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ジャンル:ダットサイト

エイムポイント社のハンドガン向け密閉型ダットサイトの2世代目

検証人数:3人

実弾射撃評価:無し

執筆時期:2023年7月

※追記1:カラーラインナップに関して追記(2024年1月)。

※追記2:ACRO S-2について追記(2024年1月)。

※本製品を提供してくださったK・UC氏に感謝いたします。

比較に用いたAimpoint – Micro T-1のレビューは下記へ ↓ ↓

Aimpoint Micro T-1 & H-1 レビュー

比較に用いたSteiner – MPSのレビューは下記へ ↓ ↓

【レビュー】 STEINER – MPS

SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) Aimpoint(スウェーデン王国)
サイズ(全長×全幅×高さ) 47mm x 33mm x 31mm
重量 60グラム
対物・接眼レンズサイズ 16mm×16mm
倍率 1倍
パララックス(視差)設定 パララックスフリー
ドットサイズ 3.5MOA
イルミネーター 赤色LED(650nm) 10段階調光(内4段階は暗視装置用)
使用電池(電池寿命) CR2032リチウム電池(光量6で50000時間)
動作保証温度 -51℃~71℃
防水性能 35m
耐衝撃性能 .40S&W弾の2万発射撃試験に合格
価格(購入価格) 599ドル(2022年、13万5000円で購入)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 対物レンズの上にレンズガードが装着されている
  50000時間の電池寿命(光量7時)
  メリハリの良い光量調整
  歪みの少ないレンズ
改善を要する点 スイッチの操作感覚(指へのフィードバック)がわかりにくい
  電池蓋のスリットが変形しやすい
  電源を入れると強制的に7段階目の光量で点灯する

密閉型ダットサイト界の新たなセグメント


2018年、それまでオープンタイプが主流だった拳銃向けダットサイト市場に対し、Aimpoint社がエンクローズドタイプ(密閉型)のACRO(P-1)を発表した。

当初は、拳銃に載せるのはまだまだ大きいとの考えが多かったユーザーの嘲笑を誘うこともあったが、オープンタイプには無い堅牢性、全天候性能や照準のしやすさで次第に人気が出てきて、今では様々なメーカーがラインナップに加えつつある。まだまだ民間が主流ではあるが、今やちょっとした流行になっていると言えるだろう。

COMPシリーズや、Microシリーズ等、今まで数々のダットサイトにおける「セグメント」を作り上げ、業界を牽引してきたAimpointの先見性はさすがと言わざるを得ない。

ACROは「Advanced Compact Reflex Optic」の略とのこと。Acroという単語そのものは「先端の、最上階の」という意味があるので、もしかしたらそれにも掛けているのかもしれない。


今回紹介する商品はそのACROの2世代目である、ACRO P-2だ。

2世代目となり、T-1やT-2シリーズのように性能を若干落とした民生向けモデルも発売されている。(ACRO C-2)

P-2との違いは防水性能が35mから5mに、暗視装置モードの光量調整が4段階から2段階にダウングレードしている。

また、散弾銃用に豊富なアダプタープレートとダットを9MOAの大きさに変更したACRO S-2もラインナップされている(追記2:2024年1月)。



今回はそのP-2を様々な機種との比較(Aimpoint –  Micro T-1Steiner – MPSHolosun – HE509T)を交えながら紹介していこう。

Steiner – MPSを持ち主に返却してしまった後のレビューとなったことが実に惜しい。


まずはそのサイズ感等を同社Micro T1との比較写真を用いながら見ていこう。

10年以上前、こんなにも小さな密閉型ダットサイトが…と話題になった同社T-1(62mm×49mm×41mm)よりも一回りほど小さなボディだ。(47mm x 33mm x 31mm

同じく拳銃向け密閉型ダットサイトのライバル機種であるSteiner – MPSは45mm x 31.5mm x 30.5mm、Holosun – HE509T X2は40mm x 29mm x 28mmだ。ちなみに前世代のP-1は47 × 30 × 30 mm。使用する電池の種類が変わった影響もが大きいのか、前世代よりも若干のサイズアップとなっている。


重量はACRO P-2もP-1も60グラム、Micro T-1は84グラム(ローマウント含まず)。

Steiner – MPSは58.1グラム、ホロサン – HE509T X2は48.7グラム。ふむ、ライバル機種のほうが軒並み小さく軽い。エイムポイントをよく見て作っている様子がわかる。



