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ジャンル:ウェポンライト、懐中電灯、フラッシュライト

シュアファイヤー製ウェポンライトに初となる、ストロボ機能と光量調整可能なモデルとして君臨したXH35。同社開発の新型リフレクター「Max Vision Beam:マックスビジョンビーム」と合わせてレビューしよう。

執筆時期:2018年6月

※本製品を提供してくださったS氏に感謝いたします。

※1:2018/07/29:照射比較動画を掲載。

※2:2018/08/01:別バージョンである「XH30」に関して追記。

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) SUREFIRE (アメリカ合衆国)
全長 9.4cm
重量 約136グラム
ベゼル径 3.17cm(1.25インチ)
光量(点灯時間) Hiモード:1000ルーメン(1.25時間)、Loモード:300ルーメン(2.5時間)
使用電池 CR123Aリチウム電池×2個
価格(国内価格) 299ドル(46200円)

シュアファイアの多機能ウェポンライト


SUREFIRE社は、まず信頼性を第一に考えている。この理念は基本的に昔から変わっていない。たとえ現場がどんな修羅場となろうが、とりあえずライトが点灯してくれる。そんな安心感を与え、闇を切り開いてくれる。そのため、他社のフラッシュライトにあるような多機能性には目をつぶる場合が多かった。特に、よりシビアな使用シーンの多いウェポンライトは、シングルモードのみで、シンプルを極めた製品が多い。だが、同じようなシステムでLEDのみをすげ替えてなんとかできる状況ではなくなった。値段が安く、質の良い中国製品の台頭や、変化するシーンに合わせた多機能を売りにするライトが多く出回ってきている。そんな葛藤・ジレンマを感じさせるようなSUREFIRE社の新作ウェポンライトが、今回紹介するXH35だ。


まずは外箱から。

今までの赤を基調としてたパッケージとは違い、グレーで落ち着いたクールなデザインになっている。

他にもG2Z MVEDCシリーズ等の2017-2018年の新ラインナップ製品は、全体的に落ち着いた色合いのパッケージになっている。


パッケージ裏面にはXC35を装着したグロックと一緒に、四角い謎のデバイスが描かれている。

これは「MASTERFIRE Rapid Deploy Holster:マスターファイヤー ラピッドディプロイホルスター」という同社が開発した拳銃用特殊ホルスターで、本製品のようなMASTERFIRE対応ウェポンライトを装着にすれば、拳銃の機種を問わずホルスターに装着可能というもの。要するに拳銃ではなく、ウェポンライトをホルスターに固定しているものである。仕事や日常で様々な拳銃を使い分けたり、ウェポンライトの戦術性を上げたいと考えている人には良いかも知れない。

ただ収納できるだけでなく、ホルスターから拳銃を抜くと同時にライトやレーザーがノータッチでONにできるという仕掛けもある。

このMASTER FIREホルスターに装着できるライトはXH35だけでなく、XH15X300UH-BX400UH-A-RD、X400UH-A-GNX400VH-B-IRCが対応している。(2018年7月現在)


付属品一式

ライト本体に、CR123Aリチウム電池(Surefire製SF123A)2個、PicatinnyとUniversal規格の20mmレール用アダプター(片方は装着済み)、電池蓋開閉防止用ピン、ミニカタログ、ロゴシール、取扱説明書、ちゃんとした電池を使えよ!という注意書きが入っている。


説明書はSurefireおなじみのモノクロイラスト付き英語説明書



さて、XH35の外見を見ていこう。まずは側面から

基本形状は、Streamlight TLR-1HLのようにネジ式のマウント固定方法を採用した、X300U-Bに準じたスタイルを継承している。

ライト先端はMASTERFIREホルスターに固定できるように専用のアダプターがはめ込まれている。


ライト下部には、なにやらスイッチ群が並んでいる。これがXH35の多機能を管理するスイッチだ。

「STROBE」と書かれているスイッチはストロボ機能のON・OFFが制御可能。ONにすると、ライトを点灯すれば常にストロボモードで照射する。

「LIGHT」スイッチは光量を調節する。HIGHが最大光量の1000ルーメンで、LOWが300ルーメンで照射する。

操作が複雑になるがスイッチ一つで全てを管理するシンプルさにするか、信頼性の低下に繋がるがスイッチを増やして操作性を上げるか・・・多機能ライトのスイッチ設計の難しいところだ。


