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ジャンル:グローブ、作業用手袋

メカニクスウェア社の通気性を重視したグローブ

検証人数:3人

執筆時期:2023年3月

SPECS | 性能諸元

メーカー名・国(メーカー国・生産国) MECHANIX WEAR (アメリカ合衆国・ベトナム社会主義共和国)
サイズ S(本製品)、M、L、XL
カラー グレー/ホワイト(本製品)、コバート、コヨーテブラウン
使用素材 ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル
価格(購入価格) 35.99ドル(2021年12月、2800円で購入)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 薄手ながら掌に対するある程度の保護性能との両立
改善を要する点 ホワイト・グレーのみタッチパネル対応ではない
  通気性は宣伝文句ほど高いわけではない

 

風通し良き世の中に


我が研究会の黒頭巾をかぶった正体不明の撮影モデルであるKUSEMONO KUROGOとKUROKOだが、両者が基本的に白を基調とした出で立ちをしているのにはちゃんと理由がある。道着にしろセーラー服にしろ、「日本古来からの馴染み深い戦闘装束」であることに加え、暗く地味な色の多い装備品や武器がわかりやすいという利点もある。


同様の意味合いで、特に銃器類は黒色が多い関係上、手については基本的に素手で撮影に臨むことが多い。だがKUROKOに関しては、中の人と研究会の意向により、個人の特定を防ぐ目的で、特定に繋がる素肌や部位を見せない方針で撮影をしている。


では何か手袋の類を購入しようという話になったのだが、軍・警察向きの商品は地味なものが多く、何よりKUROKOがそんなものは可愛くないとゴネる始末だ。


また、デザイン的に気に入ったものがあったとしても、着け心地等がだめではよくない。ただでさえ黒頭巾で視界が悪い中、手元すらおぼつかない状態は避けたい。試行錯誤を何度か行った後、デザイン良し・着け心地及第点として採用されたものが、今回紹介するMECHANIX WEAR社の「SPECIALTY VENT(ホワイトグレー)」だ。

メカニクスウェア社には、The Originalをベースにした女性向けの「WOMEN’S ORIGINAL」があるが、カラーラインナップが少ないのと、KUROKO曰く「かわいくない」「ピンクとかありきたり」と不平不満が多かったので却下となった。


MECHANIX WEAR(メカニクスウェア)社」は、米国の多くの現場系労働者、モータースポーツ界、そしてシューターに人気のグローブメーカーだ。モトクロス整備士の要望から生まれたこのメーカーは、会社ロゴを手の甲全体にあしらった一目でわかる商品デザインと手の保護性能で認知度を高め、日本でもホームセンターやプロショップ、モータースポーツのお店で入手できる。

そしてそのメカニクスウェアの代名詞とも言える製品が「The Original」だろう。手の保護と機能性を両立させ、長きに渡って様々な現場から愛されている。そのThe Originalを薄手にして、通気性を良くした涼し気な製品が、「SPECIALTY VENT」である。

色はKUROKOの戦闘装束(セーラー服)と暗い装備とのカラーリングを考慮してグレーホワイトをチョイス。他にコバート(黒系)やコヨーテブラウンもある。


イケアの商品のような長くピラピラとした品質表示タグ。左右両方にあり、脱着の際に邪魔この上ないので内容を読んだら切り取ってしまったほうがいい。

手の甲は非常に薄手で、ぽつぽつと通気孔の空いたメッシュ生地(ポリエステル)になっており、冷却と排熱効果を高めている。

また、親指基部と手首の灰色の生地は、吸水性と肌触りの良いマイクロフリース素材となっており、額から流れ出る汗等を拭えるようになっている。


赤くて目立つストラップループは、カラビナ等にグローブを引っ掛けたり、洗濯後の洗濯バサミのハードポイントとして利用できる。また、写真のように装着後にここをギュッと引っ張ることで、フィット感を高めるのにも役立つ。