ではより詳しく全体のデザインを見ていこう。

外観デザインは、ストンとした直方体だった前世代P-1と比較すると少し形状が複雑化している。

どちらもその形状から郵便ポスト(Mail Box)と呼ぶ人もいるとか。

外殻は7075-T6の反射防止アルマイト処理をされたアルミニウム合金製。表面の手触りは、Micro T-1やT-2系よりも少しサラッとした表面加工がされている。

対物レンズ及び接眼レンズ部に関しては2重構造となっており、本物の対物レンズは奥に傾斜されて配置してあるマルチコートなレンズだ。手前には強化ガラス製のレンズプロテクターが装着されている。


写真のようにこの部位に手をかけたり、装備品や壁等に拳銃のスライドを押し付けるように引くことを想定している関係上、この強化ガラスのレンズプロテクターはかなり頑丈にできているようだ。(公式サイトではコンクリートと思しき塊に打ち付けている様子も)

持ち主の話だと、インドア戦にて7~8メートルの距離でBB弾の直撃を受けたらしいが、無傷だったとのことだ。

ただ、ボディ先端とほぼ同位置にプロテクターが付いているため、汚れが付きやすい。そして、強化ガラスとは言え、割れる時は割れる。銃撃戦やヘビーな使用状況を想定しているなら、オプションのレンズカバーを装着したほうがいいだろう。このレンズカバー、カバーしたままでも照準できる透明な樹脂板が挿入されているものや、反射防止のARD(Anti Reflection Device)を噛ませているものまで種類が豊富だ。


余計な出っ張りを少しでも抑えるため、従来のエイムポイント製品に多かったダイヤル式ではなく、ACROシリーズはP-1の頃から電子スイッチが装着されている。

P2となり、P1よりも加圧面積が小さく薄くなったこのスイッチ。案の定スイッチのストローク感もクリック感もあまりないため、爪を立てて押さない限り操作感覚が乏しい。グローブ等を装着しているとより押した感覚は無くなる。この点はP1、MPS、HE509Tの方がわかりやすく押しやすい。

また、意図して設計したのか個体差なのかわからないが、プラスボタンのほうが若干スイッチのストロークが深く、マイナスボタンのほうが浅い。両ボタンの間に挟まれている出っ張りのように、手探りでいじった際にわかりやすくするためだろうか?

電池の蓋に関してだが、持ち主からP-2を受け取り開封した際、電池の蓋表面の溝(ここに工具やコイン等を差し込んで開閉する)が少し曲がっていることに気が付いた。(非常に小さな歪みなため写真ではわからないが)持ち主曰く、付属のT-10ツールで開閉しただけでこうなったらしい。

付属のT-10ツールの電池蓋開閉部位はただのプラスチックだ。この程度で歪んだり傷がつくなんてのは初めてだ。軽量化や薄型化の弊害なのか知らないが、信頼性や耐久性が売りのこのメーカーとしてはちょっとどうかと思う。現時点で使用に関しては大きな影響はないが、歪みが大きくなって電池蓋が開閉しなくなると非常に困ったことになる。ネジ部をグリスアップすると同時に、あまりきつく締め込みすぎないほうが良いだろう。


さて、最近の電子スイッチ式エイムポイント製品に備えられているシステムとして、電源を入れると自動的に7段階目の光量を灯す機能がある

個人的にこの機能は好きじゃない。百歩譲って日中のみ使用するのであればまだしも、好みや使用環境によっては明るかったり暗く感じることもあるだろう。せめてこの機能をオフにすることができればいいのだが、そんなことはできない。電源を付ければ有無を言わさず光量7だ。この点については今回検証した研究員3人と、持ち主含めていらない機能だという点で一致した。他社製品のように最後に灯した光量でまた点いてくれたほうがよい。


使用電池に関し、前世代のACRO P-1はCR1225だったが、P-2になってより容量が多く、入手しやすいCR2032となった。電池寿命は「15000時間」から「50000時間」へと大幅に向上している。(光量7で点灯時)

この省エネ性能もエイムポイントの良い点だ。電池交換頻度が非常に少ない。

カラーリングは今回紹介しているブラックの他に、FDEとスナイパーグレイを揃える。(追記1:2024年1月)


エレベーションとウィンデージの調整ダイヤル(ダットサイトの上下左右を調整するダイヤル)は、ロープロファイルな外観にするためむき出しタイプとなっている。ここに付属のT10トルクスドライバーを挿入してダイヤルを動かす。ダイヤルのクリック音は静かだが、確かなクリック感があるためわかりやすい。

