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ジャンル:懐中電灯、タクティカルライト

オーライト社の日常使いとしての利便性も高めたタクティカルライト。数字以上の性能を誇るタフさと明るさで、私の次期EDCライト(2019年)として採用された。

執筆時期:2019年1月

※追記1:2019年2月、同社M2Tのテールキャップ装着レビューを掲載。

※追記2:2020年5月、唐突な故障、そしてTIRとより強力なストライクベゼルを搭載したグレードアップ版のM2R Proのレビューに関してを掲載。

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) OLIGHT(中華人民共和国)
サイズ(全長×ヘッド径×ボディ径) 13×2.54×2.44cm
重量(電池除く) 約149グラム
使用LED Cree社 XHP 35 HD
光量(点灯時間) Turbo:1500ルーメン(1.5時間)
High:700ルーメン(2時間)
Mid 1:250ルーメン(6.15時間)
Mid 2:60ルーメン(20時間)
Low:15ルーメン(70時間)
Moon Light:1ルーメン(25日)
使用電池 CR123Aリチウム電池2個 or 18650リチウムイオン電池
最大照射距離 208メートル
防水性能 IPX-8
耐衝撃性能 1.5m
価格(購入価格) 99.95ドル(9800円)

様々な機能を詰め込んだ万能タクティカルライト

小学校時代、都市部から夜にイノシシが暴走するような田舎へと引っ越した私は、懐中電灯を携帯電話同様に持ち歩くことの必要性を実感した。それ以来、私は時代や居住地、仕事の移り変わりと共に様々な懐中電灯をEDC(Every Day Carry:日常携行品)アイテムに組み入れ、持ち歩いてきた。今まで共に夜道を歩いてきたライトのメーカーも様々だ。パナソニックから始まり、ジェントス、レイズビジョン、SUREFIRE、WOLFEYES、HDS等々、たくさんのライトがあったものだ。


近年(2015年~)は、FIRST LIGHT USA社のT-MAXを愛用していた。現代版L型ライトとも言える素晴らしい製品で、幾多の厳しい訓練や危険な国々でのハードな扱いにも耐えてくれた。だが、コンパクトではあるが、その形状から気軽に普段持ち歩くのは邪魔だったりする。専用のホルスターでカバンや装備品に装着することはできるが、ポケットに入れるには少し不便だ。また、銃器との併用にはいろいろと役立つライトではあったが、ライトを鈍器として使うことまで視野に入れた格闘戦等には不利でもあった。応用格闘訓練の際に、わざわざ別のライトを持ち出すのも面倒になったので、最近のトレンドを調査する意味合いでも新調することにした。選定基準は以下の通り

○全長はEDCとタクティカルライトとしての使用を考えて9.5~13cmの範囲。

○Hiモードとストロボモードが即座に発動できること。

○格闘戦に耐えれるだけの耐久性や信頼性。

○コンバットリング等のハンズフリー装備が装着可能。

○日常使いとしても使いやすい光量や長いランタイムであること。

○充電池も使い捨て電池も使用可能。

この基準に合致するライトを探すため、数十種類ものライトやメーカーをネットや仕事や出張の合間に国内外を探し求めた。結果、OLIGHT社のM2Rに決定した。

OLIGHTオーライト)は2006年に広東省で生まれたライトメーカーで、使い勝手がよく、気配りのきいた製品を多く作り出している。近年では中国製ライトメーカーとしては珍しく、ウェポンライトの開発にも力を入れており、その形状や機能性から見てもSUREFIREやSTREAMLIGHTの牙城を切り崩そうとするなど、有象無象のライトメーカーとは少し心意気が違う。


その心意気はパッケージを見ても伺えるだろう。

中国製ハンディーライトしては少々高価な100ドル近い値段とは言え、良い作りだ。


こちらがOLIGHT M2R

放熱用のスリットや、ローレットのタイプを見てもわかるように、多数のラインが目立つデザインだ。ライトそのものの形状は、サイドスイッチ周りを除いて寸胴体型だ。

クリップはSUREFIRE E1Bを皮切りにところどころで採用されだした、上下両方から付けれるタイプのクリップ。M2Rのクリップは、取り外しが可能で写真のようにヘッド側だけでなく、テール側の窪みにも付けることが可能。

