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ジャンル:ライフルスコープ・ショートスコープ

US OPTICS社の格安FFPショートスコープ

執筆時期:2021年11月

※本製品を提供してくださったT氏に感謝いたします。

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) US OPTICS(アメリカ合衆国・不明)
全長 約26.6cm
重量 約507グラム
対物レンズ径 24mm
倍率 1~8倍
視野 (FOV) 1倍:108フィート / 100ヤード:32.9m / 100m
8倍:15フィート / 100ヤード:4.5m / 100m
アイリリーフ 9.5cm
レティクル(いずれもFFP:第1焦点面) JNG MIL(本製品)、RBR
イルミネーター 赤色LED:11段階
使用電池 CR2032リチウム電池
パララックスセッティング 100ヤード
価格(購入価格) 695ドル(2021年9月、450ドルで購入)

一流メーカーの格安ライン


US OPTICSと言えば、アメリカ海兵隊を始め米国の多数の軍や警察系組織へライフルスコープを昔から販売してきた光学照準器メーカーとして有名だ。いや、だったと言ってもいいのかもしれない。

近年ではボルテックス社等のコストパフォーマンスに優れたメーカーの台頭により、US OPTICSの認知度や需要は古参の人たちを除き、少なくなっているのが現状だ。なかなか民間に出回らない幻のハンドメイドの逸品だけでは会社は立ち回らない。


同社のラインナップTSシリーズは比較的手に取りやすい価格で、U.S. OPTICSの世界を味わえるよう設定されたラインだ。その中のTS-6XとTS-8Xは6倍率と8倍率のタクティカルショートスコープである。近~中距離をカバーするタクティカルショートスコープは、3Gun等の競技やタクティカルトレーニング、セルフディフェンス向けとして人気なジャンルであり、若いシューターやエントリー向けの製品も多い。もちろん、様々なライバルメーカーも低価格帯や高価格帯まで幅広く力を入れているジャンルでもある。果たしてUS OPSTICSはどのような存在感を示すのだろうか?

 


全長、重量、外観共に300~500ドルほどの安価なショートスコープとパット見は変わりない。

このスコープの生産国に関しては公表されておらず不明。


レンズのコーティングは黄緑、水色系。

接眼レンズ部にアイピース等はなし。


カバーを取ると出てくるエレベーション&ウィンデージダイヤルも、安価な設計のライフルスコープに用いられるものだ。たまにクリック感が曖昧になるのはいただけない。

11段階のイルミネーションダイヤルはコクッコクッと適度なテンションのクリック感で操作しやすい。


倍率変更ダイヤルは、3倍率付近の位置に適度な突起があり指をかけやすくなっている。

ダイヤルの硬さは適度で扱いやすく、誤作動も少ないレベル。


TS-8Xは倍率を変えることでレティクルの大きさも変わるFFP(First Focal Plane:第1焦点面)と倍率を変えてもレティクルは変わらないSFP(Second Focal Plane:第2焦点面)があるり、FFP仕様は今回紹介するミル単位を用いたJNG MILと距離による弾道落下予測点を表記したPBRの2種類を揃える。

SFP仕様のものはシンプルなクロスヘアスタイルのレティクルだ。

レンズの色温度はほんの少しだが暖色寄りに設定されてある。

JNG MILレティクルは、十字線の左右下は0.5ミル刻みで10ミル、上は6ミルまで表記されている。その周辺中央部をサークルレティクルで囲んでいる感じだ。レティクルに関しての詳しいサイズや数値等は公表されていない。


※画像クリックで拡大可

戸外に持ち出してまずは1倍と4倍時から見ていこう

写真だと伝わりにくいが、1倍時の像の歪みが少し目につく。特に覗きながら動かした際の外縁部がグニュニュと歪んで見える。

また、1倍率はどの距離感においても1.05倍~1.1倍ほどにほんの少し拡大して見える。

1倍時のレティクルが少し存在感が無く、背景やターゲットによってはたまにわかりにくいことがある。

3倍~4倍率時になると、大きくなるレティクルやレンズの質共にバランスが取れてきた感じはしてくるが、特段良いというわけではなく平均的。


※画像クリックで拡大可

最大倍率の8倍時

このスコープは倍率を上げるほどゴーストやフレアが出やすく、8倍率だとそれが顕著だ。写真でも見てわかる通り。

その他光学性能に関しては並といった領域を出ない。

正直レティクルに関しては、バカ正直に数字をごちゃごちゃと書かれてて邪魔だ。これは別レティクル版のRBRレティクルでも同様である。低倍率でも高倍率でも使いにくいレティクルであり、FFPである利点を潰してしまっている。

FFPスコープのレティクルは、SFP以上に機能性を熟考してデザインしないといけないのだ。


もう一つ、ちょっとした問題がある。1倍時は平均的で可もなく不可もなくなのだが、8倍時のアイリーフ幅が1cm前後しかなく、アイボックスも狭いので動きが多い状況下だと焦点が合わせにくくなる。


イルミネーションに関してはレティクル全体が赤く発光し、11段階の光量調整が可能。最低光度は夜間でも使用できるくらいには暗くなる。

最大光量に関しては、直射日光下だともう数段ほど明るくなって欲しいが、日中にダットサイトのように使えないこともない。

等倍時はイルミネーション無しだとレティクルが少し見えにくくなることが環境によってはあるので、イルミネーションを灯すと使いやすい。ただ、イルミネーションが灯っている様子は対物レンズ側から見えるので、その点は注意を。


なんだかいくら低価格帯とは言え、これが知る人ぞ知るUS OPTICSのスコープなのか…?となるだろう。私もそうなっている。

だがこのメーカーならではのこだわりも残っている。スコープの外観だけなく、各種可動部のチェック、反動試験をちゃんと「誰」が行い、パスしましたよ、異常なかったですよ!という何十もの項目のチェックシートを製品一つ一つに付けている。これは、通常中古車が買えるような値段のスコープに付属しているのであればわかるが、この価格帯にまで行っているのはあまり存在しない。

Conclusion | 総評


はっきり言うが、この価格(MSRP:695ドル)であればSFPだがボルテックス社 ストライクイーグル 1-8×24を購入したほうが、満足だし実用的だ。

では400ドル台であれば(実際持ち主の購入価格は450ドルだが)このスコープを買うのか?と言われてもおそらく私は買わない。兎にも角にも見ずらいレティクルが一番の難点だ。

FFPで低価格でまぁ使えるかな?というショートスコープは他にもあるし、この価格帯であれば他社でもっと良いショートスコープはいくらでもある。

エントリーモデルとは言え、US OPTICSというブランドはこの程度なのか?と思われても仕方ない製品で残念だ。持ち主であるT氏が苦い笑顔を浮かべながらこのスコープを私に見せてくれた理由がよくわかった。