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ジャンル:スコープ
VORTEX社の最高ランクのライフルスコープにして、Leupold社のMark 6並の性能があるとプロシューターからも高い評価を得ているショートスコープが、このRAZOR HD GEN2 1-6×24である。
執筆時期:2017年5月
※追記1:2017/9月、アイリリーフに関して追記
※追記2:2017/12月、VMR-2 MRAD版を追記
※追記3:2018/2月、軽量改良版のRAZOR HD Gen2-Eに関して追記
後継機種であり、軽量版のGen2-Eのレビューはコチラ。
SPECS | 性能諸元
メーカー名(メーカー国・製造国) | VORTEX OPTICS (アメリカ合衆国・日本) |
全長 | 25.6cm |
重量 | 714グラム |
対物レンズ径 | 24mm |
倍率 | 1倍~6倍 |
視野 (FOV) | 115.2~20.5フィート / 100ヤード:35.1~6.2m / 91.4m |
レティクル(何れもSFP:第二焦点面) | VMR-2 MOA、VMR-2 MRAD、JM-1 BDC(本製品) |
アイリリーフ | 約11cm(1倍)~8.5cm(6倍):※公式は4インチ |
イルミネーター | 赤色LED 1~11段階 |
使用電池 | CR2032リチウム電池 |
価格(購入価格) | 1999.99ドル(2016年、1400ドルで購入) |
日本生まれのアメリカ人
近年のショートスコープの進化は目を見張るものがある。カービンに付けても邪魔にならないサイズで、1倍から機種によっては10倍という高倍率までカバーしているものもある。しかもそれでいて値段が抑えられている製品も多々散見される。低価格で高い品質の光学機器を多く製品化しているボルテックス社にも、Viper PSTやSTRIKE EAGLEシリーズと言った低価格でナイスなスコープは多い。そんなボルテックス社の最高ランクのスコープがRAZOR HDシリーズだ。これが2世代目(Gen 2)になった時、ショートスコープのラインナップから1-4倍が無くなり、1-6倍が加わった。これが今回紹介する製品だ。
●特にライフルスコープは黒一色の製品が多い中、RAZOR HD GenⅡ は若干赤みのある灰色である。購入して一年近くになり、かなりラフな扱いをしてきたが傷の浅い擦れだけですんでいる。優秀なコーティングを施しているようだ。
●大きいがロープロファイルなウインテージ・エレベーションダイアルも特徴的だ。上下左右の調整幅は、なんと150MOAとかなり大幅に動かすことができる。同社のSPITIFIRE PRISMSCOPE 3×の120MOAも驚いたが、こちらはそれを凌駕している。かなりの強風遠距離射撃や、へそ曲がりなライフルでも対応できそうだ。普段はカバーで不意の誤操作や接触を防ぐことができる。
●ウインテージダイアル(左右調節)には0.5MOA毎の目盛りに加え、左右共に2MOA飛ばしで24MOAまでの数字が記されている。
●この製品は最高品質のレンズ生産に定評のある日本製である。噂では、ニコンやキャノン等のカメラレンズのOEM生産をしている鎌倉光機が製造しているとか。
●接眼レンズ部。直径約4.6センチの接眼レンズは実に覗きやすくて見やすい。バトラークリークは、接眼部のサイズが19、対物レンズ部のサイズが03Aが適合するようだ。レンズの汚れや破損防止にも付けておきたい。
●対物レンズ部。接眼・対物レンズ共に薄い緑色のコーティングがされている。レンズはさすが日本製と言うべきか、実に明るくて歪みない。
RETICLE | JM1-BDC
※↑ 画像クリックで拡大可 ↑
☆100メートル先にACU迷彩の上着を設置して照準してみた。
●こちらは1倍率時の写真。撮影機材等と私のミスで周辺が少し歪んで白っぽく見えるが、実際にはずっと歪みは少ない。肉眼で見るよりも明るくハッキリと像を見ることができる。写真だとわかりづらいが、色温度が若干高く見える。ほぼ完全な等倍に近い。1倍率の場合は、14インチ程度のライフルだと若干拡大されて見えるが、フロントサイトにもピントが合う。
