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シュアファイア社が手掛ける拳銃向けウェポンライトであるXシリーズ。その中でも近~遠距離まで手広くカバーする高性能なTIRを搭載したXシリーズの現時点での頂点がこのX300 Ultraである。今回はこのライトのライバル機種であるストリームライト社のTLR-1HLとの比較も入れつつ紹介していこう。

※1:2018/08/04:1000ルーメン版のX300について追記。

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SPECS | 性能諸元

メーカー名(生産国) SUREFIRE(アメリカ合衆国)
サイズ  全長:9.1cm
ベゼル直径:2.85cm(1.125インチ)
 重量 113グラム(電池を除く)
 光量 X300U-A(旧型。本製品):500ルーメン
X300U-B(2016年型):600ルーメン
 点灯時間  A、B共に1.5時間のタクティカルランタイム
※タクティカルランタイムは光量が戦闘使用可能な50ルーメンに低下するまでの時間。
 使用電池 CR123A×2本
 防水性能 IPX-8 :1.5mの水槽に30分沈めて使用上問題無し
 カラー ブラック(本製品)、タンカラー
 価格(購入価格) 米国:299ドル(2013年に通販にて249ドルで購入)
国内:51000円

Xシリーズの決定版

突然だが、シュアファイア社の拳銃用ウェポンライトであるX200(これが初代なのだろうか?少なくともX100は聞いたことがない)は、使い勝手がお世辞にも良いライトとは言えなかった。遠距離照射のみに特化したX200A、近距離照射のみに特化したX200Bというラインナップの段階で、帯に短し襷に長しというライトであった。この当時はLEDの技術がまだまだ発展途上で、近距離でも遠距離でもいけるキセノン球ライトに比べると、遠距離照射に弱い戦闘用ライトはなかなか難しかった。それ故の苦肉の策であったのだろう。また、所持していた人はわかるが、電池蓋が異常にカタくキツく、ユーザーを苛つかせていた。
しかし、時代は変わりLEDの進歩は格段に上がった。次世代機のX300は進化したLEDと綿密に設計されたTIRレンズにより、近距離から遠距離までカバーする素晴らしいウェポンライトに仕上がった。そのアップグレードモデルがX300 Ultraだ。2016年にはさらにアップグレード(X300U-B)されている。

外観レビュー

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まずは全体図といこう。大変コンパクトでロープロファイルに仕上がっている。全体的にマットに仕上がっていて、余計な反射をしないようになっている。


 

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SUREFIRE社自慢のTIR(Total Internal Reflection)レンズ。この手のレンズや、特にウェポンライトだと、遠距離照射に特化したイメージを持ちがちだが、近距離も幅広く照らしてくれ、暗順応も妨げないようにも考えられた素晴らしいレンズである。詳細の後ほどの照射レビューで。


 

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また、ベゼル部分は直径が1.125インチとなっており、同社や他社のフィルター等のオプション品が装着可能だ。縁は、誤点灯防止用に波打った形状となっている。


 

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電池蓋。X200の鬼のような閉まりにくさと比べるとかなり改善されている。レバー部分の穴に付属品のピンを入れることで、不意に電池蓋が開かないようにのロックも可能だ。


 

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ストリームライト社のTLR-1 HLの方は、X300とは逆に銃器との接触面にフタを開閉するレバーがある。フターの開閉防止という観点ではこちらのほうが安心感は断然ある。ただ、TLR-1 HLは注意してフタを閉めないと、フタのパッキンが閉める際に噛んだり、変に干渉して閉まりが悪くなる場合があるが、X300はすんなりと閉まる。


 

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こちらは後方にあるスイッチレバー。このレバーを上下に上げ下げすることでどちらでも常時点灯を行え、このレバーを前方に押すことで間欠点灯となる。レバーの上下は、少しのテンションでスイッチが引っかかるので、力加減による間欠点灯はできない。TLR-1 HLのようにストロボは無く、シンプルなシステムだ。また、これは両者に言えることだが、装備中やカバンの中等でちょっとした拍子に誤点灯することがあるので注意が必要だ。この場合、UNITY TACTICAL社の「EXO」というX300の誤点灯防止カバーがサードパーティであるので、そちらを導入するのもいいかもしれない。

ただ、前方にレバーを押し込んでの間欠点灯は、個人的には指での操作がしやすく気に入っている。ライバル機種のTLR-1HLには無い機能だ。


 

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付属品と多種多様なマウント

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まずはパッケージから。銃の写真の部分が盛り上がっており、箱も少し高級感が出ている。


 

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付属品は、電池等のオプション品のカタログ、注意書き、説明書、メーカーロゴのシール、多種多様なマウント類、蓋開閉防止のピン、マウントの付け替えに必要な六角レンチ、ネジ類の緩み防止のロックタイト社のネジロック剤(242:中強度のネジ止め。取り外しは可。)、SF123A電池(SUREFIRE社のCR123A電池。)が2本となっている。


 

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説明書は、比較的わかりやすい英語でイラストもあるのでとっつきやすいだろう。


 

さて、銃器界でお馴染みの20mmマウントだが、一口に「20mmレール」と言っても様々な規格があり、それぞれ若干ピッチ等の形状が違っている。故に銃器やオプションによってガタつきや最悪取り付けられないという悲劇になるのはそういうことだ。(その他もちろんメーカーの工作レベルもある。)

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X300のマウントはその装着方法が2種類あり、初期装備で付いているレバーを下げて脱着するタイプと、バーを引き抜いて脱着するタイプがあり、それぞれにピカティニー規格とユニバーサル規格の20mmレール用のパーツが付属する。自分の銃器との整合性を見てパーツを交換すればいいだろう。

