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ジャンル:ダットサイト

US SOCOMからの受注が決定したトリジコン社のコンパクトなオープンダットサイト「RMR」。その前身とも言えるダットサイト「MS04」をレビューしよう。

執筆時期:2018年9月

※本製品を提供してくれたY氏に感謝いたします。

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) Trijicon(アメリカ合衆国)
全長×幅×全高 4.2×2.54×2.3cm
重量 14グラム
ボディ素材 ガラス繊維入ナイロンポリマー
対物レンズサイズ 2.16×1.54cm
倍率 1倍
レンズ透過率 98%
レティクルパターン 赤色ダット 4MOA
イルミネーター 赤色LED 自動調光
使用電池(電池寿命) CR2032リチウム電池(17000時間)
動作保証温度 -25℃~55℃
耐反動性能 5000グラム
価格 不明

そしてRMRへ

他社には無いユニークな光学照準器をリリースしているトリジコン社に、RMRというオープンダットサイトがある。拳銃やスコープの近接用・バックアップサイトとして人気がある製品で、モデルによっては、電池ではなく集光ファイバーによってドットを灯すユニークなものまである。そして2018年夏、アメリカ合衆国特殊作戦軍(US SOCOM)により800万ドルの大口契約で、拳銃用ドットサイトとして一部導入が決定した。


今回紹介するのは、そのRMRの前身とも言えるトリジコン社の小型オープンダットサイト「MS04」である。

このMS04のユニークな点は、ほとんどのダットサイトがアルミニウム製の外殻を身にまとっている中で、この製品はナイロンポリマー樹脂であることだ。そのため、重量はなんと14グラムしかない。驚異的な軽さだ。この重量は、他の小型オープンダットサイトの半分~1/3くらいである。強度に関しても、ガラス繊維を入れて底上げしており、同じ厚みで製造した場合、アルミニウムよりも強度は高いと謳っていた。

とは言え、RMR以降はアルミニウム製のハウジングになっている。やはり無理があったのだろうか?


サイズもやはり小さい。小型のAimpoint T-1と比べてもこんな感じだ。全長は4.2cmでBurris Fast Fire2よりも小さい。


対物レンズは、透過率98%を誇る透明度の高いものだ。ハードコートも施され、傷にも強い。

ただ、対物側からの反射防止や映り込み防止コーティングは無いに等しく、照明や太陽によく反射するし、ドットが灯っている様子もよくわかる。


電池はお馴染みのCR2032リチウム電池を使用する。どの程度の光量かは不明だが、2年近くの点灯が可能とのこと。

拳銃やライフルスコープの上部に載せる関係上、どうしてもコンパクトさが求められる製品なので、この手の製品によくある本体裏に電池をはめ込むタイプだ。当然、電池交換の度にマウントからバラして載せなくてはならない。

ちなみに、さらに薄いコイン電池であるCR2016を二枚重ねた状態でも、昇降コンバーター回路により可動できるとのこと。


ドットの位置調整は、付属のレンチを使って行う。エレベーション(上下)調整は上部の、ウインテージ(左右)調整は右側のイモネジにレンチを突っ込んで行う。専用のダイヤルプレートを介して行うと、調整幅がわかりやすくなる。

エレベーション調整用イモネジの前方にある左右のネジ穴は、マウントに装着するためのネジを挿入する。

操作系のボタン類は一切無く、ドットの点灯は周辺の明るさに対して自動調光を行う。本来なら専用カバーがあり、使わない時はドットを最低光量(完全には消えないらしい)にして電池消費を防げるのだが、この製品を提供してくれた持ち主は、運搬中にカバーが破損したらしく、お菓子の空き箱をかぶせていた。


説明書はトリジコンお馴染みのカラーでわかりやすいものだ。


※画像クリックで拡大可


中心部拡大画像

いつも通り、Aimpoint Micro T-1との比較をしてみた。

レンズ外縁部は少し歪みがあるものの、透明度の高いレンズなのは明らかだ。この日は曇りで、太陽の照らし方がまばらだったのでMS04とT-1の写真では明るさが違うが、透明度はMS04の方がはるかに高い。

両者とも太陽は左側面から差している状態であったが、T-1の方はレンズの左斜め上に赤いゴーストが見て取れる。これはT-1のレンズの傾斜形状から起こるもので、太陽が斜めから差し込む明け方や夕暮れ時に起きやすい。一方、MS04はゴーストは発生していないが、薄く白っぽいフレアが発生している。

逆光下の状況だと、MS04はLED発光素子周辺の形状が、レンズ横一線に映り込んで照準が難しくなる。

MS04のドットサイズは4MOAで、50mだと人間の顔程度の大きさになる。近~中距離向けの大きさだ。鮮明に映り狙いやすいが、室内や暗所だとダット上部にLEDの乱反射が少し映り込むのが目立つ。

自動調光は大変シームレスに切り替わる。その他の自動調光式ダットサイトの例に漏れず、昼間は直射日光下でも見えるほど明るく灯るが、暗所ではもう数段暗くなってほしいと感じる明るさだ。


MS04にはRMR同様に多数のマウントがある。こちらは、同社のTA31やTA01等のACOGスコープ上部に取り付けるためのマウント(MS12)である。


TA31に取り付けるとこんな具合だ。専用設計だけあって、ロープロファイルにマッチングしている。これにより、中~遠距離はACOGスコープを、接近戦ではMS04を使い分けることが可能だ。


私は照準が面倒になるのでこの方式は好まないが、軽量なMS04なので、スコープ上部に載せても、ガンハンドリングや射手の負担に影響は与えにくい。

このドットサイトを元に、多数のラインナップを揃えるRMRシリーズへと受け継がれていく。