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●6倍率時。実に鮮明な像を得ることができ、シンプルなレティクルなので精密射撃もストレス無くできる。イルミネーターはかなり明るく設定することができ、炎天下でも問題無い。その明るさは、ダットサイトのAimpoint T-1の最高高度に迫るような明るさだ。スコープのイルミネーションでここまで明るく灯すことができるものは今まで見たことがない。
●このショートスコープは3種類のレティクルラインナップがあり、MOAとMRAD規準で目盛りを付けてあるVMR-2レティクル2種類に、こちらのJM-1 BDCレティクルである。このレティクルは、射撃業界でその名前を知らない人はいないくらいに有名なJerry Miculek(ジェリー・ミチュレック)氏がデザインしたもので、BDC(Bullet Drop Compensator:弾丸の距離による落下点表示)機能をメインに置いたシンプルなレティクルだ。5.56mm×45弾(55-77グレイン)と7.62mm×51弾(168及び175グレイン)の弾薬で、200(183m)~600ヤード(549m)の距離に対応している。
●本機種はレティクルはズームと連動しないSFP(Second Focal Plane)となっている。中~遠距離向けのRAZOR HD GEN 2(4.5-27×56と3-18×50)はズームに連動してレティクルも拡大されるFFP(First Focal Plane)となっている。
RETICLE | VMR-2 MRAD
※追記2
さて、ひょんな事からミルレティクル版とも言える「VMR-2 MRAD」版を入手することができたのでコチラもレビューしたい。
事の経緯は、ハードな訓練での使用中、対物レンズに飛び石が直撃してしまい、レンズが傷ついてしまった。VORTEX社は無料で製品の修理をしてくれると保証にあったので、とりあえず販売店に連絡して発送&修理をしてもらった。さて、数週間後に里帰りをしてきたRAZOR HDを見て驚いた。まず新品になっている。これは素晴らしいことだ。そしてレティクルがJM-1 BDCレティクルからVMR-2 MRADレティクルになっている。これはどういうことか??これは修理ではない。間違った商品に交換しただけだ。
とは言え、私の場合これはこれで良いと思ってしまった。これはこれで相手までの距離が測定できるので良いなぁと、JM1-BDC版とどっちにしようか悩んでいたのだ。こうしてレビューをすることもできた。本来は苦情&交換だが、今回に限ってメーカーに報告だけしてこのままにしてもらった。
※画像クリックで拡大可
●まずは1倍時から。100m先にブルーのシャツを吊るした。ちなみにシャツの上端から地面までは約1.8mである。相変わらずクリアで透き通るようなレンズだ。低価格帯の他スコープと比べて、レンズの縁が薄くて視界の妨げにならないのも良い。
●6倍時では、光の入射角度や反射の影響で、シャツの下辺りが曇ったように少し白く反射してしまっているが、この時持ってきた同じく1-6倍率のOTS CQBスコープと比べると、反射は少なめだった。高倍率時に変なゴーストやフレアが出て、狙撃に支障をきたすことは意外とあるが、このスコープはそれらを少しでも抑えてくれるような設計になっていることがわかった。やはり値段以上のスコープであると言われているだけはある。
●さて、MRADレティクルの説明を少ししよう。厳密には違うが、MRAD(ミリラジアン)はMIL(ミル)とも呼ばれ、NATO諸国でよく用いられる平面単位だ。詳しい説明は省くが、これを駆使することで距離の測定等様々なことができる。
●このVMR-2 MRADレティクルは、左右に4MRADずつ、下に7MRADずつ区切られている。中心点から一段と太くなっているレティクル線までは11MRADだ。1MRADは100m先で10cmの大きさになる。これを使ってターゲットまでの距離を測定する場合は、
○ターゲットの高さ(m)×1000をターゲットの高さ(MRAD)で割る=ターゲットまでの距離(m)
という計算式を使えばいい。例えば、何メートル先にいるかわからない身長2mの人間をこのスコープで見て、足から頭の先っぽまでが5MRADだとすると、そこまでの距離は200mとなる。
