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ジャンル:ダットサイト
SRSは、ACOGスコープで有名な、米国Trijicon(トリジコン)社初のチューブタイプのダットサイトである。トリジコン社らしく、他社ダットサイトには無いユニークな機能や外観が目を引く。
SPECS|性能諸元
メーカー名(国) | :Trijicon(アメリカ合衆国) |
モデル名 | :SRS02 |
全長 | :9.52cm |
重量 | :391グラム(マウント・リチウムAA電池含む) |
倍率 | :1×(等倍) |
イルミネーター | :LED 10段階(内3段階は暗視装置用) |
使用電池 | :AA単3電池(アルカリ・リチウム)&ソーラーパネル |
電池寿命 | :AA単3電池(リチウム)使用、光量中程度で約3年 |
レティクルパターン | :赤色ダット 1.75MOA |
世紀末世界でも運用可能!?単3電池とソーラーパネルで動くハイブリッドダットサイト
SRSで最も目を引くのは、この上部に乗っている大きなソーラーパネルだろう。特にこのような、大型のチューブタイプのダットサイトでソーラーパネルを搭載している機種は珍しい。ソーラーパネルは、太陽光等への乱反射を抑えるため、すりガラスのような樹脂カバーで覆われている。さらに面白い点は、このダットサイトがソーラーパネルと電池のハイブリッドで駆動することができる点である。普段はソーラーと電池のハイブリッド駆動で消費電力を抑えつつ、夜間は電池から、電池が無くなった場合には光さえあれば、ソーラーパネルでダットを灯し続けることができる。電池も世界のどこでも手に入れることができる単三電池(AA)一本で、パワーソースに頭を悩ますことは無い。あくまで個人的にはソーラーパネルは不要だが、米国ではサバイバリストの間で人気だとか。
ソーラーパネルの重要性は一旦置いておくとして、使用する電池が単三電池という点は支持者が多い。単三電池は入手性の容易さとある程度の電池容量があることから、幅広い機器で使われている。リチウムイオン電池が主流である昨今においても、デジタルカメラ、懐中電灯等、単三電池専用機種は多い。そういった理由から、光学照準器にも単三電池を使用したものが欲しいと言った層も多い。ちなみに、単三電池を使用したダットサイトとでライバル機種を挙げると、Aimpoint社のCOMP M4シリーズが真っ先に思い浮かぶところだ。
さて、その単三電池のボックス部だが、どうしてもその電池の大きさの関係で、コイン電池を使用するような機種と比べると大きく出っ張りがちになる。SRSは、ボディー形状をあまり崩さないように、流線型を保ったデザインとなっている点は評価できる。また、電池フタのチェッカリングに加え、マイナスドライバーやコイン等でも開閉できるようにマイナス溝を刻んだり、脱落防止用の金属ワイヤーを付けている点も良い。悪環境下等での不要なフタの紛失や、開閉不良と言った余計なトラブルを避けることができる。
ただ、この電池ボックスだけでも気になる点はある。まずは、よくありがちな電池をプラスマイナス逆に入れてしまった場合だが、電池を逆に入れてしまったことに気づいて戻しても点灯しない。これは、フタ側の端子が引っ込んでしまい、その端子をペンチか何かで引っぱり出さないと戻せない。電池の向きはイラストが側面に描かれてはいるが、やってしまいがちなミスが故、この仕様は困る。また、電池寿命もソーラーパネルとハイブリッドで省エネを実現しているとあるが、ライバル機種であるAimpoint M4(8年)や、Micro T1(5年)と言ったデータを見るとそこまで多いとは言えない。
38mm大口径レンズの魅力
汚い部屋の画像で失礼。この機種の一番の魅力はやはりこの大きな38mmのレンズだろう(対物側)。しかも、ただ大きなレンズを搭載しただけでなく、接眼側は28mmの一回り小さなレンズという点が良い。これは、除いた際に、チューブの内側が極力視界に入らず、無理な姿勢でも視界が開けるという利点がある。COMP M4のような長細いダットサイトを覗いてみればわかるが、使用中にダット以外のものが視界に入るのは結構ストレスになるし、視野が狭くなるのも避けたいところだ。このダットを拳銃に搭載して競技をしている人をみたことがあるが、ダットそのものの重さによるリコイルの抑制と、このレンズ構造からチョイスしたのだろう。
