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ジャンル:マグニファイヤー

業界最小レベルのコンパクトなマグニファイヤー

執筆時期:2019年11月

→本製品を提供してくださったS氏に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) VORTEX OPTICS (アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 7.3cm
重量 270グラム
対物レンズ径 22mm
倍率 3倍
視野 (FOV) 38.2フィート / 100ヤード:11.m / 91.4m
アイリリーフ  2.64インチ(6.7cm)
価格(購入価格) 449.99ドル(2019年10月、405ドルで購入)

小さきことは良いこと


様々な光学機器を試していた頃、当然遠距離に不向きなダットサイトに、マグニファイヤーを装着したらどうだろうか?という試みを行ったことがある。

予想はしていたが、この試みはうまくいかなかった。ダットサイトの速射能力も、スコープの遠距離射撃能力も失った、帯に短し襷に長しなものとなってしまった。特に、ダットサイトのみを使おうと、横にスイングした際の重量バランスの悪化が我慢できなかった。かと言って、中途半端に大きなマグニファイヤーを外してポーチ等に収納するのも邪魔だ。これはあくまで私個人の運用スタイルに合致していないというだけのことなので、マグニファイヤーを利用している人は気にしないでほしい。

時は流れ、ボルテックス社から非常にコンパクトなマグニファイヤーが出るとのことで気になり、ボルテックスのセールスマンのような甘い言葉で知人を惑わせて購入させた。それがこのMicro 3X( V3XM )だ。


付属品として、取り外しが簡単なQDマウントと、マウントの高さを変えれるスペーサー(ライザープレート)、それぞれのマウント高に合わせたネジや工具等が付属する。


付属のライザープレートの脱着により、一般的な光学照準器に多い2種類のハイマウントの高さに調整可能。スペーサーの厚みは0.28mm。重量は9グラム。

スペーサー無しで、マウントベースから対物レンズ中心点までの高さが1.46インチ(約3.70cm)のCo-Witnessサイズとなる。

スペーサー有りだと、マウントベースから対物レンズ中心点までの高さは1.57インチ(約3.98cm)のLower 1/3 Co-Witnessサイズになる。

ダットサイトやホロサイトによって、ハイマウントの高さはまちまちなので、このように簡単に調整が可能な点は良い。


レンズカバーはAimpoint T-1のようなビキニタイプのものが付属。


ボディ口径と比べて対物レンズは小さめの22mmとなっている。

コーティングは緑系だ。


接眼レンズ部とお馴染みの視度調整ダイヤル。


どのメーカーのマグニファイヤーにもあるものだが、ウインテージとエレベーション(レンズの上下左右)の調整ネジがある。これにより、ダットサイトの光点とマグニファイヤーのレンズ位置の微調整を行うことができる。

Micro 3Xは調整ネジにキャップがあり、保護されている。キャップ上部のマイナス形状の突起はそのまま調整ネジにはめ込むことで工具になり回しやすい。クキックキッとテンションがわかりやすいネジだ。

ただ、短い全長により少し無理のある光学系なので、あまりレンズ中央から外れるような調整をすると、覗いた際に光軸がズレて見えにくくなりがちだ。


マウントは脱着がしやすいQD(Quick Detach)タイプのマウントを採用。


Micro 3XのQDマウントは特に脱着しやすく、レバー前方のボタンを押しながらロック解除し、レバーを起こせば解除される。ロック解除ボタン、レバーともに非常に滑らかな動きをしてくれる。他社メーカーによっては、この動きが硬かったりするものもあるので、このような滑らかなQDマウントは評価が高い。

一部他社製品にあるような、マウントを付けた状態で、マグニファイヤーのみカポッと取り外せるタイプのものだとより良かったが、脱着しやすいQDマウントとコンパクトな本体のおかげで、普段はダットサイトのみを銃器に装着し、必要とあればMicro 3Xをサッと取り出して遠距離射撃を行うという戦法もできる

マグニファイヤーとマウントは付属の六角ネジで装着。スペーサーを噛ました場合は長い方のネジを使用。


マウントの反対側には、マウント幅調整用のアジャスターナットが見える。(マウント部ボルテックスメーカーロゴの下のナット)

このナットを回すことで、マウントにかかるテンションを調整できる。各メーカーによって若干幅等が違う20mmレールに合わせることが可能だ。


他社のマグニファイヤーと同じく、マグニファイヤーを片方にパタンと倒すことが可能。左右どちらに倒したいかは、本体とマウントを前後逆に付けて選択できる。

ダットサイトのみを使う場合はこの方法を利用するが、従来のマグニファイヤーだと、このように左右に倒しているおかげで銃器の重量バランスが崩れ、ガンハンドリングを阻害することも多かった。Micro 3Xは、コンパクトな外観に加え、重量もスペーサー無しで266グラム(スペーサー有りだと275グラム)と軽量なので、従来品と比べて違和感は少ない。

