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ジャンル:懐中電灯

中指ほどの大きさながら、4000ルーメンもの大光量を叩き出す懐中電灯

執筆時期:2022年4月

※本製品を提供してくださったIMALENT社に感謝いたします。

※本製品は下記のIMALENT公式サイトにて購入できます。

IMALENT公式サイト:LD70

SPECS │ 性能諸元

メーカー名(メーカー国・製造国) IMALENT(中華人民共和国)
サイズ(全長×ヘッド径) 8.1×2.5cm
重量 87グラム
カラー 青、金、黒、緑(本製品)
使用LED Cree XHP70.2
光量(点灯時間) Turbo : 4000-900ルーメン(1分+38分)
High  : 2000-900ルーメン (1.5分+39分)
Middle : 900ルーメン (45分)
Middle Low : 200ルーメン (3時間50分)
Low:20ルーメン(15時間)
使用電池 内蔵型 18350リチウムイオン電池(1100mAh)
最大照射距離 203メートル
防水性能 IPX-8
耐衝撃性能 1.5m
価格(国内価格) 59.95ドル(約7000~8000円前後)

大光量主義のメーカーが送り出す大光量EDCライト


わかる。みんなビッグな数字には弱いんだ。だからリッター30キロ超えの燃費、売上前年度比200%アップ、240Hz/4K対応等、周囲にはそんな数字を散りばめた鳴り物入り商品や宣伝が古今東西溢れかえっている。フン、そんな数字は「現実」という2文字の前ではまやかしだ、そんな数字を叩き出すには裏がある!と自分に言い聞かせている人も、ついつい魅力的な数字につられてしまうことも多いだろう。

懐中電灯業界はそれの最たるものかもしれない。懐中電灯の最大光量や点灯時間は年を重ねる毎に上がっている。それが実用性を併せ持っているかどうかは別として。

IMALENT社の製品はまさに凄まじい明るさを売りにした懐中電灯メーカーだ。多くの製品が、数千ルーメンどころか数万ルーメンレベルのラインナップであり、「世界で最も明るいフラッシュライト」と堂々と謳っているMS18なんて10万ルーメンという闇夜を焼き尽くさんばかりの明るさを叩き出す。もはや車両や船舶に搭載するクラスだ。

→MS18に関しては、各方面から模造品が売られるほど。ちなみにこれをIMALENTに通報して認められた場合は報奨品がもらえるとのこと。

今回紹介するIMALENT – LD70という中指ほどの小さなフラッシュライトも、最大光量4000ルーメンという驚きの明るさで、我々が今までレビューしてきた懐中電灯の中でも最大である。


まずはパッケージから見ていこう。

パッケージは外も中も黒くビシッとクールにキメている。


付属品は充電ケーブルの他に説明書とストラップ。

説明書は日本語を含めた7ヶ国語に対応。

製品保証に関しては、2年間の無料修理保証が付いてくる。(バッテリーや充電器の故障は1年間対応)


LD70のデザインはまるで何らかのITガジェットかSF映画の小道具のようなデザインをしている。分解や交換不可である内蔵型バッテリー(中身は18350リチウムイオン電池)式の懐中電灯なので、このように外観デザインに自由度をもたらすことができるのだろう。

今回提供された商品は緑で、他にも黒、青、金、青のカラーラインナップがある。


リフレクターは浅めのオレンジピールリフレクター(オレンジの皮のようにブツブツがあるリフレクター)で、その内部にはプクッと大きなCree社のXHP70.2 LEDモジュールが鎮座している。

Cree XHP70.2は普通、もう二~三周りほど大きな懐中電灯に搭載する大出力に対応したLEDだ。

わかるよ。.50BMGを撃てる拳銃や、コンパクトカーにV6エンジンをぶちこんでみたいロマンと似たようなものだ。

強化ガラス製の風防の上には、青色の金属製リングがはめ込まれている。何だこのOLIGHTのようなアクセントは?と当初は思ったが、点灯してみるとこれの意味がわかる。


ステンレス製のテールスイッチは電子スイッチで、押すとプコっと非常に短いストロークで操作できる。このスイッチにはバネ等で圧がかかってるわけではないので、振るとカチカチと小さく音がする。

