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ジャンル:アイウェア用曇り止め

数々の曇り止めの中から厳選した、持続性の高いアイウェア用曇り止め。他社製品との比較も。

執筆時期:2021年1月

SPECS | 性能諸元

メーカー名・国(メーカー国・生産国) MotoSolutions(アメリカ合衆国)
成分 界面活性剤、フッ素系液剤
容量 30ミリリットル
購入価格 17ドル

高い曇り止め効果と持続性がウリ

コロナ禍の中、マスクの着用が必須とも言える生活様式になり、私のようなメガネ族にとって夏場や冬は曇りとの戦いである。呼吸の仕方をミスったり、ちょっとでも息が上がるような動作や運動をしようものなら、たちまち視界はスモークグレネードを放り込まれたキルハウスと化す。

まぁコロナがあろうが無かろうが、メガネ族である私にとって、メガネやゴーグル等のアイウェアに対する曇りとの戦いは大きな問題であることに変わりない。今まで数多くの曇り止めを購入し、最高!とは言えないにしろ、現時点でのベストな曇り止め「Motosolutions FOG TECHモトソリューションズ フォグテック」を、ミリタリー&サバゲー業界でよく引き合いに出される他社製品と比較しながら紹介していこう。


今回比較する商品は以下の3点

マックジャパン – FOG BUSTER

マックジャパンは、サバイバルゲーム用品やエアーソフトガン用のパーツ類を販売している日本のメーカー。

MotoSolutions – FOGTECH

モトソリューションズは、モーターバイクや研究・産業用の曇り止めをメインに開発・販売している米国メーカー。

McNETT – OP DROPS

マクネットは、アウトドアグッズの補修やメンテナンス用品を販売している米国メーカー。

そして、それぞれの製品に対して以下のテストを実施した。どのテストも、オークリー RX度付きレンズを装着したSPLIT JACKETに塗布して実施。

テスト1:高温多湿の山中での偵察訓練

日中気温28~32℃の7月に実施。敵領域内各所を偵察して回り、各製品とも1夜2日で実施。寝泊まりは山中で実施、天候は曇り時々雨。

テスト2:冬の風呂場

→室温4~7℃の冬の風呂場内で実施。水温41℃の湯船に浸かった際、身体を洗っている最中、水温50℃のシャワーでの清掃の3パターンを行う。

テスト3:マスクを着用して冬の街を30分散歩

気温-1℃の冬の街をマスクを着用しての散歩で実施。20分歩き、10分ジョギング程度の小走りで行った。

製品のテスト結果を公表する前に、まず何でアイウェアの曇りが発生するのかをサクッと説明しよう。

我々が普段ありがたく吸わせていただいている空気には、目に見えない多くの水分が含まれている。基本的には暖かい空気になるほど、その空気が保持できる水分量も多くなる。

多くの水分を含んだ空気が、冷たいレンズ等に触れて温度が下がると、保持できなくなった水分が、レンズ等の表面に水滴として付着する。いわゆる「結露」である。

この「結露」によって、メガネが曇り、風呂場の壁や天井が水浸しになるのだ。

マックジャパン – FOG BUSTER



薄い水色で、ほとんど粘性の無いサラッとした液体。レンズ上に垂らすと色はほぼ無色透明。


非常に伸ばしやすく、ほんの1滴程度でレンズ全体に行き渡りやすい。塗布後も、レンズの透明度は塗布前と比べてほとんど変わらず、塗布を行ったかどうかは見た目ではわからない。

親指が見苦しく荒れているが、日々何度も行われる手洗いやアルコール等の塗布によるもの。

結論から言ってしまうが、この製品の曇り止めとしての効果はまるで話にならなかった。

テスト1:高温多湿の山中での偵察訓練

少し走ったり、息をあげただけで何も塗布しない状態とあまり変わらないくらい曇ってしまう。

耐久性も少なく、少し雨が降っただけでその曇り止めとしての効果は無くなってしまう。

テスト2:冬の風呂場

風呂場に入った途端にみるみる曇る。何も曇り止めを塗布しない状態とほぼ変わらない。

曇りからの回復は、何も塗布しない状態と比べて若干早い気がするが、誤差の範囲。

テスト3:マスクを着用して冬の街を30分散歩

何も塗布しない状態と同じく息を吐く度にレンズ面積の5割近くが曇る。曇りの回復は若干早い。

結論:曇り止めとしての効果は、市販の数百円前後の曇り止めのほうがよっぽどか高い。

McNETT – OP DROPS



一昔前、ESSのProfile NVG用途を中心に米軍等の法執行機関が採用して話題になった製品。

少し粘性のある、白濁色の液体。乾きが早いので、布で伸ばす場合は少し伸ばしにくい。マニュアルによっては、指で伸ばしてもいいぞと書いてあるが、汚くなりがちなのでやめておいたほうがいい。


