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ジャンル:ダットサイト・ドットサイト

TRUGLO社の実銃用2倍率ダットサイト。同じく2倍率ダットサイトである「ハッコー – COMBAT TWICE」との比較も交えながらご紹介。

執筆時期:2022年5月

※本製品を提供してくれたムー氏に感謝いたします。

※比較対象のハッコー COMBAT TWICEのレビューはこちら ↓ ↓

【レビュー】ハッコー – COMBAT TWICE

SPECS | 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) TRUGLO(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
全長 13.7cm
重量 260グラム
対物レンズ径 42mm
倍率 2倍
視野(FOV) 27フィート / 100ヤード :  8.2m / 91.4m
レティクルパターン 2.5MOA 赤色ダット
イルミネーター 赤色LED 1~11段階
使用電池 CR2032リチウム電池
購入価格 69.99ドルで購入(2021年)

実銃向け激安2倍率ダットサイト


TRUGLOという光学照準器や散弾銃向けの光ファイバーサイトを販売している米国企業がある。このメーカーのポイントは何と言ってもその価格の安さだ。この点に関してはもう何十年もブレてない。実銃向けの照準器メーカーだが、トイガン向けの光学照準器よりも安い製品が多いくらいだ。(日本国内での価格はそこまであまり安くはないが)

もちろん、安かろう悪かろうといった感じは否めず、物によっては中華パチモノ照準器とほぼ変わらない質の製品も多い。ただ価格が価格なので、まぁそうだよなと笑って済ませれるレベルだ。今回紹介するTRUGLO社の2倍率ダットサイト2×42 TG8030B2」も本国アメリカでは50~80ドル前後で販売されている製品である。光学照準器市場で2倍率ダットサイトというジャンルは非常に珍しく、現在販売されているものは、私が知る限りではこの製品とVector Optics社のCondor 2×42くらいだ。


まずは比較対象のかつてハッコー社(現:ノーベルアームズ社)が販売していたトイガン向け2倍率ダットサイト「COMBAT TWICE」とくらべてみよう。

写真を見てもわかるが、基本的な作りや全長、そして重量はほとんど変わらない。

・TRUGLO – TG8030B2:全長13.7cm、重量260グラム

・ハッコー – COMBAT TWICE:全長13.5cm、重量256グラム

ただ、マウントや形状、各種調整ダイヤルや細かな点はけっこう配置や形状が違うので、まるまるコピーした製品とは全然違う。ボディの手触りもCOMBAT TWICEは光沢のあるツヤツヤしたボディコーティングなのに対し、TG8030B2は少しざらついたマットな塗装だ。

本製品は元々同社の等倍ダットサイト「TG8030A」に2倍率ブースターをくっつけた製品である。

確かCOMBAT TWICEも等倍ダットサイトからの派生モデルだったと記憶している。


フリップアップ機構を備えるレンズ保護キャップが前後付属する。前期型は透明な樹脂がはめ込まれており、レンズ保護キャップをした状態でも照準できたが、後期型はそれが廃されている。


レンズコーティングは対物レンズ側にうすーく紫系の色味が見て取れる。

レンズ口径は対物側が42mm、接眼側が30mmとなっている。


イルミネーションダイヤルは11段階の光量調整が可能。OFFポジションに突起があるのでわかりやすい。

ダイヤルテンションは少し固め。使用電池はCR2032コイン電池だが、バッテリー持続時間等は不明。


ウィンデージ&エレベーションダイヤルには脱落防止付きのキャップが付いている。COMBAT TWICEではキャップの縁でダイヤル操作ができたが、本製品ではれはできず。マイナスドライバーやコイン等の道具が必要だ。

ダイヤルは1クリックで1MOAの移動量。クリック感はしっかりしており、わかりやすい。


マウントに関しても六角レンチが必要であり(これに関しては付属)、ウィーバー規格の20mmレール設計となっている。ウィーバー以外でも大半のピカティニー規格20mmレールには対応する。


スコープと違い、アイリリーフが無いので、ダットサイトと同じ運用で使用可能だ。10~200メートル前後の距離における小動物の狩猟用や、サバイバルゲームでの使用に用いるシューターが多いようだ。重量も中~大型の等倍ダットサイト程度なので射手にとって大きな負担にはならない。

持ち主に聞くまでもなく、実弾射撃を行って欲しいとの要望があったので、12番ゲージスラグ弾での射撃を15発ほど行ってみた。COMBAT TWICEの場合はトイガン用途ということもあり、5.56x45mm弾での射撃でダットの点灯不良が発生するようになり、対物レンズの微細な損傷が起きた。こちらも実銃向けとは言え、ビクビクしながら射撃したが、不具合は起きず、ゼロインも狂わなかった。

米国のユーザーレビューでは場合によってゼロインの狂いやダットの点灯不良等の不具合も実弾射撃の場合発生するケースも何件かあるようだ。



さて、光学性能に関しては両者で多くの違いが出た。

まずレンズの透明度に関しては、TRUGLO 2×42 TG8030B2の方が高い。

だがTRUGLO 2×42 TG8030B2はレンズの暗さが少々気になる。ダットサイトは基本的にスコープ類と比べると、その構造上レンズが暗くなってしまうことがほとんどだが、この機種は近年稀に見る暗さだ。