全長約7.8cmの大きめのクリップだが、保持力はそこまで強くない。特に折り返した上部はより緩めなので、過信して衣服や装備に付けていると紛失する恐れがあるので注意。

OLIGHTのMシリーズは、タクティカルライトとしての用途を強く出したシリーズではあるが、近年では様々なシリーズに青色のアクセント等を入れた共通性のあるデザインスタイルになっている。このM2Rも、ベゼルやサイドスイッチ周りにメタリックブルーのアクセントが入っている。他社との差別化にはなるが、個人的には高品質な製品に対して少し安っぽい印象を抱いてしまう。が、これは好みの問題か。

より日常使いを想定した同社S1やS2にはポップな感じがして良い印象だ。


全長13センチというサイズはSUREFIRE社の6PやG2系と同クラス。普段の携行(EDC)を視野にいれると、このサイズが上限であると私は考える。デザインにもよるが、これ以上の大きさはカバン等の入れないと無理だ。

とは言え、ある程度のサイズがあるのでハンドリングや格闘戦能力は高い。10センチ以下のライトだとこうはいかない。

様々なレビュー記事でも言われているが、このライトは見た目がやけに太く見える。ボディの太さそのものは2.44cmであり、むしろよくある1インチ径(2.54cm)のボディのライトよりも細いはずなのだが…デザインによってこうも印象が違うものなのか。

逆手持ちで握った感じだと、大きな凹凸の少ない寸胴体型に長いクリップが付いていることもあってあまり良いグリップ感とは言えない。少しポリッシュ寄りのボディコーティングや、ラインスタイルのローレットは少し滑りやすいのも難点だ。そのままだと注射器持ちもやりにくい。

この点に関しては、後述するカスタムパーツの装着で劇的に改善されるので心配いらない。


テールスイッチ

私がこのライトを選んだ理由の多くはこのテールスイッチのシステムによるものが大きい。よくあるラバー製のスイッチではなく、アルミニウム製の電子スイッチとなっている。しかも電子スイッチではあるが、まるでメカニカルスイッチのように半押しと全押しができるようになっている

もう一つ面白い点は、このテールスイッチは、Standardモード(標準)Enhancedモード(強化)と二つの挙動が可能となっている。

この切替は、テールスイッチを全押ししながら、サイドスイッチをポチッと1回クリックする。

Standardモードでは、テールスイッチ半押しで最大光量の1500ルーメンの間欠点灯、全押しで常時点灯というよくあるシステムに。

Enhancedモードでは、テールスイッチ半押しで最大光量の1500ルーメンの間欠点灯、全押しでストロボモード(間欠点灯)という非常にタクティカル色の強いシステムに切り替わる。

これが実に素晴らしいシステムだ。ルームクリアリングの際に半押しで室内をクリアリングや偵察を行い、脅威と対峙した場合はストロボモードと威嚇や眩惑効果を出せる。このモードだと、テールスイッチをどう押しても常時点灯にならないので、誤点灯点けっぱなし防止にもなる。

公式でサイレントスイッチなどと名付けられているだけあって、この電子スイッチは、非常に静かだ。全押し時に本当にわずかに「ぷこっ」という音がする程度で、非常に隠密性にも優れる。スイッチの静寂性はタクティカルライトにおいて重要なポイントだ。

さすがに普及品のメカニカルスイッチのように、全押しや半押しのテンションの違いが明確にわかるものではないが、それでも慣れると操作ミスをすることはほとんど無い。T-MAX同様、状況に応じてワンアクションでハイビームとストロボを即座に点灯できるこのシステムは素晴らしいものだ。

ストロボはあくまで目測だが、10Hz程度の点滅間隔だ。SUREFIRE XH35とほぼ同じ。遠距離照射型ではないので、目に刺さるような感じではないが、1500ルーメンの強烈さは実用十分だ。

このテールスイッチに関しては、スイッチと周辺部に押している時に若干の隙間ができる。この隙間に塵等が詰まって動作不良や押し心地が悪くなると、ほんの一部だが報告されている。


この特殊な作動方法に関しては、テールキャップ部にイラストで描かれている。すぐにハゲそうだが、このデザインは好きだ。

テールキャップは、後述する充電器の接点にもなっているので、磁石が付いている。ライトを真横にしてくっつくほどの磁力はなく、鉄製の天板等にライトを真下にする程度ならくっついてくれる。

