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ジャンル:ウェポンライト、懐中電灯、フラッシュライト

暗所における近接戦闘にて、有利な戦術を築くことが可能となるSUREFIRE社のウェポンライト、XH35。ただ、MAXVISIONBEAMリフレクターが故に距離が少し離れると弱くなる。そこで、進化したTIRを搭載したXH30はどうだろうか?

ほぼ同一規格だが、リフレクターがTIRでなく近接広範囲に特化したMaxVisionを搭載したモデルであるSurefire XH35のレビューはこちら

執筆時期:2018年8月

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) SUREFIRE (アメリカ合衆国)
全長 9.4cm
重量 約136グラム
ベゼル径 3.17cm(1.25インチ)
光量(点灯時間) Hiモード:1000ルーメン(1.25時間)、Loモード:300ルーメン(2.5時間)
使用電池 CR123Aリチウム電池×2個
価格(国内価格) 299ドル(46200円)

TIRバージョンのXH35


かつてSUREFIREには、X200AとX200Bという両極端なウェポンライトがあった。このSUREFIRE初のLED搭載型ウェポンライトは、前者の方はまるでビー玉のようなレンズが埋め込まれ、周辺光なぞ無視したスポットライトであった。反対に、後者のX200Bはオレンジピールリフレクター搭載のボワワっとした拡散配光である。この当時は仕方なかった。懐中電灯はキセノンからLEDが主流になりつつある時代だったが、まだまだLEDは遠距離照射が苦手であった。5WLEDを搭載し、ルーメン数値こそキセノンライトに届きつつあったが、50m前後距離が離れると勝ち目がなかった。それ故にタクティカルライトやウェポンライトはもっぱら従来のキセノンライトがその座を死守していた。この状況が変わったのは、LED素子メーカーのCree社がXR-Eシリーズを発売してからだ。ここからと言うもの、LEDライトは省エネ・高効率・球切れしないというだけでなく、遠方まで届く性能を手に入れ、キセノンライトから完全に取って代わられたのだ。この飛ぶようになったLEDと、今やおなじみのSUREFIRE社のTIR(Total Internal Reflection)の組み合わせは素晴らしいものだった。それが、後継機のX300シリーズへと繋がる。


X300シリーズは、Surefire社の拳銃向けウェポンライトの地位を確固たるものへと押し上げた。TIRの導入により、より遠くまで照らすと同時に、暗順応を阻害しにくく計算された広範囲の周辺光を併せ持つ配光である。とは言え、このTIRは都市部の警察系組織やホームディフェンスユーザーからは、室内等の閉所・限定空間に置いて全体を瞬時に見渡しにくく、中心部が眩しすぎるとの声も多く発せられていた。そうしたユーザーの声を元に作られたのがMaxVisionリフレクターだ。こちらは打って変わって拡散系の配光パターンとなった。ただ、どちらにしろ帯に短し襷に長しである。MaxVisionはそれはそれで遠くまで光が飛ばないという苦情もある。そのためか、Surefireのラインナップを見ると、TIR、MAXVISION、そして従来のリフレクターがどっちつかずのような状態で並んでいる。そして、まるでX200シリーズのように広範囲のマックスビジョンであるXH35に並んで、TIRを搭載したXH30が登場した。


こちらがそのXH30だ。パット見の外観はXH35と何も変わらない。

この製品も、拳銃の機種に関係なく、ライトを保持するタイプのホルスターシステムである「MasterFire」に対応した製品だ。


ストロボと光量切り替えスイッチもまったく同じ。カチッ、プチッと小気味よい音がする。この音、奇襲をかける場合も考えて、もう少し小さくしてほしい。

ストロボの点滅間隔も、同じく15~20Hz程度。


点灯スイッチもX300シリーズからまったく同じもの。ただ、今回こいつには個体差なのかどうかわからないがちょっとした不具合が散見された。

Loモードで点灯した際、パッ!と点くのではなく、一瞬ストロボになったかのようにパパッ!といった具合に点灯する。何度もスイッチをプコプコ押していると、徐々に無くなってくるのだが、しばらく放置しておくとまた同じ現象を繰り返す。

試しにスイッチ部を点検したり、接点復活剤を塗布、電池の交換等も行ったが直らない。Highモードでは起こらないとはいえ、タクティカルライトにおいて意図しない点滅はあまりよろしくない。


ほぼ唯一の違いは、やはりリフレクター(反射鏡)がMaxVisionからTIRへと変わったことだろう。一見すると、TIRの造形はX300の頃から変わってないように見える。


同じくTIRを搭載したライバル機種であるSTREAMLIGHT社のTLR-1HL(写真下段)と比べると、全長も高さもXH30の方が大きめ。


マウントシステムもXH35と同じ。どちらかと言えば、マウントネジにバネが挿入されているTLR-1HLの方が脱着はしやすくて好みだ。

このように、ほとんどがXH35と同じなので、点灯・照射比較以外の詳しい情報はXH35のレビューを見ていただければ良いかと。


パッケージと説明書。説明書に関しては、XH35とXH30共用になっている。おそらく、後期ロットのXH35の説明書も同じだろう。

より利便性を高め、進化したTIR

さて、今回の照射比較だが、申し訳ないがMaxVision搭載のXH35は持ち主に返却してしまったので参加できなかった。代わりに、以下の機種に参加してもらうことにした。