コバートやコヨーテブラウンは、ここのループ部分がグローブ同色となり、様々なカラビナや装備に引っ掛けやすいようにより大きくなっている。

洗濯で思い出したが、他のメカニクスウェア製品同様、このSPECIALTY VENTも洗濯機への投入には対応している。ただ、2回ほど洗った感想としてはメッシュ生地(白い部分)の毛羽立ちやほつれが少しだが出てくる印象なので、洗濯ネットに入れたりできれば手洗いの方が良いと思われる。


サイズ選びに関してだが、メカニクスウェアが推奨する計測方法は、中指の長さ(中指先端から親指と人差し指の間を結ぶ延長線上)と、掌の幅からサイズを算出する。

KUROKOは実に中途半端な手の大きさで、同社のThe Originalの場合はXSサイズだと小さくてきつい、Sサイズだと大きくて操作性が悪くなるという中間に留まってしまった。何にせよ、XSサイズはThe Originalの黒色等一部のカラーしか無く、SPECIALTY VENTは最小サイズがSサイズしかないので、Sサイズを購入することとなった。

ちなみに筆者の場合、Sだと小さくてはめるのにも苦労し、Mサイズでちょうどよい印象。ただし指が数本余る大きさに感じる。どちらにせよ、日本人の手に合わせて設計しているメーカーではないため、特に人差し指と親指のサイズが合いにくいことが多い。これは、メカニクスウェア社だけでなく、欧米のグローブメーカー全般に言えることだ。そういう意味でも、できる限り試着をしてから購入することを勧める


こんなポーズどこで覚えてきたのかという疑問は置いといて、掌側はThe Originalと同じく合成皮革(ナイロンとポリウレタン)となっている。The Originalと比べると薄手にはなっているが、ここまで手の甲側と同じメッシュ生地にしては、手の保護性能は犠牲となってしまうが故に、保護性能の高いメカニクスウェア社独自の合成皮革でまとっている。

ただ、通気性を上げるために通気孔はぽつぽつと空けている点は手の甲と同じ。水分や蒸気等は浸透しやすいため、作業内容や環境によっては留意してもらいたい。

通気性を含めた放熱性だが、比較的薄手で通気孔が空いているとは言え、合成皮革を用いていたり、冷感素材を使用しているわけではないので、それを重視して購入すると期待外れになるかもしれない。あくまで、メカニクスウェア社のグローブの中では通気性や排熱性能が高い製品であり、それらをより求めるのであれば、ホームセンター等で売っている薄手で冷感効果を高めたグローブを購入したほうがいいだろう。

戦闘訓練中はもちろんのこと、室内温度21度の車内で運転してたKUROKO曰く、若干少しづつ汗ばんで来るとのこと。


スマホを掲げてサムズダウンしているのには理由がある。もともと実店舗にて、このSPECIALTY VENTのコバートを試着し、これなら装着感や機能性は満足とまではいかないでも及第点ではあることと、現在のスマートフォン等で採用されている静電容量式のタッチパネルにも対応している点を確認し、店舗には無かったホワイトグレーをネット通販で購入した。

警察・軍用、射撃用途であろうと、現代に置いてタッチパネルに対応しているかどうかは非常に重要だ。治安維持機関でも各種装備品や電子機器にもタッチパネルが多く使われており、市販のスマートフォンやタブレット端末も多くの現場で使用されているからだ。

だが、ここで大きな問題が発生した。なんと他のカラーラインナップであるコバートやコヨーテブラウンはタッチパネルに対応しているのに、このホワイトグレーだけはタッチパネルに対応していないのだ。どう考えても一般人が作業の合間にスマホ使うぞというカラーリングにも関わらず、SPECIALTY VENTでこの色だけタッチパネルに対応していない理由がまるでわからない。撮影の間にスマホを触れないとKUROKOがキレ散らかし、サムズダウンした理由がこれだ。

まぁ公式サイトで、この色にはタッチスクリーン対応とは一切書かれていないので、よく調べず買ったお前らが悪いと言われればそれまでではあるが。

他にも、メカニクスウェア社人気ラインナップである、The Original、FastfitM-PACTシリーズにも一部タッチスクリーンに対応していないカラーやバージョンがあるため、よく調べてから購入したほうがいい。

グリップ感や銃器の取り扱いに関して


タッチスクリーンに非対応だったのは残念だが、実際の使用感はどうだろうか?

