REVIEW | レビュー >> GADGETS | その他ガジェット等
ジャンル:防水耐衝撃ケース
手の中におさまるコンパクトでタフなケース
検証人数:6人
執筆時期:2025年3月
SPECS | 性能諸元(公式)
メーカー名(生産国) | S3 Cases(アメリカ合衆国) |
外寸サイズ(全長x全幅x厚み) | 111.8x77.5x36.6mm |
内寸サイズ | 99.8x60.7x23.9mm |
重量 | 181.4グラム |
素材 | S433樹脂及び高耐久ABS |
カラー | Black(本製品)、Blue、Clear、Yellow、Red、Red(Dive Stripe) |
防水・防塵性能 | IP67(水深24メートル / 30分) |
保証温度 | -34.4℃~79.4℃ |
購入価格 | 2024年12.99ドルで購入 |
Pros & Cons | 一長一短
※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。
※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。
優れている点 | ✓高い防水性能と耐久性を兼ね備えながらも手の中におさまるサイズ |
✓求めやすい価格(日本国内を除く) | |
改善を要する点 | ✘ラッチ部にロック機構が欲しい。 |
ありそうで無かった小型防水ケース
部隊規模や個人を問わず、戦場や訓練に持っていく電子機器や電池の数は年々増えていく一方である。それらの多くは濡れたり大きな衝撃を与えると面倒なことになる奴らばかりだ。そんな連中を放り込む収容所は昔からPelican Products社のペリカンケースと相場が決まっている。その高い信頼性から、軍や法執行機関だけでなく、調査研究機関や宇宙事業、メディア関係者等の幅広い仕事人達の保護ケースとして使われている。
ただ、手の中に収まる程度の小物を入れるには大きすぎると感じることがある。例えば私は光学照準器やライト、暗視装置類に使用する電池をいろいろと携行する必要がある。こんな時、一番小さなペリカンケースは、14.9 x 10.3 x 5.4 cmの1010 Micro Caseであり、小さな電池類を入れるだけなのに全長15cm近くの箱はちょっと邪魔だ。そこで若干小さなThyrm社のCellVault-5M(14.6×8.71×4.11cm)を使用していたこともあったが、災害派遣でもう水は見たくないと言うほど濡れ鼠になった際に内部に水が侵入していたことがあり懲戒免職にした。
→CellVaultシリーズは「防水」ではあるが、どれほどまでの水攻めに耐えれるかの表記は無いため、一概にこの製品が悪いわけではない。
小さくてタフそうな容器はTIGER 耐衝撃ハードケース TH-01を始め、AmazonやAliExpress等でゴロゴロ出てくるものの、防水性に関しては「オレ、こんだけ我慢できまっせ!」と表記されているものが少ない。何かいいものは無いのかと思っていた時、北米で仕事をサボっt…じゃなくて業務資材調査で訪れた田舎のホームセンターで見つけたものがこのS3 Cases社のT1000だ
なんだか液体金属のナノテク殺人鬼のような名称だが、奴が擬態しているわけじゃないので安心してほしい。
●外寸は111.8x77.5x36.6mmであり、Pelicanケースの一番小さい 1010(149 x 103 x 54mm)よりも一回り小さなサイズとなる。
●ボディ素材はS433樹脂及び高耐久ABSを使用とあり、具体的によくわからないのでS3 Casesに問い合わせたところ、ポリカーボネートやポリプロピレンをベースとした複合素材樹脂であるとのことだ。
●ポリカーボネートを主とするペリカンケースと一緒に、怒れるハルクが暴れている部屋に閉じ込めてどちらが耐えれるのかはわからないが、今のところ各種訓練や仕事で使用して破損や不具合が発生したことはない。一般的にはポリカーボネートのほうが各種耐久性は高いが、通常のABSよりも強度をかなり上げているとのこと。
→余談だが子育て家庭で昔から深刻な被害を生んでいる頑丈な対人地雷の代名詞であるレゴブロックもABSだ。

●開閉機構であるラッチ部に関してはロック機構の無い単純な引掛けタイプ。
●ちょっとしたことで開いたり壊れそうな品質ではないが、衝撃がダイレクトにこの部位にかかると開いてしまうことはある。かと言ってペリカン 1010もこの点は同じ。個人的には簡単なロック機構を設けて欲しいところではあるが、指でワンモーションで開くことやコスト削減の意図もあると思うので難しいところだ。
●後方のしっかりとしたヒンジ部には、腐食に非常に強い316ステンレスピンを用いている。このピンを含め、T1000は海洋品質の耐腐食性が保証されているので、海遊びに持って行っても安心だ。
●同社T5000以上のケースには、Pelicanケースのように気圧調整バルブがあるが、T1000のような小物を入れるケースには無い。Pelicanケースには最小クラスの1010にも自動調圧バルブがあるものの、そこはコストの差だろう。
→自動調圧バルブは空気を通して水を通さない、外部と内部の気圧差を自動調整してくれる機能がある。内部と外部の気圧差を同じに保つため、航空機や標高の高い場所でケースや収容物の変形や破損、蓋が開かない!!といったトラブルを防いでくれる役目がある。
箱を開けてみると、灰色のシールパッキンが見える。