テールキャップは少し緩めるとロックアウトする。

このM2Rの姉妹品に、M2Tというよりタクティカル色を強めた姉妹品がある。ヘッドのデザインや長さが若干変わり、テールスイッチがM2Rと違ってラバーコーティングされた出っ張ったタイプになっている。当初はこちらを購入しようと考えたが、M2Tのテールスイッチのシステムは半押しで間欠点灯、全押しクリックで常時点灯であり、ストロボは全押しを1秒程度長押しした状態で発動する。この1秒という時間がネックだ。緊迫した修羅場において、1秒という時間は長い。その間、常時点灯モードが点きっぱなしになるので、私は採用を見送った。


こちらはサイドスイッチ。M2Rは、タクティカル系の操作系はテールスイッチに、日常的な操作系に関してはサイドスイッチへと棲み分けをしている。サイドスイッチ系のライトは今流行りの操作系ではあるが、操作方法を余計ややこしくするばかりの製品も多い。このM2Rに関しては実にわかりやすくて好きだ。

乳首のようなポッチがあるサイドスイッチだが、乳首部は手探りでわかりやすくする他、ロックモード等のインジケーターランプにもなっている。

押し心地はカチッとした電子スイッチ。暗闇での手探はスイッチ全体が小さめなので少しわかりにくい。


サイドスイッチを一回押すと、ONになる。一度消しても、最後に使用したモードは記憶されている。

点灯中にサイドスイッチを長押しすると、押している間にモードがコロコロと切り替わる。好きなモードで手を離せばいい。

消灯中にサイドスイッチを1秒程度長押しすると、1ルーメンのMoon Lightモードになる。暗闇でバッグの中身を確認したり、隠密性を考えた作業をする際によい。ランタイムも25日間も点けっぱなしができるので、あれば安心だ。このような非常に暗いモードを備えている懐中電灯は実に用途の幅が広がる。

この消灯中サイドスイッチ長押しを、2秒以上行うとロックモードになる。こうすれば、どのスイッチを押しても点灯しない。解除はもう一度2秒以上サイドスイッチを押す。

ロックモード時にスイッチを押すと、サイドスイッチの乳首が赤く光って教えてくれる。

また、素早くHighモード(700ルーメン:2時間)にアクセスするには、消灯中にサイドスイッチをダブルクリック、その状態でさらにダブルクリックすればTurboモード(1500ルーメン:1.5時間)が点灯する。また、消灯中にトリプルクリックをすると常時点灯のストロボになる。

Turboモードは、3分後に自動的にHighモードにダウンする。

サイドスイッチでの点灯中に、テールスイッチを押すと割り込んで間欠点灯のTurboモードやストロボが可能。その後は消灯する。こうして書くとゴチャゴチャしてるようだが、実際に触れるとタクティカルライトとしての能力を損なわずに、日常使いとしても扱いやすいインターフェイスだとわかる


ベゼルは、タクティカルライトとしては大変控えめなストライクベゼルとなっている。シュアファイヤーのコンパクトシリーズよりも控えめで、丸く平らなベゼルに溝というか切れ込みを小さく入れた程度だ。たかがこれだけの切れ込みだが、鈍器としての攻撃力は何も切れ込みを入れてないものと比べると雲泥の差があり、殴られると実に痛い。人目を考慮して、威圧感を抑えながらも、格闘戦能力の低下を抑えた良いベゼルだ。

この青いベゼル部を手の平で押さえながら回すと分解でき、リフレクターやレンズを取り出すことが可能だ。

リフレクターは少し浅めのオレンジピールリフレクター(オレンジの皮のようにザラザラとした反射板)だ。照らして見ると、予想通りムラの無い拡散寄りの配光パターンとなった。詳しくは後述の照射テストで。

リフレクター内に見えるLEDはCree社のXHP 35 HDだ。3.5mm×3.5mmのサイズながらも、XP-Lよりも3割ほど出力を上げたLED。

ちなみに写真は1ルーメンで25日間のランタイムを誇るMoon Lightモードで点灯している。


さて、ここでちょっと付属品を見てみよう。

まずは説明書。モノクロで折り畳まれた大きな紙切れ一枚だが、多言語使用で日本語表記もある。カラー印刷の方はカタログ。

スペックや注意書きは英語のみ。操作方法に関しては英語や中国語に加え、仏、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、ポーランド、ドイツ、ハンガリー、ロシア、日本、スペイン、ルーマニア、韓国、フィンランド、イタリア、スロベニア、ブルガリアまで網羅している。

