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ジャンル:チェストリグ

HSGIのコンパクトなチェストリグ

執筆時期:2023年11月

検証人数:3人

※本製品を提供してくれたT氏に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) High Speed Gear (アメリカ合衆国)
PALSスロット数 縦3×横8
カラー ブラック、コヨーテブラウン、LEブルー、マルチカム(本製品)、マルチカムブラック、ODグリーン、ウッドランドカモ
サイズ(縦×横×奥行き) 13.97cm x 36.83cm x 3.81cm
重量 340グラム
価格(購入価格) 80ドル(2016年:65ドルで購入)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 ミニマルで小さなサイズで邪魔にならない
  H型ハーネスにより、重量分散に優れ装着性が良い
  持ち運びし易い持ち手付き
改善を要する点 子柄で細身の人間には調整幅が足りない
  PALSウェビングの両端スロットの幅が少し小さく、物によってはポーチが付けれない
  バックル部の干渉音がうるさく防音処置が必要

ミニマリスト達のチェストリグ


私が大きな訓練で私物のチェストリグを装着しているのは、別にカッコいいからではない。そもそも、チェストリグどころか余計な装備品は体力を奪われるし暑くなるだけなのであまり身につけたくない。それでもわざわざチェストリグを装着していたのにはやむを得ない理由がある。

幕府陸軍は基本的に腰回りに装備品をぶら下げている。一部の部隊は官品チェストリグ等の装備を持っていたりするが、大多数は相変わらず腰ベルトに弾倉ポーチやら銃剣やらを付けている。腰回りには基本的に、弾倉ポーチ4つ、銃剣、救急品袋、水筒を付けなくてはならず、他にもエンピ(スコップのこと。装備品では、折畳式の携帯エンピを指す。)、ツールポーチ等、部隊や自分の好みでいろいろと付けるものが上下する。


これが、私のような細身な人間の場合は大きな問題となる。ウエストが細い分、装備品が付けられなくなったり、装備品を身体の負担が少なくて取り出しやすい位置に付けられなくなってしまう。前者は大問題だし、後者も心身ともに負担増大となる。

私は単独での行動も多いオートバイを用いた偵察部隊にいたので、様々な装備品やツールが必要となる。私のように細い腰回りに全てを吊るすのは不可能に近く、大変困ったことになった。普通科みたいにPALSウェビング付き防弾ベストみたいな嵩張るものなぞ、特に単独での行動が多い偵察バイク班には邪魔だ。だいたいあんなものを着込んで藪漕ぎなんてできたもんじゃない。

それらを解決するために、私はチェストリグを使用していた。私がまだ現役の一兵卒であった当時、CondorやらBlackhawk様々なチェストリグを所持していたが、結局大き過ぎたり、分厚くて暑苦しいこともあり、そのほとんどは後輩に譲ったりドナドナをしていた。そこまで大きなものはいらない、もう少しコンパクトなチェストリグは無いかと探していた際に出会ったのが今回紹介するHSGIHigh Speed Gear)の「AO Chest Rig」である。


こちらがハイスピードギア社のコンパクトなチェストリグとして長年支持を得ている、AO Chest Rigだ。現在このチェストリグは、今だ現役の幕府陸軍一兵卒であるT氏に譲っており、今回のレビュー作成のため拝借させてもらった。

AOは「Advanced Outfitters」という同じく装備品メーカーのこと。当時はHigh Speed GearとAdvanced Outfittersのコラボ商品として販売されていた。現在は確かHigh Speed Gearに買収されていたかな?

