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ジャンル:ダットサイト

スワンプフォックスの30mmレンズを搭載したリーズナブルなオープンダットサイト

執筆時期:2025年8月

検証人数:3人

実弾射撃評価:有り

→Glock – G17 / 9x19mm弾

→Benelli – M2 / 12番ゲージスラッグ弾、クレー用散弾


SPECS | 性能諸元(公式)

メーカー名(メーカー国・製造国) SWAMPFOX(アメリカ合衆国・中華人民共和国)
サイズ(全長x全幅x全高) 52.5×34.2×34.7mm
重量 50.95グラム
ボディ素材 7075-T6アルミニウム
倍率 1倍
対物レンズ径 30mm
パララックス設定 30m
レティクル Multi Reticle (本製品)、6MOA
イルミネーター 赤色LED 10段階調光(内2段階は暗視装置用)、その他緑色LEDモデルあり
使用電池(最大電池寿命) CR1632リチウム電池(50000時間)
防水性能 IPX7
耐衝撃性能 1500G
価格 209ドル(6MOAモデル)、250ドル(Multi Reticleモデル)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 30mmの大型レンズ搭載でリーズナブルな価格設定
  ハンドガン向けとしては押しやすいスイッチ
改善を要する点 夜間や暗視装置用としては明るすぎるイルミネーション
  各種反射が目障りに感じることも

一人称視点動画も合わせてご覧ください↓ ↓

 

デカ盛りレンズに小盛りな出費


デカ盛りで安い製品はいつの時代も人気である。特に昨今のような物価高に民衆が喘いでいる情勢下ではそれが渇望され、お値段据え置きで容量2倍キャンペーンの覇者であるローソンには入荷トラックを襲撃するかのような目をしたハンター達が待ち構えている。

値段が高くなりがちな大型レンズを搭載のハンドガン向けダットサイトにもリーズナブル製品はいくらかある。今回はその中でもデカ盛り大型レンズを搭載したSWAMPFOX社のJustice IIに焦点を当ててみよう。


現在(2025年8月)SWAMPFOX社のハンドガン向けオープンダットサイトのラインナップは3種類ある。30mmと最も大きなレンズを搭載したこのJustice IIの他、24mmレンズのLiberty IIがある。もっと小さなものが欲しい場合はSentinel IIという選択肢もあるが、これのみフットプリントがRMRではなくRMScなので注意を。

その他エンクローズドタイプのKrakenがあり、これもレビュー記事化予定なのでお楽しみに。

 


それではJustice IIを見ていこう。その名の通り、これらはSWAMPFOX社にとって第2世代目の製品である。正直初代は100ドル以下で売られている中華製ダットサイトとあまり変わらないような外観であったが、今作からデザインは近未来的でSFチックな雰囲気が漂うものへとお色直しがされた。


このダット、持った際の重厚感が他のオープンダットとはまるで違う。それもそのはずで、初代Justiceと比較してレンズフードの厚みを1mmから3mmに増大させ、かなりマッシブに鍛え直しているからだ。

対物レンズのサイズはHG向けダットサイトとしては特大サイズである30mmであり、他社の大きなレンズを搭載した競技向け製品と比較しても2~3mm大きい。

レンズは斜めに設置されているため、正確には正面に据えた際のレンズサイズは28mm x 23mm。


ハウジング素材は7075-T6アルミニウム。最近はこの手の安価な製品にもこのクラスのアルミが使われるようになったものだ。

公式重量は50.95グラム。現実的なセットアップであるネジ2個と電池を付けた重量は54グラムであった。他の大型レンズを搭載した製品の実重量は計測してはいないが、公式数値を見る限りだと他社製品は概ね50グラム以下となっているため、他よりは若干重いようだ。


サイズは52.5×34.2×34.7mm(LWH)。ハンドガン向けのダットサイトで50mm超えの全長は大きな部類だ。

この大柄ボディは大きなレンズがRMRフットプリントの底面から前面に7.3mmせり出しているため、光学機器をロープロファイルに設置する形状のスライドには載らない場合がある。ここは事前に自分の拳銃をチェックしておこう。