1クリックの移動量は2cm / 100m。


ACROシリーズのフットプリントは、まるでピカティニー規格の20mmレールのようにレール状に爪を噛ませて手軽に付けることができる魅力がある。脱着が面倒な拳銃用光学照準器のフットプリントの中では個人的には気に入っており、できれば今後普及してほしい規格だ。

この「フットプリント」をどうするかは、メーカーにとって悩ましい問題だ。現在、ほとんど独壇場とも言えるピカティニーやウィーバー規格の20mmレールを搭載するライフル等やサブマシンガンだと、フットプリントがどうであれ、最終的には20mmレールに設置できれば良いという逃げ道があるのだが、ハンドガン業界はそうはいかない。まだまだ各社が各々の規格の「土台」を作り、どの光学照準器を購入しても、20mmレール仕様のようにポン付けすることはほとんどできない。

故に、リリースする新製品に対して、どのフットプリントを選ぶかに関しては時に売り上げを左右する悩ましい問題でもあるのだ。現在、このACROフットプリントを採用した拳銃向けダットサイトはSteiner – MPSだけだ。



レンズの青みの濃淡は、T-1が左斜め上が濃いのに対し、P-2は上部の青みが濃くなっているのがわかる。これはレンズの傾斜の違いによるものだ。

ACRO P-2のレンズ中央部までの高さは14mm。


さてこちらは以前レビューしたSteiner – MPS。MPSのほうがレンズが大きいだけでなく、ボディサイズも小さいことから、P-2と比べてより広い視野と一体感を感じることができる。

ACRO P-2のレンズサイズは対物・接眼レンズ共に16mmx16mmの正方形となっている。Steiner – MPS(20mm x 16mm)やHolosun – HE509T X2(22.8mm x 16.7mm)と比べるとレンズサイズはボディサイズと一緒に見ても少し小さめだ。

Aimpoint社は兎にも角にも耐久性や信頼性を重視するメーカーだ。第2世代となって、ボディサイズが若干大きくなったにも関わらず、レンズサイズは変更しなかった理由はここにあるのかもしれない。

※上のAimpoint – P-2については当時の撮影の制約上、いつものように方眼紙に向けての撮影ができなかった。申し訳ない。

50メートル照準 | Micro T-1との比較

 


 


50メートル先の180cmの位置に吊り下げたツナギに照準。

レンズ全体の青みに関しては、T-1より少し透明度の高いレンズを有している。ハンドガン用ダットサイトの域だけでなく、ダットサイト界全体を通して比較しても透明度の高い部類に入るだろう。

本体をグリグリ動かした際のレンズの歪みは、他機種と比較しても優れていると感じる。ハンドガンを用いた射撃競技でも、あまり違和感なく射撃を行うことができるだろう。

また、T-1との比較で、本体にダイヤルやノブ類等の余計な出っ張りが非常に少ないため、視野にノイズが少ないことは実に良い。ハンドガン向けダットサイトは概ねどれもこのように、小さいだけでなくスッキリとした外観なので、小銃や散弾銃、短機関銃等他の銃器にも好んで使用するシューターが少なくないことが理解できるだろう。

ちなみに、今回の撮影におけるP-2の光量は、電源を入れて強制的に発光する7段階目の明るさ。この日は良く晴れた日であり、日中に使用するにはちょうど良いと思われる。ただ、人によっては暗く感じたりすることもあるだろうし、夜間等は言うまでもなく明るすぎる。やはり最後に点灯した光量を記憶するモードを設定してほしい。

T-1はこの光量に一番近い明るさ(9段階目)に設定。


エイムポイント製品の良い点として、裸眼での視認不可能な暗さから、ギラっと眩い明るさまで非常にメリハリのある光量調整は今回も健在。暗視装置モードを搭載しておきながら明るすぎる他社製品が多い中、4段階も暗視装置モードの光量を備えてる点も素晴らしい。もちろん、光量5段階目以降の日中使用モードも十分な調整が可能だ。

暗視装置とダットサイトを併用することはストレスが溜まりがちなので、このような微調整ができるのは良いことだ。

100メートル照準 | Micro T-1・MPSとの比較

 


 



100メートル先の180cmの位置に吊り下げたツナギに照準。

※MPSは撮影時期が違います。

こうして見ると、P-2の3.5MOAとT-1の2MOAのダットの大きさの違いがよくわかる。

どちらも100メートルの距離でヘッドショットはできるが、やりやすいのは当然2MOAのT-1だろう。

従来のエイムポイントであれば、2MOAより大きいサイズのダットは4MOAに設定することが多かったが、拳銃向けとは言えある程度の精密射撃等も視野に入れて3.5MOAというサイズにしたのではなかろうか。

