想定した銃撃戦等の戦闘シーンにおける使い勝手を試してみた。

まず格闘戦においては、予想通りミドルカットのトレッキングシューズとは思えない使いやすさだ。スポーツ用スニーカーに迫るような、足関節等の自由度が得られ、各種蹴り技や回避行動、そして踏み込みでも力とスピードのロスを少なく繰り出すことができる。少なくとも、ミドルカットの軍・警察用ブーツでは到底この真似はできない。

もちろん、軍用のものと比べて重量そのものが軽く、素材も違うため、蹴り技の威力は低下するだろう。

錯雑地や山間部での銃撃戦でも、高い機動性を発揮することができるため、ヒットアンドアウェイやゲリラ戦法がやりやすい。靴の重量の軽さやグリップ力も、激動時における負荷の低減に役立っている。

ただ、CQB戦、特に市街地での使用は注意が必要だ。クロスハイクのアウトソール(靴底)は、滑りやすい濡れたタイル等の床では、その高いグリップ力を発揮しにくく、市街地向けの軍・警察用ブーツよりも少し滑りやすかった。

また、靴底の形状から接地面積が少ないため、コンクリートやアスファルトでは摩耗が多くなる。まぁこの点はトレッキングやトレランシューズ全般に言えることではあるが。

反動が高い銃の立射も、地面が土ならば高いグリップ力を得ることができるが、人工的なアスファルト等ではグリップ力が無いとは言わないが、少し違和感も感じた。

Conclusion │ 総評


今までにない軽快感から、調子に乗って人間社会へと降りて戦闘使用をしたことにより、やはりCROSS HIKEは野山での高機動性能を売りにしたミドルカットシューズであるということを思い出させてくれた。

まぁそんな事を置いても、この靴が山を縦横無尽に駆け抜けるトレイルランニングシューズと、山をしっかりと踏みしめて踏破へと導いてくれるトレッキングシューズという、両者の特徴を併せ持ったユニークな靴であることに変わりはない

軽くて自由に飛んで跳ねて走り回れるミドルカットのトレッキングシューズが欲しい人は、ぜひこのCROSS HIKEを購入すべきだ。

そして、柔軟性と自由度は少し低下するが、ホールド性をもう少し上げたいという人はCROSS HIKE 2が良いだろう。

現在、CROSS HIKEは次世代版のCROSS HIKE 2へと置き換わっており、在庫限りとなっている。(2023年2月)

サロモンの製品で、簡単に脱着ができる「Quicklace」が付いており、サポート性やフィット感よりも高い機動性を確保したトレッキングシューズが欲しい人は早めに入手しておくことをお勧めする。


多忙な中での靴の戦闘試験と撮影が終わり、早く帰りたいのにカメラを取り出せと急に言いだした後の1枚。愛車とおそろでいいでしょとご満悦。はいはい。