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ジャンル:ダットサイト・ドットサイト
ドットサイトでは遠くが見えにくい。かと言ってスコープだとアイリリーフの問題や近距離で見えにくいと言った問題がある。では両者の良いとこ取りの「2倍率ダットサイト」なんてのはどうだろうか?かつてノーベルアームズがハッコー商事と言われていた時代の一例を見てみよう。
執筆時期:2018年4月
※1:2022年3月、100mの距離での照準テストとパララックステストを追記
SPECS | 性能諸元
メーカー名(メーカー国・製造国) | ハッコー商事(日本・不明) |
全長 | 13.5cm |
重量 | 256グラム |
対物レンズ径 | 42mm |
倍率 | 2倍 |
レティクルパターン | 不明 |
イルミネーター | 赤色LED 1~11段階 |
使用電池 | CR2032リチウム電池 |
価格 | 1万円前後 |
スコープの性能を手に入れたダットサイト
私にとって、理想の照準器への道のりは長いものであった。もちろん当初はアイアンサイトから始まり、ダットサイトへと移ったが、「近眼」という特殊性能が付与された私のMark 1 Eyeballでは遠距離の目標を狙ったり観察するのが難しい。かと言ってACOGのような倍率固定のプリズムスコープは、近接戦に弱くなる。一時期、流行に乗ってダットサイト+マグニファイヤー・ブースターの組み合わせも試したが、器用貧乏と言うか帯に短し襷に長しと言った使いにくさだった。とりあえず、現時点では低倍率~中倍率のショートスコープという形に落ち着いている。至近距離でも慣れ&性能の良いものであればダットサイト並に即座に撃てるし、そんな暇もないような状況では、ダットサイトだろうがアイアンサイトだろうがインスティンクト・シューティング(感撃ち)になるのだ。
そんな試行錯誤をしている初期、ダットサイトとプリズムスコープの間を取ったような「2倍率ダットサイト」というものの存在を知った。特にこのジャンルは、交戦距離が50m前後であり、数百メートル四方のフィールドで戦闘することの多い、トイガン業界で多かった。その中での代表格がこのハッコー コンバットトゥワイスだ。ハッコー商事は、今でこそ聞き慣れない名前だが、実は現在のノーベルアームズ(Novel Arms)社の前身である。このメーカーはハッコー商事時代から、コストパフォーマンスの高いトイガン・実銃向け光学照準器を作っている国内有数のメーカーだ。
●外観は一昔前のチューブタイプのダットサイトの先端が膨らんだような感じだ。
●実際問題、このダットサイトは等倍のチューブタイプダットサイトに、2倍率のブースターをくっつけた設計である。
●当時、他社から出ていた2倍率ダットサイトは、この2倍率ブースター部が状況に応じて取り外しできるタイプが多かったが、光学性能はヒドイものが多く、余計なことをせずにくっつけて、持ち前の光学機器技術で勝負したハッコー商事のコンバットトゥワイスが1番使いやすかった。
→現在この製品はごくたまに見かける在庫があるだけで、製造はされていない。だが、Barska Opticsにそっくりそのまんまの製品がある。元々この製品は欧米で作っていたという話もあり、詳細は不明。
●大きさも等倍のダットサイトとショートスコープの中間と言った感じで、重量に関しては並のダットサイト程度だ。
●ローマウントが最初から組み込まれているタイプで、手で締め付ける使いやすいタイプだ。このタイプは中期型にあたるようだ。
接眼レンズ&対物レンズ
●対物レンズは水信玄餅のように真ん丸くボテッとした凸レンズが目立つ。これが2倍率マグニファイヤーの役割になっている。元々等倍のダットサイトにこのマグニファイヤーをくっつけたものなので、深部にはダットサイト対物レンズのレッドコーティングが滲み出ている。
光量調節ダイヤル
●11段階あり、最低光量は夜間だと少し明るくて使いにくい。最大光量は直射日光下でも問題なく使用できるレベル。
●ダイヤルのグラつきは少しあるが、適度なテンションで回すことができ、トイガン向けの中では優秀なダイヤルだ。
●光量調節ダイヤル内は電池ケースとなっている。バッテリーは当時としては比較的長持ちだった記憶がある。
ウインテージ&エレベーションネジ
●カバーされており、カチッカチッと確かなクリック感がある。1クリックでの移動量や最大移動量は…申し訳ない、何分ひと昔前の製品なので失念した。
※画像クリックで拡大可
●等倍であるAimpoint T-1と比べてみるとわかるが、2倍率といういい塩梅の倍率が付与されているので目標の細部がわかりやすくなり、なおかつ周辺視野も阻害しない。