レンズフード後面は、強い光を浴びた際に余計な反射で射手への支障が出ないよう、横線を刻む工夫がされている。


特徴的なバッテリーコンパートメントの蓋を取るとCR1632リチウム電池の住処がある。電池寿命は最大で5万時間を謳うがおそらく最低輝度であり実用的な持続時間ではないだろう。

この電池蓋の開閉にはT10トルクスドライバーが必要。

省エネ機能としては無振動無操作が4分続くと自動的にシャットダウンをし、再び振動等を検知すると明かりを灯す機能が付いている。


電源や輝度調整に使用するスイッチは両側面に一つずつ付いており、左側面が上ボタン、右側面が下ボタンとなっている。

この特徴的な六角形で三角形のスイッチのテンションは少し硬めであり、グローブをしてても押しやすいと同時にフィードバックも感じ取れやすい。良いスイッチだ。

両側面に一つずつスイッチを設ける手法と言えばハンドガンダットサイトの代名詞であるTrijicon社のRMRシリーズが有名だが、この設計に関し、これはオラの特許だ!テメェなにマネしてんだこの野郎!とホロサンを相手に法廷闘争を繰り広げた過去がある。SWAMPFOXはこの点をどう回避したのだろうか?それとも渋々金を払ったのだろうか??


後部にはこの手のダットお馴染みのウィンデージ&エレベーションダイヤルがある。1クリックの移動量は1MOAで、最大移動量はそれぞれ45MOA。

ダイヤルのクリック感はちょっとわかりにくい時があり、ゼロイン調整中に何度かあれ?っと思ったことがあった。どう見ても安物中華ダットサイトに付いている汎用品であり、ここはあまりコストをかけていないのだろう。


付属品を見ていこう。まずは説明書、サポセンへの連絡先、ステッカー。

説明書の表紙を飾るのは少しセクシーになった正義の女神テミス

軍や警察、護身目的の製品ならまだしも、いったいなぜこの競技向けの大型レンズ搭載の本製品がJustice(正義)という名称なのかはよくわからない。まぁこのメーカーはところどころでアメリカの精神を匂わせるような名称を使いたがる癖があることに関係しているのだろう。あまり深く考えてはいけない。


ただ説明書そのものはシンプルな説明ながらもわかりやすく、レティクルの細かいサイズまで表記されている。


底面フットプリントはド定番のRMR規格を採用。純正及び社外オプションも選び放題だ。

付属ネジは#4-40(5.0mm)、#6-32(8.5mm)、#6-32(8.0mm)、M3.5×0.6(10.2mm)の4種類が付属。ネジ穴はT10トルクスだ。

→()内はネジ部の長さ。


その他付属品はボディ全体を覆うことができる大柄なラバータイプのカバーに各種工具類、電池が付属する。

同社Kingslayerのようにピカティニーマウントは付属しない。あれはレティクルが切り替えれない点を除けば100ドル前半で買えるコスパの良いダットサイトだった。

Reticle │ Multi Reticle


Justice IIのレティクルは今回紹介するマルチレティクルモデルと6MOAのドットモデルがある。レティクルカラーはそれぞれ赤と緑をラインナップ。

まずはフル表示させた34MOAのハッシュマーク付きサークルレティクルに2MOAのドット。

レンズの透明度は高い方だがレンズ上部1/3にノッチフィルターの青いグラデーションがほんのり目立つ。


他にもレティクルは3種類切り替えが可能で、写真左から2MOAドット、サークル、ハッシュマークのみとマルチレティクルの各部位ごとを切り分けて表示させることが可能だ。中でもハッシュマークのみを出せるのは面白い。

近距離における照準

林内にて5~30mのCQBを想定した照準。ターゲットは人間の上半身を模したUSPSAマンターゲット(縦75cm×横45cm)。カメラとダットサイトの位置はハンドガンに搭載し、腕を伸ばした想定距離で設置。


ハンドガン向けで30mmのレンズは実に広い視野を得られる。耐久性を上げるためレンズフードの厚みが増されているためベゼルレスな雰囲気は味わえないものの、CQBにおいて素早い状況判断が可能だ。