スイッチは大きく出っ張っているわけではないが、構造上ポケットやカバン内等での誤点灯は起きやすい。スイッチを素早く4回押すとロックアウトをかけることができるが、個人的には使い勝手を考えるとスイッチ構造を変えるか、専用のポーチ、またはクリップが欲しいところだった。

スイッチはクリックでONとOFF、点灯中に長押しをすることで4000ルーメンのTurboとストロボ以外のモードがコロコロと変更される。TurboモードはON・OFF関係なく2回素早くクリックすることで点灯、ストロボはTurboモード中にさらに素早く2回クリックで発動する。

ストロボはTurboモード以上にバッテリー残量に余裕が無いと発動できず、操作方法から考えても咄嗟の状況での使用は少し難しい。どちらかと言えば、ストロボではなくビーコン等のモードの方が用途としても合っているかもしれない。

スイッチ両側面の切り抜きはストラップホールとなっている。


また、上面にはOLEDディスプレイが埋め込まれており、各種パラメータ表示が可能となっている。

点灯開始から10秒は現在の明るさを表示し(写真はMiddle Lowモードの200ルーメン)、それ以降は30秒くらいまで現在のバッテリー電圧(V)と明るさを交互に表示する。

電圧と明るさ表示は、点灯のオンオフに関係なく、スイッチを3回素早く押すといつでも表示できる。(電源オフ時は電圧表示のみ)

その他バッテリー残量警告やロック・アンロック表示等を表示する。EDCライト用途のライトとしては現在のライトの状況が一目で分かり、使いやすい機能だ。


反対側上部にはマグネット式の充電端子がある。

下部には切り抜きがされており、CEマークやRoHSマーク等の安全、製造、廃棄等に関する制限や基準マークが印字されている。この切り抜きはデザイン面やヒートシンクの意味合いもあるのだろうが、懐中電灯の一般的な保持方法であるセイバーグリップをした際に、ここに親指をかけやすくて良い。


付属の充電ケーブルを装着。

カチッとくっ付くマグネット式だが、比較的外れやすいので、充電中はそっとしておくのがよいだろう。充電中の点灯はできない。

反対側はUSB端子(Type-A)となっており、USB充電器やモバイルバッテリーに接続しての充電となる。

このようなマグネット式充電端子は、ライト側の接続端子がType-C等のUSBではないため、専用の充電ケーブルを持っておかないと充電できない、砂鉄等が付きやすいデメリットはあるが、充電端子規格によるデザインやサイズの制約を受けにくく、防水処置も余計なカバー等を付けなくてよい利点がある。


充電中はOLEDディスプレイに現在の充電ステータスが表示される。満充電までは約1時間半ほど。


セイバーグリップでの保持。

力をかける部分に目立った凹凸やチェッカリング等が無く、全長も8cmほどとコンパクトなので、ちょっと滑りやすい。

そのため、先程言った前方部の切り抜きに親指をかけると、持ちやすさがかなり向上する。このライトだと、私はこの保持方法が気に入った。ただ、この方法だとOLEDディスプレイの表示が見えない。できれば反対側に移してほしかった。


リバースグリップ(逆手持ち)。

テールスイッチ方式なので、スイッチ操作は当然こちらが圧倒的に行いやすい。

側面にはヒートシンク兼この持ち方で保持しやすい切れ込みがいくつか入れられているので、頻繁にスイッチを操作する場合はこの保持方法も良いだろう。


この照射写真の時点でわかると思うが、予想通り中心光を遠方ではなく、近場でガバッと照らすタイプ。

そして、前述した青色の金属製リングが外縁光として機能していることがわかる。この外縁光は青く塗装した金属に反射してできた光なので、通常の懐中電灯用のリフレクターの反射できたそれと比べて暗い。これが暗順応を阻害しにくく、足元を適度に照らしてくれる外縁光として機能させているようだ。