First Light USA T-MAX:700ルーメン。遠距離照射に強い少し大きめのスムースリフレクター搭載のL型タクティカルライト。

Wolfeyes Sniper-2 :1210ルーメン。XM-L2 U2 1Cを搭載したスムースリフレクター搭載のライト。1000ルーメン超えのライトがまだ珍しかった5年以上前の機種である。ちなみに、公称値は1210ルーメンだが、実測値は概ね900ルーメン。

STREAMLIGHT TLR-1HL:800ルーメン。私の愛用ウェポンライト。XH30と同じくTIRを搭載したライバル機種。今回のXH30とのトライアルによってはお役御免となるか?

 

今回比較対象として選定したライト全てに共通しているのは、どれも遠距離照射向けのライトということだ。さて、これらに対してXH30はどう光るだろうか?


※画像クリックで拡大可


中心部拡大画像

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照射目標:照射パターン中心部を100m先に設置した自転車に向け、中心光上半分は150m先の森、下半分は地面を照らすように照射。

まず周辺光から見てみよう。一見すると、ストリームライト社のTLR-1HLが最も広い範囲を照らしているかのように見えるが違う。SUREFIRE XH30の下部を見てもらいたい(三脚の足元あたり)。1000ルーメンの大光量に物を言わせて、下の地面が反射しているように見えるが、これはXH30の周辺光の一番外縁部である。

XH30に搭載されているTIRが映し出す配光パターンは大雑把に言うと、「遠距離重視の中心部」・「その中心光を囲むしっかりと明るく照らした周辺部」・「暗順応を阻害しない程度に暗く設定した広大な範囲の外縁部」の3つにわかれる。

この外縁部を含めると、XH30の照射範囲の角度は170°近い広さを照らし出している。この照射範囲は、拡散系の配光であるXH35よりもはるかに広い。まさしくこれが、遠距離重視と思われがちなTIRを私が好む理由だ。

中心光に関してXH30の場合は、同じTIRを搭載したX300と比べると大きくなった。もちろん、その分遠距離照射性能は落ちているが、ウェポンライトの使用距離を考えるとこちらのほうが、より多くの人にとっての利便性は高まっているだろう。

今回の照射比較では、遠距離照射性能ではT-MAX > TLR-1HL > Sniper-2 > XH30となった。照射範囲の広さだけを比較すれば、XH30 > TLR-1HL > T-MAX > Sniper-2だろう。

光の色温度に関しては、高い順にSniper-2 > T-MAX > XH30 > TLR-1HL。私の好みとしては、少しクール寄りのニュートラルホワイトであるT-MAXが好みだ。

色温度が高いほうが眩惑効果は高いが、夜間だけでなく、雨天や雪等での視認性は乱反射が強く見えにくくなる。


※画像クリックで拡大可

周辺光に関して、共に広めのXH30とTLR-1HLでより深く見てみよう。15m先のベンチめがけて照射してみた。この角度で見ると、それぞれの周辺光や配光の層がどうなっているのかわかりやすい。

ご覧のようにXH30の配光は、中心光の周囲に明るい周辺部と暗い外縁部の3つに別れている。

一方、TLR-1HLはガッツリと照らした中心光に、広くて適度に明るい周辺光の2層になっている。

どちらが良いかは、最終的には使用する環境や人によるので何とも言えない。ただ、私の使い方で考えると、TLR-1HLの配光が好きではある。TLR-1HLの適度な明るさでガバッと広く確保された周辺光は、XH35のようなMaxVisionリフレクターのような安心感が閉所でのクリアリング等で感じられる。

もちろん、民間家屋のような狭くて入り組んだだけの空間なら、XH35のようなMaxVisionリフレクターを搭載したライトの方が使い勝手や視認性、視野の広さに置いてより優れる。特に、明るい周辺光で視野が広く確保されるだけでなく、中心光の反射で目がつぶれにくくなるのが良い。

だがホールやアリーナ等の大型の施設や、庭や森、広い駐車場等が併設されている、狭く入り組んだエリアもあれば、広く長く開けたエリアもある場合だと、TLR-1HLのように柔軟性のある配光パターンが使いやすい。MaxVisionリフレクターだと、50m以上の距離が離れた場合は脅威やその他認識すべき対象に対しての視認性が悪くなる。

XH30も、そのような環境下では使いやすいのだが、視野ギリギリの外縁部から襲撃された場合は、視認性が悪くなり、反応が遅れた。暗順応を阻害しない暗さの広角の外縁部に関しては、脅威と言うよりも、今自分が立っている場所の最低限の構造や形状を把握させるためにあるのではないかと推測する。