OLIGHT社は、日本においても公式ホームページだけでなく、サポート体制や販売経路にも力を入れており、不具合や疑問点があった時も安心感が持てる。


ストラップ。長さ調節可能なタイプ。近年のオーライト製品を持っている人にはお馴染みだが、ストラップ先端になんだか針のような金属が付いている。これは、小さなストラップホールに簡単に装着できるようにするガイド棒だ。こういう小さな心遣いは嬉しい。



付属のポーチもちょっと気合が入っている。プラバックル式で、バックルがカタカタブラブラしないように収納ベルト付き。水抜き穴もある。

裏側は脱落防止やカラビナ等に使えるDリング付き。ベルトループは二重構造で奥が縫い付けてあり、手前がボタン付き。個人的には長さ調節が柔軟なベルクロとボタンの組み合わせが好きだが。


M2Rには18650充電池も付いてくる。自社製の3500mAhの容量の「186S35」だ。単体だと24.95ドルで販売されている。

HDC(High Discharge Current)仕様、つまり通常よりも多くの電流を放出することができるタイプ。最大光量である1500ルーメンや、後述する充電器を使用することを考えると、そこらへんの18650リチウムイオン電池を適当に使うよりもこちらを使うことを推奨とされる。M2Rもそうだが、近年の18650電池1本のような単セルで大光量を発するライトはこのような高出力なバッテリーでないと駆動できないものも多くなっている。

事実、私の持っている18650電池は4割ほどが点灯できなかった。

もちろんだが、使い捨てのCR123A電池2個でも点灯可能だ。ボディは18650電池で点灯させることを前提としているので、CR123Aの場合は少し太く、シェイクするとちょこっとだけ中でガタつく(点灯は問題ない)。安定させたければ、18650のサイズに変換するスペーサーがあったほうがいいだろう。


付属している充電器はマグネット式だ。Type-A側をUSB端子の付いたPCやモバイルバッテリーに、マグネット部をM2Rのテールスイッチにくっ付けるだけで給電ができる。

本来、私は充電機能付きのライトはタクティカルライトとして好まない。余計な機能を詰め込むことで信頼性が下がるし、なにより充電端子があるおかげで防水性能が低下することが多い。だが、Olightのこのシステムは、余計な端子カバーや開閉機構などなく、ただ単にマグネットでテールスイッチに取り付ければ良いだけだ。

信頼性の低下には繋がりにくいし、モバイルバッテリーさえあれば、出先で専用充電器やコンセントを探すことなく18650充電池でも運用することが可能だ。

マグネット端子とコード間にはLEDが組み込まれており、充電インジケーターとなっている。写真のように充電中は赤色で、完了すると緑色になる。充電時間に関してはあまり早くなく、4~6時間程度はかかる。

コードも平麺タイプなのでかさばりにくくて良い。値段からは考えられない配慮が行き届いたライトだ


※画像クリックで拡大可


中央部拡大画像

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☆100m先に設置した自転車に向かって照射。奥の森林までは150m。

今回の照射テストでは、1000ルーメンの明るさとTIRによる集光能力を誇るウェポンライト「SUREFIRE XH30」との比較も行った。

M2Rの色温度に関してはクールホワイトの設定をしているとの表記があったが、ご覧の通りそこまで真っ白というわけではなく、SUREFIRE XH30のようなニュートラルホワイト寄りになっている。

タクティカルライトとして使用する以上は、クールホワイトの方が眩惑効果が高いが、少し色温度が高めの方が視認性は向上するので、私はこの味付けは気に入っている。

照射距離に関しては、奥の森(約150メートル)を見てもらえればわかるが、ルーメン数値は低いものの、TIRによる集光をしているXH30の方がよく届いている。OLIGHT M2Rに関しては、中心光はそこまで集光されていないので、1500ルーメンという大光量をもって押し切っている感じだ。公称値では208メートルの照射距離ではあるが、180メートル程度が実用距離だろう。

