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ジャンル:スコープマウント

Scalarworks社の改良された軽量スコープマウント

検証人数:2人

実弾射撃評価:有り(Type 20)

執筆時期:2024年4月

※本製品を提供してくださったK氏に感謝いたします。


SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) Scalarworks(アメリカ合衆国)
対応スコープ径 30mm
重量 154グラム
素材 7075-T6アルミニウム
カラー ブラック(本製品)、FDE
マウント高 1.57インチ(SW0810:本製品)、1.93インチ(SW0820)
価格(購入価格) 399ドル(2024年、7万2000円で購入)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 150グラムの超軽量マウント
  脱着してもゼロインが狂いにくいClickDriveシステム
  セットアップ時に瞬時にスコープの水平が取れるLevelDriveシステム
  ついつい触りたくなる手触り
改善を要する点 ClickDriveシステムのリューズが素手では少し着脱しにくい

脆弱部位を改善した超軽量スコープマウント


西方で活のよい部隊に属しているK氏は、新たに配備された小銃「Type20」を手渡されたことを機に、今まで使用していた光学照準器とマウント一式も心機一転買い替えることにした。ドル円が150円前後で徘徊しているため(2024年1月)、舶来品は高価の極みとなっており、光学照準器とそのマウント合わせて32人もの福沢諭吉を身売りさせることとなる。

大きな出費ではあるが、混迷を極める世界情勢であると同時に、対岸では台湾有事も囁かれている昨今を鑑み、防人としての責務と覚悟のために妥協をすべきではない…という自分への自己暗示を実施。冬のボーナスと、部隊の薩摩武士達によって注がれた大量のアルコールに背中を押され、家庭内予算委員会を通さない表沙汰にならない裏金で購入。財務省である彼の鬼嫁はこの裏金問題を知る由もない。

その裏金を用い、光学照準器は「VORTEX – STRIKE EAGLE 1-6×24 AR-BDC3」から「VORTEX Razor HD Gen II-E 1-6×24」へ、マウントは「Vortex – Pro Extended Cantilever Mount (当研究会では34mm版をレビュー)」から今回紹介する「Scalarworks – LEAP 08」へとリプレイスすることとなった。

Type20採用時に同時採用されたLPVO「ディオン光学技研 – March-F 1x-8x24mm Shorty」は、現在配備が非常に少数であり、いつ手元に回ってくるのか検討もつかないという事情もリプレイスへの決心となったようだ。


今年で10歳の誕生日を迎えたスカラーワークス社は、米国ペンシルバニア州に拠点を構え、スコープやダットサイトのマウントを製造販売しているメーカーだ。値は張るが、高品質で軽量、そして機能性の高さとスタイリッシュな形状を両立させている製品を多く出し、見栄を気にするGuntuber達に人気である。

今回紹介する30mmチューブ径のライフルスコープ用マウントであるLEAP 08には前身がある。その前身の名はLEAP 07である。素人目にはLEAP 08と何がどう変わったのか外観ではまるでわからない。

このLEAP 07、世に産み落とされた当初は流線ボディで160グラムを切る軽量マウントということで注目を集めた。ただしこの07には問題があり、マウント上部のヒンジ部が破損しやすいという、スコープマウントとして致命的な問題が一定数あったようだ。

その脆弱性等を改善しただけでなく、より商品力を高めたものがこのLEAP 08だ。ちなみに、LEAP 07で一緒くたにされていた34mm径用のスコープマウントはLEAP 09とナンバリングを分けられた。

 


ちょうどいいので例のヒンジの話をしよう。LEAPスコープマウントは、一見するとワンピースタイプのスコープマウントだが、まずスコープの載せ方から違う。普通はマウントリング部は上下に分割するが、LEAPは上部にヒンジがあり、まるでテスラ – モデルXのガルウイングドアのように開閉する。

上下分割タイプのマウントリングのセットアップをした者ならわかるだろうが、リング部のネジを左右均等に締め込まなければならないのが少し面倒である。08はこのようにウイング開閉することにより、スコープとマウントの複数の面倒なセットアップから一つ解放される。

我が研究会のスコープ検証用マウントである、Burris – AR-P.E.P.R.マウントなんて前後合わせて12本もねじ留めがあるので、スコープの付け替えの度に大変なんだぞ!!