マグニファイヤーのスイングに関しては特にロック機構等はないが、よけいなガタツキも非常に少なく、不意に動くこともない。


サイズは業界最小クラスなコンパクトさで、全長は7.3cmしかない。コンパクトなAimpoint T-1と比べてもごらんの通りだ。

他社有名所や、以前よりボルテックス社より販売されていたマグニファイヤー「VMX-3T」と比べても、この全長および重量が群を抜いて小さいことがわかる。

EOTECH Model G33 :9.9cm、317グラム

Aimpoint 3X-C:10.3cm、220グラム(マウント含まず)

Vortex VMX-3T:10.9cm、337グラム

Vortex Micro 3X7.3cm、266グラム

写真のT1用ハイマウントはLarue LT660。Micro 3Xには付属のスペーサーを噛ませるとマッチする。


アイリリーフ(スコープと目の焦点が合う距離)とアイリリーフ幅に関しても優秀だ。アイリリーフが稼ぎにくいプリズムスコープであり、他社製品が5cm~6cmのアイリリーフなのに対して、Micro 3Xは5.8cm~8cmと、アイリリーフの最大距離幅ともに長く取ることができている

従来のマグニファイヤーはアイリリーフが短めのものが多いので、覗きにくく使いにくいものが多かった。そういう面も私が気に入らなかった面だが、Micro 3Xはコンパクトさだけでなく、このような使い勝手も向上させている。

ただ、従来の製品と比べてアイボックス(焦点の合う幅・面積)は狭めなので、あまりラフな姿勢での射撃は難しい。とは言え、他社製品もプリズムスコープという特性上、普通のライフルスコープと比べるとそこまでアイボックスが広い製品は少ないので、マグニファイヤー全体としてみればそんなものだろう。

とは言え、銃器によってはマグニファイヤーの後ろにバックアップサイトを設置していたりすると邪魔になったり、ストックの長さを調節したくなることもあるだろう。


レンズに関しては暖色寄りに映している。ダットサイトのレンズは青みがかかったものが多いので、これで少し相殺される。


100メートル先に身長180cmの人間と見立てて青のツナギを設置。それを照準してみた。

コンパクトな設計なので、光学系には少々無理があるのではないかと思ってみたが、レンズの透明度・歪みともに大きな問題はなく、形状を考えれば優秀な部類。

設計上の都合か、レンズ5時の位置に切れ込みがあるが、私は特に気にならないので問題ない。

順光のシチュエーションだと、フレアやゴーストは少し出やすい。この写真でも、中央左下と右上に薄っすらと白いフレアが出ている。逆に逆行下ではあまり出ない。


※画像クリックで拡大可

前方にAimpoint T-1を置いてみた。

前方にダットサイト等を配置すると、対物レンズ側からの光によって発生していたフレアやゴーストの発生は抑制される。

未熟な撮影技術のおかげで、左側が若干ケラれ気味なのは申し訳ない。

前述したが、T-1のダット位置が中央に行くようにMicro 3Xを調整したら、正面からきっちりと覗いた時に少々ケラれやすく、覗きにくさが出てきた。へそ曲がりな個癖や銃器に搭載しているダットサイトに合わせた場合、そのような状況が起こることがあるので留意していただきたい。とは言え、私の場合は使えないレベルではない。

ちなみに私のAimpoint T-1は所持しているベネリM2のライフルドスラグ弾用に合わせている。どうにも右にズレる傾向にあり、ダットサイトもそのように調整している。

3倍に拡大され、レンズの透明度も高いことから、200~300m先のマンターゲットへの射撃も容易になるだろう。

The Conclusion | 総評


本製品の希望小売価格は449ドルだが、実売では300ドル前後で販売されている。マグニファイヤーとしてはミドルクラスの価格帯だろう。

コンパクトなボディ形状によって発生してしまっている、光学系への無理はある程度存在している。だが、少し長めのアイリリーフに何と言ってもこの軽量コンパクトなボディは、シューターへのストレスを軽減させてくれる素晴らしいマグニファイヤーだ。

普段はダットサイトのみで運用しているシューターも、このマグニファイヤーを一個所持していると戦術の幅が広がる。小さいので邪魔にもなりにくいのでおすすめだ。