外縁光」は中心光の外側にある周辺光よりもさらに外側の配光分布のこと。該当する用語が無かったため、当研究会が作った造語。



100メートル先の自転車と150メートル先の森林を目標にして照射。中心光の半分は目標に、もう半分は地面に向けて照射している。

4000・2000ルーメンのTurbo&Highモードの明るさは凄まじく、50メートルくらいまでの地面が局地的に昼間になったかのように一面照らし出される。

色温度はニュートラルホワイト寄りのクールホワイト。

4000ルーメンという明るさはすごいが、遠距離照射に関しては公式スペックでは最大照射距離203メートルではあるが、150メートル先の森林に辛うじて届いており、実際に使用することを考えると100メートル以下での使用が適しているだろう。

当然ながらこのTurboモードとHighモードは瞬間芸の極みであり、本体はティファールの電気ケトルの如く瞬時に加熱される。温度状況によっては、内蔵サーモスタットにより、1分を待たずしてMiddleモードの900ルーメンに自動的に落とされる。



Middleモードの900ルーメンは50メートル、Middle lowモードの200ルーメンは30メートルくらいまでの使用が使いやすいと感じる。



今度は15メートル先のベンチと自転車を目標に照射。

このように近い距離での照射を見ると、Turbo&Highモードの明るさが際立つ。LEDが市販用懐中電灯に搭載された黎明期から知る身としては、こんな中指ほどの大きさのライトからここまでの光が湧き出ていることへの驚きと共に、技術の進歩を感じる

このライトのサイズ等を考えると、4000&2000ルーメンの実用性はほとんど無い。タクティカルや護身用としても使いにくいし、もし実用的なEDCやお散歩用ライトとして仕立て上げるには、4000ルーメンのTurboモードをせめて2000ルーメンくらいに抑え、その他モードも500、200、20、5~1ルーメンとより実用性の高い、明るさと点灯時間のバランスを取った構成にしたほうがいい…普段の私ならこう締めくくっているだろう。

だがこれは明るさの限界を追い求めているIMALENTの製品だ。IMALENTのライトはほとんどの製品が、この明るさを追い求めていることに関しては一貫性がある。このLD70に関しても、小さなEDCライトで明るさの限界に挑んだ製品、いや、作品であるとも言えよう。

青い金属リングに反射して作られている外縁光に関しては、どのモードにおいても真っ暗な森林や屋外等で効果を発揮する。足元を暗順応が阻害されない程度に照らし、安全を確保してくれる良い設計だ。今まで外縁光に関してはTIR式のリフレクターを用いたライトが多く持っていた強みであったが、このような方法で外縁光を作り出すのも面白い考えだ。



このライトは遠方までバシュッと飛ばすライトではないため、4000ルーメンであれ20ルーメンであれ屋外での使用に関して言えば実用照射距離にあまり大きな差は無い。正直このサイズでこの用途の懐中電灯なら、Middleモードの900ルーメンどころか、半分以下の400ルーメンでも十分明るいと言えるだろう。

Middleモードの900ルーメンは50メートル、Middle lowの200ルーメンは30メートルくらいでの使用が適している。



最後はLowモードの20ルーメンを拳銃やナイフ等の小物に向け屋外では5メートル、屋内では2メートルの距離から照射。

20ルーメンは手元確認用としては少し明るいが、街灯が少なかったり無いエリアでの散歩等での使用には、15時間の点灯時間も考慮して適していると言える。

5メートルの時点で暗い色の物体は見えにくくなるが、15メートルくらいの照射用途で使用するのであれば、真っ暗な森の中でも適度な散歩で使用できる。

Conclusion | 総評


このLD70に関しては、普段使いを考えると4000ルーメンや2000ルーメンといった大光量モードはほとんど使わず、実際はMiddle lowモードの200ルーメンやLowモードの20ルーメンを多様することだろう。

実用性を考慮すると、モードの構成を見直してもらいたいが、それは他社がこのライトを作ったらの話である。そう、これはとにかく明るさを追い求めているIMALENT社の製品だ。実用性がどうだのこうだのと言うのは重箱の隅をつつくようなものだ。

Middle lowやLowモードを普段使っていればそこそこ使えるし、外観デザインも良い、防水性や耐衝撃性もOK。そして、このサイズとしては他社と比較して桁違いの大光量を秘めたる力として出せるという、ユニークなポイントもある。

人生は実用性だの合理性などではなく、どこか尖って奇抜で面白いものを、ポケットや手の中に持っておきたい。そんな人には良い選択肢となるライトではないだろうか。