塗布をして伸ばすと、少量でもまるで指紋ベタベタに触った跡のように薄く白い油膜が広がり、塗りムラができやすい。

装着して見てもその白い油膜は視界内に映り、光源等を見た際も乱反射して見にくい。少なくともこれを塗布した状態で夜間の車両の運転はあまりしたくない。

テスト1:高温多湿の山中での偵察訓練

曇りくくはなるものの、塗りムラができているところから汚れが付きやすく、曇りが発生しやすい印象。ちなみに、塗りムラなく綺麗に塗るのは至難の技。

雨にはある程度の強さはあり、効果は小雨程度だと持続することができる。

許容できる範囲での持続効果は概ね半日~1日弱といった感じだった。

テスト2:冬の風呂場

水温41℃の湯船に浸かった際には1~2分耐えた後、徐々に曇っていったが、レンズの下10%くらいの曇りに留まった。

身体を洗っている最中は問題なかったが、髪や顔を洗い、熱いシャワーをかけて流した後に再びメガネをかけると一瞬でレンズの全面積が不透明度7割ほど曇った。

水温50℃のシャワーでの清掃では、10秒程度で完全に曇る。

テスト3:マスクを着用して冬の街を30分散歩

徒歩の状態では、レンズの下20%くらいが息を吐く度に曇っては消え、曇っては消えを繰り返した。

走行状態になると、曇りは下からみるみるうちに上がっていき、最終的には概ねレンズの60%ほどの面積が不透明度7割ほど曇る。

結論:安物の曇り止めよりはましだが、塗布した時点でレンズが白っぽくなりがちなのはよろしくない。市販の1000円以上の良い曇り止めを使ったほうが総合的には良いだろう。

MotoSolutions – FOGTECH


お待たせしてすまない。ようやく今回の本題となる製品だ。

フォグテックは、今回紹介するような30mlのボトル入りのものと、個包装されている5枚~100枚入りのシートタイプのものがある。ボトル入のものには、写真のような小さな円形の塗り伸ばし用のレンズクロスが3枚付属する。

このフォグテックが従来の曇り止めと違うと謳っている点は、結露の蒸発が追いつかないほどの湿気に見舞われた場合、レンズ上の水分を均一な水膜に広げ、視界不良や光の屈折を抑えるようだ。果たしてその効果はいかに?

このボトルタイプは、アルコールを使用していないので、各種モニターやアクリル系樹脂にも使用できるようだ。


容器の裏には簡単な使い方等が記載されている。使用方法は以下の通り

1:レンズの汚れを取って完璧に乾いた状態にする。

2:柔らかい布に本製品を数滴垂らし、湿らせる。

3:曇り止めをかけたい側のレンズに素早く塗り込め。

4:塗り込んだ後、5秒程度したら乾くのでそれで完成。けして磨き込まないように。

手順2で布に垂らせて書いているが、レンズの種類や面積によっては、レンズそのものに液剤を垂らしたほうがうまくいく場合もある。


フォグテックの液剤は無色透明に近く、粘性は若干油のようなぬめりを感じる。

液剤は非常に乾くのが早いため、素早く塗らないといけず、塗りムラができやすい。塗りムラが重なると曇り止めとしての効果が薄れてしまうので、最初はうまく塗るのに少し慣れが必要だろう。


塗り込んでいくと、OP Drops程ではないにしろ若干白っぽい油膜のようなものが広がる。日中は最初こそ少し気になるが、すぐ気にならなくなる。夜間や室内等に関しては、光源を見ると少しハレーションを起こす。

テスト1:高温多湿の山中での偵察訓練

相変わらずの雨が降ったり止んだりの良くない天気だったが、故意にレンズに息を吹きかけない限り曇ることはほぼ無く、例え曇ったとしてもすぐ引いていく。

調子がよかったので、3日目も続行。襲撃を行う際や、敵の攻撃を避けるために激しく動いた際には、白く曇るというよりは薄い水膜ができて光源がハレーションを起こすという視界になる。真っ白に曇るよりはまし。

テスト2:冬の風呂場

湯船に浸かった状態ではまったく曇らなかった。意図的に息を吹きかけた場合は、一瞬で曇ったが、10秒ほどで徐々に曇りは引いていく。

髪と顔を洗い、熱いシャワーで流した後でメガネをかけると、レンズ面積の80%が不透明度7割ほどの曇りを見せた。

水温50℃のシャワーでの清掃では、20~30秒ほどでレンズ表面に薄い水膜を形成し、光源がハレーションを起こす現象が発生してくる。1分ほどしたり、シャワーの湯気に顔を近づけるとレンズ全体が不透明度9割曇る。

Conclusion │ 総評

今回比較テストを行った製品の中では、フォグテックが最も優れていた。また、ドラッグストアや眼鏡屋、ホームセンター等で一般流通されているものと比べても良い結果を出してくれた。

通常の曇り止めと比べて初期段階での曇り難さもさることながら、謳い文句通り、蒸発しきれない水分に関しては水膜を形成してギリギリまで視界を保ってくれる。また、200mレンジの射撃を行ったが、集弾性能は若干低下した程度だった点も評価したい。

塗った時点で少し白っぽい油膜のようなものをレンズ上に広げる点は気になるが、電動ファン付きのゴーグルほどでは無いにしろ、曇り止めとしての効果は高い部類だ。私にとっては今まで7~8種類試した中では、現時点のベストな曇り止めだ。

パッケージに書いている5日ほどの持続効果というのはさすがに大げさだが、2~3日は初日同様の効果が期待できる点も良い。

価格は国内外でどこも概ね2000円前後と少し値は張るが、30mlの容量で40回分以上の使用はできるようだ。

ただ、このフォグテックは現在(2021年1月)国内外問わずあまり在庫が無いようで、少し入手し辛い点がネックではある。