ご覧の通り、PALSウェビングが縦3×横8スロットのみ付属している、コンパクトでシンプルなチェストリグである。チェストリグには最初から各種ポーチ等が付いているものがあるが、私は訓練や任務の状況に合わせて装備品を柔軟に入れ替えるため、このように余計なポーチ等が付属しないPALSウェビングのみが縫い付けられているものを好む。

サイズは13.97cm x 36.83cm x 3.81cm(縦×横×奥行き)で、重量は340グラム。

バックル部はわりとカチャカチャと音がするため、偵察部隊等の隠密行動が必要となる場合は何らかの消音措置を施しておかないと、敵地での宣伝広報官となってしまう。私は100円ショップで売っているイスの足に被せる傷防止用のソックスの端を切って着せている(写真の接続部に被せている茶色い布がそれ)。切った端はほつれてくるので、ライターで炙ることを勧める。


裏面はフリース生地がベルクロによって貼り付けられており、それを剥がすことによって、ベルクロ対応のその他装備品と合体させることが可能。

また、ポーチ側面もベルクロによって開くことができ、内部に地図等の薄いものを仕込ませることができる。

上部に持ち手があるため、チェストリグを車に持ち込んだりする際の携行に役立つ。

各種ベルト類は厚みが少ないので、使用しない時はコンパクトに収納でき、バックパック等にも入れやすいのは魅力だ。

本製品は、背面のハーネスがH型となっており、その他チェストリグでよく採用されているX型のものよりも、重量の分散や装着性に優れている。また、X型はハーネス部が絡まって置かれている際の素早い装着が困難になる欠点もある。このH型ハーネスを使用してからは、暗闇での手探りによる装着でも困ることはほとんどなかった。


裏面のベルクロについてだが、私は夏場の蒸れ軽減のために、ホームセンターや100円ショップで売られている樹脂製の人工芝をサイズに合わせて切って装着している。この手法は、行軍での背中蒸れ軽減のために、バックパック背面に装着する手法を応用したものだ。コンパクトとは言え、ポーチや各種装備が付いたチェストリグを腹回りに密着させていると、凄まじい群れと高温に悩まされることになる。これを付けるか付けないかでは結構違う。


写真のモデル(中央)は身長165cmの小柄な男性。

私もだが、小柄で細身な体型だと、各種調整ベルトを最小まで絞ってもけっこう緩く、場合によって体に密着させることができない。アメリカ製のチェストリグやプレートキャリアによくあることで非常に困る。

現持ち主である後輩のT氏は身長174cmの中肉中背。各種調整ベルトは多めに絞ってはいるが、問題なく使えているようだ。

蒸れ防止用の人工芝を仕込ませているため、何もないデフォルトの状態よりも多少ましだが、重心が偏った物や、重量物を装着した場合は垂れ下がったり、遠心力でチェストリグ毎ゆさゆさと動くことになる。

写真右下のモデルはより小柄な身長159cmであり、人工芝を仕込んでいたとしてもあまりにも緩すぎて行動に支障をきたす。そのため、写真のようにH型ハーネスのバックルの入れ替え等を行い、簡易的にX型ハーネスにしている。本来意図されていた使用方法ではないし、少々不細工だが、こうでもしないと使い勝手が悪い。


比較的軽量な電動ガン等の弾倉ならまだしも、ガスガンや弾薬をフルに詰め込んでいる実銃弾倉だと、装着しているポーチが前のめりになってくる。見た目に悪いだけでなく、揺さぶりや引っ掛かり等で行動の邪魔となるため、やはりこの製品はある程度身長や体格の良い人のほうがいいだろう。

小柄な方はできれば、装備品やガンショップ等で試着をして購入することをおすすめする。

製品素材は、公式には大っぴらに表記されていないが、1000デニールのコーデュラナイロン製のようだ。


もう少しガタイのいいヤツを連れてきた。KUROKOの身長は167cm、肩幅等も私よりは広く、筋肉の付きも良い女ゴリラだ。

KUROKOの場合、調整ベルトを最小にすると、人工芝を裏面に仕込んでいなくても少し緩さが出てくる程度であった。

ただし、女性がチェストリグを使用する上で大きな問題になりがちなのは胸の問題である。KUROKOのバストはEカップ(公表は本人承諾済み)であり、このチェストリグをベストな位置で装着した際、特にアンダーバスト周辺がブラのワイヤーに干渉して長時間付けていると痛くなってくると訴えた。チェストリグを少し下げたり、ワイヤーの無いスポーツタイプのブラを付ける等の工夫が必要だろう。

