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ジャンル:バックパック

ミッションワークショップが誇る、驚くべき拡張能力を持つバックパック

検証人数:2人

執筆時期:2022年12月

SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名・国(メーカー国・生産国) MISSION WORKSHOP (アメリカ合衆国)
サイズ(横×縦×奥行き) 38.1×53.34×15.24cm
重量 2kg
容量 最小時29リットル:最大時64リットル
ボディ素材 HT500コーデュラナイロン
価格(購入価格) 65900円(2015年、18500円で購入)

日常使いから長旅にまで


仕事柄、私は国内外様々な地へと足を運ぶ。治安レベルも、夜の路上で大の字になって寝れるところもあれば、子供がM1911の劣化コピー銃で金品を寄越せと脅してくるようなところまでバラバラである。しかしどれほど治安がよく、文明レベルが高いエリアであったとしても、遠出に大小何らかのトラブルは付き物である。そのため、飽きもせず来訪してくるトラブルに対して柔軟に対応するためには、持っていく荷物にも柔軟性があるかどうかが、時に生死を別つ大事な要素となってくる。

そういう意味では、物流や治安、交通事情等が良いエリアでない限り、私はキャスター付きのキャリーバッグは持っていかない。両手がフリーで、とっさの行動にも支障が少ないバックパックを好んで用いる。「バックパッカー」という言葉があるように、極力低予算で少人数で旅行を楽しむ彼らが、数あるバッグ類の中からバックパックを好んで使用する理由は実によくわかる。多くの荷物を持ち運ぶ際の心身の負担と、自由度や柔軟性のバランスが良いのだ。故に、私たちのような小規模で、修羅場をさまよう商人も同じような出で立ちとなってくる。

そりゃ湯水のごとく金が湧き出てくるのであれば、G7首脳陣営のような護衛や移動手段、人員を雇うさ。

特に紛争地域等のような修羅場に行く際は、目立たないことを念頭に、そこらのホームセンター等で入手できるような地味で安いバックパックを使っていた。しかし、これに関してはすぐ限界が見えた。各種素材や人間工学に基づいた設計に乏しいため、心身の負担が大きい。また、荷物を整理できるコンパートメントが少なかったり、うまく作られていないことも不便だ。

そこで、私は巷に溢れる様々なバックパックの中から、選りすぐりの一品を探し出した。それが、今回紹介するMISSION WORKSHOP社の「The Vandal」である。

まずこの公式PVを見てもらいたい。この拡張能力の高さに惚れ込み、私は導入を決意した。

もうこのPVを見たらレビューは不要では?と言われてしまえばそれまでだが、より詳しく知りたい酔狂な方々のためにやっていこうか。



まず全体像から見ていこう。

サイズは横38.1、縦53.34、奥行き15.24cm。容量は通常時で29リットルという少し大きめのバックパックだ。

MISSION WORKSHOPらしい、シンプルでミニマルながらも必要な収納や機能はある程度揃えていますよ?と言うようなデザインである。

このカラーは「GREEN」とのことだが、まぁ黄緑色と言ったほうが正確だろう。当時は限定版も含めて多くのカラーがあったが、現存するカラーは「GRAY」「BLACK」「CHACOAL」「BLACK CAMO」「OLIVE」「ORANGE」の6色となっている。

なぜこのような目立つ色にしたのか?と言うと、英国の某オンラインアウトドア用品店で、この色だけ40%オフのセールをしていたからだ。当時、特にお金に余裕が無かったし、このVandalの実物を見れる店舗も近場になかったことから、安く入手して実物を見てみようと探した次第だ。結果、日本円換算で2万円でお釣りが出るような価格で購入できた。現在は5~6万円台、当時でも3~4万円台だった価格を考えると素晴らしいバーゲンプライスだ。

この黄緑色は、空港のターンテーブルで目立つため役立つ。ただ、目立ちたくないエリアを移動する際はバックパック用の地味なレインカバーを被せて行動していた。


細部を見ていこう。

表面メイン素材は500デニールのHTコーデュラナイロン。以前所持していた同社のメッセンジャーバッグ「The Rummy(こちらは1000デニールナイロン)」と硬く、少しザラッとした手触りだ。耐久性はこのHT500コーデュラナイロンのほうが上だ。

HTはHigh Tenacityの略で、高強度・高品質のナイロン素材に付けられる。

ロールトップ状にもなるメインコンパートメントのフラップは、上から下まで続く長い1本ベルトと樹脂製のバックルで留められている。バックルは軽いテンションでロックの解除ができる。

