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ジャンル:スコープ

通常のライフルスコープは重くて邪魔だ。かと言って、Trijicon ACOGは値段は高く、アイリリーフが短い。そんなあなたに、値段も手頃なボルテックス スピットファイア プリズムスコープはどうだろうか?

執筆時期:2016年12月

2世代目であるVortex – SPITFIRE HD GEN II 3x PRISM SCOPEのレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】 Vortex – SPITFIRE HD GEN II 3x PRISM SCOPE

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) VORTEX OPTICS (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 約14cm
重量(ハイマウント時) 436グラム
対物・接眼レンズ径 3.91mm・3.88mm
倍率 3倍
視野(FOV) 31.5フィート / 100ヤード
アイリリーフ 7.1センチ
イルミネーター 赤 or 緑LED 各色5段階
使用電池(電池寿命) CR2032リチウム電池(最大光量250時間・最小光量3000時間)
耐久温度(摂氏) -30度~50度
本体コーティング ハードアルマイト、低グレアマット仕上げ
価格(購入価格) 449.99ドル(2016年、352ドルで購入)

安くてアイリリーフの長いプリズムスコープ


ダットサイトのようにコンパクトで軽量、ライフルスコープのように遠くを狙って撃てるプリズムスコープ。このプリズムスコープで最も有名なものは、米軍を始めとした軍や警察系組織等で採用されている、Trijicon社のACOGシリーズだろう。ただ、構造上弱点もある。通常のスコープのように、上下を反転させて映像を「正立」させるレンズの代わりに、プリズムスコープではプリズム(三角柱の透明体)を用いることで、全長を短く・軽量に作れる。ただ、この機構は、アイリリーフ(目の焦点が合う位置)が短くなるという欠点がある。これが意外とイタい欠点で、特に私のようなゴーグルやメガネを使用する場合、レンズと干渉する場合がある。モデルは忘れたが、4倍率のACOGを搭載した、M4を撃った際に、当時射撃初心者だった私は、反動でメガネにぶつけた思い出がある。そんな中、BURRIS社よりAR-332というプリズムスコープが出現した。これは、アイリリーフがプリズムスコープの割には長めで、しかも実売価格も250~400ドル前後と安価なため、カジュアルユーザーの間で人気が出た。日本でも、一昔前は2万円前後で販売という、ヘタをすると本国よりも安い値段で売ってた程だ。VORTEXの本製品は、このライバル機種として販売されたものだ。


外観を見てみよう。実にバリス社のAR-332によく似た形状をしている。バトラーキャップが付属するのも同じ。全長は14cmで、重量は436グラムと、この手のプリズムスコープとしては標準的だ。製造は中国製だが、特別安っぽい感じはしない。


最大の特徴は、ダットサイト等を載せることができる、サイドレールが、AR-332は本体上部・左右側面の3つに対し、本製品では上部斜めに2つ付いている。ダットサイトを付けた場合を想定すると、AR-332は上部付けることができるが、どうしてもダットサイトを覗く際に顔を上げるため、頬付けが甘くなる。こちらは、銃を斜めに傾けることで、素早くできることをウリとしている。エアーソフトガンで使用する際には、ホップアップシステムの影響があるので、ご注意を。スロット数は両者とも2スロット。


また、もう一つの大きな違いとして、マウントの高さを変更できる点がある。付属の工具でマウント下部のネジを外すと、スペーサーを介して変更可能だ。


ハイマウントはレールから40.4mmの高さの「Lower 1/3 Co-Withness」サイズで、AR-15系のアイアンサイトの高さが、レンズから1/3の高さで展開できる高さとなる。ローマウントは、レールの高さから30mmの高さだ。このシステムにより、取付けれる銃器の幅が広がる。マウントそのものは、手でも締めれる大型の六角形状で、緩みや締め付け防止のバネ座金付き。


うっすらと緑色のコーティングが見える対物レンズ径は3.91mmで、接眼レンズの3.88mmとセットで考えると大きめだ。このサイズもAR-332よりも1mm近く大きい。オプションとして、キルフラッシュを取り付けることも可能だ。


接眼レンズ。縁は視度調節リングとなっている。


エレベーション(照準上下調節)とウィンテージ(照準左右調節)ネジは、余計な工具無しで調節が可能な突起物付きのカバーで守られている。そのカバーも、ワイヤーストラップで脱落防止措置がされている。1クリックは1/2 MOAで、調節幅は120MOAと、かなり大幅に動かすことが可能だ。ちなみに、AR-332は80MOAの調節幅。


上部のダイヤルは、イルミネーションの光度調節ダイヤル兼電池ボックスとなっている。電池は「ダットサイトの燃料」としてお馴染みのCR2032リチウム電池。

イルミネーターの色は赤と緑を選ぶことができ、各色5段階ずつの調節が可能。この点はAR-332と変わらない。


説明書は同社等倍スコープである「AR PRISM SCOPE 1×」と同様のカラーでわかりやすいものだ。


さて、肝心のアイリリーフだが、プリズムスコープとしては長めの70.1mmを確保している。3倍という倍率に抑えているということを加味しても、これは長い。厚めのゴーグル等をしていても、後部にリアサイトを置いていたり、長めの固定ストックのライフルであっても、ストレス無くサイティングが可能だ。同じく3倍率の他社プリズムスコープのアイリリーフを見てみると、

○BURRIS AR-332:63.5mm

Trijicon ACOG 3×24:35.6mm

Trijicon ACOG 3×30:48.3mm

と、圧倒的な長さを誇っている。ちなみに、米軍が採用している4倍率のTrijicon ACOG TA31は38.1mmだ。


※標的までの距離は50m。緑色のイルミネーションを使用。

レティクルは「EBR-556B(MOA)」という、5.56×45mmNATO弾に特化した、BDC(Bullet Drop Compensator)機能付きのレティクルで、0-500ヤードまでの距離に合わせた弾道の落下ポイントをわかりやすく表している。ちなみに、各距離のクロスヘアの横線を人間の胴体部分(15インチ=38センチ)と合わせると、だいたいの標的までの距離を把握することも可能だ。

 


このような機能は、AR-332にのBallisti CQレティクルにもあるが、Ballistic CQレティクルは、中央にゴチャっと集まったレティクルなので、わかりづらくて実用性は微妙だ。こちらのレティクルの方が、ACOGのようにわかりやすくて、どのような距離でも素早く照準可能だ。(画像はBurris MTAC 1-4×24mmのCQレティクル)


※画像クリックで拡大可


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イルミネーション無しと、赤色で覗いてみた。標的のACU迷彩の上着までの距離は約50mだ。この距離だと、18.85MOAの中央サークルが、ちょうど胴体部分の幅と合致する。イルミネーター最大光量は、直射日光下でも使用できるほど明るく、AR PRISM SCOPE 1×やAR-332よりも若干明るめだ。最小光量は夜間で十分使用できるが、光無き真っ暗闇だと、少し明るく感じてしまう。長めのアイリリーフ、大型の接眼レンズ、明るいイルミネーターのおかげで、近距離でも大変狙いやすい。レンズの質も、この値段からすると、文句なしに明るく鮮明な映像を映しだしてくれる。

VORTEX  SPITFIRE Prism Scope 3×は、値段としてはライバル機種のAR-332よりも1万~1.5万円ほど高めの価格設定だ。しかし、その分、細かな点での配慮や工夫が行き届いているのを感じる。何よりも、高価なACOGの1/3程度の値段で買えてしまうのだ。安価なプリズムスコープをお探しの方は、良い選択肢となるはずだ。

 

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