人によっては、H型のハーネスや左右で分割されているスプリットタイプのチェストリグが女性には合うという意見もあったりする。結局のところは様々な組み合わせも考慮しながら試着や試行錯誤を行ったほうがいい。


ポーチ等のオプションを何をどう付けるかにも左右されるが、このチェストリグはミニマルコンパクトでロープロファイルなおかげで、狭い装甲車両への乗り降りや移動も他の嵩張る製品よりも楽に行える。

カラーラインナップは多数揃えられており、写真のマルチカムの他にブラック、コヨーテブラウン、LEブルー、マルチカムブラック、ODグリーン、ウッドランドカモ等がある。

私は二型迷彩に合わせるためにマルチカムをチョイスした。二型と比べて明るめではあるが、上に付けるポーチ類を二型迷彩等にしてカバーしていた。

ただ、この縦3×横8の少なめのPALSスロットに関してはちょっと作りに問題がある。強度を高めるためリグ両端のウェビングは折りたたまれるように縫い込まれている。このおかげで、他のウェビングスロットよりも少し狭くなっており、ポーチのストラップ幅によっては装着ができない場合がある

同社の製品にあるような樹脂製で薄手のHSG CLIPのようなストラップであれば問題無いだろうが。


銃器やその他腰回りの装備品は別として、当時AO チェストリグに装着していた装備品を再現してみた。

駐屯地で購入した二型迷彩のユーティリティポーチ、懐中電灯を挿れたMagforce – Flash Light Holsterを装着。あとはこれに、ポーチ類の下に入り込むように銃剣を横向きに括り付けていた。私は銃剣を腰に縦に装着するのが大嫌いだ。移動の度にペシペシと足や尻に当たって痛いし、付けにくく外しにくいあの装着アタッチメントが幅広いおかげで、他のポーチ類をどこにどう付けようかのバランス配分が狂う元である。

できることなら銃剣を持ち運びたくも無いのだが、そればかりは許されなかったので、チェストリグに取り付けたポーチの下に横向きで装着した。これなら普段邪魔にならないし、緊急時に抜刀や着剣するスピードもこちらのほうが早かった。

この装備は、余計なバックパック等も置いて敵地深くへ素早く偵察やサボタージュを実行し、速やかに離脱する際に非常に役立った。大きめのポーチ類にいろいろな物を詰め込むことにより、機動性に富んだ身軽な軽装で数時間程度の潜伏や行動が可能となったからだ。官品だけではこうはいかない。

写真に写っている二型迷彩の少し大きめのポーチには、レーザーレンジファインダーサーマルカメラ、携帯食料、水分、無線符号表等様々なものを入れていた。

肩紐も他のベルト類同様に厚手のクッションがあったり等無く薄手だが、H型ハーネスの優れた重量分散性のおかげで、上記の装備品類で特別疲れや肩こりが酷くなることはなかった。

Conclusion | 総評


MSRP(希望小売価格)は80ドル、HSGIの生涯保証が付いたメイドインUSAのコンパクトなチェストリグ。この手の小さくてミニマルなチェストリグが欲しいとなった時、長年多くのシューター達の選択肢や支持をされている理由はよくわかる。

耐久性も十分で、私が1年ほど使用した後には、現在の持ち主である後輩が様々な演習や訓練、災害派遣で酷使しながらも7年以上が経過しており、不具合等は何もない。

ただ、私のような小柄で細身の体格の人間には少々調整幅が足りないと感じる。さすがアメリカ人が作っただけはあり、相当なデブでも包み込んでくれる余裕はある。だが逆の場合はそうではないようだ。

現在私は、このAOチェストリグを後輩に譲り、別のチェストリグを使用している。自分の細く小さい体格に合わないだけでなく、各種訓練において装備品や持ち物が増えたこともあっての判断だ。新たに採用したチェストリグについてはまたの機会に紹介しよう。