動かしているとレンズの歪みは特に上半分に一定量感じるが、この価格とレンズサイズのオープンダットとしては普通である。照準時に大きな支障や不愉快な思いをするほどではない。極力価格を抑えて歪みが少ないものを好む場合は、もう少しお金を出してHolosun – HS507 COMPを買おう。


34MOAのサークルレティクルはこのような至近距離でターゲット中央への素早い照準合わせに役立つ。


小銃用マルチレティクルなダットサイトだと、サークルレティクルの大きさは倍の65MOAサイズが多いなか、拳銃向けはこのような32~34MOAサイズが多い。これは至近距離が多い拳銃射撃を考慮し、「ターゲットをレティクルで覆い隠さず」「小さなレンズ面積の中でもレティクルを見つけやすく」「精密性よりも素早い照準」「HOLOSUNとかの大手がよく使ってるからこれでいっか…」という理由で採用されているようだ。

ここは好みも別れやすい。私は基本的にシンプルなダットのみが好きだし、サークルレティクルを選ぶなら小銃でも拳銃でも精密射撃もやりやすい65MOAの大きなサークルレティクルが好きではある。


ということでレティクルを切り替えてシンプルな2MOAドットオンリー。このような薄暗いエリアで少し距離が離れている場合はターゲットをレティクルで覆い隠したくないのと、精密射撃もできるので好きだ。


こちらはサークルレティクルのみ。マンターゲットの場合はこのレティクルで30メートル、ハッシュマークのみの場合は20メートルでおおむねぴったりとおさまるサイズなので、サバイバルゲームや散弾銃でこのレティクルを使用するのも違った利便性や面白みがある。

50メートル照準

距離を50メートルに伸ばし、光学品質をより詳しく見ていこう。ターゲットは180cmの位置に吊るした青いツナギ。今度はAR-15タイプの小銃にダットを載せた想定距離で撮影。


34MOA+2MOAのマルチレティクルはやはり距離が離れるとターゲットを覆いがちで少し使いにくいと思うことも。やはり近距離向けだ。


こちらはクロスヘアレティクルのみ。さきほど20mでマンターゲットにピッタリと言ったが、50mだとクロスヘアの内側が概ねマンターゲットにおさまる。最大有効射程距離が50m前後が多い散弾銃でこのレティクルを使用することは場合によって良い活用法となるだろう。

100メートル照準 │ 各種反射やイルミネーションについて

距離を100mに伸ばして照準。ターゲットは50m時と同じ。


50メートル照準の写真で気付いた方も多いと思うが順光時には上面1/4~1/3に赤いレンズ反射が出やすい傾向にある。ぷち目障りだが致命的ではない。

使用環境によっては、Olight – Osightで問題視していた偽ドットが出現することがあるが、出現状況は限られており、出ても一瞬だけなので大きな問題にはなりにくい。


レティクル周辺が薄く赤く染まっていることに気づいただろうか?特にこのようにマグニファイヤーで拡大するとわかりやすいだろう。これはエミッター周りの反射が起きているためだ。


これは安価なマルチレティクル機に多い現象で、逆光下ではLEDエミッターの反射がレンズに映り、サークルレティクルの像まで映り込む。写真は意図的に撮影した凄まじい逆光条件であり、通常使用だとここまでの映り込みにならない。ただし致命的な障害ではないが、環境下によっては色濃く映り、出現頻度も高いため目障りと感じることもある。

この現象は同社Libertyでも同じ

他にも水平に構えた際にレンズ上端と下端に電池蓋の反射が出ることもある。これら各種反射はレンズ中央まで被さったり照準不能になることは無いが、反射防止にそこまでコストをかけていないことは伺える。


イルミネーションの最高輝度に関しては特段明るいという程ではないが晴天時での使用に困ることはほとんどないだろう。問題は夜間や暗所だ。

最低輝度が明るく、暗視装置は当然として裸眼であっても月明かりが無い場合は明るすぎると感じる。あと3段階は暗くしてほしい。公式では下2段階は暗視装置用だと謳っているがこんなのは論外だ。また、最低輝度と2段階目の輝度の差がやけに大きいのも困る。開発者は暗所でサングラスをかけながら調整したのか?

