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ジャンル:プリズムスコープ

傑作等倍プリズムスコープの上位モデル。非常に長いアイリリーフ範囲を持つ。

執筆時期:2025年1月

検証人数:3人

実弾射撃評価:有り

→Type 20 / 5.56x45mm弾

→Type 89 / 5.56x45mm弾

→Benelli – M2 / 12番ゲージスラッグ弾、クレー用散弾

※本製品の購入等に協力してくださいました、デザートカウボーイ様に感謝いたします。本製品はデザートカウボーイ様にて購入可能です。お財布に嬉しい特価販売だけでなく、海外製品で不安になる保証や修理の対応もしてくださります!

デザートカウボーイ様公式サイト

https://desertcw6.com/

Primary Arms – GLx 1x MicroPrism 販売ページ

https://desertcw6.com/products/detail.php?product_id=7311

Primary Arms – GLx 1x MicroPrism(グリーン) 販売ページ

https://desertcw6.com/products/detail.php?product_id=7312


SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) Primary Arms(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 66mm
重量 258グラム
倍率 1倍
対物レンズ径 20.5mm
瞳径 18.8mm
アイリリーフ 11.17cm
視野(FOV) 74.8ft / 100ヤード:22.79m / 100m
レティクル ACSS CYCLOPS G2
イルミネーター 赤色LED 13段階調光(内3段階は暗視装置用)
使用電池(電池寿命) CR2032リチウム電池(10001~25000時間)
防水性能 IP67
価格 299.99ドル

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 プリズムスコープ離れした広大なアイリリーフ
  暗闇から日中までメリハリのあるイルミネーション
  すっきりとノイズの少ない視界
  多様な高さに調整できる多数のライザーやマウント付き
  光学性能を上げながらも300ドル以下の価格設定
改善を要する点 イルミネーションが対物レンズからよく見える
  レティクル中央のシェブロンは距離が離れてくると精密な狙いを付けにくい

一人称視点の照準動画と共にご覧ください ↓ ↓

等倍プリズムスコープの頂へ


一部の好き者だけが所持している印象が強かった等倍(1倍率)プリズムスコープの地位に革命を起こし、ダットサイトの代替としても使えるレベルにまで高めたPrimary Arms社のSLx 1x MicroPrism。アイリリーフがとても長く、多機能性がありながらもシンプルに使いやすく明るいレティクル、しかも良好な光学性能ながらもコンパクトで手頃な価格という死角の少ないSLx 1xは米国で大ヒット。私も長年自前の散弾銃 Benelli – M2に載せていたAimpoint – T1You’re fired!し、SLx 1xのレビュー以来自費購入して載せ続けているほどだ。


今回そのSLx 1xの話を蒸し返しているのは他でもない。Primary Armsが上位モデルとしてGLx 1x MicroPrismを発売したからだ。SLx 1xの存在だけでも革命的であったが、その評価に満足せずさらなる性能や機能性の向上を果たしたと言う。その割に価格は250ドルのSLx 1xから50ドルほどしか上げていないというインフレ時代を嘲笑うかのような値付けである。こんなの気になるに決まっており、当研究会としてレビューしないわけにはいかない。さっそくGLx 1xを証人喚問し、下位モデルとなったSLx 1xと他社で唯一Primary Armsと比較できる性能であるSWAMPFOX – RAIDER 1×20 Micro Prismとの3者比較を交えながら検証してこう。さて、また当研究会を驚かしてくれる性能なのか、それとも肩透かしに終わるのか?


まずはパッケージや付属品から。

SLxシリーズはライトグレーにオレンジが差し色のパッケージだったが、GLxシリーズはダークグレーにオレンジの差し色。

プライマリーアームズは基幹製品郡を3つのグレードに分けており、下からSLx(Silver Lineの略)、GLx(Gold Lineの略)、PLx(Platinum Lineの略)となっている。

説明書は本体説明書とレティクル説明書に別れている。

SLx 1xに付属していたレンズカバーは無い。


SLx 1xでてんこ盛りだったマウントやライザー集団はGLxとなっても健在。

これら多数のライザー類を組みわせることにより、これらを組み合わせることにより、様々な高さのマウント高の調整ができる。

マウントや多数のライザーはSLxと同じ構成。一番低いローマウントで1.1インチ(2.79cm)、付属ライザー3つはそれぞれ1.41インチ(3.58cm)、1.535インチ(3.89cm)、1.64インチ(4.16cm)の高さが付属する。また、ストレートスペーサーを噛ませて組み合わせることで、1.845インチ(4.69cm)、1.97インチ(5.00cm)、2.075インチ(5.27cm)の高さにも調整することが可能だ。