まずグリップ感については、薄手の合成皮革を用いていることもあってか、比較的素手に近いグリップ感だ。ゴム手袋のようにみっちりと密着するのではなく、適度に滑り、適度に密着する。

人によって油分や発汗量、皮膚等、手の性質は違うので一概には言えないが、素手と比べて2~3割ほどグリップ感が高まったように感じる。今回検証を行った研究会メンバー3人が所持しているグローブである、ミタニコーポレーション – エムテック東和コーポレーション – EXTRA GUARD、幕府陸軍 官品革手袋、CamelBak – Magnum Force MP3 Glovesの中では、樹脂素材や木製製品に対しては一番グリップ力や素材に対してのフィト感を感じられた。

KUROKOには5.56mm弾を使用するType89小銃での射撃で使用させたが、ツルツル滑りやすくて個体によってガタガタ動くあの二脚を折りたたんだ状態でもしっかりと握りやすくて撃ちやすかったとのことだ。


多くのグローブ全般に言えることだが、どちらかと言えば、ロングガンよりも両手が触れ合うハンドガンを構えた際にそのグリップ感の高さをより感じることができる。

手の甲側のメッシュ生地に、掌側の合成皮革が良い具合に密着し、反動抑制効果や、連射時の集弾性も高まる。


また、手汗等による影響を受けにくいため、緊張下で汗びっしょりになって手元が滑ったり、筋疲労によるグリップ力の低下も抑えられる。

白兵戦武器や徒手格闘


KUROKOは古武術を嗜んでいるため、このグローブを付けた状態で杖(じょう)を振らせてみた。杖術は自由自在に杖を振り回すことから、グリップ性だけでなく手の中での滑りも大事な要素だ。

それ故に、基本的には素手で操作をするのが良いが果たしてどうだろうか。

SPECIALTY VENTは素手と比べると丸い金属、木材、おおよそどの素材も素手よりグリップ力が増す。それが故に、杖の滑りが1~2割ほど低下し、持ち替え操作に対して少し操作性が悪くなる。

ただ、打撃や突き動作については、グリップ力の高さや手に対する衝撃吸収能力が高まる。そのため、木やサンドバッグへの打ち込み練習、対人練習や戦闘時の威力増大、命中精度、疲労感の軽減、術者自身の手に対する損耗を抑制することができる。


そういう意味では、どちらかと言えばこのグローブは杖術よりも、剣術に向いている。居合刀で試してみたが、抜刀、振り、突きの動作に対して良いグリップ力を発揮すると同時に、手に対するフィードバックも大きく損なわれることがない。もちろん疲労等の軽減にも素手と比べて効果をはっきりと感じる。

今回用意したグローブの中では、杖に対する適度な滑りに重きを起きたいのであればミタニコーポレーション – エムテックだった。薄手であり、耐久性はあまり高くないが、細かな手作業がやりやすく、コストパフォーマンスのよいグローブだ。

あくまで杖術に対してだが、使いづらかったのは幕府陸軍の官品戦闘用手袋であった。個人的にこのグローブは好きな点も多いのだが、指と指の間のマチが厚めなため、杖の持ち替え操作がやり辛くなる。

徒手格闘に関しては、ナックルガードがないため、パンチの類の打撃技にはあまり向かないが、関節技や柔術等への使用はけっこう面白い。相手の身体や衣服を掴みやすい。ここでも掴んだ際の手の感覚は大事だが、グローブが薄手の部類なのでわかりやすい。