そのベルトを挟むように縫い付けられているベルクロは、後述する別フラップで固定するためのもの。


最上段ロールトップフラップは、巻くと内部から出てくるベルクロで留めることができ、ロールトップバッグとして使うことができる。

この際、バックル上部とベルトを、その下のサブコンパートメントへのアタッチに付け替えて使用する。

こうすればメインコンパートメントへのアクセス手順が減るし、ロールトップ部を利用して三脚やマット類を巻いて携行することもできる。


ロールトップ部のフラップを開くとこんな感じだ。

見えているかまぼこ型の別フラップみたいな部分は、ベルクロで留められており、内容量に合わせてフラップ表面のベルクロでメインコンパートメントのフラップを固定できる。


内張りの格子状の黒い素材は、分厚く頑丈なビニールがメインの複合素材であり、高い防水能力に一役買っている。この方式だと、バッグ表面に防水処置を施したタイプと違い、長年に渡って防水効果が長持ちする。ミッションワークショップ製品の防水性の高さと長持ちの秘訣はまさにこれだ。

この最上段のコンパートメントには、段ボールのような厚みのある箱は入れにくいが、フラップが閉まることを前提ににしても、深さは75cm、開口部は約34cmあり、ストックを折りたたんだり伸縮できるサブマシンガンや、カービン銃が入るレベルだ。

多数あるコンパートメントでも、ここは唯一止水ジッパーが無い箇所なので、雨等が予想される場合はフラップをしっかりと閉めることを忘れないように。


さて、その下にある止水ジッパー部はメインコンパートメントとなる。

だが、止水ジッパーを開けるとまたジッパーが現れる。二重ジッパーとなっており、最初のジッパーを完全に下ろすことで、薄っぺらい通常モードから拡張モードに移行できる。

そして、その下にあるもう一つの止水ジッパーを開けることでメインコンパートメントにアクセスができる。

拡張モードにしたメインコンパートメントはまさに魔境だ。29リットルのバックパックから、総合計64リットルの大容量バックパックへと変貌する。メインコンパートメントの開口部は32cm、深さは60cmだ。

このメインコンパートメント、拡張時の馬鹿げた大容量は便利なのだが、いかんせん通常時ではジッパーを2回開けておかないといけなかったり、拡張される分の生地が折りたたまれて圧縮されている分、通常モードでは物が意外と入れにくいし、取り出しにくい。そのため、あまりかさばる物でなければ、ロールトップ状の最上段コンパートメントをよく使用していた。この拡張可能な大容量メインコンパートメントも含めた、収納性に関してはまた後述する。

両サイドには圧縮調整ベルト(コンプレッションストラップ)があるので、容量に応じて絞ることはできるが、ここの作りが少し甘く、やけに荷物が背中で揺られると思えば、緩んでいたことが何度かあった


その下段にはフラップと止水ジッパーで防水保護されたサブコンパートメントが更に2個出てくる。

上段は開口部32cm、深さ60cmと厚みこそ薄いがメインコンパートメントと同じ。

その下段は開口部27cm、深さ52cmとなっている。(写真のジッパーが開いているコンパートメント)


サブコンパートメント下段も他のコンパートメントと同じく最下層まで縦穴が続いているため、全長50cmのP90サブマシンガンがすっぽりと入る。

基本的にサブコンパートメントは15インチ、ロールトップコンパートメントには17インチのノートPCも余裕で入る。ただし、保護用クッション材があるわけではない。


両側面にはサイドポケットがある。止水ジッパー形式で、上下に開閉する開口部は約19cm、中は若干尻すぼみとなっており、横は上部約12cm、下部は約10cmとなっている。

あまり厚みのあるものは入らず、私が愛用している二つ折り財布「m+ millefoglie Ⅱ P25」が何とか入るレベル。薄くてあまり大きくないものを入れるスペースだろう。

他コンパートメントがドーン!と大きいため、このサイドポケットよりもう少し大きめのものが入るコンパートメントがあればさらに使い勝手はよかっただろう。


さて、ここからは背面を見ていこう。

大容量を担保してくれるバックパックの割には、トップハンドルは薄っぺらく、特にクッション材が巻かれてるわかでもない。故に重量物を入れた際は、ごく短時間しかここを保持できない。

その両サイドにはショルダースタビライザーベルト。肩紐とバック本体上部の長さを調整できる。重量物を入れたり長距離で背負うバックパックはこれがあるのと無いのとでは負担が違う。

このベルトは肩紐上部にあるベルクロ付きベルトでまとめることができる。


肩紐(ショルダーハーネス)表面はレール状になっており、ここに同社の「Arkiv モジュラーシステム」に対応したポーチ等を付け、拡張できる。

硬さは少し硬めで、パッドの厚みは薄っぺらくもなく、ぶ厚すぎるわけでもない。

背面パッドも硬めで、5~7mmほどの厚みのまっすぐな一枚板。大容量が入るバックパックの割にはもう少し人間工学に基づき、重みや背面に籠る熱を分散させてくれる形状をしてほしかった。