写真の状態はローマウントにストレートスペーサーを噛ませた1.535インチ(3.89cm)の状態。

マウントの精度だが、200mでゼロインした後に銃器から取り外し、翌日再度取り付けて射撃を行ったが、ゼロの誤差は上に14cm、右に10cm以下であり許容範囲であった。

フットプリントもSLx同様にMini ACOG準拠なので、もっと質の良いマウントやQDタイプを付けたい場合でも選択肢はある。


この多種多様な高さに変更できる付属品群は素晴らしい。様々な銃器や自分の使用方法に合致したマウント高に別売りオプションを買い足すことなく構成しやすい。

さらに、別売りではあるが1.93インチ(4.90cm)のストレートスペーサーを組み込めば、より幅広い高さに調整することも可能だ。


接眼レンズ部には視度調整ダイヤルがあり、万人の視力に合わせた視界を提供してくれる。

SLxで異様に硬かったこの視度調整ダイヤルだが、GLxではするすると回しやすく改善されていた。


SLx 1xとの大きな違いの一つに対物レンズ径が拡大されたことにある。SLxが17mm、SWAMPFOX – RAIDERが20mmなのに対してGLx 1xは20.5mmである。さて、これが光学特性にどういう違いを見せてくれるだろうか。


また。SLxでボコッと左側面に突き出ていたバッテリーコンパートメント兼イルミネーションダイヤルが無くなり、電子スイッチ式のイルミネーションスイッチへと変更された。CR2032リチウム電池が入るバッテリーコンパートメントは前方上部にマンホールの如く移設された。

2つの電子スイッチの操作感についてだが、大きく凹凸があるわけでもなく、スイッチのクリック感もはっきりと感じやすいわけでは無いので、素手ならまだしもグローブをした状態だとわかりにくいことがある。これなら同じ電子スイッチ式でもSWAMPFOX – RAIDERのほうがわかりやすいし、SLxのようにアナログダイヤル式のほうが良いという人もいるだろう。

ただし、凹凸があまりなく、斜め上に向いているスイッチなのでライフルスリングで身体に吊った際に誤操作は少なくなるだろう。


レンズが大きくなったためボディチューブそのものもGLxとなり太ったものの、SLxと比較してイルミネーションダイヤルの出っ張りの有無は大きい。これも視界にどう影響してくるか楽しみだ。

ハードコートアルマイト処理のされたアルミニウム合金製のボディはサラッとした質感共にSLxと同じ。昨今の低~中価格帯によくある光学照準器の質感だ。


引き続きむき出しのダイヤルタイプのウィンデージとエレベーションダイヤル(ダットサイトの上下左右調整)は、工具か薬莢が必要なものの、大きめのダイヤルで動かしやすい。クリック時のフィードバックもカチカチとわかりやすい。

SLxでは1クリック1MOAの移動量に対し、もっと精密射撃に使用したいシューターから少なくしてくれという要望があった。今回その声を受けて半分の0.5MOAとなった。

0.5MOAは100m先では13.9mm。

ただし、最大移動量は120MOAから50MOAと低下している。


さて、サイズに関しては小人ダットサイトの草分け的存在であったエイムポイント T1とほぼ同じコンパクトさが売りのSLx 1xの全長6.2cmから6.6cmへと少し大きくなり、サイズ感は一回り大きなSWAMPFOX – RAIDERとほぼ変わらなくなった。

それに伴い重量も40グラムほど増えており、写真のマウント構成でSLx 1xは220グラムなのに対してGLx 1xは261グラムとなっている。この重量はQDマウントの無いEOTech XPSシリーズ(約255グラム)とあまり変わらない重量だ。

GLx 1xのマウントを除いた本体のみの重量は194グラム。

レティクル │ ACSS Cyclops Gen II


レティクルはSLxと同じく引き続きACSS Cyclops Gen IIを採用。以下SLxのレビューと同様のレティクル説明をつらつらと表記する。

中央部分には逆V字型のセンターシェブロンが採用されている。中央を素早くターゲットに合わせやすく、ある程度の精密射撃も行えるので、この手の低倍率スコープに採用されているのを他社含めてまれに見かける。