光学性能に関してだが、順光時には本体を少し下に向けるとレンズの赤いコーティングの反射に覆われることがある。そして逆光時には少し上に向けるとレンズ縁下部の反射が若干目立つ。写真の様子がそれに近いと言える。大きく視野に影響を及ぼすとまでは言わないが、環境や人によっては気になるだろう。

あくまで今回の撮影や使用環境での話だが、地面に対して平行に向けている限りは優秀な光学性能だろう。全体的にフレアやゴーストの発生も少ない。

わかりにくいが、Steiner – MPSはレンズの透明度だけに関しては言えば3機種+Holosun HE509T X2と比べて一番青みがある。STEINER社によると、特定波長の光を減衰させ、他はそのまま通すノッチフィルターとしての役目で青くしているとのこと。砂地等の射撃場や競技の場で使用することが多い関係上、ギラついた白っぽい色を減衰させて見やすくしているようだ。

ダットサイトのレンズは透明度が高ければけして良いわけでもない。これはシューターの運用環境や好みの問題だ。

15メートル照準 | Micro T-1との比較



拳銃向けダットサイトということで、よく拳銃の射撃訓練で設定される15メートル前後の距離でも撮影をした。

やはりT-1と比較してボディに余計な出っ張りが無い点は良い。ターゲットとの距離が近くなるほどその利点をより感じる。

レンズの面積がライバル2種(Steiner – MPS、Holosun – HE509T X2)と比べると小さいことが比較すると少し気にはなるが、その分小さなダットをレンズ内で見つけやすくもあった。

写真を見ればわかるが、このような近距離だと、練習次第でダットが点っていなくてもレンズに写った像だけで照準することが、マンターゲット程度の大きさなら可能だ。レンズ面積が他より少し小さい点もうまく働いている。ダットが何らかの理由で灯らなくなったが、レンズが健在であればこの手法は使える。

当然だが、空動作だけでなく安全な環境下で弾丸を発射しての検証と練習は行うべきだ。

パララックステスト │ 100メートル


100mの距離におけるパララックス(視差)は上下移動量は15cm〜10cmほど、左右は5~8cmほどと優秀。

エイムポイントは相変わらずこの機種に関しても、パララックスはどの距離からどう覗いても無いとか言っている。この点はいくらなんでも少し疑問に思う。

ガンハンドリング、使用感等


重量は他ライバル2機種(MPS、HE509T X2)と比較すると一番あるものの、大きく違うわけでも重量バランスが悪いわけでもないため、ハンドガンに載せての素早いガンハンドリングを行っても差はほぼ感じない。

ホロサン HE509T X2と比べると負けるが、レンズの透明度も悪く無いので薄暗い環境下でも大きな支障はない。ただ、もっと高い透明度を求めるのであれば、HE509T X2よりもオープンタイプの良いダットサイトを選んだ方が良いかもしれない。

レンズの歪みが少ないことも、ストックの無いハンドガン用ダットサイトには重要な要素だ。レンズを覗いたまま素早い動きをしても大きなストレスや、照準の遅延を少なくできる。

3機種の中では、本体上部中央が少し出っ張っているため、その部位を簡易的な照準としてレンズやダットが破損した時や、レンズを覗いている場合ですらないかなりの至近距離での応用射撃に利用できる点は良い。

ダットサイト等の光学照準器を上部に載せている場合、5メートル前後のポイントシューティング(照準器を使用しないいわゆる勘撃ちの一種)では光学照準器のボディが邪魔で感覚を鈍らせる現象が起きやすい。そのため、ダットサイトのボディやその一部分を使用しての射撃術はCQB戦を想定しているのであれば習得して損はない。


参考までに、拳銃にダットサイトを載せて使用する場合、腕をビシッと伸ばすよりも写真のように肘を曲げた状態で照準したほうがダットの光を捕捉しやすい。オープンタイプのダットサイトと比べれば、このような密閉型のほうがダットの光を見つけやすいかもしれないが、ビシッと安定できるストック(銃床)付きの銃器と比べればダットの捕捉がやりにくいことに変わりないからだ。

低反動の弾丸を使用する事が多い競技だと、肘をより曲げて射撃しているのもよく見る光景だ。


また、目に近づけたほうが見やすい点では、拳銃の至近距離戦の構えに強いC.A.R.(Center Axis Relock)でダットを見つけやすいため意外と使いやすい。ただ、ダットサイトが視野をより狭くしがちになるし、ポイントシューティング(いわゆる勘撃ち)もやりにくくなるため、前述したダットサイト本体を利用する手法や拳銃のスライド部分を指さしの要領で射撃するような戦技も同時に習得しておくことを推奨する。