この状況に関してよりよくわかるのは、拳銃のアンダーマウントにライトを付け、水平に構えて歩くとXH30の場合は自分のすぐ直下には暗い外縁部が照らして足元確認に使えるが、明るい2層目の周辺部は銃口1mほど前方に開く感じだ。この配光により、特に暗い外縁部の光が届かなくなる5m程度の距離で、視野ギリギリの側面から襲撃された場合の反応が遅れるのだ。この点、TLR-1HLの場合は適度に明るく広い周辺光で足元も、側面から襲ってくる襲撃者への認識がしやすい。

中心光の形状に関しては、遠距離照射性能は少し犠牲になるが、従来より大きくなり、近距離における使用者への照り返しが少なくなったXH30の方が、利便性が良く感じた。

あくまでこれらの事に関しては、各個人の使用用途や環境によって好みがわかれるというのは言うまでもない。



一方、こちらはLoモードの300ルーメン。近~中距離では十分に明るく使える。Hiモードの場合は、わずか数秒で本体が熱くなるほど加熱しやすい。照らしっぱなしが多い場合はこちらのLoモードと併用して使うのが良いだろう。

SUREFIRE社製ウェポンライトに関して


XH30は、XH35の単なるTIRバージョンというわけでも、X300シリーズの明るさをアップさせ、ストロボを追加しただけというわけではない。より利便性を増し、様々な環境下で使えるTIRに昇華させている。

ところで、SUREFIRE社のウェポンライトは、現在(2018年8月)、数多くのラインナップが展開されており、ほとんど似たような形状のものも多いので違いがわかりにくい。そこで、備忘録がてらに今あるラインナップを列挙し、簡単な性能や違いも表記しておく。

あくまで、私の研究や備忘録も兼ねてなので、けしてSurefire社の回し者でもお小遣いをもらったわけではないぞ!

XC1-B:300ルーメン。単4電池使用の大変コンパクトなハンドガン向けライト。MaxVisionリフレクターなので近距離向け。

XC2:XC1にレーザーサイトを付与したモデル。

X300U-A:1000ルーメン。私が以前にレビューしたX300U-Aを1000ルーメンにアップグレードしたもの。(紛らわしい!)1000ルーメンのシングルアウトプットのみなので、XH35やXH30のようなストロボや光量変更がいらない場合はこちらがいいだろう。TIR搭載。

○X300U-B:ネジ式のマウント(T-Slot Mount)を採用したモデル。

○X300UH-B:600ルーメン。Masterfireホルスターに対応させたモデル。

X300V:350ルーメン。暗視装置の視認性を上げるためのIRライトモードを搭載したモデル。IR(赤外線)ライトは860nm、120mWのビームを発する。

X400 Ultra:600ルーメン。X300シリーズにレーザーサイトを搭載したモデル。レーザーは緑と赤の2種類のラインナップが展開されている。

○X400UH:600ルーメン。X400のMasterfireホルスター対応モデル。

X400V IRc:350ルーメン。X400Ultraに、暗視装置向けIRライトとIRレーザーを搭載したモデル。こちらも赤とも緑のレーザーの2種類がある。

○X400VH-B-IRc:350ルーメン。X400V IRcのMasterfireホルスター対応モデル。

XH15:350ルーメン。Masterfireホルスター対応の最小ウェポンライト。G2シリーズのように全体がポリマー樹脂で作られ、軽量で耐久性に優れているのもポイント。

○XH30:1000ルーメン。本製品。TIRを搭載したMasterfireホルスター対応製品。ストロボ機能搭載で距離を選ばず使用可能。Loモードあり。

○XH35:1000ルーメン。Masterfireホルスター対応。ストロボ機能搭載で、MaxVisionリフレクターなので、近距離での使用に向いている。Loモードあり。

スカウトライトシリーズ:主にアサルトライフル向けのウェポンライト。かなり種類が多く、だんだん面倒になってきたので大まかに説明する。

○M6xxシリーズ:CR123Aを2個使用するモデル。18650充電池に対応し、1500ルーメンの大光量のM600DFや、環境に合わせて光量を自動で調整してくれるM600IB、どこにでもあるアルカリ乾電池に対応したM600AA等のモデルがある。後は、コードスイッチの有無やIRライト機能が付与されているモデルも。

○M3xxシリーズ:CR123A1個のミニサイズのスカウトライト。M300C(500ルーメン)を基本とし、こちらもコードスイッチやIRライト機能が付与されたモデルも。

M952V:LEDライトとIRライトの両方を搭載したスカウトライトを、よりタフに、軍用用途向けに作られたモデル。

328LMF-A:300ルーメン。H&K社のMP5やHK53、HK94等のサブマシンガンやライフルのフォアグリップと一体化したウェポンライト。

○628LMF-A:600ルーメン。328LMF-Aをリチウム電池2個仕様にして光量を上げたタイプ。

DSF-870:600ルーメン。レミントン 870ショットガンのフォアエンドと一体化したモデルのウェポンライト。200ルーメンのLoモードあり。

○DSF-500/590:DSF-870のモスバーグ 500や590シリーズ向けモデル。

HellFighter 4:3000ルーメンもの明るさを誇るHIDランプを搭載し、重機関銃への搭載を前提とした大型ウェポンライト。

 

こうして列挙してみると結構な数だ。もう少しラインナップを絞っても良いのではないかとも思うのだが。