●このダットサイト、倍率は付与されているが、スコープ等に存在するいわゆるアイリリーフ(スコープと目とのピントが合う距離)が存在せず、ケラれて照準不可能ということがない。どんな姿勢でも使いやすいのだ。
→アイリリーフが無いとは言え、ある程度目とダットサイトとの距離が離れると、歪みが大きくなり、今度は逆にターゲットが小さく見えてしまう。
●また、レンズも低価格なトイガン向けとは思えぬほどクリアで、比較対象のT-1ほどでは無いにせよ、レンズの透明度だけ見ればAimpoint PROやTrijicon MROと同等もしくはそれ以上だ。
●ダットのサイズは概ね2.5~4MOAほどのサイズだと思われる。ダットは若干滲んで見える。
●どうしても倍率が付与されていることもあり、レンズの歪みはあり、長めのチューブタイプのダットサイトなため、トイレットペーパーの芯を覗いているような感覚はあるが、ダットサイトにはない倍率の付与、スコープにはないアイリリーフを気にしなくて良いお手軽さは非常に使いやすい。
※1:2022年3月追記
さて、次は距離を100メートルに伸ばして青のツナギに照準してみた。
●若干丸い金魚鉢を覗き込んでいるような歪曲が見られる。
●ただ、アイリリーフ無しで2倍率を得られる強みは、距離が離れるほど感じ取ることができる。特に、100~200メートル程の距離でサッと構えた時により感じられるだろう。
●100メートルくらいの距離だと、ヘッドショットも可能だろう。
さて、この2倍率ダットサイトの記事を投稿して4年後の2022年。別の2倍率ダットサイトのレビューをするために、久々にこのCOMBAT TWICEも引きずり出し、100メートルにおけるパララックステストをしていた際に致命的な問題を発見した。これにより、学生時代に何も考えずこのダットサイトを使っていた私の目は節穴アイであることも判明した。
●上の写真を見ていただきたい。一目瞭然の凄まじいずれが発生している。
●上下左右それぞれレンズの端から極端な姿勢で覗き込むことを想定はしているものの、それぞれ1メートル近くもダットが動いてしまっている。(照準目標点はさきほどの100メートル照準と同じ)
●上の写真のように極端な姿勢で覗いた時だけこうなればまだいいが、ダットがレンズ中心に来るように構え、ちょっと顔を動かしただけでも25cm以上はフラフラとダットが大きく動いてしまう。
●実銃用途ではないものの、トイガンであってもこの照準器を使用する上では要注意だ。
当時(2018年)凄まじく多忙だったとは言え、COMBAT TWICEの50メートル照準テストをした私とアシスタント1名はいったい何をどう見ていたのだろうか?タイムマシンがあるのなら、指導しに行きたい。
Conclusion | 総評
●この製品はあくまでトイガン向け光学照準器である。一度5.56mm弾で射撃したことがあり、良い感触を得たが、その後ダットサイトが少し点灯不良気味になり、視界に影響は無いものの、ダットサイト深部の対物レンズが破損していた。そして、パララックステストのあの結果だ。実銃では安全管理上使用すべきではないし、トイガンでの使用もその特性を頭に入れておくべきだ。
●しかし、2倍率ダットサイトというジャンルそのものの魅力は十二分に存在する。某有名老舗トイガンカスタムサイトでこの製品に関して的を射たことを言っていた。これは中距離の狙撃も視野に入れたアタッカー向きの光学照準器である。
→バリバリ動き、相手を制圧するアタッカーだが、たまに精密射撃をしたり遠くを観察したいって言う人にはピッタリだ。ダットサイトでは物足りない。かと言ってスコープは邪魔という人に良い。
●このダットサイトは、サブマシンガンやカービン系の銃器との相性が良い。ローマウントなので、ダットサイト取り付け位置を高くしたい場合は写真のようにライザーマウントを履かせてやるのが良いだろう。
→ちなみに写真のライザーマウントはMADBULL RAS スコープライザーマウントベース FIX Ⅳ。
●近眼の私には実に良い製品で、オープンサイトやダットサイトだと見えにくい距離や、カモフラージュ&バリケードに隠れた敵のいち部分をセミオートやバースト射撃でピョコピョコ狙撃するのに最適な製品だった。学生時代、これを静音化した東京マルイのP90やM14 SOCOMに取り付け、数々の屍をこしらえてきたものだ。(あんな大きなパララックスとも知らずに!)
●この手の実用的な2倍率ダットサイトが実銃向けでもあって欲しいものだが、やはり光学系の問題等があり、トイガン向け程度で終わっているのだろうか。