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【レビュー】 Leupold – LTO Tracker HD (前編)

Pros & Cons | 一長一短

※ここはあくまで、KUSEMONO TACTICALが想定する使い方、視点から見た一長一短です。

※一長一短をわかりやすく表記しているだけであり、項目の数や内容、順番による採点評価ではありません。

優れている点 軽量小型で携行しやすいデザイン
  低価格である程度の耐久性もありコストパフォーマンスにも優れる
  シンプルでわかりやすいUI
  起動時間が早い
改善を要する点 最低輝度が見えにくく、輝度調整の記憶や設定に少し難がある
  カラーパレット数が多くて選択操作が増える
  上下左右調整のできないレティクル表示
  ズームの段階数が多い

本レビューについての留意点

※他のサーマルカメラのレビューについては動画を付与させていたが、本製品は録画機能がなく、カメラ撮影もあまりうまく映らない&すでに製造が終了している製品なため、今回は割愛させていただく(動画を撮影している時間が無かったのも大きいが)。

※カメラ越しに表示されている映像を撮影しているため、実際の目視で見た映像よりも2割ほど画質や見えやすさが低下していること留意してほしい。

※サーマルカメラの熱源に対する見え方の違いを以下の3つに分けて表記しています。

検出:何らかの熱源があることくらいしかわからない。

認識:熱源が何であるのかわかる(熊、人間、車等)。

識別:熱源の詳細な種類や特徴がわかる。(敵か味方か、どんな銃を持っているか、どんな服装、どんな車種か等)

長距離テスト │ 50~350メートル


基本的には足元を見ることも視野に入れた広角仕様のサーマルカメラである本機。長距離でのパフォーマンスはどうだろうか?
気温24℃の平原にて、50~350mまでの距離で対人目標を見ていこう。

50~150mまでは余裕で静止していようと動いていようと人間がいることの認識は可能だ。

ただ、50mであっても敵か味方か?どんな装備を持っているかの識別は厳しい。長物の銃器を持っている程度ならわかると思うが。


250~300mでも辛うじて人間がいることの認識は可能。350mでは動いていても怪しいところだ。電池も無くなりそうだし次のテストに移ろう。


その前にこちらはFLIR – PTQ136の映像。こちらはオンボード録画ができる製品なため、映りの違い等は当然あるものの、こちらのほうが映像処理能力や各種表示パラメーターをより細かく調整できることもあり、同じ気温で同じ距離とは言え長距離では見えやすい。

高温環境下での長距離テスト │ 10~250メートル


条件を厳しくしよう。36℃の猛暑日だとどうだろうか?

10mから見てほしい。こんな近距離の時点で地表と人間との温度差があまりなく少し見えにくくなっている。


距離を伸ばす毎に消えゆく幽霊のように見えにくくなり、人間であることの認識は200mが限界だ。

350mまで見えた24℃の時とは違い、250m以上は検出すら困難となり断念した。高温環境下ではここらが限界だろう。

高台からの見下ろし │ 550メートル


次は小高い丘に登り、見下ろした位置からの長距離撮影。気温は最初と同じく24℃。

250mでは余裕で見ることができる。対象が人間であることは静止していても識別できる。

550mではさすがに厳しい。辛うじて熱源の検出ができており、動いていようが人間かどうかの判断は難しいところだ。

本製品、そもそもこのような遠距離目標を見るものではないし、価格や広角レンズだと言うことを考えれば検出しているだけでも十分だろう。


ここでもPTQ136は、対象だけでなく周囲の環境の映りも同じセンサーと焦点距離であるLTO Tracker HDよりも良い。価格は倍近くするので当然かもしれないが。

Hide & Seek


それではかくれんぼの時間だ。今回は簡単かもしれない。

ターゲットには気温32度の山中にて、黒い布を被った状態で20m先にしゃがんでもらった。


さてこれをLTO Trackerで覗いてみよう。カラーパレットはCopperとHi Whiteで撮影。頭から被った布が薄いため、見事に透過して人のシルエットを炙り出している。

カラーパレットによる見え方の違いだが、Copperのほうが人のシルエットをよく描写できている反面、胸から下は切れてしまって見えない。

一方Hi Whiteは人のシルエットがまだら状となり少し曖昧になっているものの、倒木で見えない下半身を除き上半身全体が見て取れる。また、周囲の木々の様子もこちらのほうがわかりやすいだろう。

Hi Whiteはオールラウンドに使いやすいWhite Hotをベースにしていることもあり、様々な状況下での使い勝手も良い。周囲の状況を把握しつつ、高い熱源をハイライトさせたい時に便利なカラーパレットだ。