また、リング上部にネジやネジを留める構造体が無いため、余計な引っ掛かりや出っ張りも無くなり、スコープの各種手動操作の邪魔になりにくい。


この開閉機構のヒンジだが、前身である07ではここが破損していた。そのため、08はヒンジ部の厚みや管の数を倍増させて強度を上げている。

ヒンジの開閉はまるでミルクを流し込むように滑らかで、閉鎖部のガタツキも非常に少ない。気持ちがいいので無意味に開閉させてしまう。

他にも側面強度やねじれ剛性を、各部位の幅や形状を若干変えて底上げしているとのことだ。

 


開閉部はリング下部で片側2個ずつのねじ留めを行う。ネジ穴はT25トルクスネジ。説明書では何故かT20と表記されているがどう見てもT25じゃないと合致しない。

ネジには赤色の中強度ネジロック剤が塗布されている。ここにはまり込むように円錐台のナットが入っている。これがネジ穴に密着してネジのガタツキや緩みを軽減させるようだ。

ネジ穴にはネジの推奨締付けトルクである「20in / lbs」と表記されている。前身のLEAP 07では、強度不足に加えてこの締付けトルクを超えた締付けが原因でヒンジの破損につながる事例も少なくなかったため、このように表記されたのだろう。

in / lbsはポンド表記である。日本でポピュラーなキログラムセンチメートルに変換すると「23.04kgf / cm」となる。

マウント側面の楕円形の穴は、軽量化だけでなくダットサイトを斜めオフセットでこのLEAPマウントに直接設置できる、同社KICKマウントを接続するための穴にもなる。


マウント素材は強度や耐久性にすぐれた7075-T6アルミニウムが使われている。マット処理がされているが、その手触りが素晴らしく、ドルチェ&ガッバーナのシルクスカーフを触っているような気持ちよさ…いや、快感と言っても良い手触りが得られる。

ヒンジの開閉と合わせてずっと撫で回していたくなり、癒やしすら与えてくれる。スコープマウントに触れてこんな気持ちになったのは初めてだ。これが高級マウント、スカラーワークスの魔力なのか。ちょっと欲しくなってきたが、スコープマウントを撫で回して気持ちの悪い顔をしている変態として、他研究員から通報されそうなので少し落ち着こう。

マウント各所には軽量化のための穴抜きやスリム化を外観のスタイリッシュさを損なうこと無く施されている。


Scalarworks社のマウントシリーズの特徴の一つに、この歯車のような形状のリューズ「ClickDrive」がある。

バネで制御されたストッパーが内部に仕込まれており、前後両方のリューズを同じ回数さえ締めれば、手締めのみで同じトルクを得ることができる。例え銃器を替えようが、違う人が締めようがゼロインが狂うことがほぼ無いという触れ込みだ。この機構そのものについては画期的だと思う。締め込むトルクがどうのこうのと考えなくて済む。この点については実弾射撃を交えたレビューを後ほどお伝えしよう。

前後のリューズを交互に同じ回転量で締めていかないと、片方が締めにくくなり、適切な固定に繋がらないので注意。

ただ普通のスコープマウントと比較して構造が少し複雑になっているので、砂塵等が多い環境化での信頼性や精度にどう影響が出るのかはわからない。

また、QDマウントのように素早く脱着できるとしているが、リューズの回転はテンション等が少し硬く、リューズそのものの出っ張りが少ないのもあって正直やり辛い。

出っ張りを少なくしているのは、衣服や装備に引っかからないためではあるが、手締めのみで工具は使うなと規定されている関係上、指だけで回していては少し手間だ。ここはもう少し改善してほしい。


さて、LEAPスコープマウントシリーズのみの便利機能が一つある。それがピョコッと飛び出した赤いネジ「LevelDrive」である。これはスコープの水平を瞬時に保つことができる画期的な仕掛けだ。

スコープのセットアップをしたことがある人ならわかると思うが、スコープを水平にセットアップする作業工程はけっこう面倒である。神経質な人は、この工程に脳外科手術でも行うような時間と神経をすり減らす。

そんな面倒な手順をさらに一つ省略させてくれる。まずスコープをリングにセットし、スコープがちょっと動く程度にリング部のネジを締める。その後、マウント下部からこの赤いネジをせり上がらせていけば、スコープタレット部底面の平らな面とこの赤いネジが平行になり、スコープは瞬時にマウントに対して傾きがゼロとなる。


これは我々のように様々なスコープを研究や検証目的で取ったり外したりを頻繁にする身からすると救世主のような仕掛けだ。全マウントメーカーにこのシステムを導入してほしいと思える。

試しにこのLevelDriveで3機種ほどライフルスコープセットアップしてみたが、誤差はとても少なく私の判断では余裕で許容範囲内だ。

ネジは金属製なので、水平を保つためスコープ底面に触れる箇所が少し傷つく。そこを気にする人は何らかの処置をしてからセットアップをしたほうがいい。水平が取れたら、このLevelDriveは取り外そう。


WARNE – X-SKEL MOUNTと比較してみるとわかりやすいが、特に横方向へのでっぱりがLEAP 08は少ないことがわかる。

LEAP 08は1.57インチ(3.98cm)と1.93インチ(4.90cm)の2つのマウント高がラインナップされており、今回紹介しているのは1.57インチモデルだ。