ウエストベルトは付属せず、クッションパッド付きの通し穴のみ開いており、欲しい場合は別売りオプションのウェストベルトを購入してねとなっている。このオプションベルトだけでも7000~1万円ほどするため、長距離を歩く際は、私はここに幕府軍時代に使用していた弾帯を通して使っていた。

さて、ここからは実際に背負いながら、通常と拡張モードの使い勝手も含めてレビューしていこう。


前方から見ると、ブラックでシックなショルダーハーネスなので、地味なビジネス用バックパックに見えるかもしれないが・・・


後ろに廻ってみると、このカラーリングだとポップで可愛らしさもある。グレーやブラックを選んだ場合、印象はガラリと変わってSF映画に出てきそうなクールなデザインに見えてくる。

写真のモデルは身長165cmのホビット族。バックパックのサイズは大きめだが、通常時の厚みが薄いため、このように小柄な曲者が背負ってもけっこうコンパクトに見える。

一回り小さなものが欲しい場合は同社の「The RAMBLER」があり、こちらは通常時で22リットル、拡張時で44リットルの容量となっている。私は50リットル以上の容量が欲しかったため、こちらは買わなかった。

防水性能はミッションワークショップお得意の分野だけあって強力だ。さすがに水没状態には対応できないが、拡張モード時であっても上部フラップ、止水ジッパーと内部に美防水処置が施された外装で、フィリピンでスコールに見舞われた際にも浸水しなかった。

→通常モードだと止水ジッパーは2重になるので防水性能はより上がる。


コンパクトモード時の厚みは、最大で約20cm、頑張って凹ませて絞れば、なんと約5cmという薄さになる。

これはあくまで外装の厚みであり、コンパクトモード時の中身には、はせいぜい2リットルのペットボトル程度の厚みの物を入れるのが限界だ。

これが個人的に使い勝手を悪くしている部分である。1泊2日程度の旅行や出張等では問題ないかもしれないが、それ以上の荷物となると、コンパクトモードでは入らず、かと言って拡張モードでは容量が大きすぎてガバガバになってしまう。


拡張時、最大で65リットルもの大容量バッグへと変身することに関してはもちろん魅力ではある。65リットルは、キャリーバッグで換算すると、一般的に4-7日分の荷物が入る容量である。

以前所持していた同社メッセンジャーバッグの「The Rummy」もかなりの容量が入ったが、こちらはそれを余裕で凌駕する。容量を気にすることなく詰め込むことが可能だ。


ただ、写真で見てもわかるように、あまり安定性が良いとは言えないのがネックポイントだ。背面パッドやショルダーハーネスの性能が、その他有名登山用品メーカーのバックパック等と比べてそこまで良いわけでは無いこともあり、物を詰め込んで重量が嵩んだ際の身体への負担は大きめだ。個体差だったのかもしれないが、圧縮調整ベルト(コンプレッションストラップ)が、重量物を入れた際に緩みやすいのそれに拍車をかけている。

また、メインコンパートメントを含め、その他コンパートメントは、サイドポケットを除いて、ポケットや区分けは一切無く、言うなれば長細いストンとした袋が4つ連結したバックパックである。

そのため、上部からしか内部へアクセスできないこともあり、中に入れる荷物のパッキングや入れる順番をよく考えておかないと、慌てて道具を取り出す際のドラえもん状態になってしまう。細々としたものを入れる場合、バッグインバッグは必須と言っても良い。

Conclusion │ 総評

通常状態では薄くて高い機動性を発揮でき、拡張時には驚くほどの収納力を発揮する。MISSION WORKSHOPらしく、使い勝手を犠牲にしない防水性も魅力的だ。

ただ、拡張時にはバランスが悪くなり、徒歩での長旅にはあまり向かない。せめて、通常時にもう少し嵩張る物を入れることができたら私にとってより良いバックパックになったかもしれない。

普段の荷物が通常時で過不足なく収納することができ、拡張時でも問題のない使用環境であることが大事だ。そのため、通常時と拡張時の両方を、自分の想定している使用状況に照らし合わせて考えたほうが良いだろう。

このバッグ、ほんの数年前は日本国内で3~4万円台で購入できたが、現在円安等の影響で、公式サイトで6万5900円、大手通販サイト等でも5万~6万円台という度し難き値上がりだ(2022年12月)。この価格だと他の選択肢がいくらでも湧いて出てくる。

私はこのVandalを、国内外で4~5回程度使用した後に、自分には合っていないと思い、知人に売却した。電車通勤の彼は、週に1度仕事帰りに1週間分の食材等を買い込んでいる。普段の通勤では嵩張るものがないため、薄くスマートな状態で移動し、買い出しの際にはガバっと容量を増やして底無しの買い物バッグになるので助かっているらしい。1泊か2泊の軽い出張程度では、通常状態で荷物は入るとのこと。