これに関しては、ルーメン数値が半分以下(700ルーメン)である前任者のT-MAXの方がより遠くまで光を飛ばせれる。

周辺光の配向パターンに関しては拡散寄りの配向ではあるが、遠くも広くも照らせるTIRを搭載したXH30よりは狭い範囲での照射となった。ただ、ご覧の通り周辺光と中心光の境界に関しては曖昧気味で、近距離から中距離(~80メートル程度)をまんべんなく明るく照らしている。夜間の散策等では扱いやすい配光パターンだろう。


FBIテクニックや、ネックインデックスでの使用を想定して、170センチの高さから15メートル先のベンチに向けて照射。

ここでも、近距離から中距離をガバッと明るく照らす配光パターンがわかる。これに関してはMaxVisionリフレクターを搭載したXH35のようなモデルと少し似ている部分がある。近場~中距離を一気に明るく照らせるので、瞬時の状況把握には良い。ただその分、暗順応を阻害されやすいことを忘れずに。

より外側の外縁光に関しては、広い角度で暗く照らしている様子が写真では見て取れるが、周辺光が明るいため、実際には意識しないとわからない。

個人的には、もう少し照射距離を伸ばした配光パターンが好きだが、ここは運用や好みの問題となってくるだろう。

現在のところ、私個人の運用方法からすれば、SUREFIRE社のTIRを超える配光パターンのリフレクターは存在しない。


テールキャップは1インチの太さなので、SUREFIRE社のコンバットリングThyrm社のSwitch Backを装着できる。

Switch Backを装着する際は、テール側のクリップをはめ込む溝にスイッチバックの爪を噛ませてキャップをしめるとよい。そのままだとグラつくので、スイッチバックの内面にテープ等を貼って内径を少し小さくして調整すればよい。


スイッチバックの装着により、少し滑りやすかったボディのフィット感が向上し、リングに指を通すことで脱落防止にもなる。

耐久性や信頼性においてもM2Rはスペック数値以上に高い。公式では耐衝撃性能は1.5mと並の懐中電灯よりも少し上だが、Youtubeでのレビューでは、15mの高さから落とす車で轢く等の拷問を与えても機能に問題が無いのが見て取れる(詳しくはYoutubeにて「Olight M2R test」で検索してほしい)。防水性能もIPX-8をクリアしているので少々の水没ではビクともしないだろう。

しかし、実際に自分の目で試してみなければ信用ならないのは世の常。私も採用試験の一貫として、点灯状態で巨木に対して20回の殴打格闘訓練での試験運用を行ったが、機能上にまったく問題はなく、一瞬の点灯不良すらなかった。スペック以上にタフだ。


スイッチバックを装着すると、格闘戦能力だけでなく、銃器との連携能力も大幅に向上する。リングを利用すれば、ライトを手に持ったままでマガジンの交換や故障排除にも即座に対応できる。

ライトをハンズフリーで両手が開くことは重要だ。これは戦闘状況下だけでなく、夜間の夜戦医療や作業にも重宝する。私は暗闇で傷病者の救護を行った経験があり、その時にリングが付いたライトの存在に大変助けられた。以降、ライトは極力リング付きか、オプションで装着できるものを選んでいる。

写真のように、Thyrm社が推奨しているスイッチバックテクニックの持ち方だと、M2Rの場合はテールスイッチが出っ張っていないこともあって点灯が非常にやりにくい。ホームセンター等でゴム栓等を入手し、スイッチに貼り付けて嵩上げすればよい。


また、この写真のようにクリップ側を上にして、中指をリング内に、人差し指をリング外にかけ、まるで拳銃を握るようにグリップすれば、スイッチの加工なしで拳銃やロングガンとの連携がやりやすくなる。

ただしこの場合、ライトを鈍器としても考慮した格闘戦能力は低下するので注意を。

Olight M2R feat. M2T Tailcap



※追記1

同社のM2TのテールキャップがM2Rに付けられると聞いて試してみた。付けてみると、少し引っかかりを感じるが取り付けることが可能。あまり繰り返すとネジ部を痛めるかもしれない。