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私の場合は、ハンドガンだけでなくその他ライフル等のロングガンにも使いまわしてしたので、万能性があるバータイプのマウントを使用していた。ただ、こちらのマウントは片手では取り外しが難しいという難点があったが、レバータイプは銃器によっては装着感が悪かったので却下となった。バータイプのマウントは、内部起き上がり式の板とそれを制御するネジがあり、銃器に合わせて装着感を微調整できる利点がある。


 

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ちなみに、2016年の新型X300U-Bは、TLR-1 HLと同様のスクリュー式のマウントに変更されている。こちらのほうが断然使いやすいだろう。


 

X300とTLR-1のその他外観や銃器に取り付けての比較

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全長はTLR-1 HLが86mmと若干短めだ。ボディ部分の太さは両者あまり変わらないが、TLR-1 HLのベゼル部分は1.18インチ(3cm)と、少し太めだ。


 

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両者ともレンズタイプのリフレクターを使用しているが、作りの良さはとてもX300には敵わない。後述する照射比較を見てもらえばわかるが、特にTLR-1 HL旧タイプの照射は酷く、比べ物にならない。流石はSUREFIRE社だ。値段が高いだけの価値はある程度あると、このTIRレンズを見るとわかる。ちなみに、この手のレンズタイプのライトは、鏡面のリフレクタータイプのライトと比べて、逆に相手にライト等で照らされた場合でも、反射が少し抑えられるという利点もある。微光暗視装置・ナイトビジョンを使用された際もその違いは出る。


 

東京マルイのSIG P226Rに取り付けてみた。ロープロファイルのX300かショートなTLR-1 HLか。

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さて、先ほどからちょくちょくとロープロファイル、ロープロファイルと言っているが、それは銃器の上部レールに取り付けた場合に影響を及ぼしてくる。両者とも、拳銃用とは言えライフル等のロングガンに取り付けても十分すぎるほどの能力がある。その場合、昨今流行りの銃器の撃ち方であるオーバーハンドグリップ(日本ではそのメーカーやインストラクターが印象的だったことから、マグプル持ち、コスタ構え等の名前の例の構え。)の時に、操作しやすいようにと、ライトを上部レールに取り付ける人を多く見る。この時に全高が高いライトは、照準器の視界内に干渉するのだ。

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とりあえず外観から見ても、TLR-1 HLは高めなのがわかる。(画像スコープはLeupold社のVX・R Patrol 1.25-4×20、マウントはBurris社のAR-P.E.P.R.


 

スコープの低倍率時(1.25倍)の視界がこちら。両者とも視界には干渉しているが、やはり後者のTLR-1 HLの方が邪魔だ。両者とも高倍率(4倍)にした際には視界内から消えた。

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こちらはダットサイト有名所のAimpoint社のT-1にLaRue社のLT660ハイマウントの組み合わせ。
X300もしくは、TLR-1 HLをこういう方面への使用を考えている人はぜひ参考にしてほしい。

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照射比較

では肝心要の照射比較といこう。公園にて、80メートル先の低木にACU迷彩の上着を引っ掛けた。一番奥の森までは約150メートルだ。比較機種は、公式ルーメン数値の高い順に
○Wolf-Eyes社 Sniper-2 U2 1C(920ルーメン)
○FIRST LIGHT社 T-MAX(700ルーメン)
○STREAMLIGHT社 TLR-1 HL(630ルーメン:旧型)
○SUREFIRE社 X300 Ultra (500ルーメン:旧型。本製品)
と言った感じだ。

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↑画像クリックで拡大可(下段は中央部分の拡大画像)
まず、照射範囲の段階でX300が圧倒的に広範囲を照らしている。次点でFIRST LIGHT社のT-MAXだろう。ライバル機種のTLR-1 HLは、どうにも照射が汚い。特に周辺光は変な影や歪みが生じており、戦闘時にはストレスや誤認等が起きかねない。とは言え、2015年のマイナーアップグレード版でかなり改善はされている。この時は無かったが、もし機会があれば、X300とTLR-1 HLも両者新型で比較してみたいものだ。
X300の照射は、近距離ではそこまで眩しくないように、だが範囲はしっかりと広く確保し、中距離~遠距離まではバランスが取れ、美しい照射パターンを描いている。公式ルーメン数値こそは他の機種の中で一番低いものの、結果は全距離で大変優秀な性能を見せているのがわかる。
また、ライトの色温度も白とオレンジの絶妙なバランスを追求しており、暗順応等に余計な影響を与えないようにしている。純白の光は、照らされる側は眩しいが、照らす側も眩しくて敵わないという欠点がある。X300の色温度だと、霧や雨天等でも余計な反射は少し抑えられる。
SUREFIRE社のTIRがいかによく作られているかおわかりいただけただろうか?

X300とTLR-1 HL、操作しやすいスイッチシステムかストロボか、コンパクトさと綿密に設計されたTIRレンズか安めの価格かで悩みどころとなるだろう。特に価格差だけ見ると、X300とTLR-1 HLとの間には2倍近い差が出ている。しかも、TLR-1 HLは2015年のアップグレード版で、お値段据え置きで、一番の泣き所であった照射がかなり改善されている。ここをどう見るかだ。
両者とも、信頼性の面では、12番ゲージ散弾銃や、.308WINのライフルに取り付けての射撃をしたが、点灯不良は私が体験した限りでは無い。結局わたしは、ストロボの有無と、着脱の手軽さからX300は手放した。
さて、あなたはどちらを選ぶだろうか?

※1

2018年7月、Surefire社からX300のアップグレードが発表された。当初、Tスロットが装備された後期型であるX300U-Bがアップグレードされるかと思ったが、このX300U-AとX300U-Bの両方が1000ルーメンへとアップグレードされる形となった。

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