隣のWARNE – X-SKEL MOUNTはより低い1.43インチモデル。

公式には明記されていないが、LEAP 08の全長は、13.5cmで、前後リングの隙間は6.2cm。


さてLEAP 08の重量だが、公式ではこの1.57インチモデルは154グラムの重量となっている。実際に計測すると156グラムであった(LevelDriveは含まず)。

それでもワンピースマウントでこの150グラム台の重量は非常に軽量だ。先ほど比較したWARNE – X-SKEL MOUTが190グラムであり、銃の上部での40グラムの差は大きい。

より上を見れば、NightForce – Ultra Light Unimount(136グラム)等がある。

軽量LPVOであるLeupold –  VX-R Patrol 1.25-4×20(340グラム)と合わせると500グラムにも満たない重量であり、まるでマウントが無いような軽さが際立つ。

1-6倍LPVOの中ではそこまで重くないOTS CQB コンバットスコープ単体が520グラムなので凄まじい軽さだ。

前身のLEAP 07の重量は159グラム。今作となり、強度を増したにも関わらず重量を少し減らすことにも成功したのは素晴らしいことだ。

価格と満足度の狭間で


では強度を確保しているにも関わらず、この軽量さを実現したしわ寄せはどこに来ているのか?それは価格だ。

カメラの3脚や自転車のフレーム等、軽さと強度の両立を求めるには、多くのお金を支払わなければならない物品がある。スコープマウントがまさしくそうであり、LEAP 08も例外ではない。

公式サイトでの価格は399ドルであり、国内価格だと円安の影響もあり7万円前後の価格となってしまう(2024年4月)。もうこの値段だけで安いスコープが一つ買えてしまう価格だ。


ではその価格に見合うだけの価値、満足度はあるのだろうか?

持ち主のK氏がこのマウントに乗せているのは、名機でありダイエットしたとは言え今だ重量級1-6倍LPVOである「VORTEX Razor HD Gen II-E 1-6×24」である。その重量609グラムであり、レンジャー教育を乗り越えた彼を持ってしても長時間の携行は重いと感じる。そのため、少しでも軽くするためにこの軽量マウントを選んだようだ。(ていうか何か軽くてナイスなマウントない?って私に相談を持ちかけてきたのだが)

その効果はやはり高かったようで、もはや今までの200グラム前後のマウントには戻れないとのことだ。たかが50グラム程度の差ではあるが、遠心力のかかる銃上方にある物体のため、特に疲労が溜まった時の身体への負担が違う。

また、幕府陸軍あるあるの官品私物関係なく銃にオプション付けたら武器庫返納時には全部外してね☆的なルールにも対応できる。Type 20に載せたスコープを300メートルでゼロインして、返納時に取り外し、また訓練時に取り付けるを繰り返しているが、何度取り外しをしても元のゼロが保たれる「ClickDrive」システムのおかげで、今のところ誤差は本当に少なく感動していた

ただ、やはりClickDriveの着脱が、QDマウントほどとは言わないが、もう少し余計な力なくできれば文句は無いとのこと。整備時間は少なく急いで余計なオプションの着脱をしなくてはいけない時は、彼の指が太いこともあり少し苛つく時もある。

もちろん、活気ある水陸両用ソルジャーが集う部隊なので、購入して数ヶ月とは言え海だの山だの豪雨だので過酷な訓練環境で使ってきたが、数百発の5.56mm弾の実弾射撃も含めて不具合等は一切無い。

Conclusion | 総評


まさしく高級マウントにふさわしい価格と性能を持った製品であり、当研究会でスコープ検証用マウントとして数個持っているBurris – AR-PEPRはもちろんのこと、私が愛用しているWARNE – X-SKELと比べても雲泥の差を感じてしまう。

そう感じる要因の多くは、当然性能や各種便利機能もあるが、価格にふさわしい質感の良さも大きい。撫で回していたいスコープマウントなんて初めてだ

元となった旧製品であるLEAP 07のヒンジ破損問題は、LEAP 08になってからは年月が浅いとは言えほぼ聞かなくなった。脆弱性の克服は成功したようだ。

付け外してもゼロインが狂いにくいClickDriveシステム、瞬時に面倒なスコープの水平合わせをスパッとできるLevelDriveシステムの存在は大きく、150グラムほどの超軽量なアピールポイントは除外して、これだけでも他社スコープマウントにも取り入れてほしい機能であると感じる。

あとは、ClickDriveの他スコープマウントと比べて複雑になった機構の長期耐久性がどうなのか?それと、この価格ならば取り外しが少し面倒な点の改良を望みたい(あまり銃とスコープマウントの取り外しをしない人には関係ないかもしれないが)。

価格に関しては、ここまでの機能性があるとあまり値段を下げろとは言いにくい。どうせこの高級マウントに載せるにふさわしいスコープも、それなりの価格がするであろうから。