銃器に密着するマウント部。

メーカー管理用のQRコードの手前にある突起は交換可能で、付属品のピカティニー規格 & ユニバーサル規格の20mmレール用のアダプターに変換可能。装着する銃器の20mmレール規格に合わせてチョイスできる。


さて、ここからは本製品やX300シリーズのライバル機種である、ストリームライト社のTLR-1HLとの比較も交えてレビューしよう。

全長はTLR-1HLが8.61cm、XH35が9.4cmとなっている。

また、X300と比べてXH35は下部のスイッチ群が増えたことにより、TLR-1HLよりも下部も膨らんでいる。


これにより、TLR-1HLと比べるとどうしてもXH35の方が縦にも横にもボリューム感のある大きさとなっている。


スイッチ群による膨らみは、ライフル上部にライトを載せるスタイルにした場合に、ハイマウント(Absolute CowitnessやLower 1/3 Cowitness)の光学機器やアイアンサイトの視界に干渉してしまい、場合によっては照準ができなくなる。このスタイルを用いているシューターは購入前によく考えていただきたい。(写真の光学照準器はLeupold LCO



点灯スイッチ。XH35は点灯以外のスイッチは下部にまとめているので、点灯スイッチは従来のX000シリーズと同じ。実際、テールスイッチはX200~X400シリーズと完全互換なので、今まで販売されていたリモートスイッチや各種スイッチ系のオプションパーツはそのまま使用できる。最新のシステムを盛り込んだライトだが、過去の豊富で便利なオプションを切り捨てないのは、買い替え目的のユーザーからすれば嬉しい話だ。

点灯はテールスイッチで、その他機能の制御は下部スイッチで。余計な操作系が増えると、信頼性の問題に直結しがちだが、今の所XH35の目立った不具合は聞かない。

TLR-1HLはストロボ操作も一つのスイッチで操作できるようまとめられている。多機能ライトの実用性としては及第点だ。特に戦闘用でこれ以上複雑な操作系になると使い物にならない。

ただ、TLR-1HLも、XH35も、カバンの中等に入れていて、不意にスイッチが間欠・常時点灯モードで点きっぱなしになるようなことはよくある。特にXH35は過去シリーズ同様、スイッチをちょこっとでも回すと常時点灯になってしまうので注意が必要だ。

X300U-Aまでなら、Unity Tactical社のEXOスイッチカバーで不意の誤点灯を防げたのだが、X300U-B以降はマウント形状等の違いから適合できなくなっている。


電池蓋の開閉は比較的容易だが、電池蓋そのものが、開閉の際にすぐ外れる。ちゃんと閉じると不意に開くことはないが、電池交換の時は少しイラつく。

そのぶんオプションパーツへの交換は簡単だ。

MaxVision Beam



※高出力ライトの人体への照射は、目や脳に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

さて、近年SUREFIREは、独自の理論で新たなリフレクター(ライトの集光パターンを決める反射板)を開発し、その搭載モデルを順次増やしていっている。それが今回紹介するMaxVisionリフレクターである。

今までの同社X300等は、↑のTLR-1HLのようにレンズによる集光で遠距離まで強いビームを飛ばしつつも、暗順応を阻害しないレベルの弱い光で周囲を幅広く照らしていたTIR(Total Internal Reflection)であった。

XH35のMaxVisionリフレクターは、スムースリフレクター(表面がツルツルの反射板)に段々を設けたような形状となっている。そして、このマックスビジョン搭載型モデルはどれもベゼル径に対して小さなリフレクターになっているのが特徴的だ。