それと上の写真を見てもらうとわかるが、同じ明るさ設定なのにレティクルによって明るさが違うのにお気づきだろうか?2MOAモードが一番明るく、これこそ暗闇では使い物にならない。この減少はLEDの出力をレティクル毎に変えていないため、発光面積が一番少ない2MOAが一番明るくなってしまうという弊害が発生しているためだ。

見方を変えれば日中で最高輝度をより明るくしたい時にはサークルレティクルではなく2MOAにすれば良い。

パララックステスト │ 100メートル


公式ではパララックス(視差)は30ヤード(27.4メートル)まではゼロであり、100ヤード(91.4メートル)を超えるとズレが目立ってくるヨと言っているが概ねそんな感じだ。この100メートルでのパララックスは左や上下から極端な位置で覗いた場合に15~20cmほどのパララックスが出る。

公式もズレるヨ!と言っていることだし、拳銃射撃向けのダットサイトであり、レンズが大きいからと言ってレンズの隅々まで余すことなく長距離でも使ってやろうとは考えないほうがいいだろう。

対物レンズからのイルミネーションの見え方について


基本的に見えやすい。発光面積の大きいマルチレティクルだとより見えるので対人戦闘時には注意を。

実弾射撃、各種訓練における使用感等


拳銃に装着し、5~30メートル前後の射撃を伴う要人警護訓練に投入してみたが、安価な割に大きなネガが少なく使いやすい製品だ。特にイルミネーションボタンが左右で分かれている点が様々な人から好評だった。ジェネリックなTrijicon – SROだと言っていた人もいた。価格差倍以上だしね。


パララックスは大きめだがこれくらいの距離であればあまり大きな支障は出ない(要人警護で使用するものではないと思うが…)。大きなレンズで小気味よい射撃が可能で競技での使用に適している。

ただしそれは日中での話であり、夜間では先程言っていたイルミネーション明るすぎ問題によりあまり使いたいとは思えず、同じく検証用として持ってきていたHOLOSUN – HE509TX2に切り替えた。


レンズが大きめなので散弾銃や小銃といったロングガンにも合う。パララックスが大きめなのであまり長距離では使わない、もしくはレンズ中央にレティクルをしっかり持ってきての射撃が必要ではあるが、広い視界で使いやすい。

散弾銃でクレー射撃も行ったが、サークルやハッシュマークのみのレティクルが選べる点は良い。空飛ぶお皿に対して狙いを素早く付けやすく楽しい。


今回これらの射撃や訓練を行い、散弾銃ではスラッグ弾も20発ほど使用したが不具合は一切起きなかった。ただし射撃中の点灯不良については多くはないものの、何件か起きている報告がネット上で挙がっている。

Conclusion | 総評


ハンドガン向けのオープンダットサイトでこの価格(200ドル前半)でこのレンズの大きさはリーズナブルだと言ったが他と比べるとどうなのか?ということで他社の主に競技向け大型レンズ搭載製品とレンズの大きさと価格面で比べてみよう。

Gideon Optics Omega:レンズ径27mmで200ドル前後。

HOLOSUN HS507COMP:28mmで360ドル。

Leupold Delta Point:25.7mmで450ドル。

SIG Sauer ROMEO3MAX : 30mmで519ドル。

Trijicon SRO:25mmで 550ドル

Sig sauer Romeo3XL : 35mmで585ドル

この中だとホロサンのHS507COMPがレティクルの種類をより細かく選びたい、全長を短く抑えたい、レンズの質もJustice2より少し良く信頼性と価格のバランスも取れた製品だ。


肝心のJustice 2の総評はどうかって?レンズの各種反射はそこまで致命的ではないのでまだいいとしても、イルミネーションが明るいので夜や暗所で使えないのは痛い。でも言うならば大きな弱点はそれくらいでありそれらを気にならない用途であれば、30mmという大きなレンズを搭載してて200ドル前半で購入できるのは強い。先程の他社製品との比較を見ても、レンズの大きさと価格の安さを見るのならばイチオシだ。

なぜこの製品名がジャスティスなのかよくわからないと言ったが、30mmという大きなレンズを搭載しながらも、200ドル前半で購入可能という価格設定はジャスティスであるかもしれない。