ちなみに対物レンズは、光源と反射の位置によるパララックスを抑える関係から、斜め上に傾くように配置されている。メンテナンスの際には少しやり辛い。
また、レンズそのものの質は値段の割にはそこまで良くはなく、使用中に支障がでるレベルではないが、少々青みがかかって見える。ダットそのものはハッキリと綺麗に見えるので、クリアなレンズが好きな私は惜しいと感じる。また、初期のSRSやロットによっては、直射日光等の強い光の下で使用した場合、ダットが滲んだり潰れてしまう現象が起きるとも報告されている。私の場合は一般的なダットサイトのようにそこまで気になるレベルでは無かったが、スコープと違い、ダットサイトの場合でそういうことが起きるのは問題だ。
コンセプトとしては良いのだが、、、
今回の機種は、マウント部分が簡単に付け外しができるQDタイプ(SRS02)を選んだ。他には、ネジ式のものがある(SRS01)。QDタイプのものは、20mmレールの規格や質によっては付け外しが硬かったり、最悪付けれないという欠点はあるが、工具無しでポンっと付け外しができる点はやはり魅力だ。SRSのQDマウントは、前方部のツメを押しつつ、後部のツメを引くと脱着できる。私としては、できれば右側にではなく、左側に付け外しのツメを配置して欲しかったが、これは好みの問題であろう。
マウントは所謂ハイマウントのタイプで、ダットサイトの倍率を上げるブースターや、イルミネーターの暗視装置モードと合わせて、レールに取り付けるタイプの暗視装置にも対応している。画像では、ノーベルアームズ社の3×マグニファイヤーと、フリップトゥサイドマウントのHiを使用している。ちなみにこの組み合わせだと、若干マグニファイヤーが高く、若干だが、覗いて見た際にSRSの上部が映りケラれる現象が起きる。
信頼性だが、「トリジコン社の電池駆動タイプの照準器は信頼性が高くない」という風潮を裏付けることが起きたことがある。夏場の演習中、青々と茂った山の中を藪漕ぎしている最中に、私は窪みに気づかずに1.5mほど落下してしまい、銃のストックを地面にぶつけてしまった。この衝撃で、ダットが点灯しなくなり、泣く泣くメーカー修理に出した。この点は、大変よろしくない。この程度の衝撃は、軍や警察での使用のみならず、競技やゲームにおいてもよく与えてしまいがちなものである。それで壊れるというのは、中華製のパチモノならまだしも、10万円前後する光学照準器としてはいただけない。修理後、それより大きな衝撃を与えてしまったことが何回かあり、今度は故障こそしなかったが、やはり、一度でもそういうちょっとしたことでの故障を経験すると、どうしても不安は拭えない。
そして本体重量は、やはりボタン電池とくらべて大きくかさばる単3電池機種の宿命なのか、400グラム近くの重さとなっている。ちなみに、ライバルのAimpoint COMP M4シリーズでも376グラムある。電池がこれより多いEOTech 5xxシリーズで370~320グラム、実銃ダットサイトの基本とも言えるAimpoint COMP M3やPROで320グラム。比べるのは間違っているが、同社Micro T1だとハイマウント込みでも200グラムいかない。となると、どうしても他の選択肢に移ってしまうのはしかたないことかもしれない。
その他
○ダットの光量切替とON/OFFは両側面の軟質樹脂製の+-が描かれたボタンで行う。よくあるダイアル式に比べ出っ張りは抑えられるが、ボタン操作は少しやり辛い。
○付属品として、樹脂製で緩衝材入りのボックス、説明書、メーカーロゴシール、カメラのレンズクリーニング用としてお馴染みのレンズペンが付属する。特に箱は、見栄えも良いし、持ち運びや保管の際にも安心できる。また、レンズペンの付属も大変便利で、他の光学機器のメンテにも使えるものなので嬉しい。
○また、Energizer(エナジャイザー)社のリチウム単3電池(L91)がテスト用電池として1本付属している。一般的なアルカリ単3電池(約20グラム前半)とくらべて軽く(約15グラム)、使用環境も-40°から60°までOKなので、特に冬場に電池がヘタるということもない。また、何と言っても使用期限が10年以上もあり、液漏れも少ない。ここ一番という場面で使う機種に使用すべき電池だ。リチウム電池の例に漏れず、別で買うと使い捨てのくせに1本500円前後するような電池なのでこれも嬉しい。