SUREFIRE曰く、MaxVisionリフレクターの開発理由はこうだ。

今までタクティカルライト界は遠距離まで届く強力なビームが、遠距離の索敵や目くらましに効果的と言われていた。が、シュアファイヤーが調べたところ、タクティカルライトがよく使われるシチュエーションは、狭い室内や閉所等の限定空間であることが多い。そんな場所で遠距離重視のライトを使用しては、いざ踏み込んでライトを照射した際に、空間全体を一瞬で照らすことができず、瞬時の正しい驚異評価ができないという事態に陥りやすい。また、一点集中型の強力なビームを近距離で照らした場合は、照射した本人の目が眩んでしまうことも問題だ。そこで、近距離や中距離を一瞬で広範囲に照らし、いま前方の状況がどうなっており、何がいるのかをわかりやすく、なおかつ驚異対象者がどの範囲にいても、目くらまし効果が期待できる配光可能なリフレクターを開発した。それがMaxVisionリフレクターである。(※あくまでSureFire社の考えです)

さて、コレが実際にはどのような配光になるのだろうか?その他タクティカルライトとの照射比較をした↓の写真をご覧いただきたい。


※画像クリックで拡大可


※画像クリックで拡大可

今回の比較は、それぞれリフレクターの違うタクティカルライトで比較してみた。XH35はMaxVisionリフレクター、TLR-1HLはレンズ集光式のTIR、T-MAXはスムースリフレクターだ。照射対象は100メートル先の反射板を取付けた自転車。

こうして照射してみて思い出したのだが、XH35はLedlenser社のワイドモードをより明確に、明るくしたような印象だ。いわゆる中心光という中央突破の配光はほとんど無く、1000ルーメンの強力なパワーをワイドに惜しみなくボワッ!!っと照らしている。

しかし、ワイドな配光ではあるが、照射範囲そのものはそこまで広いわけではない。そのため、側面外縁部はTIRを使用したTLR-1HLよりも照らされてはいない。

TIRは俗に遠距離照射のスポットのみに特化したリフレクターと思われがちだが、強力な中心光の周りに、とても範囲が広く暗めの周辺光が照らされている。詳しくはX300EB1のページを御覧いただきたい。

また、近距離や中距離をワイドに明るく照らし出すので、その設計コンセプトからわかってはいたが、近場の情報量は多いが、遠方には弱い

中距離も、少し入り組んでいたり複雑な地形や空間だともう少し光量が欲しいと感じることがあり、何があって何が隠れているのかといったことがわかりにくいと感じるシーンが多い印象だ。この不安や疑心暗鬼感は、森や広い建物内、都市部での使用で特に顕著となった。

今回のコンディションでは、一番遠方まで飛んでいたのは、一番光量が低い(700ルーメン)T-MAXであった。

他にも、近距離を大光量でワイドに照らすため、地形や空間状況によっては照射後の暗順応(明るい場から暗い場へと移行した際の視界の回復)はかなり阻害される

TIRのような中心光を配光を多く集中させたモデルのように、ユーザーが近距離の物体を照らした際の強烈な眩しさを感じることは少ないが、全体的に明るく照らされるので、視界全体的な障害物の反射をきつく感じることがあり、パッと消灯した際に何も見えなくなる範囲はかなり広く感じる。

※1

さて、こちらは「15~20mの近距離照射」「照射された側の眩しさ」と「ストロボモード」をの照射比較を動画にしてみた。ご覧頂きたい。

このライトを照射された側からしてみても、遠方への集中を得意とする他の2機種と比べると眩惑効果は少ない印象だ。大光量でボカン!といった眩しさで、刺さるような、急に照らされて混乱するような照射感は少ない。

全体的に明るく照らされるので、外縁部にいてもその眩しさは維持されているのかと試してみたが、そこまで特筆するような印象はない。

ワイドに照らすことで、照射しているユーザーの位置を特定されにくいという意見もあるが、Max Visionリフレクターであっても場所は結構特定できた。どちらかと言えば、遠方照射タイプの刺さるような配光を浴びせられた方が、眩惑効果が高く照射場所の特定が難しく感じる。(これはあくまで照射されている側の話。照射から免れた第三者だと、TIRのような遠方照射タイプの方が特定しやすいのは言うまでもない。)