そのセンターシェブロンだが、ただ照準を行うだけでなく、BDC(距離による弾丸の落下予測)機能を有している。このBDC機能については、5.56 x45mm弾から7.62mm x 51mm、そして7.62mm x39mmや.300 AAC Blackout、挙げ句には12番ゲージスラッグ弾にまで対応している。

ではどう使うのか?まず逆V字型の頂点で各弾丸に合わせた距離でゼロインを取り、内側の逆V字頂点と、底辺で落下予測を行うというものだ(説明書写真の左側のページを参照)。近距離で使用する12番ゲージスラッグ弾は別として、正直実戦で使おうと思うかと言われれば微妙なところだ。後編で述べるが、これはマグニファイアを用いて拡大したところで、精密な射撃が行えるとは思えない。

5.56x45mm弾は16、14.5、10.5インチの銃身に対応。

その多機能センターシェブロンを囲むように、第2世代目となり大きくなった馬蹄型サークルレティクルがある。このサークルレティクルは、とある銃器における、大まかな素早い照準合わせに活用できるサイズにしてある。その詳細は後編でお話しよう。

その下にあるそれぞれ長さの違う4本の横線は、ターゲットまでの距離計測機能を有している。

これは高さ5フィート10インチの成人男性(177.8cm)の高さのターゲットまでの距離を計測するよう設計されており、まず足元を一番下の横線に合わせ、そこから頭頂部がどの線に近いかによって距離がわかるようになっている。上段が200ヤード(182.88m)、2段目が300ヤード(274.32m)、3段目が400ヤード(365.76m)だ。

また、各横線の長さを人間の肩幅に(18インチ=45.72cmに設定)合わせることでも大まかな距離がわかるようになっている。共に試してみたが、概ね合っており、マグニファイヤーとの併用でより使いやすくなるだろう。


イルミネーションの光り方もSLxとまったく同じく、サークルとシェブロンが点灯する。

SLxのレビューを見てくれた人ならもうこの時点で、イルミネーションダイヤルが排されたことによる視界ノイズの少なさを実感できるはずだ。早くこれを屋外に持ち出したいところだがそれは後編レビューにて行う。

SLx 1xにはあった9mm弾に特化した「ACSS GEMINI 9mm」というレティクルは現時点ではGLxには無い。

ドレーク海峡の如き長いアイリリーフ


さてGLx最大の目玉であり、SLxと比較して一番の変更点はただでさえ長かったアイリリーフ範囲(焦点の合う前後範囲)がさらに大きく拡大されたことにある。

その恐るべきアイリリーフ範囲は等倍プリズムスコープの中では長かったSLx 1xが4.6cm~14.3cmだったのに対し、3cm~21cmと最短距離も最長距離も長くなっている


さらに付け加えると、このアイリリーフ範囲は当研究会が実用的な範囲として計測したものであり、プリズム構造体が少々見えても良いのであれば30cm以上離しても使用可能であり、長きことドレーク海峡の如しだ。

プリズムスコープはおろか、ライフルスコープでもこのようなアイリリーフ範囲を持ったものはなかなかお目にかかれない。いったいどういう魔術を用いてこのような光学設計を具現化できたのだろうか。このアイリリーフだけでまたしてもプリズムスコープ界の革命児と言える製品だ。


アイボックス(焦点の合う上下左右範囲)に関してもSLxと同じか気持ち広いほどであり、アイリリーフと合わせて本当にダットサイトとあまり変わらないほどの制約の少ない運用ができる。

マグニファイアとの併用を行いたいのであれば、このアイリリーフを十分に活かすことができるため迷わずGLxを購入すべきだ。

公式数値ではアイリリーフは11.17cmとあるが、これはこの長大なアイリリーフ範囲におけるプライマリーアームズ社が推奨する長さであると思われる。当研究会としては5cm~17cm前後がスイートスポットでは無いのかと検証の結果考える。


さて、後編では屋外に持ち出しての射撃や訓練に投入しての検証を行う。後編はこちら ↓ ↓

【レビュー】 Primary Arms – GLx 1x MicroPrism (後編)