逆にM2RのテールキャップをM2Tに取り付けることはできないとか。

M2Rのテールキャップは1500円ほどで、M2Tは1000円ほどで国内で入手可能。このようなオプションパーツ等の流通も充実させているライトメーカーは珍しい。

このスイッチも、メカニカルスイッチではなく電子スイッチ。スイッチ部は樹脂製で、指で押す天井部だけラバーコーティングが施されている。


M2Tのテールキャップの直径は2.56cmと、1インチ(2.54cm)のM2Rのテールキャップと比べると若干太い。そのため、M2RのテールキャップだとThyrm SwithBackを付けると少し緩かったが、M2Tだと良い具合に収まってくれる。キツすぎて取り外せなくなるということもない。

スイッチの挙動に関しては、M2Rはボディ側で制御しているので、スイッチを他機種に変更したところで挙動はそのままで使用可能だ。

スイッチのテンションは、半押しモードは1.5mmほど押すと点灯するが、これがかなり軽い力で押し込めれるので、スイッチバックテクニックのように指でテンションを調整しにくいスタイルだと、銃の反動等の衝撃や動きで不意に点灯してしまうことが多々ある。M2Rのテールスイッチだと、このスタイルだと押しにくかったが、今度はちょっとの力で点灯してしまう。これはこれで戦術性が損なわれるので、スイッチのテンションはM2Rのようにもう少し固めの方が良かった。

全押しの場合は、M2Rのテールスイッチ同様に、少し指に力を入れて押し込まないといけないので、ストロボ等の動作はスイッチバックテクニックだと発動させにくい。せっかくスイッチが出っ張って押しやすくなってるにも関わらず、スイッチのテンションの加減が微妙なので、使いこなすのは難しい。

言うまでもないが、M2Tのテールキャップにはマグネットチャージャーの端子がないので、付属の専用充電器による充電はできない。

Conclusion | 総評


ボディサイズに関しては、タクティカル性能とEDCの両立を図る上では上限サイズであり、及第点だ。ボディ形状やグリップに関してはThyrmのスイッチバックを装着することで改善されるので問題ない。

多数の点灯モードに関しては、少し多いとは思うものの、モード切替の方法がわかりやすく、頭の中でごっちゃになることが無いのでこれで良しとする。通常時では、70時間ものランタイムを誇るLowモード(15ルーメン)やMid 2モード(20時間:60ルーメン)で十分事足りるし、補給が乏しい状況や、暗闇で隠密に暗順応を阻害したくない場合はムーンライトモードの存在が大変ありがたい。

Mid 2の60ルーメンに関しては、実測値だと90ルーメン近く出ているとの報告がある。

配光パターンは、もう少し中心光の遠距離照射能力を上げて欲しいとは思うが、1500ルーメンの大光量である程度は押し切れるので、妥協点とする。

タクティカルライトとして考えると、ストロボとターボモードにワンタッチでアクセス可能な即応能力と、高い耐久性により優秀ではあると思う。ストロボの点滅間隔を3~5Hz程度上げ、遠距離照射を向上させてくれれば、尚良い。

同社のオプションパーツでリモートスイッチが用意されているので、ウェポンライトとしても良さそうだが、こちらは様々なレビューを見る限りは信頼性が抜群というわけではなさそうだ。

私個人としては、このライトのスイッチシステムが一番のポイントだ。日常使いとしても、タクティカル用途としても申し分ない。また、非常に控えめながらも攻撃力のあるベゼルも普段の威圧感を抑える意味でも良い。EDCライトとタクティカルライトの両立ができている優秀なライトだ。多々ある中国製ライトメーカーの中でも、OLIGHTらしさがここに現れている。ライト本体のみならず、配慮の行き届いた付属品を鑑みても、非常に総合的な完成度の高いフラッシュライトだ。とりあえず当分の間、闇夜を切り開いてくれる相棒はこいつで決まりだ。

※追記2

相棒はこいつで決まりだなどとキメ台詞で〆た半年後、夜の散歩に向かおうと点灯させようとしたら、どのスイッチを押しても点灯しなくなった。バッテリーが死んだのかとも思ったが、新品のCR123Aリチウム電池に交換しても、接点周りをメンテナンスしても一切の生命反応を見せない。タクティカルライトとして、ラフな扱いをしたとは言え、あっけなく唐突に終わりを迎えてしまった。そしてオーライト側が提案してきたアップグレードモデルがM2R Proだ ↓ ↓

【レビュー】 OLIGHT – M2R PRO Warrior