また、満を持して搭載されたストロボモードも他のタクティカルライトと比べると点滅間隔が遅く、あくまで個人的な意見だが、もろに照射されても眩惑効果は他より薄く感じた

他のタクティカルライトのストロボモードが、20~25Hz程度といった点滅間隔なのに対して、XH35は約10Hzといった感じだ。ちなみに今回の3機種の中ではT-MAXが一番点滅間隔が短かく、眩惑効果もキツく感じた。(ストロボモードの点滅間隔はほとんどのメーカーが公表していないのであくまで個人的な感覚です。)

本来高出力ライトの、特にストロボ照射を人に向けて照射するのは、事故やケガの原因になり、大変危険なのでやめておくように!むやみに目を痛めるのは私だけで十分である。


少し話題を変えて、こちらはLowモードの300ルーメン。もう一度言うが、Lowモードとは言いながら300ルーメンも出ている。当然これは手元確認用ではなく、長時間の捜索や点けっぱなしが必要なシチュエーションで用いられるモードである。

広範囲に程よく均等に明るく照らすので、地面を照らして何かを探す時や、洞窟やホール、ドーム等での捜索でも大変役立つ。

この明るさで、実用点灯時間は2.5時間をキープできる。

Max Visionリフレクターに関しての総評


現在このMaxVisionリフレクターの搭載機種は、このXH35だけでなく、G2Z MVTactician等の近接戦闘ライト、E1B MVSIDEKICK等の携行型EDCライト、MINIMUS等のヘッドライトのラインナップが展開されている。

戦闘用としては、暗所や閉所における拳銃や格闘戦を意識した近距離戦闘での使用を目的としており、それらのシチュエーションで使われる武器や戦闘手段の距離で使う配光に特化している。これは、XH35だけでなく、他のMaxVisionリフレクター搭載機種も概ね同じ配光パターンである。

近距離~中距離をワイドに、比較的均等に、かつ明るくガバッと照らすそのインパクトはなかなかのもの。突然誰かが部屋の電気を点けたり、太陽が顔を出したように視界が広がる。

私個人としては、純粋に懐中電灯として照射を楽しむこともできる。また、ヘッドランプやEDCライトにこのリフレクターを使用するのはよいチョイスだろう。

眩惑効果や戦術性としては、様々な意見があるので結論は難しい。どこにいるのかわからない人的驚異に対して、ワイドに照らしてこちらの位置をある程度眩ませ、かつ一網打尽に照らし出すか、バシっと刺さるようなスポットを浴びせ、眩惑効果と遠方への索敵能力を高めるか・・・

正直なところ近距離だと、遠距離照射型のリフレクターの方が、たとえ中心光を少し外してても眩惑効果は高いと感じる。遠距離になると、中心光を外して照射された場合は、照射場所の特定がしやすかったので、Max Visionリフレクターのようにワイドに照らすタイプの方が場所がわかりにくい。だが、遠距離だと結局MaxVisonリフレクターの場合も届かないのであまりアドバンテージがない。

いろいろなシチュエーションを試した結果、個人的な感想としては、Max Visionリフレクターを戦闘で使用できる距離は0~50m、入り組んだ地形や森林等での索敵も視野に入れると0~30mくらいが実用範囲に感じる。

現に、このMaxVisionリフレクター製品に関しては、ユーザーの間でも賛否も含めた様々な意見が出ている。

拳銃やナイフを用いる至近距離戦闘に限定すると、戦闘時の高ストレス下における視野狭窄(視界が狭くなる生理現象)を考慮すればMaxVisionリフレクターは有効だと考える。

ただ、ロングガンに用いたり、その他のシチュエーションでも使用する場合はよく考慮した方がよい。

Surefireの製品だと、私個人としては近距離をワイドに暗く照らし、遠距離をバシッと照らすX300や、M600DF SCOUT LIGHTのようなTIRリフレクターが搭載されたものが好みだ。

※2(2018/08/01)

ストロボや光量切り替えといった機能は欲しいが、MaxVisionリフレクターが不満だなぁという人は、同社のXH30(クリックでXH30のレビューへジャンプ)が良いだろう。機能や外観はほぼそのままで、リフレクターをスカウトライトやX300と同じTIRに変更したモデルだ。これなら遠距離照射もお手の物だ。