●T1000の防水・防塵性能はIP67であり、Pelican 1010と同じ。粉塵に関しては侵入はできず、水分に関してはIPX8ほどではないが一定の水圧と時間沈めてもも耐えられるよう設計されている。
●公式曰く、水深24メートルにて30分浸しても水の侵入が無いとのことなので、試しに内部に新聞紙を入れ、風呂に30分以上沈めたが浸水や湿り気は一切無かった。もちろん他研究員も含めて様々な業務や訓練、任務やレジャーで使用しているが現在までにタイタニック号になってしまったという報告は無い。
●このようなコンパクトで頑丈、にも関わらずPelican 10101より安い箱でここまでの防水性を持っている商品は他に知らない。
●内寸は99.8x60.7x23.9mmとなっており、スマートフォンやタバコ箱未満の小物を入れるのに適した大きさとなっている。
●また、取り外し可能なEVA素材の柔らかなインナーフォームがあり、収容物の緩衝材となってくれる。インナーフォームを設置した状態だと、約94x55mmの内寸となり、クレジットカードやICカード系の縦横サイズの物ならば余裕で入る。
●その他インナーフォームがある状態で何が入るのだろうか?例えば電池系だと、CR123Aや単3型電池だとは7本、単4型電池の場合は12本、18650充電池は3本入る容量だ。
●私は、写真のようにインナーフォームの上にポリエチレンやウレタンフォームを自分が持ち運びたい電池の数に合わせてくり抜いて、中でガチャガチャごちゃごちゃと動かないようにしている。
→ポリエチレンフォームやウレタンフォームはホームセンターや100円ショップで入手可能だ。
●右側面のストラップホールにはコードストラップがくくりつけられている。ペリカン 1010だとここはカラビナが付属する。
●T1000は1010同様に様々なカラーリングが用意されている。写真中央は、当研究会撮影モデルであるクロコが自分も欲しいとのことで、白のストライプが可愛いレッド(Dive Stripe)である。他にもブルー、イエロー、透明、レッド(無地)がある。
●よく見ればわかるが、この白のストライプは塗っているのではなくただシールをペタリである。しかも若干はみ出しているし…届いて判明したこの件についてクロコは若干イラついていたものの、この色のみメーカーロゴが裏側に目立たずひっそりと表記されている点は気に入っているようだ。
●彼女以外にも、このようなタフで小さなケースが欲しかったとのことで、他研究員もこぞって購入し、現在当研究会では6人の研究員と備品扱い含めて20個近くのT1000が活躍している。
●S3 Casesの「S3」はStrategic Sourcing Solutions(戦略的調達ソリューション)というロジスティクス業界の役員会議で飛び交いそうな言葉の略。そんなS3Casesがが最初にリリースしたものがこのT1000である。
●これを最初に出すあたり、Pelican社を意識した製品づくりをしていることが伺える。Pelican社の最小ケース1010より小さくて同じくらいの防水性や耐久性を持って尚且つコストを抑えて売りに出したわけだ。
●本メーカーは現在のところ、T1000を初めとして小型クアッドコプターが入るサイズのT6500までの大きさのケースを多数揃えている。一般向けにはPelicanのように対物ライフルが入るような大きさのケースは無いものの、OEM目的や企業や国営組織からの特別オーダーをすると、ラインナップに無いサイズも作ってくれるようだ。
●だいたいどのケースも、ペリカンの価格を下回るよう値付けされている。例えば1010の実売価格は20ドル前後、T1000は14ドル前後で二回りほど大きなT2500ですら19ドル前後となっており、ペリカン製品よりもリーズナブルな価格で勝負していることがわかるだろう。
●こちらの所感としては、S3 CassesはT1000のようにコンパクトな製品にこそ価値があると思う。今までありそうで無かった製品だからだ。T1000は写真のように小型のポーチやポケットに入れても邪魔になりにくい。
Conclusio| 総評
●この小箱を皆さんならどう使うだろうか?T1000の用途はウォータースポーツやアウトドア等のレジャー、軍や警察関係者の任務や訓練における、小さな貴重品や壊れたら困る物品の保管や携行に良い。一般用途だと、指輪や腕時計を保管したり、財布代わりにしてもいいんじゃない?と公式では言っている。
●当研究会では、私のように電池を入れたり、鍵や身分証明書、イヤホン、暗視装置や光学機器のフィルター等のオプション、銃器の予備・保守部品、小型のモバイルバッテリー等、様々な小物やEDCアイテム達の収容所として活躍している。
●従来のPelican社のケースだと、バッグやポーチを占有するような大きさのケースが多く、かと言って他社製品だと耐久性や防水性に不安があるものばかりだった。S3 Cases – T1000は、米軍装備品規格であるMIL-STD-810GやMIL-STD-810F 輸送落下テスト等多数のタフな品質規格をクリアしている。
●それでいて価格は14ドル前後(2025年現在)とお値打ち価格で入手できる。ただ会社規模や知名度からすると、Pelican社と比較してまだまだ小さな会社であるため、特に日本国内だと入手が難しかったり、高値で販売されていたりするのが難点だ。
●小さな箱ではあるが、大なり小なり電子機器類やその電池類の入れ組品が年々増えていく軍や警察、安全保障関連の組織にとって、このようなタフでチビな箱の需要はこれからも増えていくだろう。