※このスコープは、倍率変更に連動してレティクルの大きさが変わるFFPではなく、SFPのスコープなので最大倍率である「6倍率」でないとこの機能は使えないので注意を。
●このような機能を使用するには、RAZOR HDではMOAという単位を使用するもの(VMR-2 MOA)もあるが、メートル法を使用する日本人には計算がややこしくなるのでこちらのMRADを使用するものの方が良いだろう。
固い・重い・明るい
●イルミネーターの調節は、よくあるダイアル式だが、不意に明るさが変わってしまわないようにロックがかかっている。変更するには、ノブを引っ張りだす。このノブはエッジが効いているので、素手でいじっていると少し痛い。
●光量は11段階の切り替えが可能で、最大光量の場合は、炎天下でも余裕で使用できるほど明るい。低倍率時と合わせると、ダットサイト感覚で使うことも可能で、3GUN等の競技で愛用されている理由も納得だ。ただ、最低光量がちょっと明るすぎる。真っ暗闇では、あと数段階ほど明るさを抑えてほしいと感じる。
●また、暗闇でイルミネーターを明るく設定していると、対物レンズ側から光っているのが見えてしまう。この点は、夜間戦闘などでは、致命的な事態になりかねない。私が所持している、Leupold VX-R Patrol は例え最大光量でも光っているのは見えない。
●他にもこのスコープには気になる点がある。一つは重量だ。714グラムという重量は、ライフルの上にグロックを載せているのと変わらない。(GLOCK 17 Gen4:710グラム)
そこで、有名所の1-6×のショートスコープの重量を羅列してみた。
メーカー&機種名 | 価格 | 重量 |
VORTEX RAZOR HD Gen2 1-6×24 | 2000ドル | 714グラム |
Leupold Mark 6 1-6×20 | 2859ドル | 482グラム |
Leupold VX-6 1-6×24 | 1299~1429ドル | 413グラム |
SIG SAUER Tango 6 1-6×24 | 1680ドル | 720グラム |
Trijicon Accu Point 1-6×24 | 1399ドル | 545グラム |
OTS CQBコンバットスコープ | 59800円 | 520グラム |
SIGHTMARK Pinnacle 1-6×24 | 1120ドル | 578グラム |
EOTECH Vudu 1-6×24 | 1399ドル | 570グラム |
SWAROVSKI Z6i 1-6×24 | 2110ドル | 440グラム |
このように、他社製品とくらべても重量級の選手だ。この程度の重さで何を不平を垂れるかという人がいるかもしれないが、遠心力のかかりやすいライフル上部の重量増は、CQBや長時間の活動等で大きな影響が出てくる。ユーザーの間でも、この点さえ無ければ最高なんだが…とレビューする人は多い。ぶっちゃけ、コレを使って一日中射撃をしたり、行軍訓練をしていると疲労が当社比2割増しに感じる…。
※追記3:2018年、さすがのボルテックスもこの重量はマズいと思ったのか、スペックはそのままで軽量化したRAZOR HD Gen2-Eを発売した。重量は100グラムちょいダイエットして609グラムとなっている。まだまだ重いが・・・米陸軍特殊作戦コマンド部隊がエルカンスコープからのリプレイスとして本製品を候補に挙げる等、官民問わず評価が高いことに変わりはないみたいだ。
●また、もう一つ気になるのは倍率を変えるパワーダイヤルの重さだ。これがなかなか固く、突起も無いのでグッと力を入れないと回らない。ストレス無くサッと倍率を変えたい場合は、オプションのスローレバーを購入することをオススメする。
●アイリリーフは、1倍率で12~14cm程度、6倍率で10~11cm程度と長めだ。焦点の合う幅(アイボックス)は俗に広い機種だと言われているが、アイリリーフの範囲はそこまで長くは無いので、あまり無茶な姿勢等では覗きにくい。
●グレーのスコープは、クールなデザインと共にライフルに良いアクセントを与えてくれる。また、明るくて鮮明なレンズは大変魅力的だ。至近距離から中遠距離までカバーしている点も、柔軟な戦術を与えてくれるだろう。
後継機種であり、軽量版のGen II-Eのレビューはこちら ↓ ↓