次は完全に草むらに隠れ、目視不可の状態で見てみよう。まずはこちら、夏の雑草が伸びまくっている広場にて犬と共に寝撃ちの姿勢を取ってもらった。

10mという非常に短い距離なため余裕で見えているが、センサーの解像度や熱分解能がそこまで高くないため、人間の太もも付近に伏せている犬が完全に隠れてしまっている。

こういう詳細を見極める能力はLTO Trackerはあまり高くない。


また場所を変え、こちらは40m先の茂みの中を移動中の曲者を捉えた。茂みは人間の背丈以上の高さで生えており、静かに潜まれたら目視での発見は極めて困難な状況である。

比較的安価なサーマルカメラではあるが、これくらいの距離なら容易に発見できるのが見て取れる。

通常このような環境での索敵はRANGE等の多色系カラーパレットの得意分野ではあるが、手前の太陽で熱せられた車両がある関係上、描写が少しごちゃごちゃとわかりにくくなっていたのでホワイトホットを選択した。

濃霧の中で

 


次は真夏のゲリラ豪雨の後、視界10メートル程度の濃霧の中で100メートル先の人間を撮影。カラーパレットはHi White。

ディテールが少しぼやけている程度で四肢の確認はでき、動いていなくても人間がいることはわかる。霧が濃いためか、その背後にある雑木林はまったくわからなくなっているが。


もう少し条件を厳しくしてみよう。さらに20メートル奥の雑草が生い茂る雑木林の中に入ってもらった。動いていれば問題無いが、静止していると人間かどうかの認識はちょっと難しい。ただし、明らかに何らかの生物と思しき熱源があることはわかるだろう。

カラーパレットはRANGEに切り替えた。森や草木の中の細かな熱源を炙り出す場合はやはりこの手の多色系カラーパレットは強い。

高温環境下での人工物の描写


今度は猛暑日の350m~500m先の住宅街を覗いてみよう。

熱分布が多い都市部や人工物が多いエリアは、やはり多色系カラーパレットであるRANGEは見にくくなる。

こういう時はホワイトホットやブラックホット等の基本でありシンプルなカラーパレットの方が往々にして見やすい。


こちらはPTQ136の多色系カラーパレット「RAINBOW HC」。やはり同様に多色系は見にくく物の判別がつきにくくなる。

PTQ136は他の製品と比較してもレインボー系カラーパレットの描写は正直下手だ。写真のように塗りつぶされたような描写になることが多い。

少なくとも両者に言えることは、多色系カラーパレットの本懐は都市部というよりも、森林や山中での索敵だろう。

Conclusion | 総評


このLTO Tracker以降、一部中華サーマルメーカーによってほぼ同じ形状の製品が数社から販売されている。わざわそんなことをしているのを見る限り、価格や使い勝手もお手軽なサーマルカメラの支持はある程度あったのだろう。だからこそ、昨今飛躍的に性能が向上し続けるサーマルカメラをいろいろと試すことができるこの私が今だに最も高い頻度でLto Tracker HDを使用し続けているわけだ

二世代目の製造終了以降、このLTO Trackerシリーズのように起動時間が早くて小型軽量、そして使い勝手がよくて価格が抑えられたサーマルカメラの存在を私は知らない。

前述した中華パクリLto Trackerに関しては、画面表示が本製品の1倍時のように小さな長方形でしか表示できないのですごく見にくい。

二世代目であるLTO Tracker 2 HDにはUIやカラーパレットの一部変更に加え、あまり役に立たないレティクル機能の変わりに「ビーコンモード」という熱感度の微調整ができるようになった。


LTO Tracker HDは、今でも中古市場で10万~15万円ほどの価格で定期的に出没している。低価格でコンパクト、そして使い勝手の良いサーマルカメラが欲しい場合は本当に良い製品だ。

事ある毎に持ち出しラフに使ってきたが、今まで不具合らしい不具合はたまに電源が付きにくい時があるくらいなものだ。これは他の機種にも見られる不具合?仕様?みたいだ。


想定よりも収益がよくなかったのかどうかわからないが、LeupoldとSeek Thermalとのコラボ製品であるLTO Trackerは、LTOシリーズそのものと共に墓場に放り込まれ、亡き者とされてしまった。

冒険をしなくなり、魅力的な新製品をあまり出さなくなった現在のLeupoldの体たらくや、欧米企業を凌駕する中華サーマルカメラの発展をみていると、このLTO Trackerの復活は多分望めないだろう。ただ、もし願えるのであれば少々サイズは大きくなってもいいので、スコープの前方に付けれるようなクリップオン機能や録画機能等を付与し、20万円後半くらいの価格で復活でもしてくれれば最高だ。すぐにでも飛びつきたい。

比較に用いたFLIR – Breach PTQ136のレビューはこちら↓ ↓

【レビュー】 FLIR – Breach PTQ136 (前編)