この場合は、ダットサイト本体の角を照準点と見立てて射撃する手法(俗にCorneringと呼ばれていたりする)が有効だろう。


この超小型、軽量なダットサイトを拳銃やスコープの上だけに載せるのはもったいない。その軽さはほとんど負担増にはならないため、小銃や散弾銃等のロングガンに載せるのも良いし、実際にそうしているシューターは年々増えている。

しかもACROフットプリントに対応した各種マウントも増えているため、より様々な銃器に搭載できるようになってきている。


このように正面から見れば、上や横にほとんど出っ張り等がないことが、軽さ以上により良い視野を得ることができるという大きなアドバンテージとなる。


今回、実弾射撃評価はできなかったが、耐久性を売りにしているエイムポイントなだけあって、海外のシューター達のレビューを見る限り小さくなってもその評価に大きな揺るぎはないようだ。

12番ゲージスラッグだろうが、7.62x39mm弾だろうが問題ないだろう。Aimpoint公式動画等でも様々な銃器に載せて射撃を行っている様子もあるし、P-2は.40S&W弾の2万発射撃試験に合格し、7400Gの加速度試験もクリアしている。

西側諸国拳銃の弾丸としてポピュラーな9mmx19mm弾のおよそ2倍。


ちょうどよいのでエイムポイントがACRO P-2に付与した耐久性の話をしよう。相変わらず動作保証温度は-51℃~71℃、水深35メートル(!?)までの高い防水性能を誇っているのも驚くことだが、ダットサイトとしては珍しく、EMP(Electro Magnetic Pulse:電磁パルス)耐性もあるとのことだ。

EMPは雷や太陽フレアだけでなく、核兵器やEMP兵器によって発生し、電子機器類を機能不全に陥らせることがある。そのため、海外のサバイバリスト教(狂)達の間では、スコープのように実線のレティクルのないダットサイトは、EMPが発生した際に使い物にならなくなるッッ!!として使用を避けている人もいるくらいだ。スコープを一切出しておらず、ダットサイトがメインで商売をしているエイムポイントだからこそ、このEMP耐性も考えた設計をしたのかもしれない。

実際にどの規模のEMPに耐えれるのかどうかは不明。

Conclusion | 総評


前回レビューをしたSteiner  MPSの総評で述べたことと変わらず、やはりエイムポイント製品の一番の売りは信頼性と耐久性だ。今回のACRO P-2もどこぞの麻薬カルテルお手製の潜水艦レベルの防水性、惑星アラキスでの任務にも従事できる動作保証温度、そして終末核戦争にも耐えるかもしれない耐EMP性能とカタログを見てるだけでも、そこらの光学照準器を凌駕したタフボーイだ。

光量6段階目の設定で5年間も灯り続ける省エネ性能の良さも相変わらずだ。しかもソーラーパネルや自動シャットダウン機能等を付けずにだ。残念ながらタイムストーンを持っていないため、実際に5年間光続けるのかどうかは検証していないが、私を含めてAimpointのダットサイトの所持している研究員達が皆、最後にいつ電池を交換したのか、というか電池を交換したことがあるのか思い出せないあたりを鑑みるに安心できそうだ。

実弾評価試験を今回行っていないため、私は机上の空論でレビューを書いているのではないかと少々不安になり、ACRO P-2を取り扱っているショップや所持している海外ユーザー達数人に聞いてみたが、やはり信頼性を揺るがすような大きな不具合は確認されなかった。

Holosun HE509T X2やSteiner MPSような小ささや、レティクルの切り替えもできなければ、大きなレンズも搭載されていない。挙げ句価格は599ドルで他2機種よりも100~150ドルも高い!しかし、それらを吹き飛ばすようなタフで、どんな時にもダットが灯っていそうな安心感がある。そして、この耐久性に肩を並べることができる小さなダットサイトは他に無い。そう考えると、実に妥当な価格ではないだろうか。

価格がやっぱ気になるし、4段階もの暗視装置光量切り替えはいらない、潜水夫になるつもりもないという人は廉価仕様のACRO C-2もいいだろう。

ただし実際にどれほどこの子がタフで信頼性があるのかを試したわけではない点に注意していただきたい。他の拳銃用ダットサイトにある不具合同様、ACROシリーズにもレンズ内部で曇り、結露が発生したという報告もいくつかある。

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Aimpoint Micro T-1 & H-1 レビュー

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【レビュー】 STEINER – MPS