同社のグローブで格闘戦用のナックルガードを求めるのであれば、M-PACT 3が良いだろう。

何にせよ、徒手や武器の有無に関わらず、様々な武術を普段素手で行っているのであれ、このようなグローブを用いて行ってみることをおすすめする。素手やグローブのメリットとデメリットを含めたいろいろな気付きを感じることができるだろう。

細かな作業に対する操作性


次はこのグローブを装着した上での、ギア等の操作性に関して検証しよう。

まずはハンドガンのスライドや、小銃の槓桿(こうかん:チャージングハンドル)等を操作する装填動作だが、チェッカリングや刻み等に食い込みやすく、余計な力を少なくできて操作がしやすい。

弾倉に弾を込める作業に関しては、滑りやすく、人差し指や親指部分が少し大きめなこともあり、より薄手なM-TECHやEXTRA GUARDのほうがやりやすく、これならグローブを外して素手で行ったほうが早かった。

メーカーに関係なく、グローブを付けると、手の感覚が薄れることがあり、特に素手と比べて細かい作業がやりにくくなる。

また、指に対してグローブの方が長く、生地余りが出ている場合は、銃器や装備品の可動部分等への引っ掛かりに注意すべきだ。場合によって重大な事故が発生する場合もある。

例えば、幕府陸軍が採用している某重機メーカー製のMINIMI軽機関銃で、トリガー下部とトリガーガードの間にグローブが挟まり、トリガーが引かれっぱなしになるケースがよく散見される。官品を含めた様々グローブで起きており、私も経験したことがある。場合によってはグローブの指部分を一部切断したり、素手に切り替える対処も、事故防止の観点から考えたほうがいい。


写真のようにスコープのパワーダイヤル等の比較的大きなパーツの操作については比較的問題なく行える。スコープのエレベーションダイヤル等の操作は、クリック感がグローブをつけている分少し感じにくくなるが、これはその他グローブと比べても平均的なレベルであった。ただ、より薄手のものと比べると、ダットサイト等の小さなダイヤル操作は素手の方が良いだろう。

SPECIALTY VENTは各指の側面部分にもマチを設けて耐久性を上げている。ただ、この部分がどうしても少し厚みが増すため、指の感覚が鈍感になりがちで、細かな作業が少しし辛くなっているのも事実。
ただ、指部分の耐久性と緻密作業性を両立させるのは難しいことだ。官品の戦闘用革手袋は掌側と手の甲側の境目がよく破れてくる。

セレクターレバーや安全装置の操作は、形状や大きさによっては操作がやり辛く感じたりすることもある。

ダットサイトやスコープの電子式のスイッチ、懐中電灯のテールスイッチ操作を人差し指や親指の腹で押す操作については、同社The Originalよりも合成皮革が薄手になっていることもあり、M-TECH等の薄手のグローブと同様に操作は行いやすく良好だ。

Conclusion | 総評


今回のこのグローブ選びは実用性だけでなく、KUROKOの戦闘装束や黒が多い武器や装備品との撮影にマッチするかどうか、そして何よりKUROKOが気に入るか気に入らないかと言った面倒な条件の元での選定となった。

だが、基本的にグローブは手への感覚を感じたいため、あまり厚手のものを好まず、暑くて蒸れるのが嫌という考えが多い当研究会メンバー達には、MECHANIX WEAR社のSPECIALTY VENTは概ね好意的に受け入れられた製品ではある。


薄手なものがいいが、グリップ力は高く、掌に対する保護性能はある程度欲しい。そんな製品を求める場合はこのSPECIALTY VENTは悪くない選択肢となるだろう。

国内では安いところだと2000円~3000円代で入手ができる。この価格帯だと、大きなホームセンターやワークマン等の現場・作業系装備を売っているショップでも良い製品は案外ある。

日本人向けに作られた製品ではないため、細かな部位でサイズが合わない場合もある。購入する際はできれば試着を行っていただきたい。そういう意味では、オークリーのアイウェアのようにアジア人向けの設計を施したバージョンとかが欲しいものだが、難しいだろう。