一方、ハッコー COMBAT TWICEは方眼紙のマス目を見てもわかるが、球状の歪みが散見される。2倍率ダットサイトはこのように歪みが目立ちがちだ。その点、TRUGLO 2×42 TG8030B2はここで見る限り大きな歪みがない。

双方とも2倍率ダットサイトのくせに、等倍に見えたり、むしろ縮小して見えるでは無いか?と思えるかもしれないが、それはこのような極々至近距離での話。だいたい1m以上離れると倍率が付与されて見えるようになる。



50メートルの距離で180cmの高さに吊るした青のツナギに照準。

こうして見比べてより詳しく検証してみるとわかったのだが、TRUGLO 2×42 TG8030B2は概ね2倍率なのに対し、ハッコー COMBAT TWICEは1.6~1.7倍率程度の倍率しか実際には無いことに気づく。

TRUGLO 2×42 TG8030B2のレンズの暗さに関しては、薄くスモークがかかったサングラス程度で、日中や薄暗い中での使用で不便に感じることはほとんど無いだろう。

ダットの鮮明はTRUGLO 2×42 TG8030B2が余計な滲み等が少なく綺麗だ。公式では乱視の人にも見やすい光学設計をしているとのこと。実際に乱視持ちに見せたところ、歪みや滲みがが生じやすい倍率を付与されたダットサイトの中では見やすい部類という感想だった。

視野はトイレットペーパーの芯から外界を見ているかのように狭く感じるが、両目照準を行うことで補えるレベルではある。両者共に昔の設計のダットサイトであると一番感じるポイントだ。

ホロサイトや質の高いLPVOの類に慣れている人は、より狭く感じるだろう。



距離を100メートルに伸ばして照準。

ただ、2倍率が付与されていることに関するメリットは感じる。特にこのように距離を伸ばした際に、より目標の細部観察や精密射撃を行いやすい。ダットのサイズも2.5MOAなので、100メートルでのヘッドショットも余裕だ。

このダットサイト、倍率は付与されているが、スコープ等に存在するいわゆるアイリリーフ(スコープと目とのピントが合う距離)が存在せず、ケラれて照準不可能ということがない。どんな姿勢でも使いやすいのだ。この点だけ見れば、スコープとダットサイトの良いとこ取りの光学照準器であると言える。

アイリリーフが無いとは言え、ある程度目とダットサイトとの距離が離れると、歪みが大きくなり、今度は逆にターゲットが小さく見えてしまう。

レンズの解像感に関してはTRUGLO 2×42 TG8030B2の方が劣っているが、実際に使用した限りではあまり大きな影響は感じなかった。

ちなみに、写真のダットの光量はTRUGLO 2×42 TG8030B2の場合11段階中の6段階目にしている。(COMBAT TWICEは損傷により光量調整が不安定になっているので、暗めだが一応最大光量にしている)

TRUGLO 2×42 TG8030B2の最大光量は余裕の明るさで、最低光量は暗闇の場合もう1段階くらい落としてほしいといった感じだ。惜しい。


TRUGLO 2×42 TG8030B2の100メートルにおけるパララックステスト。

パララックスに関しては、トイガン向けとは言えCOMBAT TWICEの結果があまりに酷かったので、これも似たようなものだろうとたかをくくってたら、思いの外良い結果となった

右と上下から覗いた際は7-8cmほど、左は12cmほどのズレとなった。左から覗いた際のズレが少し大きいが、100メートルくらいの距離であれば、大きくマンターゲットから逸れることはないようだ。

ただ、TRUGLO 2×42 TG8030B2は接眼レンズへの映り込みが目立つ。中国製パチモノホロサイトによくあるまるで鏡のような映り込みほどではないが、環境によっては映り込みが気になることがあるだろう。

特に明るい場所から暗い場所への照準を行う際にはより映り込みを感じる。


ちなみにこれがCOMBAT TWICEのパララックスだ。それぞれ1メートル前後の大きなズレが生じている。


もう一つTRUGLO 2×42 TG8030B2の欠点としては、対物レンズ側からダットが灯っているのが見えやすい点にある。2.5MOAの小さなダットなので、大きなサークルレティクル等を備えたダットサイトやスコープほどではないが、留意してもらいたい。

Conclusion | 総評


レンズは少し暗いし、映り込みもある。これが300ドル以上の製品ならあまり良い評価は付けなかっただろう。

ただ、こいつは実売価格50-80ドル前後と非常に安い価格で購入できる。そこらのパチモノ光学照準器を買うよりよっぽどかいいし、このような他とは違う光学照準器を一つ持っておいても面白い。

日本国内では2万円以下での入手が少し難しい点が残念ではあるが。

実銃用ではあるが、トイガンに装着してサバイバルゲームでの使用も非常に面白いはずだ。スコープのように倍率があるにも関わらず、ダットサイトのように素早く照準ができるという、他に無い個性で遊ぶことができる。サバイバルゲームの交戦距離であれば、サブマシンガン、アサルトライフル、スナイパーライフル、軽機関銃、散弾銃とロングガンなら機種を問わず、楽しめる光学照準器だ。

もしもこのような2倍率ダットサイトを、より高い品質で開発できるAimpoint等のメーカーが作った場合、どんな製品となるのだろうか?実現は難しそうだが、ぜひ見てみたいものだ。